小説「ちょっと今から仕事やめてくる」
タイトルが示す通り、作品のテーマは「仕事」です。
ブラック企業で限界まで追い詰められた主人公の前に、謎の関西弁男「ヤマモト」が現れるところから物語は始まります。
「仕事辞めるか、生きるのをやめるか」
本当に、辛い環境で働いているすべての社会人に見てほしいとおススメしたい作品です。
というわけで今回は、映画化もした小説「ちょっと今から仕事やめてくる」のあらすじを結末までネタバレしていきます!(小説を読んだ感想も!)
謎の男・ヤマモトの正体とは!?
あらすじネタバレ
主人公・青山隆が就職したのは中堅の印刷会社。
第一希望の会社ではなかったものの、隆は新入社員として情熱と希望を抱いて営業の仕事に取り組んだ。
しかし、
そんな夢見がちな時期はすぐに終わりを告げ、隆の毎日は灰色に染められていく。
朝早くから出勤し、部長の怒声を浴びて、サービス残業をして夜遅くに帰宅する。
忙しいばかりで心身をすり減らし、隆はいつの間にか笑わなくなっていた。
そんな隆が駅のホームでふらふらしていると、
「久しぶり!俺だよ、ヤマモト!」
ふらついていた隆の腕をつかみ、見知らぬ男が声をかけてきた。
ヤマモトは小学生時代の同級生だというが、隆には覚えがない。
隆が困惑している間に、ヤマモトはテンションの高い関西弁で話しまくり、いつのまにか2人は飲みに行くことになっていた。
居酒屋のトイレで同級生に確認したところ、確かに山本という同級生はいたらしい。
最初は仕方なくヤマモトと話を合わせていた隆だったが、ヤマモトとの話は意外に面白い。
隆は久しぶりにリラックスした時間を過ごした。
ヤマモトといる時間が、とても楽しかった。
ただ1つ気がかりなのはヤマモトの正体だ。
後日、確認の連絡をした同級生から知らせがあって、本物の同級生・山本は今海外にいるということがわかった。
では、ヤマモトはいったい誰なのだろうか?
本人に問いただしてみると
「最初は勘違いで声をかけたけど、仲良くなったんやからええやん?」
という答えが返ってきた。
ヤマモトの本名は「山本純」であり、実は隆よりも3歳年上だという事がわかる。
隆は本名を聞いたときにヤマモトが見せた悲しげな表情が少しだけ気になった。
事件
正体の話はともかく、隆は頻繁にヤマモトと会うようになっていった。
ヤマモトと遊ぶようになってから、隆は少しずつ明るさを取り戻していき、仕事の成績も上がっていく。
職場で最も尊敬する営業マンの五十嵐先輩にも褒められて、隆はまさに絶好調だった。
しかし、
そんな中、事件は起こった。
ようやく取り付けた契約先に、間違った品を納品してしまったのだ。
(あんなに何度もチェックしたのに!)
部長にはボロクソになじられ、契約企業の担当は五十嵐先輩に替えられた。
同僚はそんな隆を冷たい目で見ているばかり。
その日から、隆にとって職場は地獄に変わった。
隆は自分を責め続け、精神状態は限界へと迫っていく。
隆はいつしか、会社の屋上から飛び降りることを考えるようになっていた。
「ちょっと、あんまりちゃうか、隆」
会社からの帰り道、ヤマモトにつかまった。
ここのところ電話もメールも無視している。
ヤマモトは強引に隆をカフェバーへと連行する。
暗い表情で辛そうにしている隆に、ヤマモトが言う。
「隆、会社変えたら?何があってん?」
隆が事件のことを話す間、ヤマモトは黙って話を聞いていた。
ヤマモトは「それは会社が異常だ」と指摘するが、隆は「いや、全部自分の能力がないせいだ」の一点張り。
ヤマモトはもう一度転職を進めたが、隆はすっかり「自分は社会のゴミだ」と思い込んでいるのだった。
その日から、ヤマモトは隆の会社帰りを待ち伏せするようになった。
ヤマモトは毎回いろんな店に隆を連れていき、その度に熱心な「転職講座」を開いた。
それでも「仕事を辞めるのは簡単じゃない」と意固地な隆に、ヤマモトは言う。
「隆にとって、会社辞めることと、生きるのをやめることは、どっちのほうが簡単なわけ?」
ヤマモトは隆の飛び降り願望に気づいていた。
そして、出会った日のことを語り始める。
「最初に会った日も、腕引っ張らんかったらホームに落ちて事故になっていた」
「隆を見かけた時、心配になって後をつけたんだ」
「知ってたから。あの日のお前と、同じ表情してたやつ」
ヤマモトとの出会いは偶然ではなかった。
追い詰められていた隆が心配になって、あの日ヤマモトは声をかけてくれたのだ。
ヤマモトの正体は?
ヤマモトのおかげで、隆の精神状態は持ち直しつつあった。
ある日、隆は街中でヤマモトを見かける。
ヤマモトはいつもと違って深刻な表情をしており、ショーウインドウを見て一瞬表情をこわばらせたかと思えば、次の瞬間にはバスに飛び乗っていた。
(行き先は…墓地?)
帰宅後、ヤマモトのことが気になった隆は「山本純」で検索をかけてみる。
すると、あるブログで「山本純」の話題が扱われていた。
「今日は、山本純くんの命日でした」
(同姓同名か?)
ブログを見てみると、山本純は3年前に自ら命を断ったらしい。
そして、添付されていた写真に写っていたのは
(ヤマモト!?)
すでにこの世にいないはずの「山本純」は、隆がよく知るヤマモトだった。
(幽霊…なのか?)
全然そうは見えないヤマモトを思い出し、隆はすっかり混乱してしまった。
犯人と限界
翌日、あまり眠れなかった隆はいつもより早く会社に行くことにした。
すると、早朝にもかかわらずすでに誰かが出勤している。
そして、何やら隆の席のPCをいじっているようだった。
「おはようございます」
ビクッとこちらを振り返ったのは五十嵐先輩だった。
五十嵐先輩は隆が以前担当していた企業の資料を探していたという。
隆が例の事件について感謝と謝罪の言葉を述べていると、いきなり先輩が怒鳴った。
「もういいよ!わかってんだろ?」
「俺がやったんだよ。発注を書き換えたのは、俺だよ」
あの日の事件は隆のミスではなかった。
新人に大口契約を取らせまいという、先輩の仕業だったのだ。
しかし、隆は怒りよりも自責の念にとらわれていた。
(やっぱり俺が悪いんだ。俺のせいで先輩がこんな風になってしまった…)
隆はハンマーで屋上の南京錠を叩き壊すと、そのままフェンスの向こうへと向かった。
もう一歩踏み出せば、自由になれる。
その時、
「気持ちよさそうやな」
突然後ろからヤマモトの声が聞こえた。
隆は言う。
「ごめんな。いろいろ相談乗ってくれたのに」
近づこうとするヤマモトを隆が制す。
「どうせまた、すぐに会えるんだろ?山本純は3年前に亡くなっている」
「知ってたんか」
ヤマモトはそう言ってふっと笑う。
「お前もしかして、俺のこと幽霊やと思ってる?」
気づけばヤマモトは、隆のすぐそばまで来ていた。
「冷たいかどうか触ってみ。あったかいやろ」
ヤマモトの目にも、隆の目にも涙が浮かんでいた。
屋上の縁から降りた隆とヤマモトが空を見上げている。
「なあ、隆。お前は今、自分の気持ちばっかり考えてるけどさ。1回でも残された者の気持ち考えたことあるか?なんで助けてあげられなかったって、一生後悔しながら生きていく人間の気持ち、考えたことあるか?」
隆の脳裏に両親の顔が浮かぶ。
(両親が悲しむなんて考えていなかったな…。一番大切な人なのに…)
「ヤマモト、お前いったい何者なの?」
「内緒!」
ヤマモトの正体はまだわからない。
両親との電話
その日、隆は久しぶりに両親に電話をかけた。
「もし、俺が仕事辞めたいって言ったらどうする?」
母は言う。
「別にいいんじゃない?会社は世界にたったひとつじゃないんだから」
「大丈夫よ。人生なんてね、生きていれば案外なんとでもなるもんよ」
生きてさえいれば、という言葉に隆の胸が痛んだ。
罪悪感。
今度実家に帰ると約束して電話を切り、隆はその場に崩れ落ちた。
(俺は、ひとりなんかじゃない)
隆は携帯を胸に、声を出さずに泣いた。
ヤマモトの正体は?2
隆にはどうしても確かめなければならないことがあった。
ヤマモトの正体。
方々に手を尽くし、ついに隆はヤマモトの正体を突き止める。
そして隆は一路大阪へと向かった。
たどりついたのは亡くなった「山本純」の生家。
純の母親と話していると、彼女の深い後悔が隆に伝わってくる。
そんな母親に隆は言う。
「僕は、あなたの育てたお子さんに命を救われました。アイツはその名のとおり、純粋で優しいですよ。純君の分まで、なんておこがましいことは言えないけど、僕もアイツもこれから一生懸命生きていきます」
ちょっと今から仕事やめてくる
11月15日(火)
会社に行く前に、隆はヤマモトを喫茶店に呼び出した。
「ヤマモトに言いたいことがあって」
「なんや?」
大きく息を吸って、隆は言った。
「色々と、ありがとうございました!」
隆はヤマモトに救ってもらったことへの感謝を述べて、ヤマモトに何かあったら今度は自分が力になりたいと告げる。
そして、こう続けた。
「あのさ、呼び出しておいて悪いんだけど、ちょっと待っててくれる?」
「べつにいいけど?どうして?」
「ちょっと今から仕事やめてくるわ」
ヤマモトは驚いた表情を見せた後、ニカッと笑った。
そして喫茶店を出る直前、隆はヤマモトに言った。
「あ、そうそう。もうバレてるからな、お前の正体。ほんと、嘘ばっかつきやがって」
隆もニカッと笑う。
「ちゃんと待っとけよ、ヤマモト…優!」
いつもとは違う、大胆な心境で隆は職場に向かう。
隆の姿を見た部長はいつものように怒鳴り散らしてきたが、不思議と怖くはない。
「俺、今日で仕事辞めます!」
部長は社会で通用しないだのなんだのとわめいている「どうせお前みたいなやつなぁ、一生負け犬で終わるんだよ!」
隆の中で何かが弾けた。
「俺の人生をお前が語るんじゃねーよ!」
隆は思いのたけを職場の全員に聴こえるようにまくしたてる。
「部長、今幸せですか?違いますよね。幸せだったら毎日怒鳴りませんよね」
「みなさんは幸せですか?誰のことも信用できずにギスギス働いて」
そして隆はこう締めくくった。
「これからは自分の人生を生きていきます」
「今までお世話になりました」
妙にすっきりした気分で隆が喫茶店に戻ると、そこにヤマモトの姿はなかった。
ウエイトレスから、山本から預かったというメモを渡される。
「人生ってそれほど悪いもんじゃないだろ?」
ヤマモトとはもう会えないような予感がした。
結末
駅のホーム。ふと、どこかで見た表情をしている高校生くらいの男の子が目に入った。
(あの頃の、俺だ)
次の瞬間、少年の体がホームから落ちるようにふらつく。
隆はその腕を思いっきり引っ張った。
そして笑って少年に告げる。
「久しぶりだな!俺だよ…ヤマモト!」
(ヤマモト、俺も、この子に同じことを伝えられるかな)
2年後
「先生、おめでとうございます!試験合格されたそうですね」
見知ったナースが声をかけてくる。
「いいなあ、うらやましい。フリーランスの臨床心理士なんて、なんかカッコいいですね」
「あ、そういえば今日から新しい心理カウンセラーの先生が研修に入られるみたいですよ」
少し話した後、ナースは持ち場に戻っていった。
今でも、純の最後を思い出す。
自分が気づいて、仕事を辞めさせていたら…。
毎朝、純と同じ顔を鏡で見るたびに気が狂いそうになる。
僕は一生、この思いを背負って生きていく。
何人救っても、それだけは変わらない。
隆の件から、すでに2年がが経過していた。
「お前、病院では標準語なのな」
振り向いた優の目は驚きに見開かれた。
「先生、俺にも救いたい人がいるんだよ。俺はその人に命を救ってもらったから、今度は俺が、その人を苦しみから救いたい」
「だから、いろいろ教えてくださいね!ヤマモト先生!」
そういうと隆は、ニカッと笑った。
優は思う。
(なあ、純。人生って、それほど悪いもんじゃないぞ)
<ちょっと今から仕事やめてくる・完>
感想
主人公・隆のような新入社員は本当にいっぱいいるんだと思います。
サービス残業や職場でのイジメは、残念なことに珍しいものではありません。
そして、仕事をやめるという選択ができずに自ら命を断ってしまう人も、残念ながら少なくありません。
小説「ちょっと今から仕事やめてくる」はそんな選択肢が見えなくなっている人にぜひ読んでもらいたい1冊です。
限界まで追い詰められてしまうくらいなら、仕事なんてやめてしまってもいい。
仕事を辞めたって生きていけるし、本当にやりたいことをやる道を選ぶべきだ。
そんな当たり前のことを、小説「ちょっと今から仕事やめてくる」は思い出させてくれます。
ネットで「ちょっと今から仕事やめてくる」の感想を見ていると
「でも、このくらいの環境でブラックとか甘いよね」
みたいな意見もありました。
おそらく、同じように感じた人も少なくないと思います。
「俺だって同じような目にあっている」と。
でも、私はそれをとても恐ろしく感じました。
「みんな辛いんだから仕方がない」
そんな道理が正しいわけもないのに、その道理が正義だと信じているばかりか押し付けてくる人がいる。
そんな考え方の無理強いのせいで苦しんで、中には命を断ってしまう人がいる。
それは、とても変なことで、とても悲しいことです。
小説「ちょっと今から仕事やめてくる」はヤマモトと隆を通じて、そのことを改めて私たちに教えてくれます。
特に隆と同じ若い社会人世代には、ぜひ読んでほしい1冊です。
まとめ
以上、映画化される「ちょっと今から仕事やめてくる」のあらすじ・ネタバレ(&感想)でした!
再確認しておくとヤマモトの正体は「山本優」
優は純とそっくりの兄弟で、純の身投げをとめられなかったことを後悔している人物です。
最初、隆とはまったくの初対面でしたが「純の二の舞」を止めるために同級生を騙って近づきました。
結末では、そんな優に焦点を当てた物語が少しだけ描かれています。
臨床心理士となった優の前に現れたのは、心理カウンセラーとなった隆。
今度は隆が優を救う番…というラストでした。
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- 『君に届け』
- 『NANA-ナナ-』
はじめまして。
実は、数日前に、映画を観る前に、こちらを読んでしまいました。
そして、今日映画を観てきました。
先輩とのこと、辞めてからのこと、原作と大分違っていましたね。
どっちかと言うと、原作の方が好みでした。
なので、読めてよかったです。