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映画「散り椿」原作小説のあらすじとネタバレ!感動の結末とは?

   

こんにちは、若竹です。

葉室麟「散り椿」が映画化!

岡田准一さんが主演を務めるということで早くも話題になっています。

しかも、監督は映画「追憶」でもタッグを組んだ木村大作さん!

美しい映像が印象的な時代劇になりそうですね。

一方で、原作小説にも注目してみると「蜩ノ記」の葉室麟さんだけあってやはり面白い!

藩政の陰に潜む闇、過去の事件の謎、そして感動の人間ドラマ!

私も原作小説を読んだのですが「あ、これ絶対に映画見たい!」と思わされるほどグッときました!

というわけで今回は、映画の原作小説「散り椿」のあらすじとネタバレ!

感動の結末をお見逃しなく!

 

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小説「散り椿」のあらすじとネタバレ!

瓜生新兵衛が扇野藩に帰ってきた──。

その噂は瞬く間に広がり、藩の人間に衝撃を与えた。

 

当時、勘定方だった新兵衛が上役・榊原平蔵の不正を訴えて藩を追放されたのは18年前のこと。

性根が真っすぐな新兵衛は「平蔵は商人・田中屋惣兵衛から賄賂を受け取っている」と懸命に訴えたが、藩の実権を握る家老・石田玄蕃は取り合わなかった。

しかし、その3年後には平蔵の不正が発覚。

何者かに闇討ちされて平蔵は亡くなった。

一部では、その犯人は新兵衛だったのではないかという噂もある。

ともあれ身の潔白が証明された新兵衛は藩に呼び戻されたが、ついに新兵衛が藩に戻ることはなかった。

それが今になって…。

新兵衛は藩の剣術指南役になるはずだった剣豪だ。

藩の人間は一波乱起きそうな予感に身震いをした。

 

さて、その新兵衛が身を寄せたのは妻の家である坂下家。

まだ若く出世を望む坂下藤吾は新兵衛が居候になることに難色を示したが、母・里美が歓迎しているため追い返すことはできない。

新兵衛は長い放浪生活の末に妻・篠が亡くなったと告げ、自分は亡き妻の遺言をかなえるために戻ってきたのだという。

その遺言とは…。

「庭の椿を自分の代わりに見てほしいと、篠はわしに頼んだのです」

坂下家の椿は花が落ちず、花弁が一片ずつ散っていく。

新兵衛はその椿を見に戻ってきたと言うが、果たして本当にそれだけなのだろうか?

 

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登場人物紹介

・瓜生新兵衛…一刀流道場四天王の一人。豪快で大雑把な性格だが、思慮深い一面もある。年のころは42,3歳。

・榊原采女(うねめ)…四天王の一人。平蔵の息子。出世頭であり、現在は藩の重役。

・篠…亡き新兵衛の妻。家が近所だった新兵衛と采女は幼馴染だった。

・源之進…四天王の一人。数年前、横領の罪を着せられて自決した。

・里美…源之進の妻。篠の妹。藤吾の母。

・坂下藤吾…現坂下家当主。自決した父に代わって家名を上げるため出世を望んでいる。年のころは十代後半。

・篠原三右衛門…四天王の一人。現在は馬廻り役(下っ端)

・石田玄蕃(げんば)…扇野藩家老。陰謀を得意とする。

・親家…現藩主。高齢のため病床に臥せっている。

・政家…次期藩主(御世子)。現在は江戸にいる。

 

榊原采女の恋

本来、篠と結婚するはずだったのは采女の方だ。

知性的な采女は篠の父に気に入られていたし、采女と篠は相思相愛だった。

しかし、息子に権力者の血縁をあてがうつもりだった采女の母・滋野は猛反対。

結局、滋野が坂下家に聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせたことで、縁談は破談になった。

その後すぐに、篠は新兵衛との縁組を組まれ、2人は祝言を上げた。

采女は2人の祝言を祝福したものの、その後はずっと独身を貫いている。

 

篠の遺品を整理していた里美は、着物から3通の書状を見つける。

それは、采女から篠に送られた文だった。

その書状を読めば、いかに采女が篠に惚れていたかがうかがえる。

だが、結婚を祝う書状の中に「また2人きりで会いたい」などと書いてあるのは、いくらなんでも不謹慎なのではないだろうか?

それに、采女からの文を後生大事にとっておいたということは、篠もまた本心ではずっと采女のことが好きだったのでは?

もしそれが本当であるならば、新兵衛があまりにも哀れだ。

新兵衛は心から篠のことを愛していたというのに…。

 

後日、新兵衛は藤吾に語って聞かせた。

「采女は篠に想いを懸けておった。そしてまた篠も采女が忘れられなかったのだ。それゆえ、采女がいつまでも嫁を娶らずにいるのを見るに忍びず、わしとともに国を出たのだ」

「…わしには斬りたい男がおるというのが、正直なところだ」

(采女殿を斬りたいと…!?)

空恐ろしさを感じながら、一方で藤吾はこうも思った。

新兵衛は亡き妻の心が他の男にあるのを知りながら、妻の最後の願いを叶えようと国元に戻ってきた。

なにゆえ、そのようなことができるのだろう。

ひとを愛おしむとは、自分の想いを胸にしまい、相手の想いを叶えることなのか。

 

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過去の謎

榊原平蔵が斬られた事件と源之進が自害した事件には、不可解な点が多い。

その謎を解き明かすことも、新兵衛の目的の一つであった。

現在までにわかっていることは2つ。

・平蔵を斬ったのは、一刀流道場の四天王の一人らしい

・平蔵が斬られた後、源之進は采女を恐れるようになっていた

この事実は一体なにを意味するのだろうか…?

 

政争

藩内に不穏な空気が漂い始めた。

発端は、藩主の代替わり。

現藩主・親家は息子の政家を江戸から呼び戻し、藩主の座を明け渡そうとしている。

政家は親政を宣言しており、藩主の座につけば自ら藩の政を動かしていくだろう。

ところが、これを良く思わないのがこれまで藩の政を司っていた家老・石田玄蕃。

藩内は正当な次期藩主・政家に忠義を尽くす「御世子派」と家老につく「石田派」に分かれてにらみ合っている。

 

そんな中、坂下藤吾は藩主直属の闇組織「蜻蛉組」の一員となるよう命じられる。

「なぜ自分が?」と訝しむ藤吾だったが、上意である以上は従うほかない。

蜻蛉組の組頭は、藤吾に藩が抱える問題について話し始めた。

・藩主は世代交代をする前に藩内の不穏分子を一掃していきたい考えだ

・そのために狙うべきは石田玄蕃

・石田玄蕃は紙問屋・田中惣兵衛と結託して売上金を密かに江戸に流している

・その金は江戸の幕閣にいる、ある人物を出世させるための賄賂として使われている

・その人物とは、藩主の庶兄・刑部の息子だ

つまり、刑部は石田や田中屋を背後から操り、藩の金を勝手に息子の出世のための賄賂として使っているのだ。

だが、いかに藩主といえど刑部のような大人物を証拠もなく処罰することはできない。

そこで藩主はまず石田玄蕃の弱点を探るように蜻蛉組に命じた。

18年前、榊原平蔵が何者かに闇討ちされた事件…その背後にはおそらく石田が絡んでいる。

18年前の事件の真相を突き止めれば、あるいは石田を追い詰められるかもしれない。

藩内にうごめく闇の一端に身震いする藤吾だったが、結局最後までなぜ自分が蜻蛉組に入れられたのかはわからないままだった。

 

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三右衛門の話

後日、坂下家に篠原三右衛門が訪ねてきた。

実は藤吾は、三右衛門の娘・美鈴との結婚が決まっている。

ついに祝言の日取りが決まったかと藤吾は喜んだが、三右衛門の口から出てきたのは予想外の言葉だった。

「実はな、美鈴との縁組を破談にしてもらいたくて参ったのだ」

凍り付く藤吾。

「そなたは蜻蛉組に入ったのだろう。まさか、そなたが蜻蛉組の探索に役立つから入れられたとは思っておるまいな。そなたは監視されているのだ。平蔵殿を斬ったのは源之進だからな

驚愕する藤吾・里美・新兵衛。三右衛門はさらに話を続ける。

当時、道場の経営の裏には石田家老の助力があった。

その石田から師範を通じて、四天王である源之進と三右衛門に「平蔵を斬れ」という命令が下った。

そして決行の日。三右衛門は土壇場になって逃げたが、源之進はやり遂げた。

その証拠に、源之進は石田家老に引き立てられて出世街道を歩んだ。逃げた三右衛門は今でも下役だ。

だが、石田玄蕃は周到な男だ。

源之進が自害したのも、石田による口封じに違いない。

だとすれば、源之進の息子である藤吾にも何かしらの害が及ばないとも限らない。

 

何も言い返すことができず、結局、藤吾と美鈴の縁組は破談になった。

2人はただ縁組が組まれたという以上に、愛し合っている間柄だというのに…。

新兵衛はかつての采女と篠の関係を思い浮かべた。

 

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決意

藤吾は父を利用した挙句に切腹させた石田派と敵対することを決意する。

だが、御世子はの重鎮・采女にとって藤吾は「父・平蔵の仇である源之進の息子」

つまり藤吾は御世子派にも属せず、藩内で孤立してしまうことになる。

それでも、藤吾の決意は固かった。

 

一方、新兵衛は三右衛門の話にはまだ裏があると睨んでいた。

平蔵が闇討ちされた晩、本当は何があったのだろうか?

真相を探るため、新兵衛は和紙問屋・田中屋惣兵衛の用心棒を引き受ける。

 

そんな中、田中屋惣兵衛の家が襲撃されるという事件が起こった。

襲撃者は2組。石田一派の手の者と、蜻蛉組。

新兵衛は次から次に襲撃者を切り捨てていったが、わずかな隙に襲撃者の一人が蔵に侵入し、あるものを奪って行った。

そのあるものとは『起請文』…田中屋と刑部の癒着、また平蔵が不正を行っていたことを証明する文書だ。

やはり全ての黒幕は刑部。平蔵は石田家老が口封じのため消そうとしたのだろう。

 

蜻蛉組が奪って行った起請文は惣兵衛が用意していた偽物だった。

田中屋の安全のためにも、本物の起請文は新兵衛が預かることに。

これで、新兵衛は蜻蛉組・石田派の両方から狙われることになるだろう。

すべての因縁に決着をつけるため…新兵衛にとっては望むところであった。

 

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采女の回想

16年前。

采女の父・平蔵は田中屋とのつながりを追及され、連日のように城中で取り調べを受けていた。

「いつ石田の刺客に闇討ちされるのか」と毎日神経をすり減らしながら過ごす毎日。

しだいに平蔵の心は摩耗し、身体も痩せ細っていった。

そんなある晩、采女が家人から「平蔵が脱藩同然の行為をおかして江戸にいる藩主に無罪を訴えようとしている」という話を聞きつけた。

取り調べの最中に勝手に藩を出るなど、かえって立場を悪くするだけだ。

采女は父を思いとどまらせようと、急いで平蔵のもとに駆けた。

人気のない夜道、駆けてきた采女に平蔵は言い放った。

「お前が刺客だったのか」

「何を言われるのですか。違います。采女です」

「お前は、篠との縁談が壊れて以来、わしと滋野を恨んでおったな。このままわしが失脚すれば、榊原の家がつぶされると恐れたのであろう。だからわしを斬ろうと思うたか。恐ろしい奴だ」

采女がいくら否定しても、平蔵は聞く耳を持たない。

そして、ついに平蔵は采女に斬りかかってくる。

いくらかはかわすが、平蔵は何度も斬りかかってくる。

危ない、と思った瞬間、采女の刀が鞘走った。

あっと叫んで平蔵が刀を取り落とした。無意識に采女は平蔵の小手に切りつけていた。

そのあたりから、采女の記憶は途切れている──。

 

気がついたとき、目の前に平蔵が倒れていた。

そして傍らに立っていたのが、三右衛門だった。

「わたしがやったのか」

罪の重さに采女は腹を斬ろうとしたが、三右衛門が慌てて止める。

「お主は生きて、父上のまことの仇を討たねばならぬ」

父の仇…石田玄蕃。

采女はその晩のことを心中に隠して、藩内で順調に出世していった。

すべては、憎き敵を討ち果たすために…。

 

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暗闘の正体

政家が国入りするまで、残り1カ月。

焦った石田派は、新兵衛から起請文を取り戻すため強硬策に出た。

藤吾を人質に取り、引き換えに起請文を渡すよう新兵衛を脅したのだ。

だが、新兵衛は起請文を采女に預けていた。

さすがの石田派も采女には容易に手を出せない。

新兵衛が石田派とやり取りをして隙を作っている間に、蜻蛉組が藤吾を助け出していた。

 

蜻蛉組から助け出された藤吾は、石田派の真の企みを教えられていた。

石田派の黒幕である刑部の真の目的は、自らの血筋を藩主の座に据えること。

母親の出身身分が低かったせいで兄であるにも関わらず藩主になれなかった刑部は、まだ幼い自分の孫・太郎丸を藩主にしようと執念を燃やしていた。

田中屋と癒着して江戸に金を送り、息子を幕府内で出世させていたのも、そのための下準備。

病床に伏せる現藩主はもうすぐ代替わりを余儀なくされる。あとは正当の次期藩主・政家を亡き者にすればいい。

不遜にも御世子の命を狙った刑部だったが、敏感に刑部の企みを察知した政家は采女や郡方の山路らと通じて派閥を形成。自らの身を守った。

一方、家老の石田玄蕃は自らが政を動かすため、親政を宣言する政家ではなく刑部の側につく。

こうして、藩内には石田派と御世子派という2つの派閥が誕生。

この派閥抗争によって新兵衛は藩を追放になり、平蔵や源之進は命を落とすことになった。

(これが、藩内で続いていた暗闘の正体なのか…)

藤吾は虚しい気持ちを抱いた。

 

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国入り

御世子・政家が国入りした。この時点で石田派の負けは決定された…と誰もが考えた。

だが、石田玄蕃はまだ諦めていない。

藩内を視察するという政家に刺客を放ち、山中で狙撃させたのだ。

銃撃は馬上の政家の胸に命中。

「御世子様――!」

藤吾は悲鳴のような声を上げた。

一方、供をしていた山路内膳は「この雨だ。一発撃つのが精々だな」と落ち着いている様子。

「山路様、さようなことより御世子様のお手当を!」

目を怒らせて詰め寄る藤吾に、山路は痛ましそうな表情をして答えた。

「覚悟の上のことだ…。篠原殿は、狙われるのを承知で御世子様の身代わりになったのだ」

藤吾は息を吞んだ。頭巾の下から除く顔は、篠原三右衛門。

血が大量に流れており、もう助からないと傍目からもわかる。

藤吾が三右衛門に駆け寄ると、三右衛門は最後の力を振り絞って隠していた秘密を明かした。

「藤吾殿か…。榊原平蔵殿を斬ったのは、わしだ…

16年前の夜。采女は平蔵の小手を斬ったが、そのことがショックで呆然としてしまっていた。

采女が斬られると思った瞬間、隠れていた三右衛門は平蔵の首筋を斬り上げていた。

「だが、采女は平蔵殿を斬ったのは自分だと思い込んでおったようだ。…采女は刑部様と石田玄蕃を倒すことに凝り固まっておる。それを成し遂げたら腹を切るつもりなのだ。あの男は生きなければならん。これからの藩を、背負っていく男なのだ」

「…なぜ、御世子様の身代わりになられたのですか」

「わしが、蜻蛉組の組頭だからだ」

藤吾は目を見張った。

「平蔵殿を斬ったのも、玄蕃に命じられたからではない。蜻蛉組としての仕事であった。だからこそ、源之進より先んじたのだ。源之進は最後まで、采女が平蔵殿を斬ったと思っていたはずだ。そなたを蜻蛉組に入れたのも、源之進の息子を守りたかったからだ」

三右衛門が藤吾と美鈴の縁組を破談にしたのも、蜻蛉組組頭である自分の娘に責任が及ぶかもしれないと考えてのこと。

三右衛門はかっと目を見開いて藤吾を見つめ、

「美鈴を、美鈴のことを頼む──」

と言うと、そのままがくりと頭をたれた。

 

一方、本物の御世子は田中屋にいた。

実は江戸にいた折、すでに政家は刑部の息子・家久と話をつけてある。

これからは田中屋の売上金は裏に流れず、きちんと藩の金として計上される。

その上で、一部はこれまで通り家久のため幕府へ渡す金として改めて配分される。

十分だ。これで刑部や石田の懐には金が入らない。

裏金の流れを絶つことに成功し、安心したのもつかの間、わずかな油断から政家は毒見を通さずに目の前に出された茶に手をのばしてしまう。

果たして、その茶には毒が盛られていた。政家は血を吐いて倒れる。

「誰ぞおらぬか。医師を呼べ!」

田中屋の内部にも石田の手の者が忍び込んでいたのだろう。

(してやられた。玄蕃めを甘く見過ぎた)

その場に同席してた采女は後悔の表情を浮かべた。

 

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迷路

石田家老は御世子を守れなかった不手際を問い采女を謹慎させた。

御世子は一命を取りとめたものの、その命は石田の手の中にあるも同然。

ここにきて、一気に御世子派の旗色が悪くなった。

このままでは、石田家老の手によって刑部の孫・太郎丸が新藩主に据えられ、事実上、石田玄蕃と刑部が藩を支配することになってしまう…。

謹慎中の采女は、石田から「衆目の前で敗北宣言をすれば助けてやる。さもなくば切腹を命じる」という最終宣告を突きつけられた。

次に登場するときまでに、采女はどちらの道を選ぶのか決めなければならない…。

 

季節は椿が咲く頃。

新兵衛は妻との約束を果たすため、榊原家を訪ねた(篠の生家は、今は采女の家になっている)

「篠は最後に言い遺した。この椿を見てほしいという願いと、もうひとつ。お主の助けになってくれと、わしに頼んだ」

「…」

「わしは、篠に一日としていい目を見させてやることができなかった。篠は、辛く苦しい思いの中で生き、この世を去った。だから篠の頼みなら、おのれにとってどんなに苦しいことであろうとも聞こうと心に決めたのだ」

「…」

采女は呆然としていた。

「願いを果たしたら褒めてくれるか、と訊いたら篠は褒めると言ってくれた」

言いながら、新兵衛は刀の鯉口を切った。

「篠には、あの世で願いを果たせなかったと詫びることにする」

新兵衛はすらりと刀を抜いた。

 

お互いの命をかけた、すさまじい斬り合いが始まった。

もはや迷いはない。

幾度かのやり取りの末に、2人はすれ違いざまに斬り結んだ。

新兵衛の拳と采女の首筋がそれぞれ薄く斬られていた。

 

ふと、お互いの緊張が緩まる。新兵衛は刀を鞘に納めた。

「三右衛門が言い遺したことを伝えよう。お主は平蔵殿と言い争いになり、小手を斬った。だが、その後で平蔵殿の首筋をはねたのは三右衛門だ。お主は気が動転して、自分が斬ったと思い込んだのであろう」

はっとした表情を浮かべる采女。当時の記憶が蘇ってくる。

「…だが、父に刃を向けながら、わしに罪はなかったなどとは言い逃れることはできぬ」

「お主はおのれを責めて生きようとする。それが他の者の生きる道を閉ざしてしまうこともあるのだ」

采女はすぐに篠のことを言っているのだと察した。

「若かりし頃、篠はお主に想いを懸けた。たとえ、滋野殿が邪魔立ていたそうとも、お主がしっかり篠を受けとめることができたていたならば、篠は別な生き方ができたはずだ。わしと夫婦になったばかりに、寂しく世を去らねばならなかったではないか」

悲しみを帯びた新兵衛の言葉に、采女はひややかな口調で答えた。

「新兵衛、お主、まださようなことを思っているのか。まさに大馬鹿者だな。確かに若い頃、わしは篠殿に想いを懸けたことはある。だが、篠殿は違っていたのだぞ」

「いまさら何を言う。篠は亡くなる前に、椿の傍らで想いを懸けたひとに会いたいと申し、お主のことを案じていた」

「新兵衛、お主は篠殿の後を追って死ぬつもりなのではないか」

「…」

「やはり、そうか。篠殿はお主に生きていてほしかった。だからこそ、わしのことを話し、助けてやれと言われたのだ

「まさか、そのような──」

「篠殿は、お主を生かすために心にもないことを言わねばならなかったのだぞ。その辛さが、お主にはわからんのか」

采女の目には涙があふれていた。

 

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面影

果たして、采女の言葉は真を言い当てていた。

若い頃、確かに篠は采女に想いを懸けていた。

しかし、その後に新兵衛との縁組が決まり、優しくも愚直な新兵衛と接していくうちに、篠は素直にこう思うようになったのだ。

(この方とともに生きよう)

うっかり目を離すとすぐに無茶をするようなところが新兵衛にはある。

篠はそんな新兵衛を自分が見守らなければならないと思った。

新兵衛に寄り添って生きていこうと心に決めた。

国許を出てからは苦しい日々が続いたが、篠は新兵衛と心が触れ合って過ごしていけるだけで満ち足りていた。

しかし、自分の寿命が残り少ないと感じるようになると、篠は日増しに新兵衛の行く末が心にかかってきた。

新兵衛は無欲なうえに篠とともに生きることを心の支えとしているように見受けられる。

もしかしたら自分がこの世を去った後、新兵衛は死を選ぶかもしれない…そう考えると篠は恐ろしくなった。

だからこそ、篠は新兵衛に願い事があると告げた。

国許の椿を見に行くことと、采女を助けること。

自分が采女に心を寄せていたと新兵衛に思われるのは、身を切られるように辛かった。

篠の話を黙ったまま聞き終えた新兵衛は、しばらくして口を開いた。

「そうであったか。わしは何も知らなかった」

「申し訳ございませぬ」

「いや、よいのだ。それよりも一つだけ訊いておきたいことがあるのだが」

「なんでございましょう」

「わしはそなたに苦労ばかりさせて、一度もよい思いをさせたことがなかった。そなたの頼みを果たせたら、褒めてくれるか」

新兵衛の言葉に、篠は胸がいっぱいになった。

「お褒めいたしますとも」

篠の目から涙があふれた。

涙を流しながらも、篠は新兵衛に微笑んだ。

まことの心と裏腹な言葉を口にしつつ、篠は胸の中で、

「生きてくださいませ、あなた──」

と繰り返していた。

(生きて、生き抜いてください。それがわたしにとっての幸せなのです。あなたが生きてくださるなら、わたしの心もあなたとともにあるはずです。形に添う影のように、いついつまでもあなたの傍に寄り添えることでしょう)

 

場面は再び現在。

「まことにそうであろうか」とつぶやく新兵衛に、采女は語りかけた。

「新兵衛、散る椿はな、残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるのだ。篠殿が、お主に椿の花を見てほしいと願ったのは、花の傍で再び会えると信じたゆえだろう」

 

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椿散る

石田家老に呼び出されて登場する采女。

石田は大勢の前で采女に謝罪するよう言い渡す。

「ここにて手をつかえよ。そのうえで、わしに頭を下げて、二度と逆らわぬと誓い、助けてほしいと命請いをいたすのじゃ。さすれば許してつかわそう」

あまりに屈辱的な言葉。もし采女が言うとおりにしたならば、それは事実上、石田派の勝利を意味する。

藩士たちが息詰まる思いで見つめる中、采女は口を開く。

「容易いことでございます」

「やはり、命は惜しいようじゃの」

あざ笑う石田に、采女がずんずんと近づいていく。

石田が気づいたとき、すでに采女は脇差に手をかけていた。

「お覚悟──!」

気合とともに、采女は石田を斬った。

「城中での刃傷は切腹だぞ!」

「承知の上でござる。それがしの不覚は石田様を甘く見たことでござったが、石田様も殿を甘く見られたは不覚でござったな」

「殿が、まさか…」

そういうと、石田はがくりと倒れ伏した。

 

「乱心者じゃ!斬れ、斬るのだ!」

その場で采女は大勢の藩士に囲まれて斬りつけられる。

しかし、采女は一切抵抗しようとはしない。

その采女の不気味さに藩士たちが恐れるように退いたとき、采女が口を開いた。

「それがしが刃傷に及んだのは、私怨に非ず。上意でござる」

実は采女もまた蜻蛉組の一員。石田を討つように命じたのは、蜻蛉組の主である現藩主・親家だ。

藩主の命令とあれば、采女に罪はない。

すべてを語り終えると、采女はその場にゆっくりとくずおれた。

(しの殿…)

その後、御世子が駆け付けてきて改めて采女に罪はないと宣言したが、時遅く、采女は絶命してしまっていた。

 

石田は一命を取りとめたものの、石田派は壊滅。

刑部を除く石田派の主要人物は隠居を言い渡された。

太郎丸が新藩主につく話も白紙に戻り、藩内の政争は御世子派の勝利で幕を閉じた

 

その1月後。

まだ野心を燃やし続ける刑部の屋敷に、新兵衛が押し入った。

「それがしの旧友でござった坂下源之進、篠原三右衛門、さらには榊原采女までことごとく非業の最期を遂げてござる。このことをいかが思し召す」

新兵衛の声には悲しみが籠っていた。

「家臣が忠義であるのは、当たりまえじゃ」

その瞬間、新兵衛の身体から鋭い気が発せられた。

刑部も一瞬で「この男はわしを斬るつもりだ」と察して怖気づく。

新兵衛が刀の鯉口を斬るのを見て、刑部は青ざめた。

「待てっ。わしが悪かった。今後は企みなどはいたさぬゆえ、許せ──」

「相違ござらぬか」

「神明に誓って嘘偽りはない」

「かように申されております。よろしゅうございましょうか」

新兵衛が声をかけると、後ろから政家が現れた。

「今後何かあれば、自ら蜻蛉組を率いてお手前を討ち果たす所存じゃ。そのことをしかと肝に銘じられよ」

覚悟のこもった政家の声に、刑部はがくりと首をたれた。

 

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結末

その年の夏、本復した政家が正式に家督を継いだ。

藤吾は美鈴と夫婦になり、政家の計らいにより出世した。

また、生前の采女が口添えしていたこともあり、新兵衛もまた藩の剣術指南役として迎えられることとなった。

だが…

 

里美がふと見やると、旅姿の新兵衛が椿に見入って立ち尽くしている。

「新兵衛殿、そのお姿は何ゆえでございましょうか」

「また旅に出ようと思うたまででござる」

「なぜにございますか」

このままでは新兵衛がいなくなってしまう気がする…。里美の胸がざわついた。

「わしはすでに散った椿だ。残る椿は藤吾だけでよい。藩の行く末にかけた采女の想いは、藤吾が引き継いでくれるであろう」

歩き出す新兵衛にすがるように、里美が声をかけた。

「藤吾は新兵衛殿を父親のように慕っております。それに、お慕い申しているのは、藤吾だけではございませぬ。わたしくしの胸の内には姉がおります。姉が新兵衛殿にここに留まっていただきたい、と申しております」

里美はあふれそうになる想いを始めて口にした。

新兵衛とともに生きたい、それがいまの里美の願いだった。

「里美殿の言われることは、よくわかる。国許に戻ってから、里美殿が篠に見えたことがたびたびあったゆえな」

「ならば…」

新兵衛は微笑したままゆっくりと首を横に振る。

「だからこそ、出ていかねばならんのだ」

言い終えるや踵を返した。妻へ殉じる想いをひたすらに守ろうとしている新兵衛の背中に迷いは感じられなかった。

「また椿の花が見たいとお思いにはなられませぬか」

「いずれ、そのような日が来るかもしれぬな」

「この屋敷でその日が来るのをお待ちいたしております」

新兵衛は何も答えず、裏木戸から出ていった。

里美は後を追えず、袖で顔をおおって立ち尽くした。

しばらくの後、はっとした里美が裏木戸から外へ出て新兵衛の姿を捜すが、どこにも人影は見当たらない。

秋の日に照らされた、目に鮮やかな紅葉が、道に影を落とすばかりであった。

<散り椿・完>

 

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小説「散り椿」の感想と映画化について

まず一言で感想を述べるなら「最高に面白かった!」

約400ページ程の厚さだとは信じられないほど、とにかく内容が濃く詰まっている作品でした。

藩の内政の裏に潜む政争、一人の女性を巡る男たちの思惑、そしてその女性の真の願い。

それらを物語の軸としながら、さらに登場人物それぞれが物語に彩を添え、作品に奥行きを持たせています。

・新兵衛と藤吾の関係(最初は新兵衛を疎ましく思っていた藤吾だが、徐々に新兵衛に影響されて、最後には新兵衛を慕うようになる)

・新兵衛の旧友である四天王それぞれの思惑(それぞれ友と藩のために命を散らせた)

それに、新兵衛と里美の関係、藤吾と美鈴の関係なども実に面白い!

実際には小説一冊なのですが、読み終えた後の体感としては、まるで大河ドラマを見終わったような気分になりました。

そのくらい「散り椿」は人間ドラマが濃く面白い作品です。

 

原作小説を読み終えて確信したことは「これ絶対、すごい映画になる!」ということ。

新兵衛が岡田准一さんで、采女が西島秀俊さんで、しかも監督はあの木村大作さんでしょう!?

間違いなく、素晴らしい作品になるに決まってるじゃないですか!

ホントに映画「散り椿」は必見ですね!

劇場で見ないと後悔することになる…といっても過言ではないはずです。

特に注目したいのは、やはり原作小説でも最も感動的だった「篠の本心が明らかになるシーン」

・亡き妻が他の男に想いを懸けていたと知ってなお、妻を愛し続けた新兵衛の気持ち

・自分が亡き後も夫に生きていてほしいと願うがゆえに「他の男のことがずっと好きだった」という切なすぎる嘘をついた篠の気持ち

どちらの『相手を思いやる気持ち』も尊すぎて、切なすぎて、このシーンは涙なしには読めませんでした。

美しい映像を撮ることで知られる木村監督のこと、きっとこのシーンも印象的に仕上げてくることでしょう。

本当に映画の公開が今から楽しみでなりません。

号泣する心の準備はできています!(笑)

 

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まとめ

葉室麟「散り椿」が映画化!

今回は原作小説のあらすじ・ネタバレ・感想などをお届けしました。

藩の実権を争う2つの派閥抗争と、切なくも想いあう夫婦の絆の強さ。

時代ミステリーとしても楽しめるし、涙なしには見られない人間ドラマとしてもこの上ない!

小説「散り椿」は人間の持つさまざまな『想い』を精妙に描いた、素晴らしい作品でした。

映画化に関しては、主演の岡田准一さんを始め素晴らしいキャストが揃っていますし、木村監督の映像美にも期待できるということで、期待度はMAX!

岡田准一さんと木村大作さんといえば映画「追憶」でも一緒に仕事をされていましたが、その作品も良かったですしね。

次の映画「散り椿」もかなりの話題作になりそうな予感です。

そんな映画「散り椿」は2018年公開。

正直、2018年公開作品のなかでも個人的にはかなり楽しみにしている一本です。

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