伊藤計劃の劇場アニメ第2弾「ハーモニー<harmony/>」を見てきました。
率直な感想としては「最高!」
難解かつネガティブな世界観なので、万人受けするタイプの作品ではないでしょう。
しかし、あの独特な雰囲気が好きな人にはクリーンヒットすること間違いなしです!
第1弾にあたる「屍者の帝国」が好きだった方なら、きっと楽しめると思いますよ。
今回はそんな映画「ハーモニー」の内容をふり返りつつ、感想や、世界観の整理、結末の解釈などについてチェックしていきたいと思います!
※映画・原作のネタバレを多分に含むのでご注意ください!
映画「ハーモニー」のネタバレ感想・解釈
まずは、映画「ハーモニー」の世界観・あらすじについて押さえておきましょう。
映画内では詳しく触れられなかった原作小説の設定にも触れていますので「もう映画を見た」という方も一読してみてくださいね。
映画「ハーモニー」の世界観
「ハーモニー」の舞台は近未来の世界です。
2019年にアメリカで起きた暴動をきっかけに、戦争や疫病が蔓延した結果、世界の旧体制は瓦解。
「大災禍(ザ・メイルストロム)」と呼ばれるその事件の後、世界は新たな組織「生府」によって統治されることになりました。
新たな世界では、人々は「ウォッチ・ミー」という機械を身体に埋め込まれ、行動や健康状態を管理されています。
その恩恵により人々は病気や老いから解放され、より健全な社会、より優しい社会が誕生しました。
あらすじ
主人公・トァンは新しい社会に誕生した一大組織「螺旋監察事務局」の上級監察官。
冒頭、生府により禁止されている飲酒・喫煙が露見してしまったトァンは、謹慎として紛争地帯から日本に送り返されることになります。
日本で友人のキアンと再会したトァンでしたが、キアンは食事中にいきなり自らの首にナイフを刺し絶命してしまいました。
この唐突な自害行為は世界中で同時多発していたことから、何者かによる「犯行」であると断定されます。
その後、犯人はさらにこのような声明を発表し世界を混乱の渦に陥れました。
「1週間以内に誰かの命を奪え、さもないと自分が消えることになる」
「健全で優しい社会」を脅かす恐るべき声明。
事件を追うトァンは、その裏に13年前に他界したはずの少女・ミァハの存在を感じるのでした。
ミァハとトァン
※以下、ネタバレに突入しますので注意!
13年前。ミァハとトァン、そしてキアンが学生だった少女時代。
カリスマ的魅力と豊富な知識をもつミァハは、他2人にとってのカリスマ的存在でした。
ミァハは言います。
「大人になればウォッチ・ミーに管理されながら生きていかなければならなくなる。私は私だけのものなのに」
ミァハは社会への抵抗として3人で自害することを提案しますが、キアンの密告によりトァンは一命を取り留め、ミァハだけがこの世を去りました。
◆
自らの首にナイフを刺す直前、キアンははっきりとこうつぶやきました。
「ごめんね、ミァハ」
トァンがミァハの遺体の行方を探ったところ、トァンの父親である研究者・ヌァザがバグダッドへ連れて行ったことが発覚します。
(ミァハは生きている。そして、一連の事件の裏にはミァハがいる…)
ハーモニープログラム
大災禍を反省し、社会をより健全な方向へと導くための組織「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」
ヌァザはそのメンバーであり、「ハーモニープログラム」の実験体としてミァハを利用したのでした。
ハーモニープログラムとは「人々の脳に干渉し、常に合理的・協調的・平和的な行動を選択させるようにする」ための装置。
ハーモニープログラムを使えば世界から争いや悩みは消え、幸福で平和な社会が実現するはずでした。
しかし、ハーモニープログラムには重大な副作用があることが発覚します。
常に合理的な選択をする幸福状態となった人間からは「意識が消え去った」のです。
それは考え方によっては「生きているとは言えない状態」
「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」はハーモニープログラムの扱いに迷った結果、全人類の脳にプログラムを仕込み、あとは発動するだけ、という状態を妥協点としました。
しかし、その後「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」は2つのグループに分裂。
ミァハが導く一派によって、一連の事件が引き起こされていたのでした。
ミァハのグループの構成員の銃撃によって父親を失ったトァンは、ミァハが待つ最後の場所チェチェンに向かいます。
ミァハの秘密
チェチェンの山中で、ついにミァハとトァンは再会を果たしました。
ミァハは語ります。
「ここは、かつてロシア軍の兵士が少女たちを抱くための施設だった。私もその中の1人」
ミァハはもともと日本人ではなく、ある少数部族の出身であり、幼い頃は紛争地帯の慰み者として扱われていました。
「憎悪が目覚め、ここで私の意識が誕生した」
ミァハの部族は近親婚により劣勢因子が受け継がれていった結果、ハーモニープログラムの副作用と同じように「意識のない」状態の人々で構成されていました。
ミァハが現在持っている「意識」は後天的なものであり、通常の人間とは別の部分の脳が意識を形作っています。
「このチェチェンでの日々も地獄だったけど、日本も地獄だった。優しさにころされてしまいそうだった」
ウォッチミーによって高度に医療が発達した社会の裏では、少年たちが「自分の居場所がない」と感じて自ら命を絶つ事件が増えていました。
「だから、ハーモニープログラムを発動させるの」
誰もが悩むことなく、考える必要もなく、茫洋とした幸福に包まれる世界。
それはミァハにとって現社会への復讐であり、人類の救済でした。
結末
ミァハの宣言したタイムリミットまであとわずか。
世界は「大災禍」の時と同じく大いなる混沌につつまれていました。
隣人の命を奪えず自ら命を捨てる者が続出し、世界中で暴動が多発しています。
ハーモニープログラムの実行権を持つ「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」の主流派は、この状況を回避し世界の安定を図るためプログラムを起動せざるを得ないはず…。
この状況こそがミァハの狙いでした。
ミァハはトァンに語りかけます。
「今度こそ、一緒に、新しい世界に行こう」
トァンはミァハの手を取り抱き寄せると、こう応えました。
「ミァハが望むなら、私は新しい世界を受け入れる」
「でも、あなたはそこへ行かせない」
ミァハを銃で撃つトァン。
「愛してる、ミァハ」
―――カチッ
ミァハの読み通りハーモニープログラムが実行されます。
全人類が意識を手放し、「私」は「私」ではなくなる新世界。調和(ハーモニー)のとれた平和な世界。
そこに、ミァハはいませんでした。
補足と感想と解説
以上、映画「ハーモニー」のあらすじ・結末についてのネタバレでした。
テーマ自体がかなり複雑なように感じられる作品ですよね。
では物語の主軸は何だったかと言うと、映画では「ミァハとトァン」という2人の少女の関係こそが中心だったのではないかと思います。
特殊な出自を持ち、世界を憎みながらも可憐で聡明で美しい少女だったミァハ。
そんなミァハのカリスマ性に呪われたように惹きつけられてしまった少女トァン。
ミァハの憎悪は「ささやかな抵抗」から世界を巻き込んだ事件へと発展し、トァンはそんなミァハを追いかけ続けた。「ハーモニー」の物語の軸はこういうことだったのでしょう。
ただし、実は原作小説では結末のニュアンスが少し映画版とは異なります。
トァンがミァハを撃ち、ハーモニープログラムが実行されるという結末は同じですが、その動機が違うのです。
小説版では「キアンとヌァザの復讐のため」という意味合いが強い銃撃だったのに対し、映画版では「世界に抵抗するミァハが好きだった。ミァハの望みは叶えるけど、ミァハには意識を失ってほしくない」というトァンの愛・エゴがうかがえます。
映画「ハーモニー」ではミァハとトァンの百合っぽいシーンも多く描写されており、一種の愛が2人の間(少なくてもトァンの側)に芽生えていたようでした。
そんなトァンの感情・心境に注目してみると、より一層「ハーモニー」を楽しめるかもしれません。
まとめ
以上、映画「ハーモニー」のネタバレ・感想などについてでした!
映画「屍者の帝国」も好きでしたが映画「ハーモニー」もかなりの傑作!
世界が危機に瀕し、そして極めて個人的なエゴから世界を救わない物語。
好きな人にはたまらない展開・結末が待ち受けています。
伊藤計劃劇場アニメシリーズにハズレなし!
映画『ハーモニー』の配信は?
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※配信情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
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映画を見てポカーンとしてしまった為何が言いたい映画だったのかをググっていたらこちらにたどり着きました
わかりやすくまとまっていて内容にも納得がいきました
ありがとう
良くも悪くもミャハは元に戻ってしまった。
地獄の中で芽生えた意識に似た何かが彼女を人たらしめる要素になっていたはずの意識に似た何か
ハーモニープログラムの世界は人が人でなくなる世界
その世界の扉をミャハは開こうした。
奇しくもそれは意識似た何かが産まれる前の自分の世界
愛する人には人のまま生き死んでほしいと願うそのカルマが
ミャハからトァンに流れそしてトァンからミャハに帰結する
とても良い映画だったと今でも思います
ハーモニーさせたいが強すぎてファンタジーが過ぎる