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小説『夏への扉』よくわかるあらすじ!結末までネタバレ解説

SF小説の名作『夏への扉』を読みました。

ざっくりとしたジャンルはタイムトラベルものです。

1970年から2000年に行くお話なのですが、作中の2000年は現代(2020年)よりずっと科学が進歩していて、ふつうに重力制御とかできちゃってます。

そんななか、主人公のダンは未来でとある《謎》に直面するのですが、その裏に隠された真実はとっても意外なもので……!

というわけで、今回はロバート・A・ハインライン『夏への扉』結末までのあらすじをネタバレ紹介していきます!

あらすじ

ぼくの飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。

家にあるいくつものドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じているのだ。

1970年12月3日、かくいうぼくも、夏への扉を探していた。

最愛の恋人に裏切られ、生命から二番目に大切な発明までだましとられたぼくの心は、12月の空同様に凍てついていたのだ。

そんな時、「冷凍睡眠保険」のネオンサインにひきよせられて……。

永遠の名作。

(文庫裏表紙のあらすじより)

補足

『夏への扉』は1956年に発表された小説です。

主人公のダンは冷凍睡眠(コールドスリープ)によって1970年から2000年へと疑似的な時間旅行をすることになるのですが、出発地点である1970年でさえ執筆当時からすると《近未来》だったわけですね。

保険会社が扱う『冷凍睡眠保険』

ルンバ以上の高性能さを発揮する掃除ロボット。

『夏への扉』で描かれている1970年は、部分的にではありますが、今のわたしたちの時代から見ても技術的にかなり発展しています。

そして、そんな先進的な社会の申し子ともいえるのが主人公のダンです。

ダン・デイヴィスは天才技術者(発明家)であり、何を隠そう超高性能ルンバをはじめとした家庭用ロボットの生みの親なんですね。

ダンの会社は飛ぶ鳥を落とす勢いの黒字続き。

  • 信頼できる親友(共同経営者)
  • 美しい婚約者
  • 愛猫のピート

愛する人々に囲まれて、ダンはまさに順風満帆を絵に描いたような人生を送っていました。

そう、つい先日までは。

ネタバレ解説

ダンは生命保険会社と『冷凍睡眠保険』の契約を交わします。

なぜなら、ダンはこっぴどく挫折していて、なにもかもが嫌になってしまっていたからです。

無理もありません。

元親友のマイルズと元婚約者のベルに裏切られ、ダンは自分が設立した会社から追い出されてしまったのですから。

経理担当のベルが差し出す書類にすらすらサインしていたダンは、そのなかに自分を罠にはめるための契約書が含まれていたことに気づきませんでした。

気づいたときにはもう後の祭り。

会社はマイルズとベルに乗っ取られ、ダンは革新的な新製品の設計図まで取り上げられてしまっていました。

とはいえ、ダンは天才技術者です。

新しい発明品のアイデアは次から次へと湯水のように湧き出てきます。

だから、お金や功績にはそれほど固執しません。

ダンがなによりショックだったのは、だから、心から信頼していた二人に裏切られたことそのものでした。

卑劣な罠が成功するやいなや、ベルとマイルズは結婚したといいます。

献身的に尽くしてくれていたベルの慎ましやかな態度はすべて演技で、目的のために信頼(と株券)を勝ち取るための嘘っぱちだったのです!

その事実に、ダンは耐えられませんでした。

冷凍睡眠から目覚めたら、そこは紀元2000年。

残酷に老化したベルの前に若いままの姿で現れたら、彼女はいったいどんな顔をするだろう?

胸のすく想像をしながら、ダンは冷凍睡眠保険の契約書にサインしました。

もちろん、契約書には特別項目がついていて、愛猫のピートも一緒に冷凍睡眠できるようになっています。

ターニングポイント

冷凍睡眠の契約を交わしたその日のうちに、しかし、ダンは考えを改めます。

(このまま未来に行ったんじゃ、まるで尻尾を丸めて逃げるみたいじゃないか!)

傷だらけの勇敢な牡猫ピートを見習って、ダンは裏切り者と闘うことに。

宣戦布告するべく、その日の夜のうちにマイルズの家を訪ねました。

徹底抗戦を突きつけるダンに、さしものマイルズも顔を青ざめさせます。

どうやらきちんと情報を集めていけば、裏切者たちの悪事を証明することは不可能ではないようでした。

一矢報いて上機嫌になったダンは、さらに追撃します。

「どうだね、ベル? もしきみのそばにあるそのハイボールのグラスを持って帰って、指紋を検出させたらなにがわかるかな? 詐欺師か? 重婚者か? 甘い男たちから金を絞り取る結婚詐欺の常習犯か? マイルズは合法的な夫になれるのかな?」

それはまったくの思いつきでしたが、大当たりでした。

ダンがひょいととったグラスを、ベルは慌てて叩き落としたのです。

これではダンのはったりを認めているも同然ですね。

パニックになって怒鳴るマイルズに同情しつつ、ダンは勝ち誇ってその場をあとにしようとしました。

と、そのときです。

すっかり油断していたダンの背中に、注射針が刺されました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

ぼくは、膝の力が抜けて、身体ごと絨毯の上にくずおれてゆきながら、ベルがそんなことをしたということに、ただただ驚きだけを感じていた。

この期に及んですら、ぼくはまだベルを信用していたのだ。

一夜明けて

ベルが注射したのは『ゾンビー・ドラッグ』という強力な催眠自白剤でした。

ダンはたちまち体の自由を失い、ベルの忠実なしもべになってしまいます。

つまり、質問にはなんでも正直に答えてしまうし、命令されるとどんなことでも実行してしまうような、言いなりの操り人形になってしまったんですね。

結論からいえば、ダンは(キャンセルするつもりだった)冷凍睡眠に送り込まれてしまいます。

指一本さえ動かせないダンには、どうすることもできませんでした。

さて、この場面ではいくつもの《伏線》が張られています。

ラストにも関係する大事な部分なので、簡単にまとめておきますね。

書類偽造

ベルは契約書を偽造して、もともと契約していたのとは別の生命保険会社の冷凍睡眠にダンを送り込みました。

というのも、本来の生命保険会社では医師による健康診断が予定されていて、『ゾンビー・ドラッグ』のことがバレてしまいそうだったからです。

そのせいで、一緒に冷凍睡眠するはずだった愛猫のピートは1970年に置いていかれてしまいました。

勇敢な牡猫ピート

ピートはほとんど24時間ずっとダンと一緒にいます。

マイルズの家を訪ねたその夜も、ピートはダンのすぐ近くにいました。

『ゾンビー・ドラッグ』を注射されたダンは、どんなに呼びかけてもぐったりとして何も反応しません。

悲しみに暮れたのはすこしの間だけ。

次の瞬間、ピートは猛烈に怒り狂い、マイルズとベルに襲いかかりました。

そしてなんと、その爪や牙でマイルズとベルを傷だらけにしながら、追いかけ回したのです。

猫一匹にマイルズとベルは手も足も出ません。

ただ、かといってとどめを刺すような決定力もなく、最後には開いていた網戸からピートは外に飛び出していきました。

ダンの資産

ダンは万が一の事態を想定して、自分の資産(会社の持ち株)をリッキィに郵送していました。

リッキィはいつもピートを可愛がってくれる9歳の少女です。

その日はちょうどガールズスカウトのキャンプに行っていたので、キャンプ地宛てに資産を譲渡する旨の書類を送っていました。

消えた自動車

マイルズはダンが乗ってきた車を探しましたが、なぜか車は見つかりませんでした。

紀元2000年の世界

目覚めると、そこは30年後の世界。

  • 社会情勢
  • ファッション
  • 人々の暮らし

あらゆる点で世界は進歩していて、ダンは30年間という時間の重みを実感します。

なかでも特にダンの興味を引いたのは、ロボット技術の進化です。

「新聞を持ってきてくれ」と呼びかければ、そのとおりにしてくれる。

ダンがまさに開発しようとしていた自動ロボットは、すでに普及していて人々の生活の基盤になっていました。

ゼロからのリスタート

冷凍睡眠の本質は、実は資産運用だったりします。

眠っている間にも投資した資産が増え続け、目覚めたころには大金持ちになっているというのが保険会社の売り文句です。

ところが、ダンに待ち受けていたのは、資産を預けた保険会社が倒産したという信じられない悲報でした。

つまり、ダンは右も左もわからない新世界に、無一文で放り出されてしまったんですね。

頼みの綱の『発明家としてのアイデア』も、2000年では技術的に遅れてしまっていますし、なにより自由に開発に専念できる環境もありません。

ダンはまず仕事と住居を確保しなければなりませんでした。

倒産したのはベルが手配した方の保険会社です。

もともと契約していた保険会社のほうだったら大丈夫だったのに……。

謎の多い過去

ひとまず生活の基盤を整えたころ、ダンに一本の電話がかかってきました。

「まあ、ダニィ、あなたの声ね! うれしいわ!」

忘れるはずもありません。

シュルツ夫人と名乗る声の主は、他ならぬあのベルでした。

いけしゃあしゃあとダンに媚びてくるベル。

カッと怒りが湧くのをぐっとこらえて、ダンは冷静に会う約束を交わします。

というのも、ベルならリッキィの居場所を知っていると思ったからです。

30年前の復讐など、前向きなダンにとってはもうどうでもいいことでした。

※もちろん許すつもりもありませんが

結果からいえば、ダンがベルに復讐する必要はやはりありませんでした。

若く美しかったベルは、いまや見るに堪えないぶよぶよの下品な老女になっていたのです。

おそらく当時から年齢を誤魔化していたのでしょう。

ベルは60歳になろうかという外見をしていて、そのくせ肌も露な格好でダンを誘惑しようと……誘惑できると思っていました。

住んでいる家からも、貧乏な生活が垣間見えます。

あまりに哀れすぎるその姿に、ダンが復讐する余地などどこにも残っていませんでした。

飲んだくれのベルから引き出せた情報は3つ。

マイルズについて

マイルズはすでに故人になっていました。

ダンが冷凍睡眠させられてからわずか二年後に亡くなったのだといいます。

ダンはベルが毒でも盛ったのだろうと思いましたが、特に追及はしませんでした。

計画の失敗

マイルズとベルは、ダンの画期的な新製品(万能ロボット)を手土産に、財閥の傘下に入ろうと計画していました。

そのためにダンを会社から追い出し、新製品の試作品から設計ノートまですべての成果を取り上げたのです。

※ダンは吸収合併に反対していたため

しかし、結局、財閥との取引は失敗に終わります。

交渉材料である新製品の資料が、何者かによって盗まれてしまったのです。

なお、マイルズは新製品の一切を自宅のガレージに保管していました。

リッキィの居場所

(年が明けて)2001年の世界でダンが最も会いたい人間はリッキィです。

彼女はピートと仲良しでしたし、子どもながらにしっかり者で、おまけにダンに恋心を寄せていました。

いまは41歳になるはずですが、もし独身なら結婚したいとさえダンは考えていました。

ところが、ベルはリッキィが今どこでどうしているのか知らないといいます。

かろうじて引き出せたのは、リッキィは祖母に引き取られたという情報だけでした。

しかし、肝心の祖母の名前さえベルは記憶していませんでした。

情報を引き出し終えると、ダンは不快感もあらわにベルに別れを告げます。

「お別れだ、ベル」

※以下、小説より一部抜粋

…………

「まあ、そんな――悲しいわ、ダニィ。それじゃ、こんどはいつ会える? あした? あたしすごく忙しいんだけど、前の約束はぜんぶ取り消してもあなたのご都合に――」

「もう二度とお目にはかからないよ、ベル」

ぼくは言い捨てて外へ出た。

ふりかえって見ることもしなかった。

リッキィを追って

リッキィの消息は、意外なカタチで判明します。

新聞の(冷凍睡眠からの)蘇生者リストのなかに、リッキィの名前があったのです。

冷凍場(サンクチュアリ)に確認してみるとそれは確かにリッキィ本人で、祖母が亡くなった20年前から眠っていたのでした。

※つまり、リッキィは21歳。ちなみにダンは30歳。

ダンは大喜びしてリッキィを迎えに行きます。

しかし、時すでに遅く、リッキィはすでに冷凍場を去りどこかへと消えてしまっていました。

ダンは大好きな発明すら放り出し、ありとあらゆる手段を使ってリッキィの行方を追いました。

どうやらリッキィは何者とも知れない男と一緒らしく、目覚めたばかりの人間を狙う詐欺師に騙されているのかもしれないとダンは危ぶみます。

そうしてダンがたどりついたのは、ユマの郡役所。

すると、ああ、なんということでしょう!

一歩遅く、すでにリッキィはそこで男と結婚してしまっていました。

ダンは呆然とその場に立ちすくみ、そしてリッキィを追うことを諦めました。

時間旅行

そこからのダンの行動は迅速でした。

まず仕事を辞めて、ありったけの持ち金で『金(ゴールド)』を買い込むと、ベルトにして身につけました。

※2020年では金が値崩れしていて、とても安かった

そうして準備を終えると、ダンはトウィッチェル博士に会いに行きます。

目的は軍の機密に指定されている、博士の研究成果。

そう、《時間旅行》です。

わかりやすくいえば、博士はタイムマシンを完成させていたんですね。

ダンは心苦しく思いながらも博士を騙して、タイムマシンを起動させます。

目指す行き先は過去。

1970年へ!

博士の《時間旅行》は実のところ不確定要素が多すぎました。

というのも、時間跳躍の期間(長さ)こそ設定できるものの、未来に行くか過去に行くかは操作できなかったのです。

ダンは過去を目指していましたが、無事に到着できる確率はきっちり50%でした。

未来への礎(いしずえ)

ダンは幸運にも目指す1970年に到着します。

日付は1970年5月3日。

『ゾンビー・ドラッグ』を注射されて冷凍睡眠させられたのは12月のことだったので、それから約7か月前に当たります。

ダンは未来から持ち込んだ『金(ゴールド)』を現金に換えると、開発に専念できる環境を整えました。

そして、その日から寝食も忘れて新しいロボットの開発に取り組みました。

かつて自分がマイルズに奪われたものとは比較にならないくらい高性能な万能ロボット。

なんとか7か月でその基礎設計を終えると、ダンは信頼できる友人で弁護士でもあるジャンにその製品を預けます。

つまり、絶対にヒットする商品を持つ新しい会社の運営を、ジャンに任せたのです。

「ジャン、会社の名前はアラジン自動工業商会にしたいと思うんだ」

ダンのこの一言で、読者は「あっ!」と驚くことになります。

なぜなら、アラジン自動工業商会とは、2020年の未来で業界トップに君臨する巨大企業の名前だったからです。

そして、もうひとつ。

実は2020年の世界で、ダンはひとつの《謎》に直面していました。

というのも、世の中を支えるロボットたちについて調べてみると、その最初の特許は1970年で、しかもなぜかダンが特許申請者になっていたのです。

「新製品はマイルズに奪われたはずなのにどうして?」と2020年でダンは首をひねったものでしたが、なんのことはありません。

再び過去に戻ったダン本人がさらに進化したモデルで特許申請していたのです。

※つまり、未来の世界のロボットたちは、もとをただせばダンの発明品だったわけですね。

Re:ターニングポイント

運命の12月3日。

ダンは過去(体感では約1年前)の自分がマイルズの家に入っていく姿を見届けます。

といっても、(タイムパラドックスになるため)過去を変えることはできません。

つまり、過去の自分に「ベルに背を向けるな」と忠告したり、あるいはマイルズの家に乗り込んでいったり、なんてことはできないんですね。

だから、この夜『未来から戻ってきたダン』がするのは、過去と矛盾しない次のような行動です。

  1. 過去の自分が乗ってきた車を動かして、
  2. マイルズの家のガレージに忍び込み、
  3. 旧万能ロボットを解体して持ち出し、
  4. ピートが脱出するための網戸を開ける

飛び出してきたピートと合流すると、ダンは車に乗り込みました。

目指すはリッキィのいるガールズスカウトのキャンプです。

約束

再会を喜んだのも束の間、ダンが冷凍睡眠に行くと知るやいなや、リッキィはまるでそれが永遠の別れであるかのように悲しみました。

「それじゃ、もうおじさんとは会えないの?」

「会えるさ。ずいぶん長い先だけど、三十年たったら、必ずまた会える」

ダンは郵送していた封筒を開いて、資産をリッキィに譲るんだと説明します。

しかし、リッキィはというと、お金にはちっとも興味を示さず、いつまでもダンとの別れを悲しむばかり。

ダンはそんなリッキィに、優しく言い含めました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「リッキィは、お祖母さんのところへ行って、しばらく、いい子で学校に行ってお勉強するんだ。そのあいだに、このお金が、どんどんたまる。そしてきみが二十一になったとき、もしきみがまだぼくたち(ダンとピート)に会いたいと思ったら――

そのときは、きみも冷凍睡眠に来ればいいんだよ。

そのためのお金は、もう充分たまっている。そして、きみが目を覚ましたら、ぼくがちゃんとそこに待っていてあげる。ピートとぼくと、二人で待ってるよ。約束する」

(中略)

ぼくはリッキィに充分わかるようにいって聞かせたつもりだったが、彼女はただ黙って封筒を見つめるばかりで、それに手を触れようとしなかった。ぼくは不安になった。

そのとき、リッキィが口を開いた。

「ねえ、ダニィおじさん?」

「なんだね、リッキィ?」

リッキィは顔もあげずにいった。低い声で、ほとんど聞きとれないほどだった。

だが、ぼくには聞こえた。

「もしあたしがそうしたら――あたしをお嫁さんにしてくれる?

ぼくは力強く答えた。

「もちろんだとも、リッキィ。それこそ、ぼくの望みなんだ。だから、ぼくはこんな苦労をしてきたんだよ」

(中略)

「さあ、ぼくはもう行かなくちゃ。これ以上一分も余裕がないんだよ」

リッキィはピートを胸に抱きしめると、ぼくの手に渡した。

それからぼくを見つめたが、その目にはすでにいっぱいの涙があふれて、それが、鼻筋をつたい頬を流れて、はっきりと涙の跡がついた。

「さよなら、ダニィおじさん」

「さよならじゃないよ、リッキィ。また明日とおいい。ぼくたちはきみを待ってるからね」

再び冷凍睡眠

こうしてダンはもともと契約していた(未来で倒産しない)生命保険会社へ行き、ピートと一緒に30年間の眠りにつきます。

目覚める日付は2001年4月27日。

リッキィが目覚める直前に調整しておきました。

※リッキィが目覚めるのは2001年5月1日

結末

2001年に戻ると、ダンは約束通りリッキィを迎えに行きました。

そして、リッキィが目覚める瞬間に立ち会います。

「まあ、ダニィ……ピートもいるのね」

これにて物語は大団円。

ふたりはユマの郡役所で結婚を届け出て、そのままハネムーンへと旅立ちます。

そうそう、ダンは役所の帳簿に「ダニエル・ブーン・デイヴィス」と略さずにフルネームで書くことを忘れませんでした。

あとから来る『過去のダン』がすべての真相を察して1970年に戻るよう仕向けるために、それはとても重要なことだったのです。

ロボット業界最大手の「アラジン自動工業商会」は、事実上ダンの会社です。

それにリッキィが受け取ったダンの資産も、30年間で雪だるま式に増えています。

といっても、ダンは昔からそうだったように、大きな会社の経営なんかにはちっとも興味がありません。

ダンは小さな「デイヴィス技術会社」をつくると、そこで発明に専念することにしました。

  • 信頼できる親友
  • 美しい妻
  • 愛猫のピート

紆余曲折を経て、ダンは本物の幸せをつかみ取りました。

リッキィのおなかには、新しい命も宿っています。

妻と愛猫のために、今度はどんなものをつくろうか?

やや老いを感じさせるようになってきたピートを眺めながら、ダンは満ち足りた心持ちで思案するのでした。

<完>

タイトルの意味は?

ピートはたとえ雪の降る真冬であっても「ドアを開ければ夏かもしれないじゃないか」とでもいいたげに、ダンに扉を開けさせて確認します。

何度も、何度も、まるで開けるたびに結果が変わると信じているように。

転じて、小説『夏への扉』のタイトルは諦めずに挑戦する意志を意味しているように思われます。

また、過去と未来を行き来するというストーリーそのものも、突拍子のなさという意味では、まるで夏と冬を行き来するようなものだとも考えられそうです。

ちなみに、作中ではダンが冷凍睡眠によって再び未来に戻るシーン(終盤ですね)に、こんな一文もありました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

(冷凍睡眠中の夢のなかで)ぼくはがたがた震えながら、幾重にも曲がりくねった暗い廊下を、出くわす扉という扉ひとつ残らず開いてみては、この扉こそ、いやこのつぎのこそ夏への扉、リッキィの待っているあの暖かい扉だと、ひたすら思いつづけていた。

(中略)

ピートも、ぼくも、決して、次の扉こそ探し求める扉だという確信を、放擲(ほうてき)することはなかった。

タイムパラドックスについて

SFファンの読書家さんにおかれましては、タイムパラドックスの考察にいささか疑問を持たれたかもしれません。

「ダンが同じ時間に二人存在していたり、一人だけだったりするのはどういうことだ?」とか。

一応、小説のラストにそれらしい記述があるにはあったのですが、それにしてもきっちり論理的な説明をしているわけではなく、「ダンがあいまいに推測している」くらいの考察です。

かくいうわたしも頭が混乱しそうだったので、タイムパラドックスの考察については早々に放り投げました。

「あくまでメインは物語であって、タイムパラドックスについては深く考えてないよ」というスタンスの作品なのだと思います。

※そしてもちろん、それでなんの問題もなくおもしろい!

まとめと感想

今回はSF小説の名作『夏への扉』のネタバレ解説をお届けしました!

古典のSFながら古めかしさや堅苦しさはあまりなく、すらすらと読める(そしてページをめくる手が止まらない!)小説でした。

ストーリーとしてはデュマの『モンテ・クリスト伯』にも似ていて、老若男女問わず楽しめる物語だと思います。

猫のピートの可愛さ。

逆境から這い上がるダンの行動力。

そして、過去と未来を往復することでようやくわかる真実!

※実はちょっと叙述トリックも使われていました。

発表から半世紀以上もたった今読んでもおもしろい、素敵な小説でした。

ラストはとびっきりのハッピーエンドで、その点も個人的にはとても好みでした。

 

映画情報

日本で実写映画化される『夏への扉』では、舞台設定が1995年と2025年の日本に変更されています。

あらすじはこんな感じ↓

1995年東京で、ロボット開発をする科学者の高倉宗一郎は、尊敬する偉大な科学者であった亡き父の親友松下の遺志を継いだプラズマ蓄電池の完成を目前に控えていた。

愛猫のピートと、松下の娘・璃子との穏やかな日常の中で、研究に没頭する日々を送っていたが、信頼していた共同経営者と婚約者の裏切りにあい、自身の会社も発明途中のロボットや蓄電池も奪われてしまう。

さらに宗一郎は人体を冷凍し未来に行ける装置・コールドスリープに入れられ、目が覚めた時そこは、2025年の東京だった。

ピートや璃子の死を知り、すべてを失ったと知る宗一郎は、変えられた運命を取り戻すため、30年の時を超えてリベンジを誓う。

ダンに代わる主人公・高倉宗一郎を演じるのは山﨑賢人さん!

1995年と2025年の世界がどのように描かれているのかも楽しみですね。

映画公開は2021年予定。

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