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『死との約束』ネタバレ解説!犯人は誰?【名探偵ポアロ】

アガサ・クリスティ『死との約束』を読みました!

名探偵ポアロが推理する今回の事件は、奇妙な家族に降りかかった殺人事件。

家族全員に犯行動機があるなか、事件の真相は実に意外なものでした。

というわけで今回は小説『死との約束』のネタバレ解説をお届けします!

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ……」

エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きは闇を漂い、やがて死海の方へ消えていった。

どうしてこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか?

ポアロの思いが現実となったように殺人は起こった。

謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの並外れた慧眼が真実を暴く。

(文庫裏表紙のあらすじより)

奇妙なボイントン家

あらすじにあるように、名探偵ポアロは最初から殺人計画について話し合う声をたまたま耳にしています。

声の主はボイントン家の次男と長女。

  • レイモンド(25)
  • キャロル(23)

彼らがまさに殺そうとしている【彼女】とは、一家の支配者である母親・ボイントン夫人のことです。

ぱんだ
ぱんだ
でも、なんで?

ボイントン夫人は生粋のサディストで、子どもたちを徹底的に支配しています。

子どもたちは一切の外出を禁止されていて、学校にも行かせてもらえず、誇張抜きで生まれてこのかた家の敷地にずっと閉じ込められていました。

友人をつくることもできなければ、仕事や趣味だって許されません。

反抗心をいちいち潰された子どもたちはやがてボイントン夫人への服従を心に植えつけられ、逃げ出すことすらできなくなっていました。

かつて女看守だったボイントン夫人が支配する、家という刑務所。

長男のレノックスは30歳までその支配を受け続けたせいで、すっかり無気力な人間になってしまいました。

そして末娘のジニー(17)は、その支配によって精神を病み、妄想の世界へ逃避するようになってしまっています。

ボイントン家の人々が幸福になるためには、夫人の死が絶対条件。

4人の子どもたちのなかでそれが可能なのは、まだ若く、わずかに反抗心が残っているレイモンドとキャロルだけ、という次第です。

ボイントン夫人が亡くなった場合、4人の子どもたちは平等に莫大な財産を継ぐことができます


ネタバレ

当然の流れとして、ボイントン夫人が殺されます。

事件の舞台は中東の砂漠(ペトラ遺跡)

ボイントン家は初めての海外旅行をしていたのですが、とある(岩壁に囲まれた)観光地でそれは起こりました。

殺害方法は『毒殺』

ボイントン夫人はもともと心臓病を患っていたのですが、遺体には治療のための劇薬を過剰に注射された痕跡が残っていました。

容疑者はもちろんボイントン家の人々。

その場には他にも何人かの観光客が集っていましたが、基本的には動機がありません。

時間表

その日の午後はボイントン夫人にしては珍しく、家族に自由行動を許していました。

一方、自らは昼からずっとキャンプから少し離れた場所に椅子を置き、じっと座っていました。

……遺体として発見される、その時まで。

では、実際には夫人はいつ殺されたのでしょうか?

その日の午後の時間表を見てみましょう。

※以下、ボイントン夫人を「夫人」と略します

時間出来事
16:00ウェストホルム卿夫人が夫人と会話
16:35レノックスが夫人と会話
16:40ネイディーンが夫人と会話(10分)
17:10キャロルが夫人と会話
17:50レイモンドが夫人と会話
18:30死体発見

すべてが真実だとするならば、ボイントン夫人は17:50まで生きていたことになります。

ところが、検死を担当した医学士のサラ・キングによれば、遺体が発見された時点ですでに死後一時間以上は経過していたとのこと。

レイモンドとサラの証言が食い違っていることから、少なくともどちらか一方が嘘をついているとわかります。

ネイディーンはレノックスの妻

ウエストホルム卿夫人は口うるさく権威的な女性代議士


第一容疑者

正直、一番怪しいのはレイモンドです。

「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ……」という発言もそうですし、サラの検死と矛盾する証言も疑惑を深めています。

それに、彼にはとびっきりの犯行動機がありました。

サラと恋に落ちていたことです。

ボイントン夫人が生きている限り、レイモンドはサラと会話することさえ許されませんでした。

隠れてこっそり、なんてことすらできないほど、彼は支配されていました。

しかし、恋の力はレイモンドにかつてない勇気を与えます。

まさに散歩からキャンプへ戻るというときに、レイモンドは次のようにサラに宣言しています。

「ぼくが臆病者じゃないことをぼく自身に対して証明できたら、そのときこそ、ぼくは堂々とあなたの助力を求めます」

「何をするの?」

「勇気を試さなきゃならないのですよ。このチャンスを逃したら、永久に失ってしまうでしょう」

レイモンドはサラへの愛のために、ボイントン夫人に反逆しようとしていました。

その方法が【殺害】だった……とも十分に考えられます。

一方のサラはというと、彼女もまたレイモンドに恋していました。

もしかしたらサラは、レイモンドをかばうために検死の時間に嘘をついたのかもしれません。

第二容疑者

次に怪しいのは長男であるレノックス夫妻です。

妻のネイディーンは決して母親に逆らおうとはしないレノックスに対して、離婚を突きつけていました。

旅にはジェファーソン・コープという一家と仲のいい友人が同行していたのですが、コープは前々からネイディーンに求婚していました。

だから、ネイディーンはレノックスを捨ててコープと一緒になると告げたのです。

しかし、これは夫にどうにか自立してほしいと願っているネイディーンの、最後の賭けでもありました。

嫉妬や喪失への恐怖心のためにレノックスが母親と決別してくれたのなら、ネイディーンは離婚を取り消すつもりだったのです。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

わたしたちはこの状況から二つの可能性を見出すことができます。

1つ。妻と幸福な家庭を築くために、レノックスが夫人を殺した可能性。

2つ。それでも煮え切らない夫のために、ネイディーンが夫人を殺した可能性。

ネイディーンは元看護師であり、夫人の薬を管理していました。

彼女であれば、堂々と夫人に劇薬を飲ませることができます。

第三と第四容疑者

長女のキャロルはレイモンドと一緒に夫人の殺害計画を話し合っていました。

末妹のジニーのためにも早く夫人を殺してしまわなければいけないと思っていましたし、計画を実行すればすればキャロル自身にも自由と莫大な遺産が転がり込んできます。

しかも、キャロルには不審な点があります。

事件の翌朝、小川に注射器を投げ捨てていたのです。

夫人の遺体には注射針の刺さった痕がありました。

十分にあやしい行動です。

最後にジニーですが、彼女は唯一夫人から自由行動を禁じられ、ずっとキャンプにいました。

言いかえれば、いつでも夫人を亡き者にするチャンスがあったわけですね。

しかも、一人で過ごしていたジニーにはこれといったアリバイがありません。

逗留していたもう一人の医師・ジェラールのテントから注射と劇薬を盗み出し、夫人の息の根を止めることが、ジニーには可能でした。

実際、ジェラールのテントからは注射器と劇薬が盗まれていました

しかも、ジニーのテントはジェラールのテントの真横だったのです


犯人は誰?

お決まりの手順として、ポアロはまず関係者ひとりひとりと面接し、話を聞き出しました。

ボイントン家の人々はそれぞれ不審な嘘を口にしましたが、口裏を合わせたようなふうではありません。

つまり、犯行は子どもたち全員で共謀したものではなく、誰かひとりよって行われたものだと考えられます。

そして、犯人ではないボイントン家の人々はみんな《ボイントン家のなかの誰かであるはずの犯人》を庇おうと嘘をついている……というわけです。

ぱんだ
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……どゆこと?

たとえば、レイモンドの場合。

「17:50の時点で夫人は生きていた」という彼の証言は嘘でした。

実際には、レイモンドが17:50に夫人を見たとき、彼女はすでに亡くなっていたのです。

※サラの検死が正しかった

では、なぜレイモンドはその場で助けを呼ばず、さらに夫人が生きていたなんて嘘をついたのでしょうか?

その答えは、レイモンドの立場を想像すれば簡単にわかります。

レイモンドはキャロルと夫人の殺害計画を話し合っていました。

そんな彼が夫人の死を目の当たりにしたとき、真っ先に犯人として思い浮かぶのはキャロルの顔に決まっています。

レイモンドは犯人であろうキャロルをかばうため、夫人の死について嘘をついたというわけです。

ぱんだ
ぱんだ
じゃあ、犯人はキャロル?

ところが、話はまだまだ転がっていきます。

17:10にキャロルが話しかけた夫人もまた、すでに遺体だったのです。

キャロルはレイモンドが犯人だと思い込みました。

だからキャロルは夫人の死について報告しませんでしたし、レイモンドの荷物から殺害に使う予定だった(そして実際には使われなかった)注射器を取り出し、翌朝小川に投げ捨てました。

キャロルもまたレイモンドを守ろうとしていたわけですね。

ぱんだ
ぱんだ
じゃあ、犯人は誰?

時間表をさかのぼると、

  • ネイディーン(16:40)
  • レノックス(16:35)

のどちらかが犯人のように思われます。

しかし、案の定というか、この二人もまた夫人の遺体を発見しつつ黙っていた仲間でした。

ネイディーンはレノックスが犯人だと思い込み……という同じ流れですね。

さて、謎解きもそろそろ佳境を迎えます。

ボイントン夫人はいつ、誰に殺されたのでしょうか?


犯人の正体は

残るボイントン家の容疑者はただ一人、末娘のジニーだけです。

ジニーは時間表にこそ登場しませんが、ずっとキャンプにいましたし、アリバイも無し。

いつでも犯行が可能だった、といっても過言ではありません。

しかし、ポアロはあるひとつの点に注目し、ジニーの犯行をも否定します。

ぱんだ
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ある点?

はい。犯人はボイントン夫人に劇薬を注射することで葬り去りました。

しかし、そもそも、ボイントン家の人間であればもっと簡単な手段をとっていたはずなんです。

心臓病を患っていた夫人は定期的に飲み薬を飲んでいました。

その薬瓶に毒を入れておけば、注射なんかする必要はありません。

毒といっても成分的には夫人が常飲している劇薬を濃くしただけのものであり、薬師が調合を間違えたとかなんとか、言い訳もできます。

そんな手軽な方法があったのに、なぜボイントン家の誰かである犯人はそうしなかったのでしょうか?

答えは……

犯人は外部の人間なのです。

つまり、ボイントン夫人とそれほど親しくなくて、彼女のテントに入ったり、薬瓶をいじることのできない誰かだったわけです」

名探偵ポアロが示したのは、意外にもボイントン家の人間は無実であるという真相でした。

では、犯人はいったい誰なのでしょうか?

もったいぶらずに、もう言ってしまいましょう。

 

犯人はウエストホルム卿夫人です。

ぱんだ
ぱんだ
だれ!?


事件の真相

ここで時間表をもう一度見てみましょう。

時間出来事
16:00ウェストホルム卿夫人が夫人と会話
16:35レノックスが夫人と会話
16:40ネイディーンが夫人と会話(10分)
17:10キャロルが夫人と会話
17:50レイモンドが夫人と会話
18:30死体発見

無関係のように思われた表の一番上の項目が、実はもっとも重要でした。

ウェストホルム卿夫人がボイントン夫人に注射したのは、実際には16:00よりもっと前の時間です。

そうしておいてウェストホルム卿夫人は同じく旅行客であるアマベル・ピアスをアリバイ工作に利用しました。

具体的にはアマベルを連れて、16:00にボイントン夫人(の遺体)に挨拶したのです。

もちろん返事なんか返ってこないのですが、ウェストホルム卿夫人はわざと「鼻を鳴らすだけなんて失礼ね」とつぶやきます。

注意力のないアマベルはその言葉を信じ込んで「16:00にはボイントン夫人は生きていた」と証言してしまい、ウェストホルム卿夫人のアリバイが完成したというわけです。

ぱんだ
ぱんだ
でも、なんで?

はい。わからないのは犯行動機ですよね。

さらりと言ってしまうと、女性政治家として活躍するウェストホルム卿夫人は、かつて刑務所に服役していた囚人でした。

そして、そのときの看守こそ在りし日のボイントン夫人だったのです。

ぱんだ
ぱんだ
なんと!

ボイントン夫人の性格はやわらかく表現しても【ドS】です。

旅行中にたまたま出会ったウェストホルム卿夫人にむけて「おまえのことを忘れていない」とゾッとするようなメッセージを送っていました。

「過去をばらさないでくれ」と口止めしてもきっと無駄だったでしょう。

ウェストホルム卿夫人がにしてみれば、

  • 過去を暴露されてすべて失う
  • ボイントン夫人を殺す

どちらかしか道はありませんでした。

そもそも支配者であるボイントン夫人があの日に限って家族に自由行動を許したのは、新しい獲物であるウェストホルム卿夫人をじっくりいたぶるためでした


結末

ウェストホルム卿夫人の自殺によって、事件は幕を下ろします。

それから5年後。

エピローグではボイントン家の面々の《その後》が描かれました。

レノックス夫妻には二人の子どもが生まれ、

レイモンドはサラと、キャロルはコープと結婚し、

空想の世界に逃げ込んでいたジニーは女優として活躍しています。

そこにはボイントン夫人がいた頃の辛く苦しい雰囲気は少しも残っていません。

これ以上ないほどのハッピーエンド!

名探偵ポアロはボイントン家の家族パーティーに出席し、満足そうに口ひげをひねるのでした。

「ボイントン家は、いまやすべてがうまく行ってるようですな」

<完>

 

ぱんだ
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まとめ

今回はアガサ・クリスティ『死との約束』のネタバレ解説をお届けしました!

どう考えても怪しいボイントン家の人々が実は犯人じゃないという意外な結末。

時間表をさかのぼっていくようにボイントン夫人の死亡時間がころころ変わっていく推理の過程がおもしろかったです。

ポアロ曰く、この事件において重要だったのは(ボイントン夫人の)心理。

「夫人はなぜ突然家人に自由行動を許したのか?」など、彼女の心を読むことが真実への近道でした。

同じく《中近東シリーズ》の一作であり、出版順としては一つ前の作品にあたる『ナイルに死す』もおもしろいのでおすすめです。

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ぱんだ
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またね!


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POSTED COMMENT

  1. みーみー より:

    ドラマの途中一部を見逃したので、読んですっきりしました。
    ありがとう!

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