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小説「都庁爆破!」あらすじとネタバレ!結末は?

高嶋哲夫「都庁爆破!」がおもしろい!

  • 都庁爆破の犯人は?
  • その真の目的は?
  • さらにその黒幕は?

国際的な政治情勢を見事に取り入れたリアリティ溢れる物語に感服!

今回は小説「都庁爆破!」のあらすじネタバレをお届けします!

あらすじネタバレ

第一章 都庁爆破!

2001年12月25日。午前。

本郷は妻の麻由子、娘の朝美と一緒に都庁に来ていた。

朝美の目当ては45階の展望室。

妻子を展望室へと送り出し、本郷は来日中の友人・シャロンと下の階で再会していた。

そして、その事件は何の前触れもなく始まった。

『都庁爆破』

33階で大規模な爆発が発生。

崩壊や火事には至らなかったものの、都庁内の一万人を超える人々は大パニックに陥った。

誰もが頭の中に9.11の光景を思い浮かべる。

(まさか日本が…)

そう思う一方で、全員が「テロが起こったのだ」と直感した。

都知事、総理大臣、警察、消防…関係各所が一斉に動き始める。

その頃、展望室にいた麻由子と朝美は目出し帽を被り銃を装備した犯人グループの人質になっていた…。

 

主な登場人物

本郷裕二(36)

元陸上自衛隊特殊部隊一等陸尉。一週間前に退官したばかり。その理由とは…?

本郷麻由子(35)

お腹の中に第二子を妊娠中。

本郷朝美(12)

小学六年生。

エマール・アル・シャロン

元海兵隊。本郷の友人。

外見はアラブ系だがアメリカ人。現在はパーネル国務長官の側近。

今回の来日の目的は…?

岩淵光太郎

東京都知事。強気な姿勢で世間の支持を集めている。

大園信一郎

総理大臣。慎重派。

丸山尚人

警視庁公安部の対テロ専門家。本郷とは高校時代の同級生。

海老原実

消防隊特別救助隊の隊員。

エム

テロリスト集団のリーダー格。正体や目的は不明。

 


 

第二章 退避

すべてにおいて避難が優先された。

本郷は展望室へ向かおうとしたものの、人の波に押し返されて仕方なく外へ。

爆発による直接の人的被害は出なかったものの、落下したエレベーターの中で押しつぶされていた者や避難中に怪我を負ったものなど、二次的な犠牲者は数知れず。

岩淵は迅速に行動し、まずは警視総監と東京消防庁長官を説得。今回の事件の指揮権を獲得した(※)

※政府ではなく都が対応を主導できるようにした。

岩淵は都議会議事堂に緊急指令室(対応本部)を設置。

果たして犯人の正体は?その目的は…?

 

第三章 要求

岩淵は大園を通じて犯人たちの要求を知る。

1.インド洋派遣の海上自衛隊の艦船の即時帰国

2.アフガニスタン、パキスタン周辺地域に派遣している陸上自衛隊、航空自衛隊をすべて帰国させること

3.アフガニスタン、パキスタン両国に二百億ドルずつの無償援助を行うこと

4.今後一年間で三十万人の難民を受け入れること

5.フィリピンに対する経済援助の即時中止

政府としてはどれも飲めない要求ばかりだ。

要求の内容だけで判断するなら、やはり犯人はイスラム過激派のように思われるが…。

大園は「政府としては要求を拒否する」と岩淵に宣言。

そして同時に「都庁7階のどこかの会議室に爆弾が設置されている」と伝えた。

 

犯人グループはマスコミにも声明を発表。

これにより混乱の収拾はいよいよ困難になった。

とりあえず今できることといえば、要求を飲んだふりをして時間を稼ぐことくらいか…。

 

爆発から3時間。

岩淵の指示により、SATと爆発物処理班が都庁7階へと向かうことに。

海老原は都庁内の防災設備に詳しい人間として同行。作戦チームを先導した。

7階までに敵の影はなく、爆弾は無事に解除された。

しかし、それは犯人たちの想定内。

爆弾の解除をモニターしていたエムは心の中でつぶやいた。

「さあ、次は戦闘の始まりだ──」

 


 

午後三時。

あと九時間で犯人たちは要求が受け入れられなかったことを知る。

犯人たちの声明によれば、都庁内部には他にも爆弾が仕掛けられているらしい。

展望室に閉じ込められた数十人の人質。別の階に閉じ込められ、同じく人質となっている職員たち。

…時間がない。なんとかして彼らを救出しなくては!

「突入する」

岩淵はすべての責任を負うと宣言し、SATによる突入を決定。

どうやら爆破犯は20名以上。全員が訓練を受けたプロ。

それでも、今やつらを食い止められなければ…!

 

午後四時。SATが都庁内に突入。

激しい銃撃戦が始まった。

一瞬で6,7名のSAT隊員が銃弾に倒れる。

どう見ても形勢は不利だ。

SAT隊長の森脇は岩淵に状況を報告する。

「待ち伏せにあいました。敵は我々の動きを把握しています。武器も自動小銃を使用。数は分かりませんが、20名以上はいます」

「すぐに退却しろ」

「了解」

森脇は生き残った隊員と幾人かの負傷者を連れてエレベーターまで撤退。

地上に降りようとした、その時だった。

エレベーター内に、何かが投げ込まれた。

「手榴弾だ!」

無情にも、エレベーターはもう下り始めている。

「許してくれ…」

低い声でつぶやくと、森脇は無線で岩淵に最後の報告をした。

「…我々は…全滅しました…」

21名の警察官が殉職。それが今回の作戦の結果だった。

 

その様子をモニターしていたエムは何者かにメールを送る。

『これから第二段階に入る』

エムは計画通り、100個余りのプラスチック爆弾を33階に設置し始めた…。

 

その頃、本郷は立ち入り禁止ラインギリギリの場所から、都庁展望室の様子をうかがっていた。

その傍らにはシャロンが付き添っている。

ぽつりと、本郷は自衛隊を辞めた理由をシャロンに語り始めた。

今年の初め、任務中に海上自衛隊の隊員が殉職した。

彼は本郷の勧めで自衛隊に入った若者で、高校の後輩だった。

まで23歳で、結婚したばかりだった。

本郷は家族のためにも事を公にするよう訴えたが、認められなかった。

「私は日本が好きだ。この国を護るために自衛官になった。しかし、国は私たちを護ってくれないことがわかった。そればかりか、存在すら否定しようとする。私は国に裏切られた」

「それで辞めたのか」

「抗議のつもりだった。国を護るものが、国から護られない…自衛隊とは…私自身とは何だろうと考えると虚しくなった」

国への失望。それが本郷が自衛隊を辞めた理由だった。

 


 

第四章 騒乱

岩淵は警察官21名の殉職を記者発表。テロリストとは断固戦うと宣言した。

一方、政府は屁理屈の議論を重ねるだけで、事実上何もしていないに等しい。

彼らは「このままではテロの影響で日本経済に深刻な影響が出てしまう」ということを憂いていた。

 

午後十時。

地下鉄で毒ガス騒ぎが発生。他にも同時多発的に不審事件が報告された。

結果から言えば、それらはただの悪戯だった。

ただ、そんな悪戯に右往左往してしまうほど、現在の日本は混乱状態にあるということだ。

毒ガス騒ぎで一度は犯人の要求を飲むことを覚悟した政府も、悪戯だったと知ると手のひらを返して拒否姿勢に逆戻り。

岩淵にとって厄介なのは、総理の指揮下にある自衛隊を動かせないことだ。

都庁に再突入したいところだが、人材がいない。

このまま第二の爆破を待つしかないのか…。

次の爆発まで、残り二時間。

 

第五章 新たなる爆発

午前零時。日付が変わった。

予告通り、都庁で新たな爆発が起こる。

都庁上階の2つに分かれた尖塔のうち、南塔が崩落。

人質のいる北棟は無事だが、都庁は激しく損壊してしまった。

 

犯人から新たな声明が届く。

「次の爆発は八時間後の午前八時。人質のいる展望室を爆破する。その次は建物全体だ」

犯人からの要求は依然変わらず。

今度はさすがの政府も折れざるを得ないのではないだろうか…。

 


 

第六章 疑惑

シャロンは本郷に来日の目的を告げる。

「私はエムという男を追っている。本名はアリエル・デービッドソン(53)。元グリーンベレーで、現在はCIAのエージェントだ」

シャロンの話は本郷にとって驚きの連続だった。

都庁爆破の犯人はエム。エムは本国を裏切り、日本で独自にテロを起こしたというのだ。

さらに、シャロンによれば、今回のテロ騒ぎによる為替と株価の値動きを知っていたかのように、莫大な金額を稼いでいる連中がいるのだという(※)

※テロ直前に大量に円を空売り。その後、テロにより円安が進んだところで買い戻し。

つまり、今回のテロはイスラム過激派によるものではない。

そして、エムの背後にはさらに黒幕的な組織がいるはずだ。

 

本郷には、シャロンがまだ何かを隠しているように思われた…。

 


 

第七章 真実

岩淵に直接犯人たちからのコンタクトがあった。

岩淵は独断で犯人の要求を飲み、とある男を刑務所から釈放。丸山を警護につけて羽田空港へと送った。

男の名前は溝原祥景。かつて地下鉄サリン事件で世を騒がせた宗教団体「ラドム」の教祖だ。

溝原が空港へと送られていることを確認し、エムは再びメールを送信する。

『作戦は最終段階に入った』

 

大園は犯人と交渉し、十億ドルで事態の解決を試みる。

犯人グループはその条件を飲み、都庁にヘリを寄こすよう要求。

都庁から脱出した後、人質を解放すると言ってきた。

 

一方、本郷とシャロン。

朝美が隠し撮りした犯人の一人の画像。

丸山に解析を頼んでいたが、その正体がついに発覚した。

男の名は中道寺修(31)

ラドム信者だ。

そして、もう一つ。

朝美が犯人の目を盗んで送ってきたメールに書かれていた電話番号。

それが南青山にあるラドム関連施設の番号だと判明した。

さっそく本郷とシャロンはそのラドムの「道場」に潜入。

支部長だという男を脅して情報を入手することに成功した。

曰く、ラドムはあれからもサリンの密造を続けてきた。

国会、首相官邸、警視庁…永田町周辺にばら撒く予定だったが、先日、輸送途中で車が交通事故に遭い、計画は頓挫。

その時に亡くなった運転手の名前は中道寺明夫。修の弟だ。

細い糸がつながっていく。

今回の都庁爆破には、ラドムが関わっている…!

本郷はこの事実を丸山に連絡すると、自らはシャロンとともに都庁へと向かった。

目的はもちろん、麻由子と朝美の救出…!

 


 

都庁へ行く前に、シャロンは車を隠れ家へと走らせた。

武器弾薬。その他、必要な装備がそこには揃っている。

そして、シャロンはさらなる真実について語り出した。

『2つのアメリカ』

アメリカという大国は必ずしも一枚岩ではない。

政府はパーネル国務長官と支持する穏健派と、ラムゼイ国防長官を支持する強硬派に二分されている(※)

※ブック大統領は穏健派

強硬派はテロ支援国を滅ぼしたいと思っているが、世論は穏健派に流れており、具体的な行動にはなかなか移れない。

そこで、彼らはこう考えた。

『ならば、テロが世界にとってさらなる脅威となればよい』と。

強硬派は利益が一致するCIAと手を組み、エムを日本に送り込んだ。

彼らにとって、日本は生贄。世界に与える衝撃は大きく、影響は少ない。

また、うまくすれば日本の軍事力も使えるかもしれない。

当初の計画では、エムは総理である大園を暗殺する予定だったという。

「ところが、エムが消息を絶った」

シャロンはパーネル国務長官の命令でエムの行方を追っていた。もちろん凶行を阻止するためだ。

ところが、シャロンは爆破前日になって作戦中止を通達されている。

なぜか?

思ったよりも世界は、アメリカは平和を望んでいた。

ところが、世界中で武力を行使しているアメリカは今さら後には引けない。

だから、パーネル国務長官も強硬派の作戦に賛同せざるを得なかった。

つまり、これはアメリカ政府によるテロだと言える。

「私は…命令に背いてでもエムを阻止するつもりだった」

シャロンは苦しげにそう言った。

 

結論から言えば、今回の都庁爆破はエムがラドムと手を組んで起こしたものだったのだ。

不明点は3つ。

・なぜエムは消息を絶ったのか?

・なぜ総理を亡き者にするのではなく、都庁爆破を選んだのか?

・エムの背後にいる組織とは?

 

その時、シャロンの元に新たな情報が届いた。

『趙健行』

チャイニーズマフィアともつながりのある、香港の大物外為ブローカー。

趙は今回の騒動で数兆円の金を稼いでいた。

ということは、エムの背後にいるのは中国人か…?

銃火器その他もろもろの装備を整え、本郷とシャロンは改めて都庁へと向かった。

 


 

到着。

都庁に乗り込む寸前、本郷に電話がかかってきた。

相手は都知事の岩淵だ。

「私は君たちに一千万都民の運命がかかっていると思っている」

「私は妻子を救いたいだけです」

「そうだったな。全力を尽くしてくれ。…君の妻子のために」

岩淵は丸山を通じて本郷のことと、ラドムの計画を把握していた。

岩淵から後押しされたことで、2人の身分は知事公認の救出部隊となる。

岩淵の指示で派遣された海老原の案内で、2人は都庁内へと突入していく。

 

午前五時。

犯人グループは午前七時に到着するヘリで羽田空港に向かおうとしている。

そこで溝原を回収し、逃亡する算段だ。

犯人グループは人質の中からランダムに羽田までの随行者(人質)を選出。

麻由子と朝美も、その中の一人に選ばれてしまった…。

 


 

8.反撃

都民の命運は本郷たち3人に託された。

大園も観念し、自衛隊を動かす許可を出している。

いよいよ、最終決戦だ。

 

本郷たちは都庁北棟を上っていく。34階で銃撃戦がスタート。

敵を倒しながら、どんどん進んでいく。

目指すは屋上。

あと数分で犯人たちが脱出するためのヘリが届いてしまう!

 

そして、本郷らは屋上へと辿りつく。

すでに何機かのヘリは犯人と人質を連れて空へと飛び立ってしまっていたが、屋上にはまだ麻由子やエムの姿があった。

本郷が麻由子に駆け寄ろうとした、その時…

上空のヘリが突如爆発した。

自衛隊による狙撃?いや、どうやら機内に爆発物が積まれていたらしい。

あれでは人質を含めて生存者はいないだろう。

いったい誰がこんなことを…。

混乱の隙を突いて、エムは階下へと撤退。

麻由子の救出には成功したものの、本郷の顔には焦りの表情が浮かんでいた。

展望室に隠れていた朝美からの連絡により、エムの真の目的がわかったからだ。

「奴ら、初めからヘリで逃げるつもりはなかった。政府との取引なんて守る気はなかったんだ。時間がない。犯人たちは毒ガスを流すつもりだ

窓ガラスが割れた都庁の空調設備を使ってサリンを流す。

それがエムの最終目的だった。都庁を崩壊させない爆発の仕方も計算通り。

今や都庁は半径数キロ圏内に毒ガスを流す噴霧器と化している。

計画を阻止するためには空調設備を押さえるしかない。

本郷とシャロンは急いで機械室へと向かった。

 

一方、閣僚が集う会議の場では、財務大臣の海野が今回の事件の裏について憶測を語っていた。

中国では密かに不良債権問題が深刻化している。

このことが国民に露見すれば、空前の騒動が起こってしまうだろう。

中国は何とか早急に5千億ドル用意する必要がある…そう、手段を問わず。

また、中国では次期国家首席を巡る争いも進行中だ。

その候補の一人である林隋鵬は中国経済を立て直した立役者として名が知れており、不良債権問題が公になることだけはどうしても避けたいはずだ。

「この林隋鵬と趙健行が組んだらどないだす。表面に出とるのは中華系金融ブローカーだが、背後に中国の国有商業銀行があるとしたら…」

大園はじっとりと汗をかきながら尋ねる。

「私はどうすればいい」

「証拠を集めるのは大変でしょうが、相手に匂わせることはできますぞ。今後は中国にも強気で対抗できますな。アメリカにもやましいことがありそうですから、沖縄の米軍基地の縮小なんぞもちょろいちょろい。国連の常任理事国入りも問題ない、と。他になんぞ望むことはありますかな」

海野は温和な笑みを浮かべて、大園を見つめている。

「今回のテロは多くの犠牲者を出した。今後もどうなるかわかりません。起こってしまったものは、どうしようもおません。あんたがやるべきことは、この先の日本の姿を明確にして国と国民を導くことです。いまの日本の政治には『まやかし』が多すぎる。私利私欲の塊のエセ政治家が多すぎるんですな。この円安を利用して、一気にあんたのやりたいことをやることや」

 

場面は再び都庁内。

本郷、シャロン、海老原は敵が待ち構えている機械室へと突入!

激しい銃撃戦の末、空調を切ることに成功した。

これで毒ガスが流されることはない。

だが、その代償としてシャロンが胸と腹に銃弾を受けてしまった。

「早く行け。朝美ちゃんが待ってる」

本郷はシャロンの身体を横たえると、朝美が待つ展望室へと急いだ。

 


 

展望室に到着。

無事に朝美を見つけた、その時だった。

「エム…」

背後から現れたエムが、朝美に銃を突き付けている。

朝美を人質にとられてしまった以上、成す術はない。

本郷は武器を手放した。

解放され駆け寄ってきた朝美を抱きしめる。

もちろんエムの銃口は2人に突き付けられたままだ。

「ヘリを爆破したのはお前だろう。最初からヘリは都心に落下させるつもりだった。都庁爆破の犯人が全滅したと思わせるために」

エムは笑みを浮かべている。

「おまえはアメリカもラドムも裏切った。人質を解放し、サリンを流す。サリンは都庁内の人質の息の根を止め、都内に広がる。混乱は計り知れない。おまえはその混乱に紛れて逃げるつもりだった」

エムはラドムを利用し、使い捨てにしたのだ。

 

突然、エムの表情が変わった。

2人に向けられていた銃口の位置が少しずつ変わっていく。

本郷がゆっくりと背後を見ると、シャロンが銃を構えて立っていた。

「シャロン、おまえは…」

2発の銃声がほぼ同時に響いた。

シャロンの銃弾はエムの胸へ。

そして、エムの銃弾はシャロンの胸へ。

相討ち…。

本郷は崩れ落ちるシャロンの身体を抱きとめ、ゆっくりと床に横たえた。

胸からは血の染みが広がっている。

「今度こそ、本当にダメだな。しかし、後悔はしていない」

「ひげのおじちゃん…」

シャロンによく懐いていた朝美が細い声で呼びかける。

シャロンの顔に笑みが浮かんだ。瞳の中に朝美の顔が映っている。

その目蓋が静かに閉じた。

 


 

咳き込む音に、本郷は振り向く。

どうやらエムは肺を撃ち抜かれたらしい。もう長くはないはずだ。

エムの側へ行くと、本郷は尋ねた。

「なぜこんなことをした」

「本郷、おまえは…信じるものに裏切られたことはあるか」

虫の息でエムは語る。国への、政府への憎悪を。

何度も何度も、勝てるはずの作戦にストップがかけられた。

助かったはずの仲間が次々と倒れていった。

政治家の都合とやらのせいで。

仲間の散り様は公にはされない。

「俺たちは使い捨てのコマに過ぎないことがわかった。今回もそうだ。テロを命令しておきながら、状況が変われば暗殺者を送ってくる。政治家の都合で踊らされるのがイヤになった。自分の意志で自分の戦争をやりたかった。それに…俺も疲れたんだ」

復讐。そして諦念。エムは最後の足掻きとして今回のテロを主導したのだ。

「お前にはわからない世界だ」

時刻はちょうど午前八時。

エムはエアコンの送風口から毒ガスが流れ出る様子を思い描きながら、息を引き取った。

「すべてが終わるのは、これから、だ…」

もちろん、毒ガスがばら撒かれることはなかった。

 

本郷、麻由子、朝美。家族三人が無事に再会する。

エムは倒れ、ラドム信者たちの計画も潰えた。

都庁爆破から約一日。

事件は完全に終わりを迎えたのだ。

いつの間にか、雪が舞っていた。

 


 

エピローグ

あの事件から一年。

テログループとその関係者は丸山の指揮により続々と逮捕された。

都庁北棟はもうすぐ完全に修復され、再び市民に開放される予定。

崩落した南棟も半年後には修復されるとのことだ。

 

麻由子のお腹の中にいた子どもは無事に生まれた。

次女の名前は絵馬。

「エマール・アル・シャロン」の名にちなんで命名された。

 

政財界に目を移すと、岩淵や大園は変わらず健在。

一時落ち込んだ日本経済も順調に回復しているらしい。

 

あれから本郷は自衛隊に復帰。

新設された「国土安全対策室」の室長に任命された。

 

今でも本郷はエムの言葉を思い出す。

「国に裏切られたことへの復讐」

考えてみれば、エムはもう一人の本郷だったのかもしれない。

エムが言ったように、人間は変われないのかもしれない。

未来がどうなっていくかはわからない。

それでも、本郷はゆっくりと歩いていく。

愛する家族とともに。

<都庁爆破!・完>

 


 

まとめ

今回は高嶋哲夫「都庁爆破!」のあらすじネタバレをお届けしました。

結末を迎えて、今一度整理してみると…

・「イスラム過激派によるテロ」はフェイク。実際はアメリカ政府によって送り込まれたエムによるテロだった。

・エムは命令に背き、独自に都庁爆破を計画。宗教団体「ラドム」を利用し、最終的にはサリンを都内に流布するつもりだった(おそらく背後には中国の次期国家首席候補や金融ブローカーがいた)

・エムの犯行動機はアメリカ上層部への復讐。

という内容でした。

小説を読んでいてつくづく感心したのは、描写に宿る「現実感」

細部まで詳細に描かれていて「これは本当に起こったことなのでは?」と思わせるほどリアリティに溢れています。

そのため、エンタメとして面白いのはもちろん、「都庁爆破!」はいろいろと考えさせられる作品だな、と思いました。



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