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翔田寛「真犯人」のあらすじとネタバレ!犯人は誰?衝撃の結末!

   

こんにちは、若竹です。

翔田寛「真犯人」がWOWOWドラマ化!

主演の上川隆也さんをはじめとした、骨太の警察ドラマらしい『いぶし銀』なキャストがたまりませんね!

私は原作小説を読んだので、刑事たちの執念の物語がどのように映像化されるのか楽しみです。

『誘拐 × 時効』

警察小説の中でも王道のテーマを取り扱いながら、結末で明かされる『真犯人』はあまりにも予想外な人物でした!

果たして、41年間誰も解決できなかった誘拐事件の真相とは?

そして、過去の誘拐事件と現在の殺人事件のつながりとは?

というわけで、今回はドラマ化も決定した翔田寛「真犯人」のあらすじとネタバレをお届けします!

 

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翔田寛「真犯人」のあらすじとネタバレ!

平成27年8月2日。

静岡県警の管轄で殺人事件が発生した。

被害者は高齢の男性・須藤勲。中古車販売店の経営者。

被害者の腹部には刺し傷があり、それが致命傷になったものと思われる。

遺体が見つかった場所は、東名高速道路上り線の裾野バス停。

静岡県警はこの事件に対応すべく、裾野署に捜査本部を設置した。

 

同8月13日。

事件の捜査は予想以上に難航していた。

現在までに判明している手がかりと疑問点は次の通り。

・現場に落ちていた赤いプラスチック片には、須藤の指紋が残されていた。

・須藤には多方面に多額の借金があった。

・東京在住の須藤が、なぜ裾野に来ていたのか?

捜査本部は動機を「金銭関係のトラブル」と仮定。

しかし、金貸しが債務者を手にかけては元も子もないし、私的な交友関係には特にトラブルの種はなかったようだ。

つまり、有力な容疑者が見つからない。

 

膠着状態の捜査本部に新しい「筋読み」をもたらしたのは、須藤の身辺調査をしていた日下悟警部補と柳栄次郎巡査部長だった。

『41年前に発生し、未解決のまま時効を迎えた誘拐殺害事件』

須藤勲は亡くなった尾畑守くん(当時5歳)の父親であり、須藤の遺体が発見された東名高速のバス停は誘拐犯が第1回目の身代金受け渡し場所として指定した場所だった。

41年前の事件と、現在の事件がつながる。

日下は続けて報告した。

「尾畑守くん誘拐事件については、時効の1年前の昭和63年に特別捜査班が編成されて、再度、重点的な捜査が行われたということです。そのおりの管理官が現在もご健勝と伺いました」

なにせ41年も前の事件だ。人々の記憶も曖昧になっているし、証拠だって残ってはいないだろう。

しかし、27年前に再捜査した特別捜査班の管理官ならば、あるいは……。

「それは誰だ」という上官の問いに、日下は答える。

重藤成一郎元警視です」

 

当時の捜査状況を聞くため、日下と柳は重藤宅へと急行した。

 

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誘拐事件の概要

誘拐事件が発生したのは、昭和49年7月27日のこと。

その日は、尾畑一家が富士市の実家から三島市の借家へと引っ越して来た日だった。

母親の尾畑小枝子が目を離したすきに、いつのまにか守くんの姿は消えていたという。

その後、犯人から身代金を要求する電話がかかってきたことから、これが誘拐事件であることが発覚。

犯人は何度か身代金受け渡し場所を指定したものの、警察を警戒したのか、結局姿を見せることはなかった。

4回目の身代金要求を境に、犯人からの連絡は途絶。

事件発生から23日後の8月19日、東京の多摩川で守くんの遺体が発見された。

遺体の後頭部にはコンクリートに突き倒されたかのような殴打痕が確認されたが、正確な死亡推定日時は不明。

犯人は逮捕されることなく、やがて事件は時効を迎えた。

 

【尾畑家の人々】

・尾畑小枝子…守の母。夫の須藤勲とは事件の数か月前に離婚していた。

・尾畑守…被害者。当時5歳。

・尾畑理恵…守の姉。当時7歳。

・尾畑清三…小枝子の父親。地主。引っ越しを手伝った。

 

【尾畑家の引っ越しについて】

・尾畑家の引っ越しは予定日よりも前倒して行われた。

・事件前日、清三は守を連れて借家に家具を搬入していた。

・事件当日、小枝子が理恵と一緒に借家に到着したとき、守は清三に添い寝されて眠っていた。

・清三は寝ている守を残して理恵を親戚の家に連れていった後、午後5時半に実家へと戻った。

・小枝子が外に飛び出そうとする守を家の中に呼び戻す姿が、向かいの家の住人によって目撃されている。

・小枝子が守の姿を最後に見たのは午後3時すぎ。

・午後6時ごろになって守の姿が見当たらないことに気づいた小枝子は、派出所へと駆け込んだ。

 

【事件の推測と疑問点】

5歳の男の子が引っ越しではしゃぐのは当然のことだ。

一度は母親に呼び戻されたものの、おそらく守くんは再度家から飛び出し、そこを誘拐されたのだろう。

引っ越しは予定外の日取りで行われたため、事件は突発的に発生したものと思われる。

一方で、尾畑家が地主であると知っているうえでの計画的な犯行とも考えられる。

特に犯人が警察の逆探知と録音を警戒して、隣の家に身代金要求の電話をかけてきている点は、計画的な犯行を思わせる。

しかし、それにしても不明なのは犯人の目的だ。

結局、犯人は身代金を手にすることなく姿を消した。

身代金の要求はたった4回のみ。

一般的な身代金誘拐と比較したとき、その諦めのよさはどうにも不自然だ。

それに、のぞき癖があったという向かいの家の住人以外、当日の守くんを目撃した人間がいないことも気にかかる。

いったい犯人は何のために、そしてどうやって守くんを誘拐したのだろうか?

 

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昭和63年の回想

昭和63年7月28日。

重藤(当時45歳)は尾畑守誘拐事件の再捜査を新任の県警本部長・榛康秀から命じられた。

それは時効を1年後に控えた未解決事件をなんとしてでも解決したいという熱意の表れ……ではなく、在任中に何もせず事件を迷宮入りさせたという「経歴の汚れ」を気にした榛(はしばみ)のパフォーマンスだった。

本当に事件が解決するかどうかは榛にとって問題ではない。

「熱意をもって未解決事件に取り組んだ」というアピールことが榛の狙いなのだ。

実際、榛は14年も前の事件が今さら解決するとは思っていなかった。

失敗したときは、すべての責任を管理官の重藤に押しつければいい。

キャリア組のエリートである榛にとって、ノンキャリア組の重藤はちょうどいい人身御供だったのだ。

重藤は一瞬でそんな裏事情を汲み取ったが、彼にできることは「全力を尽くします」と答えることだけだった。

 

7月31日。

会議室に集まった特別捜査班のメンバーは6名。

継続捜査班から合流した勝田久作庄司修

優秀な刑事として重藤が引き抜いた小此木晴彦白石聡

30代前半という若さの間島健二と、初老の辰川忠雄

重藤はそれぞれの組に3方向からの捜査を命じた。

中でも重藤が最も期待していたのは、重藤の先輩であり、人なみ外れた観察眼を持つ柔和な元刑事・辰川だった。

 

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捜査会議その1【昭和63年】

【勝田・庄司の報告】

勝田と庄司が目をつけたのは、米山克己という男。

米山克己は浪人時代に男児に性的ないたずらをしようとした前歴がある。

14年前の捜査では、大学生として東京に住んでいたため、容疑者リストから漏れていたのだ。

しかし、米山克己は昭和49年の夏、静岡に帰郷していたことが判明。

犯行は可能だった。

また、米山克己の父親である米山勇一は種苗店を経営しており、畑作業をしている尾畑清三とも仕事上のつきあいがあった。

米山克己が父親の顧客である尾畑清三が地主だと知っていた可能性は十分に考えられる。

『米山克己が身代金あるいはいたずら目的で守を誘拐した』

これが勝田・庄司組の筋読みだ。

 

【小此木・白石の報告】

小此木と白石は「須藤勲は何かを隠しているようだ」と報告。

特に中古車販売店の事業資金の出どころが怪しいと主張した。

 

【間島・辰川の報告】

遺体が発見された多摩川の近辺は車の往来も多く、夏ともなれば子供たちの遊び場として賑わう。

言い換えれば、人の目がありすぎる。

どう考えても、遺体の隠し場所としては不自然で不適切だ。

また、犯人は遺体を川底に沈めるため、重しと遺体をビニールひもで結んでいた。

ビニールひもでは、いずれ川の流れで切れてしまうことは確実であり、やはり犯人が本気で遺体を隠したとは考えにくい。

以上の不審点を踏まえて、間島はこう発言した。

「これは普通の誘拐事件じゃない。いいや、誘拐事件とは別種の犯罪だった可能性すらあるかもしれない。どう考えても、筋が通りません」

間島・辰川組の報告に対して、勝田・庄司組は「犯人が遺体を隠そうとしなったのは、騒ぎを近くで見て楽しむためだったからではないか?」と主張した。

 

ここまでの特別捜査班の筋読みは2つ。

1.米山克己による犯行

2.須藤勲による犯行

この後、間島・辰川はここに新たな『筋読み』を追加することになる。

 

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捜査会議その2【昭和63年】

【勝田・庄司の報告】

米山克己は親戚の車を勝手に乗り回し、駐車違反で取り締まられていた。

場所は尾畑親子が引っ越してきた借家のある三島市内。

しかも、日付は1回目の身代金受け渡し予定日だった7月30日。

犯人が米山だとすれば、身代金の受け渡しに犯人が現れなかった理由に説明がつく。

また、現在(昭和63年)の米山克己は警察に怯えているような態度をとっているし、当時(昭和49年)の米山克己は極度に尾行を気にしていたという証言もある。

米山克己には、警察には知られたくない『秘密』があるに違いない。

勝田と庄司は米山克己こそが誘拐事件の犯人だと主張した。

 

【小此木・白石の報告】

小此木と白石は新たな「筋読み」を展開した。

『もし、誘拐犯が秘密裏に尾畑親子(清三と小枝子)と取引していたとしたら?』

誘拐犯は警察に気づかれることなく、尾畑清三から身代金一千万円を受け取っていた、という仮定。

これなら誘拐犯から身代金の要求が途絶えた理由にも説明がつくし、尾畑親子が捜査に非協力的な態度をとる理由も説明できる。

さらに、もしその誘拐犯が実は須藤勲だったとしたら?

事件から半年後、須藤は一介の営業マンから中古車販売店のオーナーへと転身している。

そのために必要だった事業資金の出どころにも説明がつく。

では、なぜ須藤は実の息子を誘拐する必要があったのか?

須藤は小此木たちに「妻とは円満離婚した」と証言していたが、実際には離婚の理由は須藤の浮気であり、尾畑小枝子は激怒していたという。

その結果、須藤は親権を奪われ、さらに多額の慰謝料をも請求された。

誘拐はそのことに腹を立てた須藤の、小枝子に対する仕返しだったのではないか?

この場合、おそらく「誘拐」はちょっとしたいたずらで、実際には守とどこかで遊んでいたという想定が可能だ。

ちょっと脅かしただけで、本当はすぐに返すつもりだったのだ。

ところが、そのうちに須藤は「本当に身代金を手に入れられるのではないか?」と気づく。

そして、警察に知られることなく清三と裏で取引をした……。

この仮説における問題点は「須藤勲は守のことを溺愛していた」という事実だ。

実際、須藤は今も守の形見として潮干狩りに使った赤いポリバケツ・軟球・グローブといった品々を中古車販売店に飾っている。

はっきり言って、須藤勲が守を手にかけるはずがない。

しかし、もしそれが『不慮の事故』によるものだったとしたら…?

つまり、小此木と白石の筋読みはこのようにまとめられる。

・誘拐犯の正体は須藤勲であり、動機は妻だった小枝子への復讐だった

・須藤は尾畑親子と裏取引して身代金を手に入れたが、守は不慮の事故で亡くなってしまった

・慌てた須藤は手近な場所に遺体を隠した

多摩川の近辺にはプロ野球チームの練習場があり、大の野球ファンである須藤はよくそこに守を連れて行っていたという。

つまり、遺体発見現場と須藤勲にはつながりがあった。

守を連れ出した後、須藤がいつものように多摩川近くの練習場へ行っていた可能性は決して低くない。

 

【間島・辰川の報告】

尾畑親子は捜査に非協力的な態度をとっている。

それはほとんど拒絶に近い態度だといっていい。

確かに、守を助けられなかったばかりか、犯人さえ突き止められていない警察への不信感や怒りはあるだろう。

とはいえ、時効を1年後に控えた今、それでも犯人を捕まえてほしいと願うのが被害者遺族というものではないだろうか?

辰川は「尾畑親子の態度はどこか不自然だ」と報告した。

 

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特別捜査班、解散【昭和63年】

【米山克己の逮捕】

結論からいえば、米山克己は尾畑守誘拐事件の犯人ではなかった。

米山克己が抱えていた秘密の正体は「極左グループによる企業爆破事件への関与」

大学のサークルで極左グループの一員となった彼は、爆弾の材料となる除草剤を横流ししていた。

そうして爆破事件が起こったのは、昭和49年のこと。

米山克己が異様に警察に反応していたのは、この秘密が露見することを恐れていたからだった。

米山克己は逮捕されたが、尾畑守誘拐事件とは無関係だった。

 

【真相まであと1歩】

間島・辰川は新たな情報を手に入れていた。

当時、借家から飛び出してきた子供は守ではなく理恵だったのかもしれない。

向かいの住人は2階から見下ろす形で子供を目撃していた。顔をはっきり見ていたわけではない。そして当時、理恵は短髪で男の子にも見えた。つまり、向かいの住人が目撃した『男の子』が理恵だった可能性は十分にある。

当時、理恵は小枝子から虐待されていたのかもしれない。

証言によれば、子供の頃の理恵の体には青あざがあったという。夫の浮気でイライラしていた小枝子は、子供に手をあげていた?小枝子自身も幼い頃、清三の浮気に激昂した房子から虐待されていたという。

これらの情報を得たことにより、辰川は真実へとたどり着いた。

だが、事件解決のためには証拠か証言が必要だ。

辰川はすべてを話してもらうため、間島とともに清三の家を訪ねた。

今度ばかりは逃がさない。

清三の受け答えに潜む矛盾点を、辰川は次々に指摘し、追い込んでいく。

・荷ほどきが終わっていないのに、なぜ清三は5時半に帰ったのか?

・清三は向かいの住人にのぞき癖があるのを知っていて、それを利用したのではないか?

明らかに清三は追い詰められていたが、それでも気丈に言い放った。

「そこまで被害者を愚弄するのなら、おまえにちゃんとした証拠を見せてやる。しかし、ちょっと調子が悪いから、明日……いいや、午後八時にもう一度来い」

 

【そして、真相は闇の中へ】

辰川と間島が再び訪れたとき、清三は自宅で倒れ伏していた。

近くには遺書とともに、毒薬の瓶が転がっていた。

『特別捜査班の筋違いな捜査で、被害者家族があらぬ疑いをかけられ、憤慨に堪えないので、命をもって抗議する』

清三の残した遺書が致命傷となり、特別捜査班は解散を余儀なくされた。

すべての責任を引き受ける形で、重藤は辞職。

誘拐事件は未解決のまま、時効を迎えた。

 

【3つの筋読みの結果】

・米山克己は誘拐犯ではなく、別の事件の関係者だった。

・須藤勲を犯人とする説にはいまいち説得力がない。自分のせいで最愛の息子が事故に遭ったのだとしたら、その形見をわざわざ目に入る場所に飾っておくだろうか?

・尾畑親子には何か秘密がある。しかし、すでに清三は故人。事件の全貌を掴んでいたのかもしれない辰川も、今(平成27年)はもう亡くなっている。

 

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真犯人【平成27年】

重藤から話を聞いた日下と柳は、あらためて須藤勲が刺された事件を振り返った。

現場に落ちていた赤いプラスチック片……あれは須藤勲が中古車販売店に飾っていたという「守の形見の赤いポリバケツ」の一部だったのではないか?

調べてみると、中古車販売店には赤いポリバケツも、一緒に飾られていた形見の軟球・グローブもなかった。

従業員の話によれば、須藤が刺された前日までは確かに飾ってあったらしい。

つまり、須藤勲は待ち合わせ場所(遺体発見現場)にこれらの品々を持っていっていたのだ。

現場から軟球やグローブが見つからなかったということは、それらの品々は犯人が持ち去ったと考えて間違いない。

ということは、必然的に須藤勲と会っていた人物(犯人)は、守の誘拐事件の関係者だということになる。

怪しいのはもちろん、尾畑家の人間。

41年前の誘拐事件と現在の事件が、完全につながった。

日下と柳はこれらのことを捜査本部に報告。

捜査本部は2つの事件の関連性を認め、本腰を入れて尾畑家を調べることにした。

 

調査の結果、明らかになった事実は次の通り。

・尾畑小枝子は8月12日から肺がんのため入院中

・事件の前日(8月1日)、尾畑理恵は須藤勲と電話で話していた(尾畑理恵の証言)

・事件当日の夕刻、尾畑家から車(白いベンツ)が出ていくところが目撃されている

Nシステムで調べた結果、尾畑家の白いベンツは沼津インターから下線していた。

これで間違いない。

事件の夜、須藤勲と会っていたのは尾畑小枝子か尾畑理恵のどちらかだ。

 

事件の数日前、須藤勲は誘拐事件の日にとられた「ある写真」を見て、顔色を変えていたという。

おそらく須藤は写真の中に潜む『矛盾』に気づき、誘拐事件の真相に気がついたのだ。

だからこそ、須藤は尾畑小枝子、あるいは尾畑理恵を呼び出した。

守の形見の品々を持って。

そして、そこで腹部を刺されて亡くなった……。

 

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平成27年8月16日。

尾畑理恵が不審な行動を見せた。

小枝子が入院中の病院から帰宅する途中、理恵は思わぬ方向へとハンドルを切り、どこかへと走り出したのだ。

何台もの覆面パトカーがその後を追跡するが、お盆のUターンラッシュに巻き込まれてなかなか追いつけない。

どうやら理恵は、守の事件で身代金の受け渡し場所に指定されていた場所を巡っているようだ。

各地点には5分ほど停車するだけで、すぐに次の地点へと発進している。

いったい、何をしているのだろうか?

 

理恵を追う日下と柳に、本部から通信が入った。

捜査状況に大きな進展が見られたのだ。

1つ目の情報は「理恵の免許はAT限定である」ということ。

事件の夜に使われていたのは尾畑家の2台の白ベンツのうち、マニュアル車の方だった。

つまり、事件の夜に須藤勲と会っていたのは尾畑小枝子だったのだ!

そして、2つ目の新情報。

それは須藤勲が顔色を変えたという写真を見た間島の反応。

間島は写真の中に潜む『矛盾』に気がつき、そして事件の真相にたどり着いた。

無線機を通じて、その『真実』が日下と柳に伝えられる。

誘拐事件の真相は、あまりにも悲劇的なものだった。

 

そうしてついに、日下と柳は尾畑理恵に追いついた。

「8月1日に、須藤勲さんからかかってきた電話を受けたのも、翌日、裾野市へ行かれたのも、お母様の尾畑小枝子さんだったんですね」

理恵は無言で目を背ける。

日下は続けて言った。

「どうして、お母様は、お父様を手にかけられたのですか」

「………」

「強請られたから、ではないですか」

「…それは少し違います。確かに、父はお金を要求しました。しかし、それだけではなく、母に謝れと言ったんです。心の底から守の霊魂に謝れと、恐ろしいほどの剣幕で迫ったそうです」

「守くんを死に追いやったのは、やはり、小枝子さんだったんですね」

 

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41年越しの真実

昭和49年7月、引っ越しの準備で大人たちが忙しくしている一方で、守は退屈だった。

だから、手にしていた軟球をなんとなく投げた。

運悪く、ボールは玄関の靴箱の上の大きな花瓶を割ってしまう。

その音を聞いて駆けつけてきた小枝子は、とっさに守の左頬を掌で力いっぱい叩いてしまった。

それは元夫の浮気に苦しめられてきた小枝子の苛立ちと癇癪がもたらした、衝動的な行動だったという。

ともあれ、叩かれた守は玄関の上がりかまちから御影石張りの三和土(たたき)に仰向けに転倒し、後頭部を強打した。

絶叫した小枝子が守を抱き起こしたとき、その目からはすでに光が失われていた……。

 

後から駆けつけてきた清三は、あまりの光景に絶句した。

しかし、次の瞬間には「孫よりも可愛がっていた一人娘をどうしたら助けられるか?」と考えていた。

そこで清三がひねりだしたのが「守を誘拐犯に殺されたことにする」という筋書き。

清三は小枝子を説得すると、さっそく行動に移った。

引っ越しを前倒し、先に遺体を借家へと運んでおき、5時半に借家から出た後で遺体を多摩川へと運んだ。

遺体の隠し場所に多摩川を選んだのは、須藤勲に疑いの目を向けるため。

「8月1日に守が生きていた」という証言を得るために、小枝子は理恵をわざと家の外へと行かせて、呼び戻した。

向かいの家の住人にのぞき癖があるということは、清三が知っていた。

 

そう、尾畑守誘拐事件は、尾畑親子によるでっちあげだった。

守くんは借家に引っ越してきた時点で亡くなっていたし、誘拐犯など存在しなかった。

誘拐犯が身代金の受け渡し場所に現れなかった理由にも、妙にすんなりと要求を中止して姿を消した理由にも、これで説明がつく。

もちろん、尾畑親子が警察の捜査に非協力的だった理由にも。

 

実際、警察はもっと不審に思うべきだったのだ。

尾畑親子と向かいの住人以外、8月2日に守を見た人間が誰もいなかったという状況を。

そして、すべての可能性を考えるべきだったのだ。

守の遺体の死亡推定時刻の幅は広く、8月1日もその範囲内だったのだから。

 

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もうひとつの真相

守の誘拐事件の真相に気づいた須藤勲は、電話で尾畑小枝子を呼び出した。

指定した場所は、1回目の身代金の受け渡し場所。

須藤は守の形見を突きつけて「守の霊魂に謝れ」と迫ったが、小枝子が隠し持っていた包丁で刺されて亡くなった。

守の形見の品々は、尾畑小枝子が持ち帰った。

これが、平成27年に発生した事件の真相だ。

 

その後、小枝子は肺がんで入院。

余命わずかと悟った小枝子は、ようやくすべての真実を理恵に明かした。

理恵が誘拐事件の身代金受け渡し場所を巡っていたのは、守に詫びるため。

それぞれの場所で5分ほど停車していたのは、小枝子が持ち帰った守の形見の品々を供えていたからだった。

 

「でもね、刑事さん。母はずっと詫び続けていたんです。辰川という刑事さんだけが、そのことに気づいていました」

「辰川さんが?」

「あの方は、私にこう言いました。『(誘拐事件について)お母様が何も説明なさらないことは、親心でしょう。あなたはご存知ですか。守くんのご遺体が見つかったとき、お母様はご遺体を確認したいと警察にお申し出になったんですよ』と。母の告白を聞いたとき、私はこの言葉の意味に、初めて思い当たったんです。見るに堪えないほどに変わり果てた弟の遺体を、母はあえて目にすることで、極限まで自分を罰して、心の底から守に詫びるつもりだったのに違いないと……。もっと早くそのことに気がついていれば、お母さんの苦しみを少しは軽くしてあげられたのに」

肩を震わせる尾畑理恵の姿に、日下は言葉がなかった。

この偽装誘拐は、何と多くの人の人生を狂わせてしまったのだろう。

被害者はもちろんのこと、尾畑清三も尾畑小枝子も、どれだけ辛く苦しい日々を送ってきたことか。

そして、目の前の尾畑理恵も…。

『まるで幸福から逃げているようだ』と友人から評された尾畑理恵の生き方。

おそらく理恵は、告白される前から真実にうすうす気がついていたのだろう。

だからこそ、自分を罰するかのような苦しい人生を歩んできたのだ。

日下はひとつ大きく呼吸すると、尾畑理恵に一歩近づいた。

「すぐに病院へ参りましょう。お母様が、あなたを待っておられる」

 

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エピローグ

重藤成一郎は、間島とともに墓前で手を合わせた。

心の中で、故人に語りかける。

(ついに尾畑守くん誘拐事件が解決しました。尾畑小枝子は、病床ですべてを自供して亡くなりました)

冷たく乾いた風が、『辰川家』の墓前の線香の煙を揺らした。

 

かつて重藤は特別捜査班の6人に向けて言った。

『我々は、この事件を絶対に時効にさせない』

法律上の時効は、確かに完成してしまった。

だが、41年間にわたって尾畑理恵が閉じ込められてきた闇から、彼女を明るい世界に解き放つことはできたのだ。

重藤は一瞬だけ、尾畑理恵の姿を思い浮かべた。

そして、間島と肩を並べて墓苑の階段をゆっくりと下り始めた。

<真犯人・完>

 

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まとめ

翔田寛「真犯人」がWOWOWドラマ化!

今回は原作小説のあらすじ・ネタバレをお届けしました!

41年前に起きた誘拐事件と、現在の殺人事件。

その真犯人は同一人物であり、なんとそれぞれの被害者の母であり妻だった尾畑小枝子でした。

未解決のまま時効を迎えた誘拐事件の真相は『偽装誘拐』

誘拐そのものが小枝子の罪を隠すための虚構だったという真実には、驚かされましたね。

今回はかなりざっくり省略しているのですが、本編ではかなり緻密に伏線が張られていたので、すべてが明らかになった時の感動もひとしおでした。

 

さて、そんな「真犯人」がドラマ化するわけですが、キャストはこんな感じ。

上川隆也…重藤成一郎
小泉孝太郎…日下悟

内田有紀…尾畑理恵
尾美としのり…須藤勲
長野里美…尾畑小枝子
北見敏之…尾畑清三

過去と現在、それぞれの年齢で出演する上川隆也さんの外見にも注目ですね!

ドラマ「真犯人」は9月23日より放送スタートです(全5回)

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 - ドラマ, 小説

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