本城雅人「ミッドナイト・ジャーナル」
事件解決のために奔走するのは「刑事」と相場が決まっていますが、今作の主人公は新聞記者!
著者の本城さん自身が元新聞記者ということで、事件の謎を追うストーリーはもちろん、新聞社内・新聞業界内に関する詳細な描写も新鮮でおもしろかったです。
というわけで今回はドラマ化もされた小説「ミッドナイト・ジャーナル」のあらすじネタバレをお届けします!
- 7年前の事件の真相は?
- 現在発生している事件の犯人は?
- すべてが明らかになる結末とは?
あらすじネタバレ
プロローグ
7年前の連続女児誘拐事件。
当時、関口豪太郎は中央新聞の記者としてその事件を追っていた。
入社8年目の辣腕記者として社内外から注目されていた豪太郎の担当は「警視庁捜査一課」
事件の新情報はないか?
犯人はどんな人物か?
豪太郎はいつもの強気な取材で警察関係者から情報を集めていく。
そして、事件の大詰め。
ついに豪太郎は「犯人のアジトが見つかった」という情報を手にする。
明言こそされなかったが、状況的に連れ去られた女児(清川愛梨)はすでに亡くなっていると見ていいだろう。
それでも豪太郎は慎重な表現を選んで記事を書いたが、上司である外山の判断により紙面には「不明女児、遺体発見か」の見出しが躍った。
だが…
「関さん!生きてます!」
現場からの報告に編集局の空気は凍りついた。
すでに原稿は送ってしまっている。今さら見出しや本文を差し替えることはできない。
『大誤報』
後日、中央新聞は大々的に謝罪・訂正記事を掲載し、外山や豪太郎チームのメンバーはそれぞれ処分を受けた。
…ただ1点だけ、豪太郎にとって心残りだったのは「逮捕された犯人・中島聖哉は本当に単独犯だったのか?」という謎を残してしまったことだ。
豪太郎は記事に「犯人は二人組」と書いたが、警察からは否定された。
だが、逮捕直後、中島は確かに共犯者がいるという供述をしていたのだ。
謝罪文にしても「遺体発見」については訂正しているものの、「二人組」の部分については訂正していない。
豪太郎は共犯者の存在について追いかけたかったが、大誤報の件で処分された身では動くことができなかった…。
事件発生
大誤報から7年後の現在、豪太郎の肩書は「さいたま支局 県警キャップ」になっていた。
あれから7年間、豪太郎は支局を転々とさせられ、1年前からはさいたま支局に所属している。
はっきり言って、本社に戻れる見込みはない。
「まったく、お前はジャーナルじゃねえな」
豪太郎の仕事といえば、いつもの口癖で新人記者を叱り飛ばすことくらいだった。
そんな中、埼玉で小学生女児の連れ去り未遂事件が発生した。
女児の目撃証言によれば、犯人は二人組だったという。
豪太郎の脳裏に浮かんだのは、忘れかけていた7年前の事件のこと。
あのとき豪太郎は、中島が運転する車の助手席にもう1人男が乗っていたという通行人の証言をもとに「犯人は二人組」と書いたのだ。
今回の埼玉の事件では、助手席の男は外に出ず、ずっと助手席に座っていたという。
(妙だな…)
連れ去りが目的なら、2人がかりでやった方が確実なはずだ。
いや、それを言えば、そもそも暴行目的の女児連れ去りを二人組で行うということ自体が異例なのだが…。
疑惑
まもなく2件目の女児連れ去り未遂事件が起こった。
場所は同じく埼玉。犯人は二人組。
『連続女児連れ去り未遂事件』
脳裏に浮かぶのは、やはり7年前の事件のことだ。
7年前の事件は中島の単独犯で確定しており、すでに死刑も執行されている。
ということは…
「7年前の事件の共犯者が、今回の事件にも関わっている?」
常識で考えれば、そんなことはありえない。
2つの事件を結びつけるだけの根拠は何もない。
だが逆に言えば、2つの事件が結びついていないと完全に否定することもできないはずだ。
豪太郎は7年前の事件との関連を疑いつつ、連続女児連れ去り未遂事件の調査を開始した。
新たな事件
最初の事件発生から1週間。
新情報はないかと焦り始めた頃、ついに豪太郎は夜回り(※)で有力な情報を手に入れた。
※刑事など事件関係者の自宅に取材しに行くこと
『東京で小学六年生の女児が行方不明』
埼玉の連れ去り未遂事件と関係している可能性は高い。
すぐに中央新聞社内は慌ただしくなった。
一方、埼玉の連れ去り未遂事件の方でも新たな目撃証言が出た。
助手席の男はやせ型でかなりの高身長。
検証の結果、185㎝は下らないという予測が出た。
これはさいたま支局の新人記者・岡田が掴んできた情報だ。
助手席の男の身長に言及したのは中央新聞が一番乗りだった。
逆境と突破口
行方不明の女児(高宮まみ)が遺体で発見された。
埼玉の連れ去り未遂と同一犯である疑いが強いが、まだ断定には至っていない。
遺体には暴行された跡があったが、直接危害を加えたのは1人だけということだった。
痕跡的には単独犯であるように見えるが、豪太郎や彼に協力するかつてのチームメンバー(※)は「犯人は二人組ではないか?(=7年前の事件の共犯者ではないか?)」という疑いを捨てず、それぞれに真相を追う。
※藤瀬祐里(現・本社の社会部記者。本社から埼玉に送り込まれた応援要員)と松本博史(豪太郎の直弟子。現在は一線を離れて整理部員に。あだ名は「マツパク」)
しかし、警察はおろか社内の人間からも一向に相手にされない。
そんな中、突破口を開いたのはマツパクだった。
現在は紙面のレイアウトを担当する整理部にいるマツパクだったが、自身にも幼い子供がいるという立場から、独自に昔の人脈を当たってみることに。
その結果、7年前の事件の真相について疑念を抱いていた捜査官(上野学)の情報を入手。
自分がこれ以上動くことはできないと判断し、祐里に情報を伝えた。
マツパクから情報を受け取った祐里はさっそく上野学のもとへ。
祐里の立ち回りが功を奏し、上野からは有力な情報を引き出すことに成功した。
7年前の事件の犯人・中島は極刑判決が出た後、拘置所でこう訴えていたのだという。
「やったのは俺だけじゃない。俺だけが処刑されるなんておかしい」
中島は逮捕直後こそ共犯者がいたと供述したが、すぐに撤回。
警察からはその場しのぎの嘘だったと判断された。
だが、拘置所でのこの発言はどうだ。
これも処刑を先延ばしにするための嘘なのだろうか?
中島はその共犯者の名前を『言えなかった』のだという。
それでも本来なら警察はもっと詳しく話を聞くべきだった。
だが、当時の警察上層部はメンツを守るため、共犯者に関する再調査に待ったをかけたのだという。
…なんということだ。
まだ確証には至らないものの、ここに来て豪太郎の説(「犯人は二人組だった」「7年前の事件の共犯者が今回の事件に関係している」)が真実味を帯びてきた。
上野から得たこの情報は大きい!
しかし、中島の発言を聞いたネタ元は秘密厳守を義務付けられた刑務官であるため、この情報をそのまま記事にすることはできない。
もっと情報を集めなければ…!
祐里が持ち帰った情報を知ると、さいたま支局はにわかに活気づいた。
豪太郎、祐里、支局の木原と新人記者の岡田。
4人は新たな豪太郎チームとして団結し、新聞記者としての使命を果たすべく、事件の真相を明らかにすることを誓い合った。
共犯者の行方
この7年間、共犯者はいったいどこで何をしていたのか?
一般的に、この手の犯罪には常習性があるといわれている。
7年前の事件に共犯者がいるとすれば、この7年間何もしていなかったとは考えにくい。
…いや、何もしなかったのではなく、何も『できなかった』のだとしたら…?
そこまで考えて、ハッと気がついた。
「刑務所か」
共犯者は別件の犯罪で刑務所に入っていて、最近出所した。
そう考えれば、つじつまは合う。
豪太郎チームはその線に絞って調査を開始した。
豪太郎が夜回り先に選んだのは、埼玉県警管理官の山上光顕。
いかにも強面で記者を寄せ付けないタイプの山上の家には、他社の記者の姿はない。
豪太郎も最初は一切を無視されたが、しつこく夜回りを続け、ついに相手の懐に飛び込むことに成功した。
さっそく「共犯者は刑務所にいたのでは?」という質問をぶつけてみる。
自信はあった。
共犯者は何かしらの性犯罪で捕まり、塀の中にいたはずなのだ。
だが、山上から返ってきた答えは100%の肯定ではなかった。
「あんたがやっていることは買う。だが甘い」
「どういう意味ですか」
「木を見て森を見ず、ってことだ」
さいたま支局に帰って、山上の言葉の真意について考えてみる。
やがて、豪太郎の頭に閃くものがあった。
「おい、もしかして俺たち、大きな間違いをしていないか」
何も共犯者が性犯罪で捕まっていたとは限らない。
7年前の事件でも、共犯者は直接被害者に触れてはいなかった。
いったい共犯者の目的は何だ?
やはりいたずらが目的だったのか、それともそれを『見る』こと自体が目的だったのか…。
そこさえはっきりさせられれば、調査をさらに進めることができる。
だが、それを確かめる方法は、ひとつしかない…。
「それって、まさか」
「ああ、そうだよ藤瀬。清川愛梨ちゃんだ。中島は彼女を小屋に置いて、買いだしに出かけたところを職質に引っ掛かって逮捕されたんだ。共犯がいたとしたら、それから捜索が入るまでの四日間、そいつは何時間かは彼女と過ごしたはずだ。そいつに少しでもいたずら趣味があれば、なにもしなかったなんてことはないだろう。逆に見てるだけが目的だとしたら、手は出していない可能性はある」
「まさか、それを彼女に聞くっていうんじゃないでしょうね」
「聞くんだよ、それしかないだろう」
「馬鹿!事件を思い出させられるだけでも残酷なのに、そんなこと、高校生の女の子に聞けるわけないじゃない!」
祐里はあまりに配慮に欠けた豪太郎の発言に激怒した。
この男は、真実を突き止めるためなら何をしたっていいと思っているに違いない。
だが、それ以外に手がないのもまた事実。
結局、祐里が清川愛梨のもとを訪ねることになった。
祐里の心配とは裏腹に、愛梨は健やかに成長していた。
このような事件の被害者は男性不信に陥りがちだが、愛梨には彼氏がいるという。
とはいえ事件のことを思い出すのはやはり辛そうだったが、新たな被害者を出さないためにと、愛梨は昔の記憶を掘り起こしてくれた。
「私は……もう1人いた気がします」
「もう1人、いたとしたら…」
口にしかけて祐里は止めた。さすがにこれ以上、彼女の傷をえぐることはできない。
だが、愛梨は祐里の知りたいことを察し、答えを教えてくれた。
「私、四日間、なにもされていません。体だって触られていません」
祐里は愛梨の強さに目を見開いた。
「わかった。愛梨ちゃん、そこまで話してくれて、私、すごく助かった。ありがとう」
愛梨の勇気に応えるためにも、絶対に犯人を捕まえなければならない。
祐里は改めて決意を固くした。
逮捕
7年前の事件も、今回の事件も、主犯(計画者)は見ていただけの男の方ではないか?
警察の裏をかくような行動をとった7年前の事件の犯人が、幼稚な中島だったということからして納得がいかない。
一連の事件の黒幕は未だ見ぬ「もう一人の男」の方だと豪太郎は睨んでいた。
そんな中、新たな事件が発生した。
場所は千葉。連れ去られたのは中学二年生の少女だ。
豪太郎たちはすぐに情報収集を開始。
取材によって容疑者がすでに確保されているということを掴んだ。
やがて逮捕が発表された犯人の名は「新山幸市」
21歳の大学生であり、「もう一人の男」の方ではない。
連れ去られた少女は無事に保護されたが、共犯者はなし。
新聞社は犯人逮捕の一報に盛り上がったが、豪太郎の表情は暗い。
共犯者がいなかったということは、そもそも埼玉の連れ去り未遂とは別件ということになる。
つまり、7年前の事件とも無関係。
また振り出しに戻ったのかのかと諦めかけたその時、堅物刑事への夜回りを続けていた岡田から連絡が入った。
「あんたんとこの記事で当たりだ」
それだけ岡田に告げると、刑事は急いでどこかへ出かけていったのだという。
岡田から報告を受けた豪太郎の頭には、すぐにある仮説が浮かんだ。
(もしや、埼玉で一連の事件の共犯者が捕まったのではないか?)
さっそく豪太郎は他紙に気づかれないよう山上に当たって裏を取る。
ここで情報を引き出せるかどうかが鍵だ。
「けっして逮捕とは書きません。重要参考人を取り調べているとだけでいいんです。埼玉県警は身柄を取ったということですよね。違うなら違うとだけ言ってください」
「…」
「返事をされないということは、当たりと考えていいんですか」
「…」
「違うなら否定してください。それだけで結構です」
豪太郎は息を呑む。切られると思った。
だが、切れずにつながっていた。
「好きにしろ」
(よしっ!)
豪太郎は思わず右手を握りしめた。間違いない。
埼玉県警は共犯者の身柄を確保している。
豪太郎はしつこく食い下がりさらに情報を求めた。
「身長は…その男の身長はどれくらいですか。お願いします。それが重要なんです」
「187センチ、あんたらが書いたのと似た容姿だ」
「年齢は」
「27歳。所沢市内に住む無職だ。まだ逮捕状はとっていない。お手つきはするなよ」
「もう1つだけお願いします。その男、前科はありますか」
7年前の事件に関係しているかどうかに関わる重要な質問だった。
「…6年前から3年間、服役している」
「罪状は」
「不正アクセスだ。裁判記録を調べて、名前を書くなよ」
「わかってます」
まさかハッキングで捕まっていたとは…。
山下が前に言った「木を見て森を見ず」とはこういう意味だったのか…。
山下との電話を終えると、豪太郎はすぐに本社に電話をかけた。
相手は外山だ。
今聞いたばかりの情報を伝えると、外山は警戒したように言う。
「おまえ、ここで7年前の事件を持ち出す気か」
「今日は書きません。今は今回の事件の容疑者として取り調べを受けているだけです。でもいずれ書きます」
はっきりと言った。
外山はしばらく沈黙していたが、やがて折れた。
「わかった。原稿を送ってくれ」
「ありがとうございます」
豪太郎は最後にひときわ大きな声で付け加えた。
「部長、うちの新人が、堅物の刑事に食い下がって、現場で引っ張ってきたネタです。東京の大学生逮捕がトップで構いませんから、こっちの記事も負けないくらいデカく扱ってください!」
結末
結局、さいたま支局が掴んだ特ダネは単独スクープにはならなかった。
警視庁一課担当の和手がヘタに裏を取ろうとしたことが仇となり、警視庁が緊急会見で情報を公開してしまったのだ。
後日逮捕された「もう一人の男」の名は久保木邦彦。
やはり「見る」趣味を持つ男であり、7年前の事件も、今回の事件も、久保木が主犯だった。
おそらく久保木には極刑が言い渡されるだろう。
だが、裁くのは司法であり、記者の仕事ではない。
豪太郎たちの事件は、終わったのだ。
一か月後。
中央新聞では人事異動が発表された。
祐里は警視庁一課の仕切り(リーダー)へ。
外山もまた出世した。
そして関口豪太郎は…静岡支局へと異動になった。
「まったく、ジャーナルじゃねえな」
静岡では、今日もまた豪太郎が新人を叱る声が響いている。
<ミッドナイトジャーナル・完>
まとめと感想
今回は小説「ミッドナイト・ジャーナル」のあらすじネタバレをお届けしました!
この作品の面白いところは「新聞記者の視点」から事件を見られることです。
普通の刑事ものなら事件の情報は第一に警察に入ってくるでしょう。
でも「ミッドナイト・ジャーナル」では違います。
新聞記者たちはあの手この手で警察や関係者から情報を得なければなりません。
口の堅い刑事との駆け引きや心理戦こそが新聞記者にとって最大の「見せ場」
事件解決が刑事の仕事であるように、記者の仕事は「早く、多く、確実な情報を集めること」です。
「ミッドナイト・ジャーナル」ではそうした記者たちならではの手練手管や『闘い』が繰り広げられるわけですが、これがまた実にアツくて面白い!
加えて、豪太郎の場合は社外の人間だけではなく社内からも厄介者扱いされているわけです。
そんな逆境の中、豪太郎チームが最後に特ダネをつかみ取って見せた瞬間は震えました。
結局、結末としては単独スクープにもならなかったし、豪太郎も本社に戻れませんでしたが、それはそれでリアルな感じがしていいのかな、と。
読者としては豪太郎たち新聞記者の熱い戦いと、その「勝利」が見られただけで満足です。
ドラマ『ミッドナイト・ジャーナル』の配信は?
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