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柴崎友香「寝ても覚めても」あらすじと結末のネタバレ!映画化も!

柴崎友香「寝ても覚めても」が映画化!

東出昌大さんが1人2役を演じるということでも話題になっていますね。

『ラスト30ページ間で起こることは、生涯忘れることができない』

これは小説「寝ても覚めても」の帯や裏表紙のあらすじに書かれている一文なのですが、なんとも気になるじゃあありませんか!

さっそく小説を読んでみたのですが…確かにラスト30ページは衝撃的でした。

むしろラスト30ページこそが「本編」であり、それまでの約280ページは「お膳立て」だった…とすら感じられます。

というわけで今回は、映画の原作となる小説「寝ても覚めても」のあらすじとネタバレ!

消えた恋人。生き写しの男。10年の恋。

その結末に待つものとは!?

柴崎友香「寝ても覚めても」のあらすじとネタバレ!

1999年4月。大阪。

泉谷朝子は社会人になったばかりの22歳。

ある日の昼、朝子は偶然出会った同じ年の男の子「鳥居麦(とりい ばく)」に心ときめく。

その日の夜、朝子は偶然にも街で麦と再会。朝まで遊んで友達になる。

信じられない。こんな奇跡があっていいのだろうか?

麦と一緒にいる間、朝子の心臓はずっとドキドキしていた。

 

2か月後。

朝子と麦は恋人関係になっていた。

麦は「さあちゃん」と朝子のことを呼ぶ。

頭を撫でられると嬉しい。

日常に麦がいることに、朝子はいつまでも心ときめいていた。

 

ただ、麦にはちょっと変わったところがあった。

今までどうしていたのか、その経歴は謎。

ふらりといなくなったかと思うと、数時間帰ってこなかったりする。

朝子のためなら、麦は躊躇なく暴力を振るう。きっと常識に外れたことだってしてみせる。

だけど、恋は盲目。

友人の心配も、恋に落ちた朝子の耳には届かない。

「あさちゃんは、ああいうやり方(暴力)でオッケーなん?っていうか、かなりあかんと思うねんけど」

「うん。すごい好き」

友達の春代は大げさにため息をついてみせたが、それだってどうでもいい。麦が好き。

 

11月。

麦が4日間も帰ってこなかった。

もう帰ってこないかと思った。

帰ってきたとき、麦は泣きじゃくる朝子を抱きしめて言った。

「おれは、遅くなってもちゃんと帰ってくるから、だいじょうぶ」

朝子の好きな低い声。

「さあちゃんがいるところに帰ってくる」

麦の言葉はほんとうだと思った。やさしい顔。難しいことも悪いことも、なんにもない顔。

この人が好きだ、と思った。

ずっと、この先も長いあいだ、好きだと思った。

 


 

2002年10月

麦が帰ってこなくて、2年9ヶ月が経った。

1999年12月、麦はふらりと上海に行った。それっきりだ。

麦はもう帰ってこないだろう。

いくらそう思ってみても、朝子の心には麦が貼りついていて、消えてくれない。

 

2005年7月

朝子は東京にいた。

つきあう女友達も、仕事も、変わっている。

新しい仕事の1つであるアパレル店兼カフェの使い走りで、朝子は新しくビルに入ってきた事務所へと向かう。

そこで出会ったのは、思いがけない「顔」だった。

心臓が、大きく一つ打つ。その後は速く打ち続けた。

その顔が、どうしてそこにあるのか、わからない。

どうしても、もう一度、ほんの一瞬でもいいから、見たいと思っていた「顔」

麦の顔。

 

…しかし、当たり前のようにその顔の持ち主は麦ではなかった。

名前は「丸子亮平」

3歳年下で、よく見ると体格も麦とは違う。

それでも、その顔は、麦の顔だ。

朝子は思い切って「麦ですか?」と尋ねてみるが、亮平はきょとんとしている。

違う、やっぱり別人だ。

 

2006年

1月。朝子の部屋に亮平が来た。

駅で貧血になって倒れた朝子を、たまたま亮平が介抱して自宅まで送ってくれたのだ。

散らかり放題の朝子の部屋に文句を言いながらお茶を飲んで、亮平は帰っていった。

さっきまで亮平がいた。今はもういない。

いないから、いてほしい、と朝子は思った。

 

10月。

朝子と亮平は恋人関係になっていた。

亮平のことが好きだった同僚の千花ちゃんが泣きわめいたので、アパレル店兼カフェの仕事は辞めた。

亮平は優しいし、面白い。

友達のマヤちゃんは、そんな亮平が朝子にはピッタリだと言う。

亮平の顔が見えると安心する。そういう気持ちになる人、と思った。

もし、今麦の顔を見たとしても、きっと、亮平に似た人と思う、と思った。

 


 

2007年

驚くべきことが起こった。

麦が俳優としてテレビに出ている。

どうやら中国でスカウトされて、俳優になったらしい。

映画やドラマに出演する「鳥居麦」は日に日に有名になっていった。

 

2008年

久しぶりに春代と会った。

亮平を見た春代は「なんとなく麦に似ている」と言う。

…なんとなく?瓜二つではなく?

麦と亮平は同じ顔だと思った。けど、そう見えていたのは私だけだったのだろうか?

朝子は一瞬だけ混乱したが、こちらを見ている亮平に気づいて思い直した。

(亮平の顔が好きだ。亮平みたいな亮平の顔)

 

今や麦は映画の主演を務め、気になる男第1位に選ばれるほどの人気者だ。

(わたしは、鳥居麦とは関係ない)

朝子は、ストンと納得した。

 

亮平の大阪転勤が決まった。

朝子は亮平に「好きだ」と伝えて、一緒に大阪に引っ越すことに決めた。

 

4月。朝子、31歳。

大阪に戻る前に、朝子は友達主催の花見に来ていた。

たまたま近くで麦が生中継していると知り、朝子は麦に一目会おうとするも失敗。

麦をのせて去っていくテレビ局の車に、後ろから手を振るのが精いっぱいだった。

もう、麦は会おうと思っても会えない人間なのだ。

 

引っ越しのため、部屋の片づけをしていた。

もうすぐ来るという亮平に進捗を伝えると「偉いな」と褒めてくれた。うれしかった。

これからわたしの人生に亮平がずっといてくれたら、わたしはちゃんとしていられると思った。

人を思いやって人生を過ごせると思った。

 


 

※ここからラスト30ページに突入します!結末までネタバレ満載なのでご注意ください!

 

「さあちゃん」

部屋のドアを叩く音がする。その呼び方をするのは亮平ではない。麦だ。

朝子は鍵を閉めたままドアに寄り添う。

「さあちゃんが手を振ってた。だから会いに来た」

朝子は、自分が何も迷っていないことを、とっくに知っていた。

鍵を開ける。麦がいる。朝子は麦に飛びついて首のところに両手をまわした。長い間、待っていた。

「これから、どこに行くの?」

「白浜」

「和歌山の?」

「車乗せてってもらえるから、だいじょうぶだよ」

「うん」

朝子は5分で荷物をまとめると、麦と一緒に家を出た。

もうすぐ亮平が来ることなど、どうでもよかった。

 

車には麦の映画を撮った監督と、監督の彼女らしき「ひとみさん」が乗っていた。

2人は鹿児島で一緒に暮らすのだという。

「麦、仕事は明日休みなん?」

「辞めた」

目の前で、麦が笑っていた。懐かしいという気持ちを、今初めてわかった、と思った。

 

亮平から電話がかかってきたので、謝った。

 


 

最低

天王寺駅の近くで車を降り、列車に乗る。

目的地は空き家になっている麦の祖母の家。

白浜にほど近い駅で降りる。

田舎だ。

向かってみると、麦の祖母の家は放火のせいで焼け落ちていた。

麦「どうしようか」

朝子「だいじょうぶ、なんとかなるから」

とりあえず、部屋が余っているという監督の家に世話になることにした。

次の目的地は鹿児島。まずは、新幹線で博多駅に向かう。

 

駅で待っている時、メールが届いた。

「もう連絡しなくていいです」

差出人は東京で亮平と一緒に仲良くしていた親友の「はっしー」

同じく親友だったマヤちゃんからも同じ文面のメールが届いた。

春代からは電話が来た。春代は花見の日に、一緒に麦を追いかけてくれた親友だ。

「わたしは、麦くんに会ったほうが気持ちの区切りがつくと思ってん。だから、大阪に帰る前に会って終わりにした方がいいって」

「わたしも、そう思ってた。昨日は」

「だって、もう十年も前のことやん」

「十年…」

「あのさ、あさちゃん。わたし怒ってる。亮平君のこと好きやし。あさちゃん、最低やと思う。だから、しゃべったりするのこれが最後」

「わかった」

春代からの電話が切れた。留守番電話が入っていた。

麦に朝子の住所を教えたのは、大阪時代の友達だった。

「用事、終わった?」

「終わった」

麦が手を差し出した。わたしはその腕をつかんで立ち上がった。

新幹線に乗る。

新神戸を過ぎると、麦は眠ってしまった。

わたしは麦の髪や手を、ずっと撫でていた。

 


 

車中にて

春代からメールが届いた。タイトルも本文もなく、画像が添付されている。

それは、10年前に撮られた写真だった。

まだ若い麦や朝子が写っている。

新幹線の中じゃなくて、他に誰もいなければ、わたしは声を上げていたと思う。

違う。似ていない。この人、亮平じゃない。

隣で眠っている麦を見た。

亮平じゃないやん!この人!

「ごめんね、麦」

そっと呟いて、朝子は岡山駅で新幹線を降りた。

窓にもたれて眠ったままの麦を、長い長いプラットフォームで見送った。

 

結末

朝子は東京に戻った。

結局、監督と鹿児島に行かなかった「ひとみさん」の部屋に転がり込んだ。

 

8月。

朝子が歩いていると、腕を組んで歩く千花と亮平に出会った。

亮平のほうへ、三歩近寄って言う。

「わたし亮平を探してた。会ったら、好きって言おうと思ってた。だから今言う。亮平、わたし亮平と一緒にいたい」

隣で千花がぎゃあぎゃあと騒いでいるが、相手にしない。亮平は黙ってこっちを見ている。

千花「三十過ぎて友達も仕事も家もないくせに」

「それはわたしの問題やからなんとかします。五分でいいからどっか行っててよ」

千花「最低」

「亮平」

わたしはもう一度名前を呼んだ。名前を呼ぶだけで、心が満たされていった。

 

「行こうよ、亮平くん」と腕をつかむ千花に、亮平は「ちょっと先行ってて」と言う。

千花「なにそれ、あんたら、気持ち悪いわ。最悪」

千花は吐き捨てるように言うと、どこからか現れた別の男と一緒に去っていった。

 

わたしと亮平の距離は、まだ二メートルくらい離れていた。

「会いたかった」

「おれはもう、会いたくない」

亮平はそのままわたしの横を通り過ぎて去っていったけれど、しばらくすると戻ってきた。

「なにしに来てん!」

怒鳴るような亮平の言葉に、言い返す。

「亮平に会いに来たって言うてるやん。亮平がこんなとこ歩いてるから会うんやん」

「そこに住んでるから。朝子が住んでたアパートの裏の家」

「わたしも一緒に住む」

できるだけ大きい声で言った。

「自分が何言うてるかわかってんのか」

「わかってなかったら、言わへんって。なんでもいいから、亮平が、いっしょにいてくれたらそれでいい」

近寄ってみる。亮平は動かない。

すぐ前まで近づく。手を触る。抱きしめてみる。

「おれは、おまえのこと信じてない。いなくなるって、思ってた。実際、だいぶ最悪やしな」

「今も?」

「たぶん」

努力しようと思った。

亮平から離れて、顔を見る。

「亮平に会おうと思って、ここに来た。もとの場所に戻ったら、会えると思った」

さっきまで降ってた雨のせいで、街中に水滴がしたたっていた。

亮平はしばらく、わたしの顔や、濡れた木や、道や、鮮やかな色の空を見ていた。

<寝ても覚めても・完>

 


 

小説「寝ても覚めても」の感想!

「おおう、すっきりしない…」というのが、読後の素直な感想でした。

小説「寝ても覚めても」の結末はとても曖昧で、何にも決着がついていません。

せめて、亮平が朝子を受け入れるのかどうかだけは知りたかった…!

とはいえ、これはいわゆる「真の結末は読者の想像におまかせ」パターンなので、まあ、それはそれでありかな、と。

個人的には亮平はなんだかんだ朝子をもう一度受け入れるのだと思うのですが、その後、2人がずっと幸せに暮らしていけるかというと「うーん、それはないんじゃない…?なんとなく…」という感じ。

今度は亮平が浮気するかもしれないし。

また朝子が訳の分からない行動するかもしれないし。

どうも朝子は突発的に感情に流されるきらいがあるので、また、何かやらかすんじゃないかなあ…。

 

結末予想は大外れ

『ラスト30ページで何かが起きる!』と言われれば、読みながらオチを想像するじゃないですか。

で、私が安易に考えたのは「麦と亮平、実は同一人物説」

物語の裏には、なにかしらSF的な力が働いていると予想したんですね。

だって「謎の男」「再会した同じ顔の別人」「10年の恋」ときたら、そう考えちゃいません?

が、ご存知の通り、この予想は大外れ。

物語冒頭で描かれていた「いきなり話しかけてきた年配の紳士」あたりは絶対伏線だと思っていたのですが、これも全然関係なし。

確かに予想外な結末ではありましたが、ファンタジー的な展開ではありませんでした。

 

…ねえ、じゃあ、麦って結局何だったの?

「謎の男」の「謎」は解かれないまま、彼は新幹線で博多駅へとフェードアウト。

知りたいよ、麦の経歴とか、秘密とか!

しかし、それもまた「読者の想像に以下略」なのでした。

 


 

小説「寝ても覚めても」の感想

小説「寝ても覚めても」は恋愛小説にしては異質すぎる作品だと言えるでしょう。

物語自体もそうですし、なにより筆致(文体)が恋愛小説的ではありません。

淡々と事実を描写していく叙事的な文体。

恋愛小説というよりは純文学に近い印象を受けます。

しかし、だからこそ、その淡々とした文章の行間から朝子の心情が伝わってくるような…不思議な読書体験でした。

 

そして、例の「ラスト30ページ」

端的に感想を言えば「ハァ!?」の一言。

10年経っても麦のことが忘れられず駆け落ちする…までは理解の範囲内に収まりますが、その後の「この人、亮平じゃないやん!」の件はもう理解不能でした。

で、朝子は自分で選んだ麦を捨てて、自分で捨てた亮平の元に戻ろうとするわけですが…千花の言う通り「どの面下げて」なわけですよ。

それなのに朝子は(ある意味では)一切ブレずに亮平に「ずっと一緒にいたい」なんて台詞をぶちかまします。

「なんなのこの人…?」とモヤモヤしていたのですが、それを解決してくれたのは解説の豊崎由美さん。

豊崎さんは朝子のことを「エゴイスト」と表現しましたが、なるほど言いえて妙。

エゴイスト!

朝子の正体は究極の自己中心的女であり、エゴイストだったのです。

一度そう納得してしまうと、「寝ても覚めても」へのモヤモヤはかなり晴れました。

これは、激しい感情に突き動かされて生きる朝子というエゴイストの、その生き方を描いた小説。

そう自分の中で再定義して見つめなおすと、なるほど「寝ても覚めても」は面白い一冊だったと思えるのです。

 


 

まとめ

柴崎友香「寝ても覚めても」が映画化!

今回は原作小説のあらすじ、ネタバレ、感想をお届けしました!

結局『ラスト30ページで…!』と強調されていた物語の結末は「元カレ(麦)と駆け落ち」からの「やっぱり今カレ(亮平)の方が好き!」という展開でしたね。

普通に考えれば「何してんの!?」という感じの急展開ですが、そこで朝子に起こった心情の変化こそが、この物語の肝だったのだと思います。

ラスト30ページの意味を理解するためには、そこに至るまでの朝子の10年を今一度振り返らなければなりません。

積み重ねてきた幸せな環境を、なぜ朝子は自ら壊したのか?

そして、なぜ全てを失ってまで手に入れたものを、あっさりと捨ててしまったのか?

その理由が気になるという方は、ぜひ、小説「寝ても覚めても」を手に取ってみてください(こればっかりは端的な文章で伝えられるものではないと思うので…)

 

また、その答えは映画「寝ても覚めても」でも得られるかもしれません。

映画「寝ても覚めても」は2018年公開。

東出昌大さんが「麦/亮平」を演じるということで、2人の人間をどう演じ分けるのかにも注目したいところです。



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