錦戸亮くんが主演を務める映画「羊の木」を観てきました!
私は公開初日の最初の回を観に行ったのですが、舞台挨拶もあるということで劇場には朝から女性ファンがずらり!
錦戸君の人気ぶりにちょっとビックリしてしまいました(笑)
さて、肝心の映画本編はというと…これが予想をはるかに超える良作でまたまたビックリ!
原作漫画からかなり設定が変わっているという点に少し不安を覚えていたのですが、それはむしろ「原作漫画をリスペクトしているからこその改変」だということがすぐに理解できました。
まどろっこしい言い回しを抜きにして簡潔に感想を述べるなら「サスペンスとしてもヒューマンドラマとしても超一級品!」
迷っている人にはもちろん、全然興味のない友人にも「面白いから見た方がいいよ!おススメ!」と言えるほどクオリティーの高い、近年稀にみる素晴らしい邦画でした。
…ただ一点、結末だけを除けば、の話ではありますが。
というわけで今回は、大注目の映画「羊の木」の感想と解説!
映画のネタバレを含みますのでご注意ください!
映画「羊の木」のネタバレ感想と解説!
★総評
結論から言えば、映画「羊の木」を見終わった後の正直な感想は「惜しい!」でした。
というのも、途中までは本当に100点満点の面白さだったんですよ。
サスペンスらしい不穏な雰囲気や衝撃的なシーンも最高でしたし、「元殺人犯だからといって、その人のことを何も知りもせずに勝手にいろいろと決めつけるのはどうなのか?」という問いから「人を信じるということ」というテーマを考えさせる構成も素晴らしかったと思います。
それなのに、ただ一点…あの結末だけはいただけませんでした。
まさに画竜点睛を欠く。
もちろん私個人の感想ではあるのですが、あのラストのせいでそれまでの素晴らしい流れが台無しになってしまっていたように感じました。
結果として、最終的な評価はだいたい「75点~80点」くらいでしょうか。
結末こそ残念に思いましたが、それでも全体的には並の邦画をはるかに超える良作だったと思います。
【1】結末のここが残念だった!
みなさん気になっているかと思うので、最初に「何がそんなに残念だったのか?」というポイントについて触れておきましょう。
映画を観た方にはわかってもらえるかと思うのですが、前提として映画「羊の木」には『高尚な雰囲気』とでも呼ぶべき空気が漂っているんですね。
言い換えるなら「国際映画祭で賞を獲りそうな雰囲気」という感じでしょうか。
※実際に賞獲ってますし、まだ結果が出ていないいくつかの映画祭にも出品しています。
映画タイトルそのものが示す「人を信じること」というテーマが見事に表現されているのですから、それはまあ「笑える面白さ」というよりは「考えさせられる作品としての面白さ」が随所ににじみ出ているわけです。
『その高尚なテーマ性を含んだ空気感こそが映画「羊の木」最大の魅力であり、持ち味である』という点に関しては、きっとそこまで的を外してはいない感想なのではないかと思います。
なのに…なのにですよ!
あの結末ときたらどうですか!
簡潔にまとめると、映画「羊の木」の結末はこんな感じでした。
★映画「羊の木」の結末
物語のクライマックス、根っからのサイコパスだった宮腰(松田龍平)と、そんな宮腰を最後まで友達として扱おうとする月末(錦戸亮)が切り立った断崖で言葉を交わすシーン。
月末は新たに何人もの人間の命を奪ってしまった宮腰に自首するよう言い聞かせますが、宮腰は「僕は変われないし、どうせ死刑だから」と聞く耳持たず。
最終的に、宮腰は地域の守護神「のろろ」の伝説をなぞり、月末の手を掴んで一緒に遥か下の海へと飛び込みました。
伝説によれば、2人のうち1人は助かり、1人は浮上さえしてこないはず…。
2人が飛び込んだ瞬間を目撃した文(木村文乃)は崖下に向かって叫びます。
「月末ー!」
ところが、海面に浮かんできたのはなんと宮腰の方。
伝説通りなら、月末はもう…。
そんな予感の中、突如として崖上の巨大な「のろろ」像が崩壊。
像の頭部分が崖下へと転がっていき、宮腰に直撃します。
海に沈んでいった宮腰と入れ替わるように月末が海面に浮かんできて、物語は終幕へ…。
このクライマックスシーンで私がげんなりしたポイントは3つ。
1.合成感丸出しの背景(崖と海)
それまでの「現実感」が一気にここでさめてしまいました。本物の崖から飛び降りるわけにはいきませんが、もうちょっと自然な感じにならなかったものでしょうか。ファンタジーやアクションならともかく、テーマ性を重んじるリアル路線の作品であの合成感はなしでしょう。
2.CG感丸出しで転がっていき、宮腰にぶつかる「のろろ」像
これも先ほどと同じ理由ですね。ただ、仮にこのシーンにCGが使われていなかったとしても、私は「えぇ…」と引いたことでしょう。何度も繰り返しているように映画「羊の木」は「テーマ性を前面に押し出した現実路線の作品」です。その結末が「都合よく壊れた巨像の一部が都合よく悪い奴にぶつかる」というのはいかがなものでしょうか。「神からの罰が下った」的な発想にしても「のろろ」像の頭が壊れて転がり落ちて宮腰に直撃する様はかなりシュールな光景でした。
3.文が月末の名前を叫んだこと
まずは月末と文の関係性を整理しておきましょう。
・月末は文の同級生で当時から現在までずっと片想い中。
・文は宮腰と恋人関係でしたが、月末から「犯罪者だ」と聞かされたことで破局。月末には興味なし。
…え、なんで文は月末の名前を叫んだの?
一応ヒロインだから主人公の名前を叫んでみたの?
先日まで月末なんて眼中になしで宮腰とイチャイチャしてたのに?
前科があると知って宮腰と別れたばかりなのに?
このシーン、まだ「宮腰の名前を呼ぶ」か「2人の名前を呼ぶ」なら理解できました。
でも、ここで文が月末の名前だけを叫ぶのは理解不能。
状況だけ見れば「うわっ、私の彼氏、犯罪者だったの?気持ち悪!別れたろ!じゃあ、次は月末狙いで!」みたいな感じになってるじゃないですか。
正直、心の中で「ハァ!?」とツッコミを入れざるを得ませんでした。
せめて文が月末のことを好きになっていく描写がちゃんとあれば良かったのですが…。
ちなみに、この後のラストシーンでは、月末と文の関係はなんだかいい感じに。
なんでや…。
そんなわけで、以上の3点を含む結末部分だけが、映画「羊の木」の残念ポイントでした。
【2】映画「羊の木」の見どころは?
前項では映画の「残念だったポイント」について触れましたが、最初に書いたように全体的な評価としては映画「羊の木」は十分に面白い作品でした。
というわけで今度は逆に「映画の良かった点(=見どころ)」についてご紹介していきたいと思います!
★キャストが豪華!
何といっても映画「羊の木」はキャストが豪華!
主演の錦戸亮くんを始めとして、木村文乃さん、松田龍平さん、北村一輝さん、優香さん、市川実日子さん…。
実に個性豊かな実力派メンバーが集結しています。
特に新移住者6人については「刑務所から出たばかりの訳アリ人物」という難しい役どころにも関わらず、違和感はゼロ!(ほめ言葉です)
それぞれのキャラクターが抱える問題点や人間性が見事に再現されていて「あの人の演技だけなんか変だな…」と思うことは一切ありませんでした。
それにしても北村一輝さんは悪いチンピラをやらせたら天下一品ですね(笑)
それでいて映画「今夜、ロマンス劇場で」での『キザな二枚目映画スター』もばっちりハマリ役なのですから、すごい俳優さんだと思います。
★錦戸亮くんファンもニッコリの演奏シーン
錦戸亮くんファンに声を大にしてお伝えしたいのは「この映画の演奏シーンは必見!」ということです。
錦戸くん演じる月末は同級生の文とバンドを組んでいて、作中では何度もバンド練習(演奏)シーンが流れます。
普段はボーカルギターな錦戸君ですが、「羊の木」での担当はベース!
映画を観た女性ファンの方にはわかってもらえると思うのですが、ベースを演奏している時の錦戸くん…めちゃくちゃカッコよかったですよね!
渋くて、男らしくて、セクシーで…正直、ファンならずとも必見です。
あ、ちなみに今回、錦戸くんにはいわゆるラブシーン的なものはありませんでした。
ホッとするような、残念なような?(笑)
★MVPはサイコパス・松田龍平
もしキャストの中から誰かひとりMVPを選べと言われたら、私は松田龍平さんだと即答します。
映画の主人公は錦戸くんなんですが、映画の中心にいたのは松田龍平さんでした。
いわば「影の主役」といったところでしょうか。
松田龍平さん演じる宮腰は「6人の移住者」の中で最も「無害で人間味のあるキャラクター」として登場し、すぐに月末とは友達になり、文とは恋人関係になります。
何も知らずに映画を観ていれば、宮腰は「前科があるからといってみんなが悪人というわけではない」ということの象徴であるように見えたことでしょう。
しかし、私は最初から「あれ?」と思っていました。
というのも、原作漫画において「宮腰」はどうしようもない根っからの悪人であり、最後まで問題を起こし続けたキャラクターだったからです。
今回の6人でいえば、北村一輝さん演じる「杉山」こそが原作漫画の宮腰っぽいキャラクターなんですね。
なのに、わざわざこんな無害そうな登場人物に「宮腰」の名を与えるということは…。
はい、物語後半に発覚することですが、作中で最もイカレていたのは実は宮腰。
宮腰は「まるで蚊を叩き潰すように平然と人の命を奪う」という性質を持つ異常者であり、作中では3人もの人間の命を眉一つ動かさずに摘み取りました。
宮腰のことを一言で形容するなら「サイコパス」という言葉が適切でしょう。
彼は凶作犯罪者というよりは「何か大切なものが欠けた人間」であり、彼にとって「問題を解決するために相手の命を奪う」ことは当たり前なんですね。
でも、だからといって人間らしい感情がないわけではなく、彼は友達や恋人といった人とのつながりを心から欲していました。
だからこそ「友達」である月末の首に手をかけた時、最後まで手に力を入れ続けられなかったのです。
…。
うん、なんだこの魅力の塊みたいなキャラクターは!
「人のいい役所の職員」である主人公・月末が霞んでしまうほど、宮腰はいい味出していました。
でも、それはキャラクター設定の力というよりは、やはり松田龍平さんの力だったのだと思います。
だって、こんな一般の感覚では理解できないような難しいキャラクターを他の誰が演じられたというのでしょうか。
その点、松田龍平さんは「何?あなたもサイコパスなの?」と言いたくなるくらいバッチリ役を自分のものにしていました。
というわけで「いやぁ、松田龍平にサイコパスやらせたら右に出るものはいないな」というのも映画「羊の木」に対する感想の1つ。
割と本気で「この松田龍平だけは見といたほうがいい」という理由だけで映画自体をおススメできるレベルですね。
★「羊の木」=「信じるということ」
映画の中では清掃員の栗本が「羊の木」の絵を拾いましたが、そもそも「羊の木」にはどういう意味があるのでしょうか?
原作漫画では次のように説明されていました。
・ヨーロッパ人がかつて「綿は羊の木からとれる」と思っていたという話から、転じて「どこまでも純粋で単純な発想」「信じるという事」といった意味
つまり「羊の木」とは「(人を)信じるということの象徴」
映画「羊の木」は「前科持ちの移住者との交流をたたき台にした『人を信じること』について問う物語」というふうに解釈できます。
結局、主人公である月末は友人だと信じた宮腰から裏切られるような形になってしまったわけですが、それでも宮腰は最後に月末を直接手にかけることをためらったし、「(2人で同時に海に飛び込んだら)きっと君の方が勝つよ」という発言もありました。
月末の宮腰への信頼は決して無駄なことではなかったのだと思います。
また、その他の移住者に関しては完全に「人を信じること=正しいこと」と思えるような結末を迎えました。
※福元は理髪店の主人に受け入れられて居場所を手に入れた。太田は月末の父と結ばれて幸せに。元ヤクザの大野もクリーニング店の店主から受け入れられていい仲に。
もちろん、だからといって単純に「人を信じることは良いことだ!」などと言うつもりはありませんし、きっと映画「羊の木」もそんな主張がしたいわけではないでしょう。
しかし、少なくとも「勝手なイメージやレッテルでよく知りもしない人を判断することの愚かしさ」という教訓だけは、今一度心に刻んでおこうと、そう思わせてくれる映画ではありました。
きっと映画「羊の木」は見る人にとって受け取り方の変わる作品だと思います。
舞台挨拶では何度も「繰り返し見ることによっていろんなことが見えてくる作品」というコメントが飛び交っていましたし、それだけ多面的な意義を含む作品であるように私も感じました。
では、あなたならこの作品からなにを受け取るのでしょうか?
未見の方はぜひ劇場で確かめてみてください!
まとめ
映画「羊の木」がついに公開!
今回は映画を観た感想や作品の解説などをお届けしました!
まとめると、要点は次の3点です!
・原作ファンも納得の一級ヒューマンサスペンス!クオリティー高し!
・途中までは本当に100点の出来だったけど、個人的には結末に不満あり。惜しい!
・錦戸亮くんファンはもちろん必見!そうでない方も今作の松田龍平には一見の価値あり!
何度も言うようにラストだけが残念でしたが、全体的にはだいぶ満足度は高かったです。
キャストも豪華ですし、ストーリー構成もバッチリ。
迷っている方はぜひ劇場でご覧になってみてください。その価値はあると思います。
※もうご覧になった方は、原作漫画の方のあらすじ結末を見てみると面白いかも!
関連記事:漫画「羊の木」のあらすじとネタバレ!映画化原作の結末とは?
映画『羊の木』の配信は?
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※配信情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
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映画見に行って、いまいちしっくりこないことがわかりました。
ただ、結末のなんで文が月末の名前を呼んだのかは、大野がクリーニング店をやめていくときのセリフと、宮腰が目黒を殺した夜の文とのシーン、文が月末に話があるから家に行くってとこつなげると違うふうに見えるんじゃないかと思いました。