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『小説の神様』ネタバレあらすじ!小余綾詩凪の秘密とは?

相沢沙呼『小説の神様』を読みました!

ジャンルでいえば「青春もの」で、ちょっとライトノベルっぽい雰囲気の作品でした。

この小説を120%楽しめるのは感性豊かで定番の展開を新鮮に楽しめるような若い世代ではないかと思います。

※逆に、ベテランの読書家さんにはちょっともの足りないかも

とはいえ、百聞は一見に如かず!

この記事では『小説の神様』のあらすじから結末までの展開をまとめてあるので、よかったら参考にしてくださいね。

ぱんだ
ぱんだ
行ってみよう!

あらすじ

僕は小説の主人公になり得ない人間だ。

学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。

物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪(こゆるぎしいな)

二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。

彼女の言う《小説の神様》とは?

そして合作の行方は?

書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!

(文庫裏表紙のあらすじより)

ぱんだ
ぱんだ
映画の予告もどうぞ

登場人物

名前説明
千谷一也売れない高校生作家 文芸部に所属
小余綾詩凪人気作家 一夜の高校へ転入
千谷雛子一也の妹 難病で長期入院中
九ノ里正樹文芸部部長 一夜の友人
成瀬秋乃文芸部の一年生 小説を書いている


ネタバレ

病気の妹の治療費のためにも「売れる小説」を書きたい一也は、人気作家である詩凪と合作で小説をつくることになります。

具体的には詩凪が物語(プロット)を考えて、一也がそれを文章にするという分担。

漫画でいえば原作と作画の関係ですね。

詩凪が考えたプロットは、非の打ち所がないほどおもしろいものでした。

詩凪が「現役高校生の美少女作家」という話題性だけで売れているのではないことを、一也は改めて痛感します。

しかし、だからこそ……

 

「僕は、今回の仕事を降りる」

 

一也は「自分が書けばせっかくの物語をつまらなくしてしまう」と合作から逃げ出します。

しかし、他ならぬ詩凪がそれを許しませんでした。

「なにをやっても駄目だった」と叫ぶ一也に、詩凪は真っ向から立ち向かいます。

「違う。あなたは、あなたのことが嫌いになってしまっただけ。誰かに嫌われるのは、とてもつらいもの。だから、自分で自分を嫌おうとしている。だから……書くことをやめてしまっている!」

 

「わたしは、あなたの物語を読みたいの」

 

詩凪の言葉が、優しい表情が、一也の心のよどみを洗い流していきます。

※以下、小説より一部抜粋

僕は僕が嫌いだ。こんなにも卑屈で、失敗ばかりで、いつまで経っても成長なんてしない、空っぽの自分が大嫌いだ。

自分で自分を嫌いなのだから、読者が僕の書く人間を嫌いになるのは、やっぱり当然のことなのだろう。

きっと楽なんだろうな。逃げるようにして、忘れるようにして。誰もが憧れる人間を、誰もが好きになれるような人間を書いて夢想することは、楽なんだろう。

けれど、だからこそ僕は、僕という人間から逃げるべきではないのかもしれない。

僕は僕を書きつづけなくてはならない。

僕の中にも物語があるというのなら。

(中略)

この(合作の)主人公は、無神経で、臆病で、人の気持ちがわからなくて、失敗ばかりしていしまって。

とても自分によく似た、僕にしか書けない主人公だ。

もし、この物語を求めている人がどこかにいるのだとしたら。

その人たちは、僕やこの主人公と同じように、きっと涙を堪え、歯を食いしばって、それでも日々を必死に生きているのだろう。

誰の中にも物語はある。

たとえ空っぽでも、僕は書かなくてはならない。この胸から沸き立つ涙でペンを浸し、物語を綴ろう。それがどんなに醜くても、この身から溢れるものがある限り、書き続けることはできるのだから。

強くなくてもいい。

失敗しても、嫌われても、挫折を繰り返してしまっても。

君は、主人公になってもいいのだと、ページを捲る誰かへ、そう伝えるために。

一也は詩凪のおかげで再び小説への意欲をとりもどし、自分にしか書けない自分らしい物語を綴ろうと決意したのでした。


物語の断絶

ある日、ふたりは夜通しで執筆します。

パソコンの画面をにらみながらキーボードに置いた指を動かす一也と、隣に座ってそれを見守る詩凪。

一也が表現に詰まると、詩凪がアイデアを出して……一夜のうちに物語はどんどん出来上がっていきました。

そして、翌朝。

一也は自分のなかに、久しく忘れていた気持ちがよみがえっていることに気がつきます。

きっと、徹夜で頭がおかしくなっているんだろう。

彼女と肩を並べて小説を書いて――。

小説を書くことが、こんなにも、楽しいと感じてしまうなんて。

合作が終わったら自分の小説を書いてみよう。

「小説家を辞める」と口にするほど思い悩んでいたのが嘘だったかのように、一也の気持ちは明るく前向きになっていました。

しかし……

 

「打ち切り、ってことですか……?」

「はい。すみません」

 

出版社から突きつけられたのは、厳しい現実でした。

打ち切りを宣告されたのは、シリーズ化するはずだった一也のデビュー作。

もう二作目の原稿も送っていて、三作目の構想も練っていたのに、すべてなかったことにされてしまいました。

その理由は……

『発売したばかりのデビュー作の文庫が売れなかったから』

せっかく詩凪のおかげで前向きになれていたのに「結局、自分は売れない作家なのだ」と一也のメンタルはネガティブモードに逆戻り……を通り越して闇(病み)モードへ。

今度は詩凪がどんなに励ましても、一也の心には届きません。

なぜなら、詩凪は売れている作家だから。

きれいな理想で励まそうとする詩凪に、一也は(八つ当たりだと思いながらも)叫ばずにはいられませんでした。

「誰かの心に響いて、それでなにが変わるっていうんだ! 部数が増えるのか? 書店の平台に並ぶようになるのか? 作家を続けられるのか? 大勢の人に読んでもらえるのか?

雛子の病気が治るのかッ!

たった一人の心を動かして、物語の断絶は避けられるのかよッ!

読者が一人でもいるから、打ち切りはなしにしましょうって、販売部が、営業部が、編集部が、そんなことを言ってくれるっていうのか!」

情けなく劣等感を爆発させる一也に喝を入れようと、詩凪も言い返します。

「いい加減にしなさいよっ! あなたって本当に最低ね。自分が空っぽですって? あなたの中にあるのは、醜い嫉妬心と過剰に膨らんだ承認欲求だけじゃない!

こんなの、自分の思い通りに行かないからって、みっともなく喚いてるだけの子どもと同じよ! どうしてあなたは、あなたの物語を愛してあげられないの!」

(中略)

「うじうじ情けないことばかり言ってないで、いいからさっさと面白い小説を書きなさいよッ!」

お互いに言葉を叩きつけ合う口論は平行線。

やがて肩を落としたのは、詩凪のほうでした。

 

「お願いだから、嫌いにならないで……。あなたの物語を……。あなたの物語を読んでくれる人たちを……。小説を、嫌いにならないで……。もう一度……誰かの心を震わせる、そんな小説を、わたしと一緒に書いて……。あなたには、それができる力があるでしょう……」

 

最後の、すがるような願い。

しかし、一也は詩凪を気遣うことなく、最悪の言葉を口にしてしまいます。

 

「いいよな、君は。どうせ美少女作家様は、なにを書いたって売れるんだから」

 

終わり、でした。

詩凪の全身から力が抜け、気まずい沈黙が広がっていきます。

そして……

「いいわ……。解散、しましょう」

なにもかも諦めるように、詩凪は合作の中止を……物語の断絶を受け入れたのでした。


小余綾詩凪の秘密

絶交に近い別れ方をしても、学校では同じクラスで、しかも隣の席。

だから、詩凪の異常に最初に気づいたのは一也でした。

自習時間。国語のプリント。

学年一位の学力を誇る小余綾詩凪にとって、なんてことのない課題。

だというのに、詩凪は手を震わせ、苦しそうに息を荒げ、額には脂汗を浮かべていました。

小余綾の症状には心当たりがあった。いわゆる、一種のパニック障害だろう。

そう思った瞬間、一也はハッとしました。

  • 詩凪がプロットを口頭で説明していた理由
  • 詩凪のメールがいつもそっけなかった理由
  • 人気作家である詩凪が合作しなければならなかった理由

 

「君は……。もしかして文字が書けないのか」

 

二人きりの保健室。

ようやく落ち着いた詩凪は弱々しくうなずきます。

「笑えるでしょう。小説家が原因もわからず、文章を書く能力を失うだなんて……。無理に書こうとすると、こんな状態に陥って……」

国語のプリントには作文問題がありました。

それがパニック障害のトリガーになっていたのです。

詩凪が失ったのは『誰かになにかを伝える文章』を書く能力であり、日常的な、たとえばテストの空欄に答えを書き込むような行為であれば問題なく行えていました。

もし友人の九ノ里から「詩凪の身に降りかかった事件」を聞かされていなければ、一也もずっと気づかなかったかもしれません。

 

「原因は、わかっているんだろ」

「そう……。知っているのね。まぁ、ネットで調べれば、すぐわかることだものね……」

 

きっかけは、事実無根の『盗作騒動』でした。

たまたま同じような物語が、同じタイミングで出版されただけ。

それだけのことで詩凪は大御所作家の物語を模倣した卑怯な作家というレッテルを貼られてしまいました。

少し考えれば出版までに必要な時間の問題で、盗作など無理だったとわかります。

しかし、姿の見えない匿名の《悪意》はその事実に目もくれず、まるで楽しむかのように詩凪へ心無い言葉を浴びせました。

 

『パクリ女、謝ってください』

『なんでだんまりなの? 可愛いからってなんかいい気になってるだけなんじゃない?』

『証拠はいっぱい挙がっています。わたしたちが作ったこのサイトを見てください。早く謝罪したほうがいいですよ』

 

やがて詩凪への攻撃はエスカレートし、学校や家まで特定され、嫌がらせされるようになり……。

そうして、小余綾詩凪は物語を失いました。

※そもそも一也の学校に転入してきたのも、この事件があったからですね

なにより詩凪がショックだったのは、最初に攻撃してきたのが大御所作家の読者だったことです。

その大御所作家は詩凪と同じく、人間の愛や優しさをテーマにした物語を書いていました。

よりにもよってその物語を読んだ読者が、詩凪に剥き出しの悪意を向けてきたのです。

詩凪は嫌というほど思い知らされました。

 

「物語に、力なんてない……」

 

詩凪が小説を書けなくなった一番の理由は、そう悟ってしまったからでした。

「あなたの言う通りよ。物語が人の心を動かすなんて、傲慢もいいところだわ。ただいっとき、なにかを得たように錯覚した気になって、本を閉じた頃には忘れてしまう……。愛や優しさをどれだけ綴ったところで……。人の心には、届かない。なにも、届かない……。」

一也はとっさに口を開きますが、喉になにかが詰まってしまったかのように、言葉が出てきません。

誰よりも物語を愛している彼女が、どうしてこんな目に遭わなければならないのか。

怒り。哀しみ。やるせなさ。

ぐちゃぐちゃになった感情の重みに屈するように、ただ、うつむくことしかできませんでした。


小説の神様

「今までありがとうね」

弱々しく笑う詩凪に、一也はなにも言うことができませんでした。

さんざん「現実は甘くない」と言ってきた一也に、いったいなにが言えるというのでしょう。

詩凪は物語を失う前に別名で、つまり覆面作家として一冊の本を出版したといいます。

これまでと同じように書いたその本は……売れませんでした。

今までの本が売れていたのは「現役高校生の美少女作家」という肩書きのおかげだった……。

詩凪はある意味、一也よりも深い絶望を味わっていたのです。

「わたしには、小説の神様なんて、いなかった」

最後に詩凪はぽつりと、そうつぶやきました。

 

合作は中止になったのに、一也の心は晴れません。

「いいよな、君は。どうせ美少女作家様は、なにを書いたって売れるんだから」

知らなかったとはいえ、一也の言葉が詩凪を傷つけ、追いつめていたのは事実です。

ただ、だからといって一也にはなにをどうすればいいのかわかりません。

すっかり身動きが取れなくなった一也の背中を押したのは、長年の友人である九ノ里の言葉でした。

「苦しいとき、悲しいとき、勇気が足りないとき。俺は、そんなときにこそ大切な本を読みたい。そうして、力を分け与えてもらいたい。なにをすればいいかわからないのなら、読書をするんだ。一也。面白い小説を教えてやる」

そう言って九ノ里は一冊の文庫本を一也に手渡します。

 

「千谷一夜という作家のデビュー作。俺の好きな本だ。めちゃくちゃ面白いぞ」

※千谷一夜は一也のペンネーム

 

九ノ里に勧められるまま、一也は自分が書いた物語を読み始めます。

ネットで酷評され、文庫は売れず、自分でも駄作だと決めつけていたデビュー作。

それなのに、一也はいつのまにか時間を忘れて物語の世界に没入していて……。

やがて本を閉じたとき、一也の迷いはいつのまにか消えていました。

九ノ里の言葉は、極めて正しい。

この小説は、とても無名な作家が書いたものだけれど、めちゃくちゃ面白い。

他の人がなんて言おうが、ものすごく面白かった。

僕を勇気づけてくれる言葉で、溢れている。

一也は詩凪に電話し、有無を言わさずファミレスに呼び出します。

傷ついた詩凪に、伝えたい言葉を、まっすぐに伝えられるよう祈りながら。

神様――小説の、神様。

この僕が、こんな空っぽで、日陰で生きるような人間の僕が。

物語の主人公になることを、許してもらえるのなら――。


願い

合作を完成させようと意気込む一也と、うなだれて首を振る詩凪。

いつのまにか二人の役割は入れ替わっていました。

詩凪は残る最終章がどうしてもおもしろくならないと暗い顔で言います。

「やっぱり、無理なんだわ……。こんな物語じゃ……。誰の心にも、響いたりしない」

少し前までは、一也もそう思っていました。

物語に力はない。言葉は誰にも届かない。

けれど、今は……

「誰にも響かないなんて、そんなことはない。いいか。君の物語は面白い。たとえ君の理想に近づけないのだとしても、僕が面白くしてやる。物語の力を信じてるんだろう。誰かの胸に響く話をつくりたいんだろう。僕が君の物語に色を与えてやる。音を与える。匂いを与える。心を与える……。だから、面白くなる。そう信じるんだ」

一也には詩凪がどうして最終章に苦しんでいるのか、その理由に心当たりがありました。

これまでの詩凪の物語にあって、今度の合作にはないもの。

それは……

「この物語には、語られる愛と、人の優しさが、欠落してしまっている」

物語と一緒に、詩凪が失ってしまったもの。

「でも、現実なんてそんなものでしょう」

詩凪は吐き捨てるように言います。

まざまざと見せつけられた醜い人の悪意。

残酷な言葉の数々。

それが《現実》なのだ、と詩凪は嫌というほど思い知らされました。

 

「けれど、物語は、願いだ」

 

迷うことなく、一也は伝えます。

現実は、しょせんこんなもの。優しさなんて、愛なんて、ありえない。

人間は醜く汚く穢(けが)らわしい。

それが真実なのだろう。リアルなのだろう。

そんなことはあり得ない。そんな人間はいない。そんなのは現実ではない。

それらに縛られて書くことは、それらに忠実に従って書くことは、恐らくは正しい小説の書き方の一つだと思う。

けれど、そんな書き方は、きっと読んでくれる人たちを幸せにしない。

たとえ本当の現実がどんなに過酷であったとしても。

たとえそんなことは起こりえないと思っても。

それはありえる。あると願えば、存在する。偽物じゃなくなる。

小説が願いなのだとするならば、そうであってもいいじゃないか。

僕は、優しいお話を書きたい。

誰かの胸に、ずっと残り続けるような、優しいお話を届けたい。

君もそうだろう。

少しずつ、詩凪の目に光が戻っていきます。

どうすれば面白い物語になるか。

さっそく頭を回転させている詩凪を見て、一也は満足そうに口元を緩めました。

 

「君は不動詩凪だ。君ならできる」

※小余綾詩凪のペンネーム


結末

完成したプロットをもとに、一也は物語を綴っていきます。

もがき、苦しみ、それでも自分の想いを伝えようと必死に叫ぶ主人公は、まるで一也のようでもあり、詩凪のようでもあり……。

僕もまた、そうなのだ。

伝えたいことがある。

けれど、なにを伝えたいのか、うまく言い表せない。

言葉では足りない。言葉では説明できない。

この世界のどこかで、僕と同じように嘆き苦しんでいる人たち。

あらゆる人々へ、叫びたいことがたくさんある。

だから、きっと僕は物語を書くのだろう。

僕らの中には、誰にだって物語がある。

そこに込められた願いが、いつか届くように、叶うようにと、僕らは物語を綴り続ける。

もし、小余綾の言う通り、小説に力があるのなら。

きっと、それは届くだろう。

きっと、それはかたちになるのだろう。

泣かないでほしい。今はとても辛くて、毎日のように泣いてしまうこともあるのかもしれない。それでも、いつか泣かないですむときが、きっとくるよ。

そのための物語を綴ろう。

そのための物語を送ろう。

一也の指は止まることなく、最終章はたった一晩で出来上がりました。

10時間ぶっ続けで執筆した一也は、倒れ込むようにして眠ります。

目が覚めたのは、すっかり日が落ちて暗くなったころ。

寝起きにインターホンの音が聞こえ、一也はなにも考えずに玄関の扉を開きます。

するとそこには、詩凪が立っていました。

 

「千谷くん、ありがとう」

 

詩凪の腕には、大切そうに書き上げたばかりの原稿が抱かれています。

今にも泣き出しそうな、それでいて幸せそうな、感情が入り乱れた表情の詩凪に、一也は見とれてしまい、なにも言うことができません。

 

「わたしの物語を……かたちにしてくれて、ありがとう」

詩凪が一歩近づくと、その小さな頭が一也の肩に乗りました。

「ここにはわたしがいる。あなたがいる。ページを捲る誰かがいる……。わたしたちはこの物語を胸に抱いて、ずっとずっと生きていくのだわ。わたし、小説が好き。大好きよ」

 

最後に詩凪は、自分の手で最後のセリフを修正すると宣言しました。

一也の脳裏に国語の作文が書けず息も絶え絶えになっていた詩凪の姿が浮かびます。

「大丈夫か?」

「大丈夫。きっと、大丈夫……」

そう言いながら、詩凪の指先は震えていました。

息は荒々しくなり、顔には苦悶の表情が浮かびます。

しかし、それでも、詩凪は一文字ずつ、まるで恐怖に打ち克とうとするように書き進めていきます。

一也は唇をきつく結んで、心の中でエールの言葉を送りました。

辛くても、苦しくても、ペン先を動かし続けろ。

いつかページを捲ってくれる誰かが、泣かないですむように。

君は小説家だ。

どんなに苦しくても、どんなにつらくても、他にどんなに楽な道があっても――。

君は、小説を取るのだ。

そしてそれは、きっと僕も同じだと思う。

他に何もできないから書くのではない。

それが僕らの道だから。

僕らが自ら選んだ、とても尊い道だからなのだ――。


エピローグ

原稿は脱稿し、あとは発売を待つばかり。

時間を持て余す一也の前に現れたのは、詩凪でした。

「まったく……ほら、行くわよ」

「行くって、どこにだよ」

「決まっているでしょう」

一也の手を引いていた詩凪はくるりと振り返ると、いたずらな笑顔を見せながら言います。

 

「わたしたちの、次の物語を作りにいくのよ――」

 

ぐいぐいと手を引く詩凪の後ろ姿を眩しそうに眺める一也。

物語のラストを〆るのは、そんな一也のモノローグです。

なぁ、小余綾、君はさ、僕に何度も何度も、こう訊ねていたよな。

僕が、なんのために小説を書くのかって――。

僕は優しい物語を綴りたい。

僕は君と同じで泣き虫だから、同じように涙を流している人たちが、自分は一人ではないのだと、ほっと安堵できるような、そんな優しい物語を綴っていきたいんだ。

他にも、答えはいろいろあるよ。

自分が泣かないためでもあるし、妹のためでもある。お金だって大事だ。

けれど、そこへ新しく加わった理由を、僕は君にだけは話せないと思う。

僕は、今は君のために物語を綴ろう。

いつか、君が自分自身の手で物語を紡ぐことができるようになるその日まで。僕は君のために小説を書きたい。

大丈夫。それはきっとすぐのことだよ。

それまでの間、物語を愛する全ての人たちへ、僕たちの作品を届けよう。

怖くて、苦しくて、泣いてしまうことも、きっとあるだろう。

それでも、いつかのとき、世界の誰かが、もうそれ以上泣かないですむように――。

僕たちは、これからも、小説を書き続けていく。

<完>

続編『小説の神様 あなたを読む物語(上下巻)』が発売中!

詩凪と一也の関係がどうなるのか、とかいろいろ気になる……!

 

ぱんだ
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まとめ

今回は相沢沙呼『小説の神様』のネタバレをお届けしました!

では、最後にまとめです。

3行まとめ
  • 実は詩凪は小説が書けない状態だった
  • 一也と詩凪はお互いに支え合って合作を完成させる
  • 続編も要チェック!

今回のあらすじでは伝わらなかったと思うのですが、もうね、詩凪がめちゃくちゃかわいいんですよ!

毒舌なドSキャラだったかと思うと、正統派ヒロインな一面もあって、うん、とてもいい(語彙力)

そんな詩凪を演じるのが橋本環奈さんということで、映画もがぜん気になります!

と言いつつ、わたしのイチオシキャラは一也でも詩凪でもありません。

そのキャラが言った最高すぎるセリフとは……!?

よかったら↓の感想記事もどうぞ!

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映画情報

予告動画

キャスト

  • 佐藤大樹(千谷一也役)
  • 橋本環奈(小余綾詩凪役)

公開日

映画『小説の神様 君としか描けない物語』は2020年5月22日公開!

※新公開日は10月2日に決定!

ぱんだ
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またね!



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