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東野圭吾「ダイイング・アイ」のあらすじとネタバレ!瑠璃子の正体は?

   

こんにちは、若竹です。

東野圭吾「ダイイング・アイ」がドラマ化!

三浦春馬さん主演でWOWOWドラマになると聞いて、さっそく原作小説を読んでみました!

結論からいえば……これ、めちゃくちゃ面白いです!

『謎が謎を呼ぶ』とは、まさにこのこと。

・失った交通事故の記憶

・事故で亡くなった被害者にそっくりな妖しい女性の登場

・消えた恋人

・もう一人の交通事故加害者の謎

バラバラだったはずの謎が、結末に向けて一気につながっていく展開には「そういうことだったのか!」と唸らされました。

そして、特筆すべきはあのラスト!

ほとんどホラーに近い陰惨な結末には、ゾクリと鳥肌が立ちました。

個人的な感想としては、東野圭吾作品の中でもかなり好きなタイプの小説でしたね。

というわけで今回は、東野圭吾「ダイイング・アイ」のあらすじとネタバレ!

謎の女・瑠璃子の正体とは?

タイトルが意味する怖すぎる現象とは!?

 

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東野圭吾「ダイイング・アイ」のあらすじとネタバレ!

★主な登場人物

・雨村慎介……主人公。『茗荷(みょうが)』で働くバーテンダー。30歳。

・岸中美菜絵……交通事故で亡くなった女性。

・岸中玲二……美菜絵の夫。人形職人。33歳。

・村上成美……慎介と同棲中の恋人。『コリー』で働くホステス。29歳。

・江島光一……事故の日まで慎介が働いていた『シリウス』のオーナー。

・木内春彦……もう一人の交通事故の加害者。帝都建設の社員。

・瑠璃子……???

 

記憶喪失

慎介が目覚めると、そこは病院だった。

仕事帰りに背後から何者かに襲われて、頭部に重傷。

奇跡的に一命はとりとめたものの、ひとつ間違えば死んでいたほどの大怪我だ。

盗まれたものがないから恨みによる犯行だろう、と刑事は言う。

しかし、慎介には誰かの恨みを買った覚えなどなかった。

……いったい犯人は誰なのか?どうして慎介を襲ったのか?

 

意外なことに、犯人はすぐに見つかった。

岸中玲二。33歳。職業はマネキンをつくる人形職人。

「君は知っているはずだね? 岸中という名前を」

刑事に言われて、慎介はようやく想い出した。

一年半前の交通事故。

慎介は事故の加害者で、現在は執行猶予中の身。

そして、亡くなった被害者の女性の名前は『岸中美菜絵』

慎介を襲った岸中玲二は、岸中美菜絵の夫だった。

『復讐』のための犯行だったのだ。

岸中玲二は犯行後すぐに毒を飲んで自害していた。

きっと慎介を始末できたと思ったのだろう。

 

……しかし、どうにも妙だ。

人命を奪ってしまった事故のことを、慎介はどうして忘れていたのか?

一年半前の交通事故のことを思い出そうとして、慎介は異変に気づく。

記憶が、ない。

ちょうど事故の日を中心にした短い期間の記憶が、慎介の頭からすっぽりと抜け落ちていた。

 

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模様替え

慎介が退院したのは、1週間後のことだった。

自宅に戻ると、雑然としていた室内が片付けられていて、おまけに家具の配置まで変わっている。

同棲している恋人の成美に尋ねると、模様替えをしたのだという。

家事が得意ではない成美が自分のために部屋を綺麗にしてくれたことに、慎介は感動を覚えた。

 

もうひとつの記憶喪失

慎介が失ったのは、事故に関する記憶だけではなかった。

もうひとつ、金に関する記憶があいまいになっている。

自分には今いくら貯金があるのか?

まったく思い出せない。

成美に話して通帳を見せてもらうと、貯金残高はかなりの低空飛行。

こんな調子で、自分はどうして独立しようなどと考えていたのだろうか?

かつての自分がどうやって金を工面するつもりだったのか、慎介はどうしても思い出せなかった。

 

運命の女

ある日、慎介の働く『茗荷』に奇妙な客が訪れた。

喪服の女。

見覚えのない黒ずくめの女は、迷うことなく慎介のいるカウンターのスツールに腰を下ろす。

女が顔を上げた瞬間、慎介は直感した。

(俺は、この女に溺れる)

女の放つ妖しい魅力に、慎介は一瞬で魅了されてしまった。

鼓動が早くなり、体温が上がる。

ところが、女はそんな慎介をあざ笑うかのように、自らのことを何も語らない。

名前も、仕事も、『茗荷』に来た理由も……すべて謎。

女が帰った後も、慎介はしばらく正体不明の女のことを考え続けていた。

 

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失踪

成美が失踪した。

慎介にも店にも、何の連絡もなしに行方不明になった。

考えられる可能性は2つ。

1.事故や事件に巻き込まれた。

2.男と逃げた。

部屋から成美の私物(通帳や印鑑など)がいくつかなくなっていることから、慎介は後者だろうと考えた。

一抹の寂しさはあるが、ショックは思いのほか少ない。

ときどき『茗荷』にふらりと現れる例の女に心を奪われているからかもしれない、と慎介は考えた。

 

複合事故

成美の失踪を届け出るため、警察署を訪れた慎介。

そこで慎介は偶然にも、一年半前の交通事故を担当していた交通課の警察官と再会する。

退院してしばらく経つが、記憶はまだ戻らない。

慎介は事情を説明して、一年半前の事故について説明してもらうことにした。

 

交通事故の概要は次の通り。

1.慎介が運転していた車が、自転車と接触する。被害者の美菜絵はこの時点では軽傷。自転車から放り出され、近くの倉庫まで吹き飛んだ。

2.慌てて急ハンドルを切った慎介の車を避けるため『第二の車』も急ハンドルを切る。『第二の車』はコントロールを失い、近くの倉庫に突っ込んだ。

3.結果、倉庫を背にしていた美菜絵は、突っ込んできた『第二の車』によって圧し潰された。

 

『複合事故』

単純な人身事故だと考えていた慎介は、事故の詳細を聞いて驚いた。

まさか加害者がもう一人いたとは……。

第二の車……赤いフェラーリを運転していたのは『木内春彦』という帝都建設に勤める会社員だということだった。

 

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妖艶

『茗荷』の閉店作業は、いつも慎介が一人で行う。

だから、営業終了後に例の女がふらりと現れたとき、店の中には慎介しかいなかった。

照明を落とした暗い室内で、二人きり。

慎介がつくったカクテルを飲み干すと、女はぽつりと慎介からの質問に答えた。

「そろそろ、名前くらい教えてください」

「……瑠璃子」

るりこ、と慎介は口の中で音にしてみる。

本名かどうかはわからない。

しかし、女の妖艶な雰囲気にピッタリな名前だと慎介は思った。

 

午前三時過ぎ。

薄暗い店内で、慎介は瑠璃子を抱いた。

誘惑してきたのも彼女なら、最初から最後までずっとペースを握っていたのも彼女の方だった。

行為が終わると、放心している慎介を置いて、瑠璃子はすぐに店から去っていった。

 

木内春彦の謎

慎介には、ひとつ疑問に思っていることがある。

『岸中玲二は、どうして木内春彦には何もしなかったのか?』

動機が亡き妻のための復讐だというのなら、木内にも何かしらの制裁を加えそうなものだ。

しかし、実際には「木内が岸中玲二に襲われた」という事実はない。

これはいったいどういうことなのか?

 

気になった慎介は、木内春彦という人物について調べてみることにした。

調査の結果は、次の通り。

『木内春彦は帝都建設の一社員であるにも関わらず、大金を湯水のように使っている』

一晩にぽんと何十万円も使う上客として、木内は夜の世界ではちょっとした有名人らしい。

それだけではない。

家も、車も、スーツも、すべて超高級なものばかり。

木内の暮らしぶりはまるで一流企業の社長のようだ。

……いったいその金はどこから出ているのか?

 

さらに調べてみると、なんと木内はまともに出勤すらしていないという。

彼はいったい何者なのか?

 

幽霊

岸中玲二に襲われた事件で知り合った小塚刑事が訪ねてきた。

岸中の自害という形で幕を閉じたはずの事件には、まだ不審な点が残っているという。

第一の謎は『鍵』

事件の三か月前から、岸中は自宅以外の場所で生活していた。

その場所の鍵も所持していた。

しかし、そこがどこなのかさっぱりわからない。

 

第二の謎は『目撃情報』

岸中の遺体が発見された日の前夜、岸中の部屋から女が出てきたという目撃情報がある。

女は岸中の遺体を目の前にしながら通報しなかった、ということだ。

その女はいったい何者なのか?

岸中の隣に住んでいる目撃者の高校生は、酷く怯えながら次のように証言した。

「岸中さんの……奥さんだよ。俺、あの人のこと、よく知ってるんだ」

まさか……。

岸中の部屋から出てきた女の正体は、美菜絵の幽霊だとでもいうのか?

 

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瑠璃子から電話で呼び出される。

指定された場所は超高層マンション『ユニバーサルタワー』の4015室。

チャイムを押しても、返答はなし。

ドアは開いている。

恐る恐る足を踏み入れると、瑠璃子はクィーンサイズのベッドに横たわって慎介を待ち構えていた。

 

妖しい誘惑に操られるようにして、慎介は瑠璃子を抱く。

じっと瑠璃子の顔を見つめているうちに、慎介の頭の中に閃きが走った。

(俺は、この女に会ったことがある)

『茗荷』で出会う以前から瑠璃子のことを知っている、と慎介は思った。

しかし、いつでどこで出会っていたのか、さっぱり思い出せない。

やがて行為が激しくなるにつれて、慎介はちらりと浮かんだ疑問を忘れていった。

 

行為が終わると、寝室からリビングへと移動した。

瑠璃子がつくったカクテルを一息で飲み干す。

そして考える。

超高級な部屋に住んでいる彼女はいったい何者なのか?

そもそも、どうして『茗荷』に来たのか?

自分とのことは彼女にとって遊びなのだろうか?

慎介はいくつかの疑問をぶつけてみたが、いつものように瑠璃子は妖しく微笑むだけ。

慎介を夢見心地にさせるフルートの音色のような声で、彼女は言った。

「あなたはずっとここで、あたしと一緒にいるの」

急激な睡魔が慎介を襲う。

……カクテルに、何か薬が入っていた?

「永遠に、一緒よ」

瑠璃子の声を聞きながら、意識が遠のいていく。

その消えゆく意識の最後の一瞬で、慎介はようやく思い出した。

会ったことがあるのではない。

見たことがあったのだ。

岸中玲二が亡き妻に似せてつくった精巧なマネキン。

瑠璃子の顔は、その人形の顔そのものだ。

全身に鳥肌が立つと同時に、慎介は意識を失った。

 

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監禁

目が覚めると、クィーンサイズのベッドの上だった。

足には手錠がはめられていて、慎介の足首は鎖で部屋の壁とつながれていた。

鎖は長く、風呂やリビングまで歩いていくことはできる。

しかし、玄関や窓には手が届かない。

計算されつくした鎖の長さから連想したのは『監禁』の二文字だった。

瑠璃子の姿はない。

所持品は取り上げられていて、外部に連絡することは不可能。

 

やがて玄関から物音が聞こえてきた。

瑠璃子が帰ってきたのだ。

「あら、起きていたのね」

いったいどういうつもりだ!?

手錠を外せ!

目的はなんだ!?

言うべき言葉は山ほどあるのに、気がつくと慎介は瑠璃子を抱いていた。

慎介の意思ではない。

瑠璃子の魔性が……不思議と逆らうことのできない『目』が、慎介を操っていた。

行為の最中、瑠璃子の顔を見てゾッとする。

何の感情もない顔。

それは、まるでマネキンのようで……。

青ざめた慎介の顔を見て、瑠璃子は言った。

「そう。あたしが誰か、思い出したのね」

瑠璃子の正体は……岸中美菜絵?

いや、そんなはずはない。

美菜絵はもうこの世にいない。

「お前は……誰だ?」

「思い出したんでしょう? あたしはあなたのよく知っている人間よ」

「そんな馬鹿なこと、あるはずがない」

「肉体は滅びても、この世に残る方法はあるのよ」

慎介の疑問には何一つ答えないまま、瑠璃子は再び外へと出ていった。

 

模様替えと失踪の理由

4015室からの脱出を試みるうちに、慎介はあることを思い出した。

自宅の洗面台の鏡の裏側。

そこに慎介は『何か』を隠していた。

……突然の模様替えに、なぜか部屋に落ちていた新品のドライバー。

慎介の記憶喪失を知った成美は、その『何か』を探し回ったに違いない。

そうして『何か』を見つけたからこそ、成美は失踪した。

そう考えればつじつまは合う。

 

……『何か』とはいったいなんだ?

それを確かめるためにも、早く脱出しなければならない。

慎介は隠されていた所持品を見つけ出し、携帯電話で救援を求めた。

電話の相手は小塚刑事。

岸中が持っていた『鍵』は、きっとこの4015室の鍵だ……!

 

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人形

やはり岸中の持っていた『鍵』は4015室のものだった。

小塚刑事が持ってきた金鋸で、手錠を切断する。

「脱出する前に、もう少し調べてみよう」

小塚刑事の指示でロックされた部屋の扉を破ると、そこにはたくさんのマネキンが並んでいた。

……どうやら、この部屋は岸中の作業場だったらしい。

ずらりと並んだマネキンの顔は、どれも岸中美菜絵に……瑠璃子にそっくりだった。

 

小塚がPCを操作している間、慎介は岸中のノートを読むことにした。

そこにびっしりと書きつけられていたのは『岸中美菜絵をよみがえらせる方法』

岸中は亡き妻にそっくりな人形をつくろうとしていた。

ただのマネキンではない。

岸中が目指していたのは『本物の人間と見分けがつかないほど精巧な人形』だ。

あらゆる最新技術を研究し、岸中は『自分で考えて行動する人形』をつくろうとしていた。

外見だけではなく、美菜絵の心をもよみがえらせようとしていた。

人形の名前は《MINAー1》

 

PCの中には《MINAー1》の写真が保存されていた。

「おい……これが人形か」

小塚が驚きの声をあげる。

他の試作品とは次元の違う精巧さ。

どう見ても人間にしか見えない。

瑠璃子だ、と慎介はつぶやいた。

 

瑠璃子の正体は人形だった……?

いや、そんなはずはない。

瑠璃子は間違いなく人間だった。

……いったい、何がどうなっている?

 

『何か』の正体

監禁から脱出し、自宅へと思った慎介は、さっそく洗面台の鏡をドライバーで外した。

鏡の裏にあったのは大きな穴。

その空洞を見た瞬間、慎介は思い出した。

(そうだ。ここに金を隠したんだった)

慎介が隠していた三千万円は、今はもうない。

成美が持ち去ったと考えて間違いないだろう。

 

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木内春彦との対峙

4015室の所有者は帝都建設の上原社長だった。

帝都建設といえば、木内春彦が勤めている会社だ。

木内について改めて嗅ぎまわった結果、慎介はひとつの仮説を導き出した。

 

「MINAー1とかいうのは人形なんかじゃない。あんたの婚約者の上原ミドリさんだ。彼女は瑠璃子と名乗っている」

慎介が仮説を突きつけると、木内の顔色がさっと曇った。

慎介と木内が対峙しているのは、例のユニバーサルタワーの入口。

木内を尾行していて、たどり着いた場所だ。

言い逃れはできない。

 

木内春彦にはかつて婚約者がいた。

名前は上原ミドリ。帝都建設の社長令嬢だ。

2人は仲睦まじく、新居まで決めていたが、一年半前に婚約は解消されている。

……原因はもちろん、あの事故だ。

そこで何があったのかはわからない。

確かなことは、上原ミドリが岸中美菜絵そっくりになっていて、瑠璃子と名乗っているということだ。

外見については整形手術によるものだと納得できる。よく見ればかつての上原ミドリの面影がある。

わからないのは、理由だ。

上原ミドリは何が目的で交通事故の被害者になりきっているというのか?

 

上原ミドリについて、木内春彦はなにも語らなかった。

その代わり、木内は慎介を4015室に案内した。

「なっ…!」

そこには、何もなかった。

岸中の仕事場はすっかり片付けられていて、マネキンひとつ残っていない。

証拠隠滅、という言葉が慎介の頭に浮かんだ。

……ならば、小塚刑事は?

あのとき、慎介は調査を続ける小塚刑事を残して帰路についた。

それからというもの、小塚刑事とは一切連絡がつかない。

そしてもちろん、4015室には小塚刑事の姿はない。

もしかして、小塚刑事はもう……。

 

「ここへは二度と来るな」

木内の重々しい言葉に、慎介は何も言い返せなかった。

 

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記憶

慎介は交通事故を起こすまで『シリウス』という店で働いていた。

オーナーの江島光一は親切な男で、記憶喪失の慎介を何かと気にしてくれている。

「事故のことなんて忘れていたほうがいい。そもそも慎介が悪かったわけじゃないんだ。運が悪かっただけさ」

江島の温かい言葉に、慎介は心から感謝していた。

……何も知らずに。

 

それは本当に偶然、見つけたものだった。

成美の付け爪の欠片。

それが、江島の車の中に落ちていた。

成美と江島は慎介を介して顔見知りだが、決して車に同乗するような間柄ではない。

……いったい、なぜ?

そこまで考えたとき、慎介の頭の中で何かが弾けた。

忘れていた記憶が、次々によみがえってくる。

慎介の背中に、汗がじわりとにじみでた。

「江島さん、成美をどうしたんですか?」

「……何のことだ?」

なおもしらばっくれようとする江島に、成美の付け爪を突きつけて問い詰める。

「成美は取引を持ちかけたんじゃないですか? 例の事故に関しての、口止め料だ」

慎介がそういうと、江島の顔色が一変した。

「……そうか、事故のことを思い出したのか」

「たった今、何もかも」

慎介は一年半前の事故のこと、そして成美のことに関して江島に口止め料を要求した。

その額、五千万円。

少し考えた後、江島は要求を受け入れた。

 

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事故の真相

一年半前の事故の日、車を運転していたのは江島だった。

江島は過去にも人身事故を起こしていたため、捕まれば実刑は免れない。

そこで江島は慎介に取引を持ちかけた。

お前が運転していたことにしてくれるのなら金を払う、と。

こうして慎介は江島の身代わりになり、三千万円を手に入れた。

 

慎介は三千万円の存在を成美に伝えていたが、隠し場所は秘密にしていた。

慎介が記憶喪失になったと知った成美は、部屋中をひっくり返して三千万円を見つけると、江島のもとに向かった。

欲を出して、口止め料の追加を要求したのだ。

……それから成美の身に何が起こったのかは、想像に難くない。

厳しい業界で生き抜いてきた江島が、成美の脅迫に屈するはずがない。

おそらく、成美はもう……。

馬鹿なやつだ、と慎介はつぶやいた。

 

来訪

午前四時、チャイムが鳴った。

瑠璃子だ。

あれほど夢中になっていたのに、今はただただ恐ろしい。

慎介が部屋の中で凍りついていると、かちゃり、と音がして玄関の鍵が開いた。

扉を開けて入ってくる瑠璃子の手には、合鍵が握られていた。

 

瑠璃子の『目』に射すくめられた慎介は、指一本動かすことができなかった。

まるで催眠術にかかったかのように。

瑠璃子は固まった慎介の服を脱がせると、身体の上にまたがり、ゆさゆさと動き始める。

快感と恐怖が慎介の中で入り乱れた。

「やめてほしい? なら、あたしを殺しなさい。あの時のように」

狂気に呑み込まれる寸前、慎介はなんとか瑠璃子から身を離し、一目散に逃げだした。

 

全力疾走で乱れた息を整えていると、木内から電話がかかってきた。

「彼女がどこにいるか知らないか?」

「ついさっき、俺の部屋に来た。今、逃げてきたところだ」

木内は少し沈黙した後、近くのファミレスで落ち合おうと提案してきた。

「事情を話してくれるわけかい」

「そのつもりだ」

電話を切ると、慎介は指定されたファミレスへと足を向けた。

 

もうひとつの事故の真相

いくら待っても、木内はファミレスに現れない。

あまりにも遅い、と思いかけて慎介は気づく。

(しまった!俺を家から遠ざけるための嘘か!)

自宅に戻ると、はたしてそこには木内春彦の姿があった。

 

ひとつだけ、慎介にはずっと疑問に思っていたことがあった。

『お互い、罪の意識は軽いだろうけど』

木内がかつて慎介にかけた言葉だ。

あの時は意味不明だったが、今なら理解できる。

「あんたも、身代わりだったんだな?」

そのとおりだよ、と木内は答えた。

 

交通事故の夜、赤いフェラーリを運転していたのは上原ミドリの方だった。

木内が身代わりになったのは、彼女が飲酒運転をしていたから。

2人の加害者は、どちらも偽物だったのだ。

 

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ダイイング・アイ

事故の後、上原ミドリに何が起こったのか?

木内は慎介に語り始めた。

 

そもそもの始まりは『目』だった。

運転席にいたミドリは、事故の瞬間、岸中美菜絵と真正面から目が合ってしまった。

想像してみてほしい。

倉庫を背にしていた美菜絵は、前方から突っ込んできた車のボンネットによって全身の骨と内臓を圧し潰された。

そのときの美菜絵の『目』には、憎悪、執念、恨み……恐ろしいほどの『力』が宿っていた。

ミドリはその『目』をまっすぐ見てしまったのだ。

「あの目はミドリのすべてを奪った。心を完全に壊したといってもいい。事故以来、ミドリは廃人同然になった。たぶんあの目が持つ憎悪だとか怒りの力に支配されてしまったんだろう」

医学の力ではミドリの心を癒すことはできなかった。

そこでミドリの父親(上原社長)は、美菜絵を供養させることで良心の呵責を緩和させようと考えた。

具体的には、ミドリを岸中家に行かせて、線香をあげさせた。

「で、その結果は?」

「想像以上だった、というべきかな」

岸中家を訪ねてからというもの、ミドリは以前のような快活さを取り戻した。

しかし、それは決して精神の回復によるものではなく、むしろ狂気の入り口だった。

 

それからというもの、ミドリは岸中と密に関係を持った。

療養所として父親から与えられたユニバーサルタワーに岸中の仕事場をつくり、積極的に美菜絵そっくりな人形の制作を後押しした。

しかし、『MINAー1』の制作はやがて息詰まる。

どれだけ研究しようと、人間に瓜二つの人形を制作することなど、個人の力では到底なしえないことだった。

そこで2人は、プロジェクトを大きく軌道修正する。

「つまり、彼女自身の変身だ」

メイクの仕方、体型の変化、味の好み……ミドリはどんどん美菜絵に近づいていった。

「でも、化粧やダイエット程度で、あれほどは似ないだろう」

「想像の通りだよ。亜ある日、彼女は行方不明になった。まったく連絡もなかった。そして何週間ぶりで戻ってきた彼女は、まったく別の顔を持っていた」

『MINAー1』の出来上がりか、と慎介は心の中で独り言をいった。

 

変身したミドリを一目見て、父親も木内も彼女のことを諦めた。

とはいえ、世間体というものがある。

狂気に落ちたミドリを放っておくわけにもいかない。

上原社長は木内に娘の監視役を命じた。

その日から、木内は毎日、ミドリを監視する生活を続けている。

……破格の報酬と引き換えに、変貌した元婚約者を見張る日々を。

 

「君は彼女の目を見て、何か感じることはないか」

木内の問いに、慎介は素直に答える。

「何も感じなかったことなど一度もないな。初めて会った時からだ。彼女の目を見ていると、心が吸い込まれそうになる」

「僕もそうだ。あの目には見覚えがある。岸中美菜絵の目だ」

「岸中美菜絵の魂が宿っているとでもいうのかい?」

「心霊現象めいたことをいう気はない。だけど、こういう言い方はした方がいいかもしれない。霊はとり憑いていないが、思いは乗り移っている」

「思い?」

「催眠術だ」

木内は言った。

「ミドリは一種の催眠術にかかっているのではないかと思う」

「催眠術って、誰にかけられたんだ」

質問をしながら、慎介はその答えを予想していた。

そして、木内はの答えは予想通りのものだった。

「もちろん、岸中美菜絵にかけられたんだよ。催眠術により、ミドリは自分のことを岸中美菜絵だと思い込むようになった。そう自己暗示をかけることで、心が救われたのかもしれない」

 

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疑問

ミドリと岸中の蜜月状態は、岸中が目を覚ましたことで終わりを迎える。

いくら美菜絵にそっくりでも、ミドリは美菜絵ではない。

岸中は最後に慎介に復讐し、自ら命を絶った。

……では、ミドリの目的は岸中が仕損じた復讐を果たすことだろうか?

そうじゃない、と慎介は心の中で否定する。

ミドリがその気なら、いくらでも慎介をしとめる機会はあった。

ミドリの目的はなんだ?

消えてしまった彼女は今、どこにいる?

 

襲撃

江島から約束の五千万円を受け取り、自宅へと戻る。

背後に気配を感じたときには、もう遅かった。

何者かに頭を殴られた衝撃で、意識が遠のいく……。

 

悪人

目を覚めすと、ガムテープで縛られ、床に転がされていた。

周囲を見渡すと、人影が目に入る。

江島だ。

江島は慎介の口に無理やりテキーラを流しこんでくる。

どんなにもがいても、縛られている慎介には何もできない。

「抵抗するから、かえって苦しくなるんだ。おとなしくしておいたほうがいい。どうせ君は死ぬんだからな」

江島の手には注射器が握られていた。

テキーラは、アルコール中毒を装うための偽装というわけだ。

「まったくわからんよ、君たちの考えることは。三千万円で、なぜ納得しておかないんだ。君は私の代わりに交通事故の罪を背負った。その報酬が三千万円だ。そこには脅迫も恐喝もない。ビスネスだ。そしてビジネスには信頼関係が必要だ。いったん三千万円で手を打っておきながら、なんだかんだと理由をつけては追加料金を要求する人間を相手に、信頼関係などは築けない。わかるかい?」

慎介はもがいた。だが酒が回っていて、もはや全身に力が入らなくなっていた。

そろそろかな、とつぶやいて江島が注射器を構える。

「暴れるなよ。大丈夫だ、さほど苦しくはない。夢見るようにあの世に行けるさ」

まさに江島が針を打ち込もうとしたその瞬間、慎介の視界の端で何かが動いた。

 

結末

押入れの戸が開き、中から黒い人影が這い出てくる。

「あなた……だったの?」

ゆっくりと立ち上がると、瑠璃子は言った。

「あなた、だったのね。あたしを殺したのは。自転車に乗っているあたしに、後ろからぶつかってきたのは、あなただったのね」

あまりにも異様な気配に、江島も後ずさる。

「許さない」

瑠璃子は窓を開けると、ベランダに出た。

そして、江島を睨む。魔性の『目』で。

「あたしを殺しなさい。そすいて、今度こそ忘れないで。あたしのことを、あたしの顔を、あたしの目を」

瑠璃子の目に操られるように、江島はふらふらとベランダに歩いていく。

瑠璃子の細い首に両手をかけると、江島は叫び声を上げて彼女を持ち上げ、手すりの向こう側へと落とした。

……何かの潰れるような鈍い音が下から聞こえた。

 

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エピローグ

一連の事件が、ようやく幕を閉じようとしている。

小塚刑事は遺体で発見された。

木内が自分が上原ミドリの後始末をしたと証言しているらしい。

実際の命令者は上原社長だろうから、木内はまた身代わりになろうというわけだ。

……成美の行方についてはいまだに何もわかっていない。

 

その日、慎介は警察で取り調べを受けていた。

江島が逮捕されたことで、交通事故の身代わりが明るみに出たのだ。

話が『催眠術』のあたりに差し掛かると、取調官は神妙な表情で言った。

「実は、江島が病院に運び込まれた」

「病院に? どこか身体を壊したんですか?」

「……逮捕された時、江島は放心状態だった。その状態から抜けると、今度はひどく怯えだした。女の目がいつも自分を見ているといってな」

「女の目?」

「殺した女の目らしい。まぶたを開けていると、いつもそれが見えるんだそうだ。怯えてばかりで、取り調べどころじゃなかった。まずは精神科医に見せたほうがいいんじゃないか、我々はそんなふうに話していた。ところが、一昨日の夜中……」

「何かあったんですか」

「奴はとうとう自分の目を潰したんだ。両目ともだ。発作的に指を無理やり突っ込んだ。看守が駆けつけたとき、奴は叫び声をあげながら、のたうちまわっていたそうだ」

ずきん、と心臓が大きく跳ねた。慎介は全身から冷や汗が出るのを感じた。

「それで……」

「両目とも、失明だそうだ」

全身から体温が奪われていくような感覚に慎介は襲われた。

手足が痺れ、身体が震えはじめる。

彼の脳裏に、岸中美菜絵を模したマネキンの顔が浮かんだ。

<ダイイング・アイ 完>

 

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まとめ

東野圭吾「ダイイング・アイ」がWOWOWドラマ化!

今回は原作小説のあらすじ・ネタバレをお届けしました!

小説にはよく帯なんかにキャッチコピーが乗せられていますが、単行本版「ダイイング・アイ」の場合はこんな売り文句でした。

『今度の東野圭吾は、悪いぞ』

読んでみると、いやまったくその通り!

東野圭吾作品の中でも、飛びぬけて『黒い』ストーリーでした。

ミステリーというよりはホラーやサスペンスに近かったように思います。

ぞくりと鳥肌が立つようなラストは、イヤミス好きとしてはたまりませんでした。

ドラマ版では三浦春馬さんがどんな慎介を見せてくれるのか、楽しみです。

 

《ネタバレ三行まとめ》

・失った記憶の真相。交通事故を起こしたのは本当は江島光一だった。慎介は三千万円で罪を肩代わりした。

・瑠璃子の正体は上原ミドリ。交通事故で赤いフェラーリを運転していたのは木内ではなく婚約者のミドリだった。

・瑠璃子の目的は岸中美菜絵として復讐を果たすこと。物語のラスト、真犯人である江島に『目の呪い』をかけることで目的は達成された。

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 - ドラマ, 小説

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