木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』を読みました!
※読みは「えんまどうさらのすいりきたん」
あらすじからはダークで殺伐とした物語を想像したのですが、実際には真逆で、ハッピーエンドなお話ばかりでした。
今回はそんな小説『閻魔堂沙羅の推理奇譚』(シリーズ1作目)のネタバレをお届けします!
あらすじ
俺を殺した犯人は誰だ?
現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘――沙羅。
赤いマントをまとった美少女は、生き返りたいという人間の願いに応じて、あるゲームを持ちかける。
自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き。
犯人特定の鍵は、死ぬ直前の僅かな記憶と己の頭脳のみ。
生と死を賭けた霊界の推理ゲームが幕を開ける――。
(文庫裏表紙のあらすじより)
先にネタバレすると、(少なくても第一巻では)全員が推理に成功します。
つまり、誰も地獄行きにはならず、全員が生き返っています。
ネタバレ
第一話 緒方智子(17)
死の状況
智子は背後から何者かに首を絞められ、そのまま命を落とします。
場所は女子ハンドボール部の部室。
直前に部室に仕掛けられた盗撮カメラを発見していることから、盗撮犯が犯人であるように思われます。
あるいは智子に恨みを持つ人物の犯行という可能性も……?
容疑者
- 親友の未唯南
- 彼氏の令一
- 宿直の棚沢
- 顧問の馬場
容疑者は4人。
未唯南と令一は、家出した智子が部室にいることを知っていました。
宿直の棚沢は、部室に電気がついたことから智子の存在に気づいた可能性があります。
顧問の馬場は部室の鍵を持っています。
さて、智子を手にかけたのは誰なのか……?
ヒント
盗撮カメラはバッテリー式であり、その日の日中に仕掛けられたものと思われます。
※この先、ネタバレ※
真相
犯人は顧問の馬場。
馬場は盗撮の常習犯で、部室の鍵を持っているのをいいことに、いつも女子部員たちを盗撮していました。
その夜は智子が部室にいると知っていたわけではなく、たまたまカメラを回収しに来ていただけ。
しかし、智子がカメラに気づいたことから、とっさに犯行に及んだというわけです。
もし盗撮のことがバレたら教師をクビになるだけではなく、幼い娘のいる家庭も崩壊してしまうでしょうからね。
補足
智子の首を絞めた腕力から、犯人は男性であることが予想されました。
また、部室の鍵は基本的にはキャプテンである智子が管理する一本だけです。
日中に自由に(そして自然に)部室に出入りしてカメラを仕掛けられたのは、合鍵を持つ馬場だけでした。
結末
死の直前に戻った(生き返った)智子は、沙羅の手助けのおかげで命を落とさずに済みます。
馬場は逮捕され、家庭は崩壊。
事件後、智子は真剣に進路について考え、勉強に励むようになりました。
自分の人生をみつめなおして、それまでの楽な方向に流される生き方を改めたのです。
『まるで一度死んで、生まれ変わった気分だ』
霊界でのことなにも覚えていないの智子は、そんなふうに思うのでした。
第二話 浜本尚太(27)
死の状況
食品会社に勤める浜本は、会社の冷凍室で凍死しました。
商品を取ろうとしたところ棚が崩れて生き埋めになり、意識を失ったまま最期を迎えたのです。
一見すると事故のようですが、どうやら左ききの浜本だけを狙って棚に細工されていたようで……?
容疑者
棚に細工が施されたのは当日のことです。
つまり、その日営業所にいた同僚たちが容疑者ということになります。
- 所長の鹿子木富次郎
- 後輩の岩田優斗
- 同期の天野京香
- エリアマネージャーの千原和馬
浜本はうっかりミスの多いお荷物社員で、営業成績は最下位。
いつもまわりにフォローしてもらってばかりです。
犯人はダメ社員である浜本を目障りに思っていたのでしょうか……?
※でも、だからといって命までとるでしょうか……?
ヒント
浜本は若手社員たちが集まる会合の幹事を務めています。
その日はたまたまエリアマネージャーの千原が営業所に来ていたのですが、出欠確認のはがきにはなぜか参加・不参加のどちらにも丸がつけられていました。
※この先、ネタバレ※
真相
犯人はエリアマネージャーの千原。
千原は事故の少し前に行われた会議でも浜本に「会社を辞めてくれ」とまで言っていて、正直、いちばん犯人っぽかったです。
ただ、犯行動機は浜本の残念な営業成績とはまったく関係ありません。
千原は天野京香のことが好きだったのですが、京香は浜本のことが好きだったのです。
つまり、嫉妬ですね。
いつも温厚な千原が会議で珍しく口汚く浜本を罵ったのは、フラれた直後だったからでした。
補足
出欠確認はがきの謎については、さりげなく伏線が張られていました。
キーアイテムは、摩擦熱で消えるボールペン(フリクション)
千原は参加に丸をつけていたのですが、京香にフラれたことで不参加に丸をつけなおしました。
そのはがきを持った状態で冷凍室の棚に細工をしたので、はがきが冷やされて消したはずの「参加の丸印」が再び浮かび上がってきていたんですね。
また、営業所のメンバーであれば冷凍室に用があっても不思議ではありませんが、エリアマネージャーの千原には冷凍庫に行く用事なんてありません。
実は単純な消去法からも、犯人が千原であることは推理できました(ちょっとメタいですけどね)
結末
生き返った浜本は、沙羅の手助けのおかげでなんとか命を拾います。
もともとちょっとした嫌がらせのつもりだった千原は、一歩間違えれば浜本の命が危なかったと知ると、自ら罪を告白して自首しました。
ただ、浜本が被害届を出さず、会社にも恩情措置を求めたため、千原は軽い処罰で済むことになります。
浜本はパニックになるとミスをしがちですが、決して嘘をつかず、いつも誠実に人と接していました。
その人柄ゆえ浜本は周囲の人々から好かれていて、営業所の面々も決して浜本のことをお荷物だなんて思っていません。
『もっと自信を持て。お前は自分で思うほどダメなやつじゃない。いいところもあるし、まわりにも好かれている』
忘れたはずの沙羅の言葉のおかげか、生き返った浜本は(沙羅が食べていた軽食を参考にした)新商品を企画して大ヒット。
高嶺の花と諦めていた京香に対しても、思い切ってデートに誘ってみるのでした。
第三話 門井聡子(82)
死の状況
門井聡子は老衰で他界しました。
そこに誰かの悪意は介在していません。
ただ、聡子はどうしても行方知れずになっている息子(誠司)のことが心残りで……。
容疑者
沙羅はうっかり「息子のことを知るヒントは身近にあった」と口を滑らせます。
- 遠縁の親戚で孫のような小山重太郎
- 養子である門井亮
- 家族の一員のように親しくしている青年・青山清澄
年老いた聡子の誕生日を祝ってくれるような温かい人間関係のなかに、息子の手がかりがあった……?
ヒント
もし誠司が見つかったなら、養子である亮が受け取る遺産は半分になります。
青山清澄はオレオレ詐欺の被害から聡子を未然に守ってくれたきっかけで知り合ったのですが、それは果たして偶然だったのでしょうか……?
※この先、ネタバレ※
真相
息子の行方を知っていたのは青山清澄。
誠司は消息を絶ったあと、聡子の故郷である宮城県石巻市に移り住みました。
やがて誠司は現地のシングルマザーと同棲することになるのですが、そのとき一緒に暮らしていた子どもが清澄です。
実際に籍を入れていたわけではないものの、誠司と清澄は義理の親子のような関係だったわけですね。
2011年3月11日。
誠司と清澄の母は震災によって亡くなります。
幸運にも生き残った清澄は両親が遺してくれたお金で東京の大学に進学。
誠司のことを聡子に伝えようとして、たまたまオレオレ詐欺の現場に出くわし、以後は「近所に住む青年」としてふるまっていました。
補足
現金を受け取りに来たオレオレ詐欺の犯人は「誠司の後輩」を名乗っていました。
すでに誠司が他界していると知っていたからこそ、清澄はオレオレ詐欺に気づけたんですね。
しかし、聡子の暮らしぶりを目の当たりにして、清澄は「誠司は震災で亡くなった」と言い出しにくくなります。
それは聡子をひどく悲しませる告知に他ならなかったからです。
そうして聡子の孫のように近所づきあいを続けていくうちに、清澄はどんどん誠司のことを切り出しにくくなっていきました。
結末
推理に成功した聡子は、沙羅の力によって生き返ります。
といっても、聡子の場合は老衰です。
生き返ってから一時間後には再び息を引き取る未来が決まっています。
最後の一時間を、聡子は清澄と一緒に過ごしました。
誠司がどんな人間だったか。
誠司はどのように生きていたか。
子どものころから変わらないまっすぐな誠司の生きざまを耳にして、聡子は心から満足します。
そして、清澄が呼んでくれた亮や重太郎、それに孫たちにも囲まれて、穏やかに最後の瞬間を迎えたのでした。
第四話 君嶋世志輝(20)
死の状況
君嶋世志輝(よしき)は大勢の暴力団員に囲まれ、撲殺されました。
場所は無人のライブハウス。
フリージャーナリストである兄に頼まれてUSBを届けに行ったところ、不意打ちでスタンガンの一撃をくらい、そのまま滅多打ちにされました。
兄の光暉(こうき)は社会の闇に切り込むジャーナリストだったので、ヤクザから狙われていたとしてもおかしくありません。
ただ、兄の性格を考えると、むざむざ弟を危険に巻き込むとは思えませんでした。
経緯
最近、世志輝は隣に住む幼なじみである西里由宇のことを気にしていました。
というのも、どうやら由宇は違法な風俗店に籍を置いているらしいのです。
しかも、由宇を尾行してみると、ホテルで待ち構えていたのは兄の光暉でした。
これはいったい……?
由宇の親友だった井熊千郷も、自殺する前は同じ風俗店に所属していたようですが……?
ヒント
世志輝は元暴走族の総長で、今でもプロレスラー顔負けの体格を誇っています。
かつては10人を相手にした喧嘩で勝ったこともあるほどです。
電話口で光暉はしつこいほどに
- 「USBの中を見るな」
- 「警察には電話するな」
- 「無防備で来い」
と繰り返していました。
いつもならイタズラ心で天邪鬼なことをしてしまう世志輝ですが、兄の真剣な口ぶりに何かを感じて、このときばかりは素直に指示に従うことにしたのでした。
※この先、ネタバレ※
真相
由宇の依頼で、光暉は違法風俗について調べていました。
そして、ついに犯罪の証拠をつかみます。
ところが、由宇の勇み足によって光暉の存在は暴力団にばれてしまい、ふたりは監禁されてしまいました。
光暉からかかってきた電話は、暴力団が証拠(USB)を手に入れるためにかけさせたものです。
光暉は由宇の身の安全がかかっていたため、指示に従うしかありませんでした。
電話口でしつこく繰り返していた言葉は、世志輝なら「逆のことをしてほしい」という真意に気づいてくれるはずだと期待しての暗号でした。
ところが、世志輝は暗号に気づかず、そのまま罠が待っている敵地に無防備に飛び込んでしまったんですね。
補足
事の発端は由宇の親友だった千郷が悪い男に騙され、薬づけにされたあげく違法風俗に売り飛ばされたことです。
その後、千郷は自殺。
由宇は真相を暴いて仇をとろうと、自ら違法風俗に潜入調査します。
そのおかげで光暉は犯罪の証拠を掴めたのですが、やはり素人の潜入調査がバレないわけもなく、結局ふたりとも監禁されてしまったのでした。
結末
時間を巻き戻して生き返った世志輝は、沙羅の手助けのおかげで最初のスタンガンの一撃をかわします。
そこからは得物を持った暴力団数人を相手に大立ち回り。
結果、世志輝は全治三か月の大怪我を負いながらも、ヤクザたちを返り討ちにしたのでした。
※光暉と由宇は無事。世志輝は正当防衛が成立し、ヤクザたちは逮捕された。
それまでバイトをクビになってばかりで進路に悩んでいた世志輝は、この事件を機に将来の目標を定めます。
有り余る体力と腕力を人ために使う仕事……。
世志輝は探偵になろうと思うのでした。
<完>
まとめと感想
今回は木元哉多『閻魔堂沙羅の推理奇譚』のネタバレ解説をお届けしました!
読む前は「殺人事件の謎解きがおもしろいんだろうな」と予想していましたが、どちらかといえばヒューマンドラマというか、登場人物が生き返りを通じて成長するみたいな話が多かったですね。
今回はメフィスト賞を受賞した第一巻の内容を紹介しましたが、シリーズは現在第六巻まで刊行されています。
※2020年9月に最新7巻が発売予定
1話ずつ独立していてサクッと読めるので、「毎日1話ずつなにか読みたい」という人には特におすすめです。
※ちなみに1話あたり約90ページくらい
ドラマ情報
小説『閻魔堂沙羅の推理奇譚』シリーズがNHKでドラマ化!
主演(沙羅役)は中条あやみさん!
NHKらしいというか、とても相性のいい作品だと思うので楽しみです。
放送情報
- 2020年秋 総合 毎週土曜 よる11時30分~
- 全8回
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雑誌でいえば『花とゆめ』『LaLa』とかですね。
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