映画「屍者の帝国」を見てきました!
いやあ、面白かったですね!
19世紀末という舞台設定、偉人や有名なキャラクターの名前を冠した登場人物たち、そして「屍者」を巡って世界を駆け巡る展開…どこをとっても面白い!
ただ、一つだけ腑に落ちなかったのはエンドクレジット後に流れたシーン。
クレジット前の結末はどう見ても「ワトソンがフライデーに命令して自身を屍者化している」場面に思われました。
しかしその数年後、何故かワトソンは名前の通り探偵ホームズの相棒となって新しい生活を送っています。
これは、どういうこと?
今回はそんな映画「屍者の帝国」の結末に関するネタバレ解説や、映画版とは異なる原作小説の設定などについてチェックしていきたいと思います!
映画「屍者の帝国」のネタバレ解説!
そもそも映画「屍者の帝国」は、原作小説とかなり異なります。
原作小説の圧倒的な設定量を2時間でまとめるため、多くの設定が削られていますし、登場キャラクターもかなり絞られているんです。
そして、その中でつじつまを合わせるために設定や展開が変更されているんですね。
※映画「屍者の帝国」では組織レベルでなかったことにされている陣営も…。
その中でも、特に原作小説からかけ離れているのは「フライデー」
映画「屍者の帝国」の始まりはある意味でフライデーの他界であり、その無二の親友である主人公・ワトソンの真の目的は一貫して「フライデーの魂取り戻すこと≒生き返らせること」にありました。
しかし、原作小説におけるフライデーは「任務途中に合流した記録係の屍者」であり、親友でもなければ以前からの知り合いですらありません。
この点は「カットの都合」ではなく映画オリジナルの改変ですね。
結果としてワトソンに人間味が増し、(カットした展開の中でも)行動に一貫性が出ているように感じたので、個人的には良い変更だったと思います。
結末部分のネタバレ
映画のラスト。ザ・ワンと決着をつけたはずのワトソンが「フライデーに命令して生きたまま屍者化する(ようにしか見えない)」という結末は本当に衝撃的でした。
個人的には「ああ、結局フライデーの魂は戻らなかった。ワトソンは絶望のためか、それともフライデーに会いに行くためか屍者化を選んだんだな…」と解釈していましたね。
こんな残酷なバッドエンドが待っていようとは、恐るべし伊藤計劃!と震えたものです。
しかし、エンドクレジット後の場面では、なぜかワトソンが普通に生きていて探偵ホームズの助手役として活躍している…ナニコレ?
端的に説明すれば、ワトソンは「真実を知るため(後述)」に自らの体である実験を行ったのですが、結果としてワトソンはそれまでの意思(≒記憶)を失ってしまいました。
一方、結末のシーンで微笑んでいたフライデーはいつしか意思(≒魂)を手に入れていて、原作小説的にはワトソンの失われた意思を探しにいきます。
ただ、ワトソンの扱いが大きく異なる映画においては「親友としてのフライデーが復活し、温かい眼差しでワトソンを遠くから眺めている」みたいな解釈の方が個人的にはしっくりきますね。
※蛇足ですが、事実上別人となってしまったワトソンが、ハダリー(アイリーン・アドラー)と「初めまして」と再会するのかと思うと何だかやるせない気持ちになります…。
「屍者の帝国」のテーマ
原作小説のテーマは「魂・言葉・意思・意識」…要するに人間を人間たらしめるモノの追及にあったと言えるでしょう。
映画「屍者の帝国」ではほとんどカットされ「魂の是非」という問答に集約されていましたが、小説版ではこの点についてかなり深く掘り下げられていています。
小説内でザ・ワンは屍者化について「人間の脳内にある菌株(Xと呼ぶ)が屍者化に対応していて、人間が意識を持っているように見えるのも全てこの菌株の働きに過ぎない」と主張しました。
※菌株…微生物の単一種が一定量まとまって生育している状態
一方で(映画には出なかったけど)ヘルシング教授は、「言葉」こそが人間を人間たらしめるモノと主張。
最終的にザ・ワンはワトソンやヘルシング教授によって倒されました。
しかし、屍者化の謎、Xの正体、人間だけが持つ「魂」の秘密は残ったまま…。
そこで、ワトソンは最後に自分の体を使って真実を知るための実験を行ったというわけです。
まとめ
以上、映画結末の謎のシーンに関するネタバレ解説、並びに映画では触れられなかった原作小説の設定などについてチェックしてきました!
映画は映画で面白かったのですが、原作小説版だとさらに設定・ストーリーが盛りだくさんになっています。
かなり幅広い教養を要求してくるうえ、小難しい話の多い作品ですが、映画を楽しめたならきっと向いていると思うので是非原作小説の方もチェックしてみて下さいね!
しかし、伊藤計劃最後の作品が「魂や意思、人間の存在」についての作品だったというのは何とも感慨深いところです。
それとも後を引き継いだ円城塔さんが意図的にそのような造りにしたのでしょうか?
「屍者の帝国」は奇抜な世界観設定とは裏腹に、かなり哲学的な作品でもあるようです。
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