本格ミステリ

『密告はうたう』ネタバレ解説!あらすじから結末までまるわかり!

伊兼源太郎『密告はうたう』を読みました!

警察小説なんですが、主人公の所属は警視庁の監察係!

「警察の警察」と呼ばれる監察は身内の不正・不祥事を暴くのがお仕事です。

そんな監察に送られてきた一通の密告状。

情報の真偽を確かめるうちに、過去の未解決事件とのつながりが浮かび上がってきて……!?

ぱんだ
ぱんだ
どきどき

今回はそんな小説『密告はうたう』のネタバレ解説(と感想)をお届けします!

あらすじ

警察職員の不正を取り締まる部署、警視庁人事一課監察係に所属する佐良は、元同僚で、現在は運転免許試験場に勤務する皆口菜子の監察を命じられた。

彼女が免許証データを売っていると、内部からの密告があったのだ。

佐良は、上司とともに皆口の尾行を始めるが、やがて自らも関わった未解決事件との接点が……。

実力派の俊英が放つ警察ミステリー!

(文庫裏表紙のあらすじより)

三つの事件

『密告はうたう』では3つの事件が交錯します。

ひとつは、あらすじにもある「皆口菜子による免許証データ売却疑惑」

残りの二つの事件はどちらも過去に発生した未解決事件です。

物語の核となる部分なので、簡単に説明しますね。

部下の殉職

約1年前、佐良は「町工場の社長が殺された事件」を追っていました。

当時の佐良は警視庁捜査一課に所属していて、部下には斉藤(同捜査一課)と皆口菜子(所轄)がいました。

事件のあらましはこうです。

  • 町工場は優れた技術を持っていた
  • 多くの組織が技術を買収しようとした
  • しかし社長は断り続けていた

犯人の狙いは町工場の持つ独自技術だったと考えられます。

そんななか、斉藤が独自に「町工場の副社長と大手電機メーカーの部長が密会する」という情報を入手。

いかにも怪しい組み合わせ……。

佐良たちは当然、密会場所を張りこみました。

すると、建物内から叫び声が!

「待て!」

佐良の制止を振り切って、弾かれたように斉藤が突入していきます。

次の瞬間、佐良の耳に飛び込んできたのは銃声でした。

慌てて屋内に駆け込んだ佐良が目にしたのは、刺殺された副社長と電機メーカー部長の遺体、そして血だまりに倒れ伏している斉藤の姿……。

二発の銃弾に貫かれた斉藤は、佐良と皆口が見守るなか、静かに息を引き取りました――。

さて、問題はここからです。

「町工場の社長が殺された事件」では、たびたび捜査情報が外部に漏れていました。

密会場所に《犯人》が現れたのも、同じく捜査情報が漏れていた……つまり、警察内部の誰かが裏切っていたからだと考えられます。

ところが、密会の張り込みは極秘裏に行われていました。

情報を知っていたのは佐良、斉藤、皆口、そして一握りの上司しかいません。

出世を目論む上司たちが捜査情報を流すとは考えられませんし、もちろん佐良でもありません。

いったい誰が情報を流したのか……?

なお、当時、斉藤と皆口は恋人関係にあり、近く結婚する予定でした。

この事件の後、佐良は人事一課(監察)に、皆口は運転免許試験場に異動しました。

目白駅の暴行事件

事件のあらましはシンプルです。

約5年前、目白駅で会社員の男が殴り倒される事件が発生しました。

殴られた男はそのまま倒れて後頭部を強く打ち、間もなく死亡。

一方、殴った男は逃亡し、そのまま行方が分からなくなっています(現在も未解決)

当時、佐良は池袋西署に所属していて、この事件の捜査に当たっていました。

ネタバレ

皆口菜子はこそこそと密会を繰り返していました。

相手は主に警察関係者で、

  • 先輩刑事(宇田)
  • 高井戸署長(梶原)
  • 成城署長(堤)
  • 情報屋(佐々木)

といったメンバーです。

当初、佐良は「この中に免許証データの横流しに協力している人間がいるのではないか?」と疑いますが、それらしい証拠は何ひとつとして出てきません。

佐良は情報屋の佐々木と接触。

そうしてようやく皆口が「目白の未解決事件」について調べていることが判明します。

  • 宇田
  • 梶原

この二人は当時池袋西署にいて、事件の捜査に関わっていました。

密会の理由にも説明がつきます。

また、それとは別に梶原と堤は(斉藤との)結婚式の主賓になるはずでした。

つまり両名は皆口と斉藤が世話になった人物であり、いまだ傷を抱える皆口を気遣って会っていたとしてもおかしくありません。

三つの謎

正直、『密告はうたう』の物語はかなり複雑です。

いろんな人物の思惑が交錯していますし、三つの事件それぞれに真相や犯人があるわけですから、一般的な警察小説の三倍はややこしい物語になっています。

※そのぶんおもしろいんですけどね

ぜんぶきれいに解説しようとすると長くなりすぎますし、書く方も読む方もきっと混乱してしまうので、今回のネタバレ解説ではかなり大胆に途中を省略することにしました。

ここでひとつ先にネタバレしておくと、皆口は免許証データを売ったりしていません。

つまり、監察に届いた密告の内容は嘘だったのです。

物語に大きくかかわる謎は3つ。

『誰が何のために嘘の密告をしたのか?』

『皆口はどうして今になって目白の未解決事件を調べ始めたのか?』

『斉藤が殉職した事件で、情報を漏らしていたのは誰なのか?』

結末ではこれらすべてが明らかになります。

では、物語の続きを見ていきましょう。

予想外の展開

『皆口菜子が免許証データを売っている』

この(嘘の)密告から始まる物語は、実に意外な方向へと進んでいきます。

具体的にはこんな感じ↓に

  1. 皆口を尾行する
  2. 皆口と接触した宇田を尾行する
  3. 宇田は石黒に尾行されている

石黒は不正を働いていたため依願退職させられた元不良警官です。

ふつうに考えて、石黒が宇田を尾行する理由なんてありません。

佐良は石黒に当たり、その真意を聞き出しました。

 

「梶原署長に頼まれた」

 

石黒の雇い主は高井戸署長の梶原でした。

……いったいなぜ?

目白事件の失策

梶原には隠しておきたい《秘密》がありました。

一言でいえば、梶原は宇田の過失を揉み消していたんです。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと?

例の目白駅の暴行事件。

実は宇田は犯人逮捕につながる重要な目撃証言を手に入れていました。

ところが……

梶原「宇田は目撃者の証言や連絡先などを書いたメモ帳を紛失しました」

「メモ帳を失くしただけ?」と思われるかもしれませんが、これはわたしたちが想像するよりはるかにヤバい過失です。

責任問題は宇田だけにとどまらず、その上司である梶原にまで及ぶほど。

宇田は正義感の強い刑事なので、辞職するつもりでミスを梶原に打ち明けました。

ところが、梶原はこの事実を握り潰します。

梶原は「宇田を守るためだった」と言いますが、実際には出世と保身のためだったに違いありません。

こうして、目白駅の事件は未解決のまま今に至ります。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

さて、ここで話は2週間前にさかのぼります。

梶原は「宇田が監察に狙われている」という噂を耳にして、焦りました。

宇田が狙われるとしたら「目白駅の事件」での過失に違いなく、だとすれば最終的には自分の責任問題(揉み消し)まで暴かれかねないからです。

梶原はまず噂の真偽を確かめる必要がありました。

とはいえ、署長という立場の自分が表立って行動することは難しく、秘密の性質上、事情を知らない部下に宇田を尾行させるわけにもいきません。

そこで梶原は元警察官である石黒を雇って、宇田を尾行している人間がいるかどうか確かめようとしたのです。

実際、宇田は佐良たち監察に行動確認(尾行)されていたわけですが、これはちょっと話が違います。

佐良たちの狙いはあくまで皆口であって、宇田を尾行していたのは「免許証データ流出」について調べるためでした。

ぱんだ
ぱんだ
……あれ?

はい。ここでまた謎が浮かんできます。

「宇田が監察に狙われている」という噂はいったいどこから出てきたのでしょうか?

再確認しておくと「宇田が監察対象になっている」という事実はありませんでした。

ところが、その噂によって宇田と梶原のミスが明らかになったのもまた事実です。

梶原は皆口菜子からその噂を聞いたと供述します。

監察に過去の不正がバレた梶原は失脚。完全に出世コースから外されます。

危機

《事件》が起こったのは、梶原から不正の一部始終を聞き出した、その夜のことです。

時刻は深夜。場所は人気のない倉庫街。

いかにも密会が始まりそうな雰囲気のなか、佐良は衝撃的な場面を目撃します。

 

皆口が《何者か》の車にはねられ、そのまま海に投げ捨てられたのです。

 

逃げる犯人。沈む皆口。

佐良は一瞬の判断で駆け出すと、真冬の海へと飛び込みました。

激しい水の流れ。水を吸って鉛のように重くなった着衣。

水底へと沈んでいく皆口はすぐ近くに見えるのに、どんなに手を伸ばしても届きません。

このままでは二人とも溺れてしまう……。

そんな命の瀬戸際でも、佐良は決して諦めませんでした。

そうして体力を使い果たす寸前、最後にはなんとか陸に戻ってくることができたのですが……。

 

後頭部に一撃!

 

《何者か》に後ろから襲われて、佐良は気絶してしまいました。

ぱんだ
ぱんだ
大ピンチ!

本当の罪

皆口を海に投げ捨て、命からがら陸に戻ってきた佐良を襲った犯人。

 

その正体は宇田でした。

 

宇田はそれまで

  • 正義感の強い刑事
  • 子煩悩な父親

として描かれていたので、《犯人》の正体としては予想外の人物だといえるでしょう。

では、いったいなぜ宇田はこんな凶行に及んだのでしょうか?

話は「目白駅の事件」にまでさかのぼります。

梶原にミスを握りつぶされた後も、宇田は事件の犯人を追い続けていました。

そしてとっくに犯人を見つけていたんです。

ぱんだ
ぱんだ
!?

犯人の名前は滝本勇介。

一言でいえば人間のクズそのもので、周囲に迷惑をまき散らしてばかりの、どうしようもないやつです。

宇田は当然、滝本を逮捕しようとしました。

ところが、滝本は鋭い勘で「宇田が情報を紛失した」ことに気づき、逆に脅してきたんです。

過失をバラされたくなければ黙って見逃せ、と。

もちろん宇田には腹を切る(辞職する)覚悟くらいありました。

しかし、滝本が宇田を告発すれば必然的に「梶原がミスを握りつぶした事実」まで明るみに出てしまいます。

自分はどうなってもいいが、上司(梶原)に迷惑をかけるわけにはいかない――。

忠誠心が仇となり、宇田は犯人を見逃してしまいます。

時間が経つにつれて、宇田は精神的にどんどん追い込まれていきました。

なぜなら、宇田は警察官である前に愛する娘の父親だからです。

宇田「メモ帳を失くした当時は思い悩んだ。あの時に指摘されてれば失敗を受け入れ、辞職もした。

でもな、もう娘が成長し、名門校の親って立場がある。警察を追われるわけにはいかん。だから黙ってた」

宇田は良心の呵責に耐えながら、苦しい時間を過ごしてきました。

……今日、この夜までは。

思惑

深夜。静まりかえった倉庫の中。

さかのぼること数時間前、宇田はこの場所で滝本を殺しています。

ぱんだ
ぱんだ
えっ

といっても先に襲いかかってきたのは滝本のほうで、宇田としては正当防衛でした。

しかし……

宇田「残念ながら誰も見ていない」

宇田の正当防衛を裏づける目撃者はいません。

それにどのみち、滝本と宇田の関係が洗われれば「目白駅の事件」のすべてが明らかになってしまいます。

この時点で、宇田は詰んでいました。

殺人の罪を問われ、過失を隠ぺいした過去も暴かれ……もう逃げ道はありません。

そんな八方塞がりな状況下、宇田は皆口を呼び出しました。

目的は命を奪うため……ではなく情報を引き出すためです。

宇田「皆口、俺が監察されている噂は誰に聞いた?」

さて、いよいよ物語の核心に迫ってきました。

滝本殺害とは無関係に、宇田は明日にも監察に取り調べられる予定でした。

それはなぜか?

元をたどれば、すべての始まりは

「皆口が《何者か》から宇田が監察されているという噂を聞いたこと」

「皆口を告発する(嘘の)密告状が届いたこと」

でした。

ちょっとだけ先回りしてネタバレすると、噂を流したのも密告状を送ったのも同じ人物です。

では、いったい誰が何のためにそんなことをしたのでしょうか?

宇田を告発するため?

目白駅の事件が起こったのは5年前です。どうして今さら、という疑問が浮かびます。

それに宇田を告発したかったのなら、そのように監察に密告すればよかったはずです。

ぱんだ
ぱんだ
たしかに……

この謎の答えはシンプルで《黒幕》にはそうする必要があった(都合がよかった)からです。

宇田は《黒幕》の正体にも思惑にも、心当たりがありました。

だから皆口や佐良の口を割らせて証拠を握り、その人物に一矢報いようとしていたのです。

宇田「許せん奴がいる。許しちゃならん奴だ。これはこれから家族が安心して暮らせるためなんだ。

いや、俺の娘や妻だけじゃない。多くの人間が安心して暮らせるためだ。

滝本を殺した時、この手で叩くしかない状況になったと腹を括ったんだよ」

意地

宇田の目的は《黒幕》を告発すること。

滝本を手にかけてしまった以上、もうなりふり構っている時間はありません。

宇田「皆口、言えッ!」

宇田は佐良の太ももを出刃包丁で深々と刺しました。

宇田「このまま放っておけば出血多量で死ぬ。皆口、佐良の生死はお前次第だ」

どくどくと血が流れだし、床に赤色が広がっていきます。

佐良の命は風前の灯火。

けれど、それでも。

佐良(皆口にすがろうとはこれっぽっちも思わない。意地、つまらない意地)

そして、皆口も。

「皆口、もう佐良はもたないぞ。自分のせいで他人が死ぬのは怖くないのか」

「怖いに決まってます」

「だったら話せ。これがラストチャンスだ」

「言えません」

迷いなくきっぱりと言い切る口調。

佐良はこの極限において、ようやく確信することができました。

「斉藤が殉職した事件で、情報を漏らしていたのは皆口ではない」と。

佐良(……それでいい、皆口)

たとえ命尽きようと、最後まで警察官としての意地だけは貫けた。

佐良のまぶたがゆっくりと閉じていく……その時でした。

 

盛大な衝突音!

 

倉庫のシャッターを突き破り、一台の車が突入してきます。

運転席から人影が飛び出したかと思うと、次の瞬間には宇田が崩れ落ちていました。

「こんな手荒な真似は人事一課の仕事じゃないが、まあ、仕方ない」

感情の読めない口調は、佐良の上司である須賀のもの。

間一髪の救出でした。

この直後、宇田は自殺。

宇田の罪は「現役警察官による不祥事」として揉み消されました。

これからの家族の生活のため、宇田は自ら命を絶つほかなかったのです。

黒幕

すべての元凶。

黒幕の正体は成城署長である堤です。

第一に、堤は皆口に「宇田が監察されている」という嘘の情報を流しました。

そして第二に、監察に「皆口が免許証データを売っている」と密告しました。

注目していただきたいのは《結果》です。

この2つのアプローチによって監察は宇田の過去の罪にたどり着きました。

そして連鎖的に高井戸署長である梶原が失脚しました。

 

堤の目的は、最初から梶原を失脚させることでした。

 

ぱんだ
ぱんだ
理由は?

堤と梶原は犬猿の仲であり、出世を競うライバルでもありました。

A級署長への昇進が決まるこの時期に、堤はライバルを蹴落としておきたかったんです。

そして、そのためのカード(切り札)こそ「目白駅の事件」の顛末でした。

堤は監察に偽の密告状を送り、皆口に「宇田が監察されている」と吹き込むことで、梶原を失脚させるという目的を果たしたわけです。

ぱんだ
ぱんだ
なるほど……

さて、いよいよ最後の謎です。

  • 宇田が情報を紛失したこと
  • 梶原が過失を握りつぶしたこと

堤はどうして消されたはずの事実を知っていたのでしょうか?

小説ではヒントとして「堤はかつて監察官だった」という事実が提示されています。

ここに宇田の真面目な性格を絡めて考えると……?

 

では、今回の事件の真相です。

宇田は梶原に過失を握りつぶされた後、監察に自分の罪を密告していました。

その当時の監察官は……そう、堤です。

堤は宇田の密告を握り潰して「梶原を失脚させるためのカード」として自らの懐にしまいました。

カードを切るべきタイミングは、A級署長への昇進が決まる時期。

※つまり、今

堤の出世争いのために亡くなったのは宇田だけではありません。

情報屋の佐々木も滝本によって殺されています。

自分の出世のために凶悪事件の犯人を野放しにしていた事実だけをとっても、堤の罪は明白です。

物語のラストで、堤はきっちり監察によって裁かれました。

佐良「堤さん、A級署長は諦めてください。あなたのせいで何人も死んだ」

※佐良が堤をぶん殴るシーンにはスカッとしました!

もうひとつの真相

最後に残った「斉藤が殉職した事件」の真相。

佐良は今回の事件を通して過去の真実にたどり着きます。

結論からスパッとお伝えしましょう。

 

捜査情報を外部に流していた裏切者は……存在しません。

ぱんだ
ぱんだ
えっ

このあたりの事情はちょっと複雑なので、小説から引用して説明に代えたいと思います。

※以下、小説より一部抜粋

…………

そういうことだったのか。

斉藤は公安事件、それも外事関係で命を落としたのだ。

一年前の町工場社長殺人事件を、公安事件というフィルターを通すと見える筋がある。

町工場の社長と副社長は海外の政財界の要人とも会合を重ねていた。

公安のエス(スパイ)にもってこいの存在なのだ。

社長が消されたことで、公安は相手方に彼らの正体を見抜かれたと気づき、もう一人も殺される恐れを抱いた。

しかし公安はうかつに副社長と接触できず、警護もはばかられた。

相手は二十四時間体制で副社長を監視しているかもしれない上、警察関係者だと喧伝する事態にもなり、彼の身を余計に危うくする。

(中略)

そして工場での密会に至る。

電機メーカーの部長は町工場側との情報の受け渡しを担っていた潜入捜査員(スリーパー)で、善後策を話し合う場だったのだ。

そこに斉藤が登場する。

斉藤は所轄時代、警備課(※)にいた。

※公安の系列部署

捜査一課に配属されてからも、公安側の接触は続いていたのだ。

斉藤は彼らの身を守るため、荒川沿いの工場での密会情報を掴んだと言って、監視を提案してきた。

密会場所を考えれば、二人が監視されているかどうかを確かめる意味合いもあったのだろう。

斉藤を動かした情報源は、公安の誰かだ。

仲間が殺される懸念を聞けば、警官なら動く。

……公安の暗闘に巻き込まれ、斉藤は殺された。

公安の外事事件であるがゆえ、身近な人間(皆口)にも任務を言えずに死んでいった。

まとめ
  • 事件の本質は公安の外事問題だった
  • 斉藤は公安の指示で動いていた
  • 犯人は外事関係の敵だった(正体不明)

※くわしくは省略しますが、該当事件の他の情報漏洩も公安の思惑によるものでした。

結末

「合格だ」

表情一つ動かさず能馬(※)が言います。

※警視庁に数人しかいない監察官の一人。佐良や須賀の上司。とてもえらい。

「これで試用期間は終わりだ。拾っておいた甲斐があった」

斉藤の殉職によって捜査一課から追い出された佐良を、拾ったのが能馬でした。

ただし、能馬は仕事に一切の情を挟まない実力主義の人間です。

佐良が使えないと判断すれば、容赦なく切り捨てるつもりでした。

つまり、今回の「皆口を尾行しろ」という指令は佐良が真相を暴けるか試すテストでもあったのです。

能馬「君は密告のうたを聴けた」

警察では容疑者が自白することを「うたう」といいます。

「皆口菜子が免許証データを売っている」という(嘘の)密告の裏に隠されていた陰謀をよく見抜くことができた、と能馬は褒めたわけですね。

そして、能馬はさらに言葉を続けます。

「ところで、監察には若い女性警官が少ない。密告のうたをきちんと聴けそうな人材を知らないか。爪弾きにされてる人間でもいい」

もちろんこれは皆口菜子のことですね。

もともと皆口は優秀な捜査員で、運転免許センターに置いておくにはもったいない人物でした。

能馬は佐良と同時に皆口をもテストしていたというわけです。

小説のラストはこんな感じ↓でしめくくられました。

…………

(優秀な女性警官に)ひとり心当たりがいます」

「何よりだ」

能馬が唇の端だけを緩めた。

初めて能馬が笑うところを見たな、と佐良は思った。

<完>

監察チームに皆口菜子が加わり、物語はシリーズ二作目『ブラックリスト』へと続きます。

感想

むずかしい話だったな、というのが率直な感想です。

一読しただけでは理解できない部分も多くて、2周目を読みながら情報を整理してようやく登場人物の思惑をまるっと理解することができました。

なんというか難易度「HARD」のミステリを読んだ気分です。

読者視点で真相を解き明かすためには、各登場人物にとっての目的や利益を計算する必要があります。

推理の過程で人間心理について考えさせられるのが実に「監察」っぽくておもしろかったです。

どの謎についてもきちんと伏線が用意されているので、推理力を腕試ししたい本読みさんにおすすめしたいですね。

人物の魅力

シリーズ小説の特徴でもありますが、どの登場人物もいちいち魅力たっぷり!

特にわたしが好きだったのは監察チームの能馬と須賀です。

今回のネタバレでは出番少なめですが、ホントにね、おいしいところを全部持っていくんですよ!

いつも無感情で「君を信頼していない」と佐良に言い放った須賀は、仲間というより監視者のような立ち位置。

それでいて佐良のピンチには(仕事だから)颯爽と駆けつけてくれたり、佐良を「まあまあです」と評価して能馬に伝えたり……。

いやまあ須賀は仕事してるだけなんでしょうけど、その私情を挟まないクールな優秀さがたまりません!

※元公安だから戦っても強いし

一方、能馬は根っからの監察官で、ある意味《黒幕》のような人物。

結局、今回の事件にしても全部「能馬の手のひらの上だった」といっても過言ではありません。

警察内の不正を暴きつつ、優秀な部下を二人(佐良・皆口)手に入れたわけですから、一人勝ちだったといってもいいでしょう。

能面のように無表情。銀色のタクトを常備しているというキャラクター性にもグッときます。

  • 能馬
  • 須賀
  • 佐良
  • 皆口

これからの監察チームがどんな事件を捜査し、何が起こるのか?

シリーズ続編を読むのが楽しみです。

ぱんだ
ぱんだ
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まとめ

今回は伊兼源太郎『密告はうたう』のネタバレ解説をお届けしました!

中盤までの謎が謎を呼ぶ流れから一転、終盤で一気に真相やら犯人やら黒幕やらが明らかになる展開にしびれました!

過去の因縁が解消され、これから佐良と皆口には恋愛フラグもあったりする……のかな?

またひとつ追いかけたいシリーズが増えました!

 

ドラマ情報

『密告はうたう』がWOWOWドラマになります!

主演は松岡昌宏(TOKIO)さん!

2021年放送予定です(全6回)

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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