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池井戸潤「陸王」のあらすじネタバレと感想!挑戦する人々へ!

   

こんにちは、若竹です。

池井戸潤「陸王」がドラマ化!

役所広司さん主演で10月から放送されますね!

さっそく私も原作小説を読んでみたのですが、熱い!そして面白い!

実は最初は「老舗足袋メーカーの挑戦」と聞いてちょっとニッチな印象を持っていたのですが、読んでみるとこれがまた実に面白くて、一進一退する手に汗握る展開に一喜一憂してしまうほどのめり込んでしまいました。

どれほどハマっていたかというと、約600ページの原作小説を一日で読み切ってしまうほど(笑)

経済小説でありながらエンタメ小説としても一流な池井戸作品の持ち味を十分に楽しむことができました。

というわけで今回は、ドラマ化も決まった小説「陸王」のあらすじやネタバレをチェックしつつ、感想も書いていきたいと思います!

 

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1.池井戸潤「陸王」のあらすじ

埼玉県行田市の足袋メーカー「こはぜ屋」は創業100年を誇る老舗企業。

しかし、その売り上げは年々減少しているのが現状だ。

最近では同業他社も次々に廃業していく。

要するに、業界そのものが衰退の一途をたどっているのだ。

平均年齢57歳、27名の従業員を抱える「こはぜ屋」4代目社長・宮沢紘一はこはぜ屋を立て直すための方法を模索していた。

今まで通り足袋をつくり続けていても未来はない。新規事業が必要だ。

…だが、何をすればいい?

 

ある日、宮沢は五本指のランニングシューズ「ファイブフィンガーズ」を見て天啓を得る。

(…これは地下足袋に似ていないか?)

人気商品だという「ファイブフィンガーズ」のようなランニング用の商品を作るというのはどうだろうか?

 

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陸王

そもそも「走り」とは何か?

新商品開発の第一歩として、宮沢は長年「走り」を研究しているというスポーツショップ経営者・有村を訪ねた。

有村の話を要約すると、次の通り。

・従来のシューズはかかとから着地するように設計されているが、実はその走り方では故障を引き起こしてしまう。

・シューズの底を平らなものに変えればつま先からの着地、あるいはミッドフット着地と呼ばれる走り方に矯正できる。

・そうすれば使用者はより安全に、より長距離を走れるようになる。

地下足袋なら底は平らだ。有村が言う『人間本来の走り方』を促すことができる。

宮沢は新商品のコンセプトを「人間本来の走り」に定め、その名を『陸王』に決定した。

 

試行錯誤

宮沢は社内に「陸王開発チーム」をつくると、さっそく試作品の開発に乗り出した。

試作第一号は地下足袋の持ち味を残し、つま先を二股にしたデザインにしたが…これで走ると指の股が痛くなってしまう。

そこで試作第二号では一般的なランニングシューズと同様に、つま先を丸めてみた。

指の股が痛くなるという問題は解決したが…次なる問題は耐久性。

地下足袋と同じく底に天然ゴムを貼り付けただけの試作「陸王」では、とてもではないがランニングシューズに必要な耐久性を実現できない。

初心者用、あるいは走り方を矯正するためのシューズとしてなら商品になるかもしれないが…。

 

改良点を抱えつつ、宮沢は現段階の「陸王」をひとまず売り出すことにした。

最初のターゲットは故障をして走り方を矯正しなければならない若き陸上のスター選手・茂木裕人。

宮沢は茂木が所属する「ダイワ食品」のスポーツチームに陸王を持ち込むが…結果は門前払い。

実績ゼロの足袋屋が何の用だ、と言わんばかりの対応だった。

 

次に宮沢が「陸王」を持ち込んだ先は中高一貫の私立名門校・光誠学園。

宮沢は「子供たちの足を守るシューズです」と渾身のプレゼンを保護者会に披露するが…結果は「見送り」

同じくプレゼンしていた大手シューズメーカー「アトランティス」の最新シューズが採用されることになったのだという。

それに、ここでもまた「実績ゼロ」が問題になったようだった。

 

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一歩前進

まったく売れない「陸王」に頭を抱える宮沢だったが、思わぬ方向から注文が入った。

光誠学園の兄弟校・町村学園が「陸王」に興味を持ってくれているという。

今回もコンペ形式だったが、結果はあっさりと「採用」

(初めて陸王が、売れた…!)

宮沢は開発チームのメンバーと喜びを分かち合った。

教育現場に採用されたことで、陸王には実績ができたのだ。

 

だが、相変わらずソール(靴底)の耐久性は問題のまま。

子供用ならまだしも、レース用のシューズをつくるならソールを工夫しないといけない。

でないと、もし売れたとしても「陸王」は簡単に他社から真似されてしまうだろう。

だからこそ、アトランティスのような大企業はソールの開発に大金を投じているのだ。

しかし、こはぜ屋にはイチからソールを開発する金も余裕もない。

…どうすれば、よそが真似できない最高のソールをつくれるのだろうか?

 

追い風

懇意にしている銀行員・坂本が情報を手に入れてきてくれた。

ソールに適した軽くて、丈夫で、コストも低い素材。

おまけに環境にも優しい天然素材である「シルクレイ」…その正体は「繭(まゆ)」

長年放置されていたまゆ素材加工の特許技術を持つ男・飯山をプロジェクトに加え、陸王は完成へと大きく近づいた。

 

だが、革新的な素材を手に入れたはいいものの、それをどのように加工すれば最高のソールができるのだろうか?

頭を悩ます宮沢たちに、またも追い風が吹く。

アトランティスの社風に嫌気が差して退職したカリスマシューフィッター・村野がプロジェクトに参加してくれることになったのだ。

村野は多くのアスリートから慕われる一流の靴職人であり、かつて宮沢が陸王を贈った茂木の担当でもあった男。

村野を迎えて完成図が見えた今、宮沢は「茂木に陸王を使ってもらうこと」を目標の一つとすることに決めた。

 

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新・陸王

長く苦しい試行錯誤を経て、ついに「新・陸王」が誕生した。

ソールの素材は特許技術の「シルクレイ」

そこに村野による知恵が加えられている。

第一号の「新・陸王」は村野の助言により「茂木モデル」としてつくられた。

…だが、だからといって商品開発が終わったわけではない。

むしろここからが本番なのだ。

最高のシューズを目指すため、陸王にはまだまだ改良の余地が残されている。

プロがレースで使うシューズをつくるなら、使用者の意見を聞いて何十回も細かな調整を重ねなければならない。

競技用のシューズを真の意味で完成させるためには、まだまだ時間も金もかかるのだ。

…特に「こはぜ屋」にとって問題なのはカネ。

ただでさえ新規事業のために通常以上の経費がかさんでいるのだ。

収益もないまま、このまま陸王開発に資金を投じ続けるだけの余裕は、こはぜ屋にはない。

 

飛躍

そんな中、宮沢の脳裏に一つのアイデアが飛来する。

逆転の発想。

陸王のノウハウを、本業である足袋製造に活かすことはできないだろうか…?

 

こうして出来たのが、シルクレイを使った新しい地下足袋「足軽大将」だ。

従来の地下足袋よりも遥かに軽い足軽大将は強気の値段設定をものともせず飛ぶように売れた。

これにより、こはぜ屋の業績は急回復。

資金難という目前の問題を解決する一手となった。

 

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量産へ!

村野の力もあり、陸王は茂木選手に使ってもらうことに成功。

茂木からのフィードバックによって陸王はどんどん進化していった。

最後までネックになっていたアッパー部分(足の甲に当たる部分)の新素材も見つかり、一気に陸王は最終完成形へ!

そして、ついに村野のGOサインが出た。

いよいよ「陸王」の量産が始まる…!

 

販売開始から1カ月が経過した。

この一月で売れた陸王は15足。

村野は「知名度ゼロからのスタートにしては上々だ」というが、宮沢はどこか物足らない。

村野の言う通り、圧倒的な知名度不足が「陸王」にとっての問題だ。

こうなれば、あとは茂木選手の力に頼るほかない。

茂木選手が陸王を履いたレースで好成績を残せば、きっと陸王にも注目が集まるはずだ。

 

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アトランティスの陰謀

茂木は故障を理由に、アトランティスから一度サポート契約を一方的に打ち切られている。

当時、村野はその決定に猛反発したが、数字のことしか頭にない上司の小原は聞く耳を持たず。

結果として、村野はアトランティスを去ることになった。

そして今、茂木は故障から順調に復活し、こはぜ屋の陸王を履いている。

 

だが、これを良く思わない一派が存在していた。

アトランティスの小原と、村野の後任に収まった小原の腹心・佐山だ。

小原たちは茂木と再契約するため、陰謀を企てた。

こはぜ屋の業績を調べ上げ「こんないつ潰れるかわからない会社より、手厚くサポートできるアトランティスに戻ってこい」と揺さぶりをかけたのだ。

アトランティスに対しては苦い思いがあるが、その指摘自体は的を射ている…。

迷った末、茂木は村野に相談することにした。

茂木にとって走ることは人生でありビジネスでもある。

同情ではなく、実利で考えなければならない。

茂木「こはぜ屋さんの業績、安泰というには程遠い気がするんです。そんな会社にサポートしてもらったら、むしろ重荷なんじゃないかって…。どうなんでしょうか?」

村野「こはぜ屋の業績はアトランティスと比べたら、とてもじゃないが安泰というレベルではない。そりゃあ、そうだ。全世界で社員を一万人も抱えている企業に対して、片やせいぜい数十人の中小企業だからね。もしかしたら、私のギャラすら払ってもらえなくなる可能性だってある。だけど、それを承知で、私はこはぜ屋のアドバイザーになることを承諾した。それには理由がある」

じっと村野を見たまま、茂木は聞いている。

村野「たしかに企業の規模は小さいし、業績もいまひとつだ。だけど、シューズを作るという姿勢や熱意では、アトランティスよりこはぜ屋の方が上だと思う。アトランティスは、ある意味大企業になりすぎた。彼らの関心事は業績であり、目先の利益だ。だけどな、シューズってのは、人が履くもんだ。自分たちが担当しているアスリートに、少しでも良いものを届けるために作るのが本来の姿だと思う。アトランティスのシューズは機能こそ優れているが、ランナーのためにつくられてはいない。そんなシューズに魂はない。ただの工業製品だ」

断言した村野は、真摯な眼差しを茂木に向けた。

村野「私はそんなのを売るのに疲れちまったんだよなあ。会社は小さくてもいいから、真正面からランナーを見据えて、少しでもいいものを、なけなしの予算で作っていく。そういう仕事っていいなって、そう思った。だから手伝っているんだ」

最後に村野は「アトランティスのシューズの方がいいと思ったら、遠慮なくそっちを履けばいい」と伝えて、決断を茂木に託した。

ニューイヤー駅伝まで、もう2カ月を切っている。

今の茂木なら、おそらくメンバーに選ばれるだろう。

果たして村野が履くのは、こはぜ屋の陸王か、アトランティスの新作「RⅡ」か…。

 

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宮沢の想い

茂木の練習を見に行った宮沢は衝撃を受けた。

(あれは…アトランティスのRⅡじゃないか)

練習で茂木が履いていたのは陸王ではなくRⅡだった。

 

…だが、それがどうした?

後日、宮沢は茂木に社員からの応援色紙を届けた際に言った。

宮沢「もし君が今回他社のシューズを選んだとしても、私やうちの社員たちが君を応援し続けるということは変わらない」

茂木「宮沢さん…」

宮沢「金儲けだけじゃなくてさ、その人が気に入ったから、その人のために何かしてやる。カネのことなんかさておき、納得できるものを納得できるまで作る。損得勘定なんて、所詮カネの話なんだ。それよりも、もっと楽しくて、苦しいかもしれないけど面白くて、素晴らしいことってあるんだな。人との結びつき…それを『陸王』が教えてくれた。茂木裕人を応援するのなら、シューズを履いてくれるとかくれないとか、そんなこと抜きにして純粋に応援しようよ──というのが今の私の、いや社員全員の考え方だ」

茂木「もし世の中からおカネっていう価値観を取っ払ったら、後には本当に必要なものや大切なものだけが残るんでしょうね」

思ったことを、茂木は素直に口にした。

茂木「気づかないほど当たり前のものの中に、本当に大切なものがあるのかもしれません。人の絆もそうなんじゃないでしょうか」

ふいにこみあげてくるものを堪え、茂木は言った。

「みなさんの期待に背かないよう、絶対に悔いのないレースをしてきます、応援よろしくお願いします!」

 

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ニューイヤー駅伝

そうして、いよいよニューイヤー駅伝の幕が開けた。

世間が注目するのは、かつての茂木のライバルであり、今や陸上界の期待を一身に背負うホープに成長した男・毛塚。

今回、茂木は第六区で、その毛塚と直接対決することになる。

毛塚が履くシューズはアトランティスの「RⅡ」

それに対して、茂木が当日選んだシューズは…「陸王」だ。

茂木のシューズを見て歓喜するこはぜ屋の応援団に、アトランティスの小原たちが憎しみのこもった目線を送っていた。

茂木と毛塚の対決は、ある意味ではこはぜ屋とアトランティスの対決でもあるのだ。

 

スタートから数時間が経過し、タスキはついに第六区へ!

4位の毛塚と5位の茂木による熾烈なデッドヒートが繰り広げられる。

それを息を呑んで見守るこはぜ屋の面々。

その瞬間、縫製課のリーダー格であるあけみさんが叫んだ。

「抜いた!抜いたよ、茂木ちゃんが!」

風を読んで攻勢を仕掛けた茂木が毛塚を抜き去り、その差をぐんぐんと広げていく。

六区のゴール前、ついに茂木は3位の選手までもを抜いてしまった。

大勝利と言っていいだろう。

故障して挫折を味わった茂木の走りが、そして陸王が、大勝利を収めたのだ。

世間からすればささやかな成果かもしれない。だが、百年にもおよぶこはぜ屋の歴史にとって、これが新たな未来を切り拓く重要な一歩になることは疑いようがない。

こはぜ屋はついに、シューズメーカーとしてのキャリアをここに踏み出した。

 

一方、アトランティスの小原は不機嫌そのものを体現したような顔で、そのレース結果を眺めていた。

サポートしていた毛塚は敗れ、かつてはこちらから一方的に契約を打ち切った茂木が勝利した…当然、面白くない。

小原の様子をビクビクをうかがっている後方の佐山に向けて、小原はつぶやく。

「佐山、このままやらせておくつもりじゃないだろうな。相手はどこの馬の骨ともしれない零細業者じゃないか。お前、恥ずかしくないのか」

俯いた佐山に、小原はきっぱりと言い放つ。

「目障りだ、潰せ」

 

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危機

アトランティスの佐山が暗躍した。

ターゲットになったのは「陸王」にアッパー素材を供給しているベンチャー企業「タチバナラッセル」

佐山は立場の弱いタチバナラッセルにアトランティスとの専属契約を持ち掛け、陸王をつくれなくしようとしたのだ。

…会社にももちろん、仁義はある。

本来ならばこはぜ屋との契約を打ち切りアトランティスの提案を呑むことはルール違反にも近しい行為だが、立ち上げたばかりのタチバナラッセルにとって、それはあまりに魅力的な大口契約だった。

結果、タチバナラッセルはアトランティスと専属契約を結ぶことに合意。

せっかく量産体制に入った陸王は、早くもパーツを失い崖っぷちに立たされてしまった。

 

さらに、陸王にとっては不幸が重なる。

先日の茂木の活躍により注目を集めるかと期待された陸王だったが、現実にはそうならなかった。

マスコミは茂木の活躍そっちのけで「毛塚、体調不良だった?」などと毛塚のことばかりを書き並べたのだ。

これでは茂木も陸王も報われない…。

 

そして、陸王の受難はまだ続いた。

陸王のソールに使われている新素材「シルクレイ」を加工するための装置が致命的に壊れてしまったのだ。

もともと試作機を無理して使って量産していたため、こうなることはわかっていた。

だが、何も今でなくても…。

もしシルクレイの加工装置をイチからつくろうとすれば、1億円の資金と3カ月の期間が必要になる。

こはぜ屋にはとてもそんな余裕はない。

となれば、当ては銀行からの融資だが、これもまったく相手にされない。

そもそも融資を受けられたとしても、金利が高すぎて行き詰ってしまうことは明白だ。

…もう、これで終わりなのか?陸王のプロジェクトをすべて諦めて、もとの足袋製造業者として細々やっていくしかないのか?

だがそれでどうなる?

足袋だけでは生き残っていけないから陸王をつくったんじゃなかったのか?

それに茂木選手へのサポートはどうなる?こちらの都合で一方的に打ち切ってしまうのか?

重苦しい雰囲気がこはぜ屋に漂う。

宮沢は、決断を迫られていた。

 

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もう一つの選択肢

追い詰められていた宮沢に思いもよらぬ提案を持ちかけた人物がいた。

銀行を辞め、東京のベンチャーキャピタル会社に転職していた坂本だ。

坂本は宮沢に新たな選択肢を提示する。

坂本「宮沢さん、会社を売りませんか?」

 

確かに大手企業の資本が入れば、このまま陸王の事業を継続できる。

契約内容によるが、おそらく社員も継続して働けるだろう。宮沢も社長のままでいられるかもしれない。

…だが、だからといって簡単に大企業の子会社になっていいのか?

百年続いたのれんを自分が勝手におろしてしまうわけには…。

複雑な思いに葛藤しながらも、宮沢は買収を希望する国際的アパレルメーカー「フェリックス」の御園社長と会談することに。

自身も一度挫折を経験したという御園から提案された買収条件は悪くない。

宮沢の気持ちは買収を受け入れる方向に傾く。

 

そんな中、問題だったアッパー素材を新たに提供してくれる企業が見つかった。

あとは資本を受けてシルクレイ加工装置さえ作れば、いつでも陸王の量産は再開できる。

そう、あとは決断を下すだけ──。

 

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決断

ついに月の収支が赤字になった。

もう決断のための猶予もない。

そんな中、宮沢は飯山がフェリックスからの個人的な買収話を断っていたことを知る。

特許を持つ飯山がフェリックスに寝返っていれば、莫大な資産を得ることができたはずだ。

なのにそれをしなかったのは、こはぜ屋に仁義を通したから…。

宮沢は飯山と継続して仕事をしていくためにも、フェリックスの買収に応じることを決意。

御園社長にその意を伝える前に、個人的に飯山に話しておくことに。

だが…

飯山「あんたはなんで、そんなに人がいいんだ。なんで、そんなに生真面目なんだ。なんで、もっと悪あがきしようとしないんだ。いいか、よく聞け。御園の狙いは、俺があんたに許可したシルクレイの製造権利なんだ。だったら他にやりようがあるだろうが」

飯山が何を言おうとしているか、その輪郭がようやく宮沢の中で浮かび上がった。

「そういう、ことか…」

新たな選択肢が、見えた。

 

フェリックスに買収されることで守れるものもあるが、同時に失うものもあるはずだ。

一時的には良くても、将来的には親会社からの命令で変化を余儀なくされる可能性だってある。

例えば、低利益事業である足袋製造を止めなくてはならなくなるかもしれない。

それは、こはぜ屋の消滅を意味している。絶対に許してはならない。

経済合理性では測れない価値が、使命が、こはぜ屋にはあるのだ。

今、宮沢はフェリックスに身売りするだけがすべてではないことに気がついた。

フェリックスがシルクレイを欲しがっている以上、業務提携という形でもいいはずだ。

それなら、こはぜ屋ののれんは守られる。

 

業務提携について切り出すと、御園は渋い顔をした。

御園としては取引先として接するには、こはぜ屋はあまりに頼りなく見えるのだろう。

議論の末に分かったのは、宮沢と御園の間には絶対的な価値観の相違があるということだ。

合理性や効率化だけを求める御園には、宮沢が語る「カネでは測れない価値」が理解できない。

だが、もはや宮沢とて買収に応じるつもりはない。

交渉決裂。

しかし、宮沢の心中に暗雲はない。むしろ御園との議論を通して闘志が燃え始めた。

フェリックスほどの大企業がシルクレイを求めたのだ。

他にもシルクレイを高く評価する企業はきっとある。

ならば、そちらに業務提携を持ちかければいい。

去りゆく御園に、宮沢はそう啖呵を切った。

 

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挑戦とリスク

後日、御園から再びコンタクトがあった。

条件を再調整したから聞いてほしいという。

新たな条件は次の通り。

・フェリックスはこはぜ屋に3億円を融資する。返済期限は5年間。

・フェリックスはこはぜ屋に3年間の発注を保障する。

・期限までに返済が完了しなかった場合、こはぜ屋は残金を資本として受け入れ、フェリックスの子会社になる。

つまり、5年間で事業が成功するかどうかが試されるのだ。

成功すれば、こはぜ屋はのれんを守りつつ急成長。

失敗すれば、こはぜ屋ののれんは失われ、買収される。

リスクはある。しかし、チャンスでもある。

社員たちや家族も、宮沢のことを後押ししてくれている。

宮沢はフェリックスの条件を受け入れ、挑戦することに決めた。

 

「社長、あたしたち、がんばるから」

立ち上がったあけみさんはいうと、仲間たちの方を向いて声を張り上げた。

「こはぜ屋百年ののれん、全員の力で守ろうじゃないの。負けるもんか!」

歓声が上がった。

その中にいて、宮沢は社員たちに向って何か言おうとした。

だが、言えなかった。

こみあげてきたもので声が詰まり、言葉が出なかったからだ。

これが、こはぜ屋だ。

そう宮沢は思った。社員一人一人の気持ちが、まっすぐに前を向いている。

不器用だけど、熱くて温かい、これがウチの会社なんだと。

守るぞ、こはぜ屋ののれんを。

宮沢はそう固く──固く心に誓った。

 

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新たなスタート

京浜国際マラソン。2年前、このレースで茂木は故障した。

復帰した今、そのレースに再び出られることを茂木は喜びとともに噛み締めていた。

 

こはぜ屋が倒産危機にあると村野から知らされてから、茂木はシューズをアトランティスのRⅡに変えている。

だが、茂木にとって重要な意味を持つこの舞台で、茂木が選んだシューズは…「陸王」だった。

そのシューズを見た時、応援に駆け付けていたこはぜ屋の面々は驚き喜び、アトランティスの小原と佐山は憤怒の形相になった。

今回も世間から注目されている毛塚は、やはりアトランティスのRⅡを履いている。

再勝負だ。

 

レースが始まった。

茂木はレース展開を読み、中盤まで慎重な走りをキープ。

そして、先頭集団にほころびが見えた頃に仕掛ける!

力強い走りだ。あっという間に茂木は毛塚を抜き、どんどんスピードを上げていく。

当然だ。茂木の走りには、その人生そのものが乗っているのだから。

そして快走を維持したまま、茂木はゴールテープを切った。

日本人ランナーとしてはトップ!

茂木裕人の鮮烈な復帰戦だ。これでもう誰も茂木を無視できないだろう。

宮沢は悟った。

このゴールが、新たなスタート地点になることを。

歓喜の舞う熱狂のロードレースへ、経営という終わりなき競争へ、宮沢の挑戦がいま再び始まったのだ。

 

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結末

フェリックスの資本を受け入れて、こはぜ屋は再び陸王の生産を開始した。

茂木が陸王を履いて大活躍したこと、それに村野が独自に接触していることで、アスリートの中でも陸王に乗り換える選手が増えてきた。

今や陸王はトップアスリートが注目するシューズなのだ。

アトランティス小原のこっぴどい叱責により、佐山の額に脂汗が浮かぶ。

 

一方、かつてこはぜ屋への融資をすげなく断った銀行支店長・家長は、こはぜ屋の敷地内に立派な工場ができているのを見て驚愕していた。

慌てて手を揉みながら宮沢に話を聞くと、フェリックスから資本を得たのだという。

家長「しゃ、社長。失礼ですが、そんな売上金、ウチの預金口座には入ってませんが」

宮沢「フェリックスさんの助言がありましてね、東京中央銀行本店に口座開設したんです。今後はそこがメーンの口座になると思います」

家長は作り笑いを浮かべて言う。

家長「水臭いなあ、社長。メーンバンクはウチじゃないですか。フェリックスさんとそんな提携をされるのならおっしゃってください。ウチは幾らでも融資させていただきますんで」

宮沢「それはどうもありがとうございます」

宮沢が浮かべたのは、皮肉な笑いだ。

宮沢「ですがいまは、お気持ちだけで結構です。忙しいので、これで失礼しますよ、支店長」

軽く右手を上げると、宮沢は巨大な機械が鎮座する工場内へ戻っていく。

不機嫌を露わにし、悔しそうに工場を見つめた家長を、容赦のない夏の日差しが照りつけた。

<陸王・完>

 

※「陸王」は実話?実はモデルがあるんです!

関連記事:「陸王」のモデル企業や人物は?小説との違いを比較!

 

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2.池井戸潤「陸王」の感想

いやぁ、まずは「面白かった!」の一言!

冒頭でも書いたように小説は600ページ近い厚さがあるんですが、一日で一気読みしちゃったくらいですからね。

で、改めて「何が面白かったのか?」と考えてみると、出てきた答えは3つ。

・純粋にエンタメとして面白い

・経済小説として面白い

・メッセージ性が熱い

今回は「陸王」の感想として、それぞれのポイントについて書いていきたいと思います!

 

1.エンタメ小説としての「陸王」

池井戸小説はもうホントにわかりやすくエンターテイメントなんです!

「陸王」で言えば宮沢という主人公がいて、ピンチになるたびに飯山や村瀬という頼れる仲間の力を加えて乗り越えて、最終的には敵であるアトランティスを倒す。

こう書いてみるとRPG的というか、冒険物語みたいですよね。

実際、陸王のストーリーは「問題発生」と「仲間と力を合わせて乗り越える」を繰り返しながら進んでいきます。

きっとそのシンプルにわかりやすい面白さが、一気読みしちゃうほどの没頭につながっているのでしょう。

また、同じ理由で「陸王」にはめちゃくちゃ感情移入しやすいという特徴があると思います。

いつのまにか、自分がこはぜ屋で陸王を開発している一員であるかのような気分になっているんです。

だから、ピンチが訪れた時には宮沢と一緒に凹むし、壁を乗り越えられた時にはものすごく嬉しくなる。

そういう感情が動かされるタイプの小説って、読んでいて気持ちいいんですよね。

特に池井戸小説の場合は、終盤一気に逆転するという展開が多いですから、読後の爽快感は最高!(カタルシスがうんちゃらというやつでしょうか)

難しいことを考えずに楽しめるエンタメ小説としても「陸王」はとても面白かったです。

 

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2.経済小説としての「陸王」

まず、自分とは違う業種の内情について知れるのが経済小説としての「陸王」の面白さの1つ!

この小説に出会わなければ、きっと足袋業者の内情なんて1ミリも知りえなかったでしょうからね。

知らなかった知識をインプットするというのは面白いものです。

また、普段働いていても見えないような経営者視点の考え方を知れるというのも面白さの1つ!

特に池井戸小説ですから「中小企業と銀行との駆け引き」には見ごたえがありますし、陸王の場合は保守と改革とで悩む4代目社長の葛藤という部分に「ああ、そうだよね」と共感できました。

なんというか、もちろんフィクション性の強い作品ではあるのですが【経営者かくあるべし】という理想像を教えられているような気になるというか、学んでいるような気になるというか。

そういう部分も陸王、ひいては池井戸作品の面白さなんだと思います。

 

3.「陸王」からのメッセージ

読書の意義には「ただ純粋に楽しめる」という側面の他に、「新たな教訓や気づきを得られる」という一面もあるのだと思います。

要するに作品のテーマやメッセージというものも大事なんじゃないかと。

もちろんそれは画一的なものではなく、読み手によって何を得るかは異なると思うのですが、私の場合、陸王に感じたテーマは『挑戦すること』でした。

あるいは『真にプライドを持って仕事をすること』と言い換えてもいいかもしれません。

作中で何度もピンチに陥る宮沢ですが、実は彼には「新規事業を中止して本業一筋に戻る」という選択肢が常にありました。

そうすれば当然は会社は潰れない。保守的ではありますが、堅実な選択肢です。

ですが、宮沢は常にリスクを取り、後ろを振り向かずに「挑戦」を続けました。

その結果、彼の周りには信頼できる人々が集まり、最終的には大逆転といっていいほどの成功を収めます。

なぜその結果に収束したかというと、その理由はやっぱり宮沢の「挑戦する」という姿勢があったからこそなんじゃないかと思うんです。

利益を追い求めるのではなく、商品開発に真摯に挑戦し続けてきたからこそ、人の縁がつながり、結果につながった。

「陸王」を読んでいると『挑戦することの大事さ』がひしひしと伝わってきます。

もちろん挑戦した全ての人が報われるわけじゃないけれど、挑戦しなければ絶対に結果はない。

きっと働いている人なら誰しも「陸王」が放つ『挑戦すること』というメッセージ性に、なにか感じ入るところがあるんじゃないでしょうか。

これから挑戦を始める人に、あるいは久しく挑戦を忘れてしまっていた人に、小説「陸王」は熱いエールを送ってくれる作品です。

 

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まとめ

池井戸潤「陸王」がドラマ化!

今回は原作小説のあらすじ・ネタバレ・感想などをお届けしました。

小説「陸王」は老舗の足袋メーカーである「こはぜ屋」がランニングシューズ「陸王」を開発し、企業再生していくストーリー。

数々の困難に打ち勝ち挑戦し続ける主人公・宮沢の勇姿には胸が熱くなりました。

ちなみに、その結末は中小企業社長の意地と努力が実を結び大逆転勝利を収めるハッピーエンド!

憎々しい適役だった大手シューズメーカーや銀行を見返して終わるという気持ちのいいラストでした。

 

ところで、池井戸作品はどんどん実写化されてますよね!

今度は一度ドラマ化した「空飛ぶタイヤ」が映画化するという話ですし。

関連記事:映画「空飛ぶタイヤ」のあらすじとネタバレ!

しかも毎回キャストが良いんですよね!

今回のドラマ化でも役所広司さん主演ということで、キャストの顔ぶれもやっぱり豪華になりそうな予感です!

加えて、今回のドラマ化では原作を細部まで忠実に再現した撮影が行われるとのことで期待値はさらに上昇!

陸王の熱く面白いストーリーがどのように実写化されるのか、実に楽しみですね。

ドラマ「陸王」は2017年秋ドラマとして10月より放送開始です!

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