切ない・泣ける 記事内にPRを含む場合があります

『桜のような僕の恋人』あらすじネタバレ解説!儚くて切ない結末【映画原作小説】

宇山佳佑『桜のような僕の恋人』を読みました!

一言でいえば「泣ける恋愛小説」ですね。

あらすじに思いっきり書いてあるように、ヒロインが病気になって……というタイプのアレです。

結末がわかっていたとしても、切ないものは切ないんですよねぇ……。

というわけで今回は小説『桜のような僕の恋人』のあらすじネタバレ(と感想)をお届けします!

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

美容師の美咲に恋をした晴人。

彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指すことに。

そんな晴人に美咲も惹かれ、やがて二人は恋人同士になる。

しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。

美咲は、人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまったのだった。

老婆になっていく姿を晴人にだけは見せたくないと悩む美咲は……。

桜のように儚く美しい恋の物語。

(文庫裏表紙のあらすじより)

補足

お察しかと思いますが、ヒロインの美咲は最終的に亡くなります。

奇跡は起こりません。

わたしの世代でいうと「セカチュー(※)」を彷彿とさせる、泣ける恋愛小説です。

※世界の中心で愛を叫ぶ

とはいえ、ただの二番煎じというわけでもありません。

ぱんだ
ぱんだ
ほんとにぃ?

もちろん! それではさっそくストーリーを見ていきましょう!


ネタバレ

物語序盤の晴人は目も当てられないほどの空回りっぷりでした。

美咲をデートに誘おうとカット中に振り返って耳たぶを切断されちゃったり、お詫びとしてなんでもするという美咲をデートに誘っちゃったり。

そんなの断れるはずありませんよね。

美咲はドン引きながら「わかりました」とデートにOKを出しました。

ぱんだ
ぱんだ
うわぁ……

お花見デートはどこも大混雑で大失敗。

しかも晴人がついていた「プロのカメラマンです」という嘘もバレてしまって、雰囲気は最悪です。

普通ならこれでなにもかも終わり……ってなるところですが、なぜか話は予想外の方向へと転がっていきました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「うじうじしてないで、夢なら辛くてもなにがあってもカメラ続けなさいよ! 簡単に投げ出したりせずにさぁ!」

「そ、それは、僕にカメラの才能があるとおっしゃってくれているんですか?」

「は?」

「だから頑張れと?」

「違いますけど?」

「嬉しいです!」思わず彼女の手を握ると、美咲は猫のように跳ね上がった。

「す、すみません!」自分の思いがけない行動に慌てて手を離す。

「僕、頑張ります! その言葉を信じて、もう一度カメラ頑張ります!」

「いや、ちょっと待って。そういう意味で言ったんじゃ――」

「美咲さん!」

突然名前で呼ばれて美咲は固まった。

「僕はあなたにふさわしい男になってみせます!」

とんだ勘違い野郎っぷりを見せつけた晴人ですが、恋の力はすごいというべきか、有言実行でプロカメラマンのアシスタントとして働き始めます。

晴人はなんていうか、悪いやつじゃないんですよね。

良くも悪くも純粋で、まっすぐなやつなんです。

最初は「絶対にナシ」と思っていた美咲も、そんな晴人のまっすぐさにほだされていきました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「……どうして、わたしなんですか?」

ずっと不思議だった。どうしてわたしを好きになってくれたんだろう。確かめたい。

「わたしそんなたいそうな女じゃありませんよ!? 過大評価ですよ絶対!どこにでもいる女だし、美人ってわけでもないし、スタイルだって全然ダメだし、性格だって結構おっさん入ってるし、それにカッとなったらすぐ怒鳴っちゃうし、それから――」

 

「それでも、あなたがいいんです」

その言葉に息が止まった。

「いつも髪を切ってくれる姿を見て思っていました。僕はなにしてるんだろうって。カメラをやめて、毎日当てもなく生きている自分が恥ずかしくなったんです。美咲さんみたいにもっとひたむきに仕事に向き合えばよかったって、ずっとそう思っていました」

「でも朝倉さんだって今のお仕事頑張ってるじゃないですか」

わざと明るく振舞った。しかし晴人はなにも言ってくれない。気まずい。なにか言ってほしい……。

すると、ぽつりとつぶやいた。

 

「美咲さんに恋をしたからですよ」

震える声。震える指。一生懸命の告白に胸の奥がつんと痛くなる。

「僕は、あなたを好きになれてよかったです」

…………

ど真ん中ストレートの告白。

美咲は時間をかけて、自分の気持ちをじっくりと確かめてから返事をしました。

「わたしも、あなたのこと好きになりたいです! だから……わたしでよかったら付き合ってください」

「やったぁ――――――!」


宣告

季節は春から夏へ。

付き合いたてほやほやの若いカップルは浴衣で花火大会に行ったり、初めてのキスをしたり、幸せでたまらないといった風情です。

しかし、ご存じのとおり、このまま幸せに暮らしてハッピーエンドというわけにはいきません。

医師の宣告に、美咲は目の前が真っ暗になりました。

「単刀直入に申し上げます。有明さんは早老症に冒されている可能性があります」

「早老症?」

「分かりやすくいえば、この病気は【人より早く年を取る病】です」

信じられないことに、冬には外見が完全に老人のそれになるということでした。

いや、外見だけではありません。

免疫力が落ち、筋力が衰えて、体の機能が低下して……。

長くは生きられない、と医師は言います。

早老症は治療できる病ではありません。

幸福の絶頂から一転、美咲の心は絶望で真っ黒に染まっていきました。

美咲が罹患した早老症(ファストフォワード症候群)は実在する病気です

プロポーズ

美咲は病気のことを晴人に言いませんでした。

つき合って三か月でプロポーズまでしてくれた彼まで絶望させてしまうと思うと、とてもじゃないけど言えませんでした。

「ねえ美咲……僕と結婚してくれませんか? 僕はこれからも美咲と生きていきたい。君とずっと一緒にいたいんだ」

こんなこと↑を言われては「それは無理だよ」なんて言えませんよね……。

美咲の気持ちを知らないまま、晴人は無邪気に言葉を重ねてしまいます。

「付き合って三か月しか経ってなくても、君より素敵な人がどれだけいても、美咲は僕の最後の恋人だって、勝手にそう思ってるから」

美咲は顔が歪みそうになるのを我慢して「しばらく考えさせて……」と返事するのが精一杯でした。

最後の思い出

美咲は最後の思い出として、晴人に抱かれることを望みました。

初めての、そして最後の夜が終わり、美咲はまだ寝ている晴人の顔を見ながら心の中で語りかけます。

※以下、小説より一部抜粋

…………

ねえ晴人君、もしできるなら――。

美咲の目から涙がこぼれた。

時々でいいの。時々でいいから、わたしのこと思い出して……。

いつか晴人君が誰かと結婚して年を取って幸せに暮らす中で、ほんの一瞬でいいの、あんな子もいたなぁって思い出してほしい。

勝手なわがままだって分かってる。

分かってるけど……でも、お願い。

わたしのこと、忘れないで……。

 

美咲は愛おしくて晴人の頬にくちづけをした。涙が彼の頬に流れ落ちる。

急にいなくなったりしたら、きみはきっと怒るよね。ひどい女だって思うよね。

でも、それでいいの。

これから変わっていく姿をきみにだけは見られたくないから。

晴人君には今のわたしを覚えていてほしい。

きみと同い年だったわたしのことを、覚えていてほしいの。

ごめんね、晴人君。

美咲は涙をこぼしながら微笑んだ。

「一緒に歳を取っていければよかったね……」

そんな当たり前のことすらできなくて、ごめんね……。


別れ

季節は夏から秋へ。

美咲は晴人からの連絡を無視し続けましたが、それでも晴人からは電話やメールが毎日のように届きます。

嬉しい反面、もう晴人と会うわけにはいきません。

美咲は「好きな人ができた」と嘘をついて、強引に晴人を遠ざけました。

「好きな人がいるの。だからもう二度と晴人くんには会わない。連絡もしてこないで」

美咲は晴人に嘘を信じさせるため、担当医師に彼氏を演じてもらいました。

ただでさえ純粋な性格の晴人です。

はじめこそ「そんなの嘘だ」と突っぱねていましたが、最後には美咲の嘘を信じてしまいました。

「最低だな……」

軽蔑の色が混じった晴人のつぶやき。

傷ついたのは晴人も、美咲も、同じでした。

早老症

美咲の老化は残酷に進行していました。

外見はどう見ても24歳のそれではなく、筋力の衰えによって杖がないと歩けなくなっています。

免疫力の低下による肺炎。それに白内障。

身体の内側も外側も、もうすっかり老人です。

兄の貴司と並べば、誰もが祖母と孫の関係だと理解するに違いありません。

刻一刻と進行していく病に美咲も、美咲の兄の貴司も、その婚約者の綾乃も、支えてくれている人を含めてみんなが心をすり減らしていきました。

そんな、ある日のことです。

美咲は姉のように慕っていた綾乃に「あること」を告げました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「綾乃さん……もう来ないでほしいの」

その言葉に絶句した。「どうして?」

「わたしね、病気になってからずっと綾乃さんのこと羨ましいって思ってた。若くて綺麗なままでいられる綾乃さんのことが羨ましくてたまらなかったの……」

「美咲ちゃん……」

「きっとこれからも思っちゃう。綾乃さんが傍にいたら今よりもっと妬んじゃう。それでいつか……綾乃さんのこと本当に嫌いになっちゃうと思う……だから……」

美咲の目が赤く染まる。心を鷲掴みにされたような痛みが走る。涙がこぼれそうだった。

でも綾乃は笑顔をつくった。

「嫌いになったっていいわよ。だからこれからも――」

美咲は首を横に振った。

「嫌いになんてなりたくないよ……」

そう言って美咲は肩を震わせた。

「だってわたし……綾乃さんのこと本当のお姉ちゃんだと思ってるから……嫌いになんてなりたくないよ……」

「そんなの気にしないわよ。どんどん嫌いになって。わたし平気よ? だから美咲ちゃん……お願い……もう来ないでなんて言わないで……」

 

「綾乃さん、今までありがとう」

「嫌よ、そんなの……」

「お兄ちゃんのことこれからもよろしくね。たくさん幸せになってね。わたしがいなくなっても、ずっとお兄ちゃんの家族でいてあげてね」

「やめてよ。そんなこと言わないでよ」

「わたしね――」

美咲は微笑んだ。

「綾乃さんと出逢えてよかった……」

その笑顔に熱いものが込み上げた。

急速に老いていく美咲にとって一番ショックだったのは容姿が醜く衰えていくことでした。

どうしても他人を妬んでしまって、そのことで自己嫌悪しての無限ループ。

病は美咲の体だけでなく、心まで蝕(むしば)んでいました。


真実

晴人が真実を知ったのは、クリスマスの日のことでした。

兄の貴司が独断で美咲の病気のことを晴人に話したのです。

「頼む晴人君。美咲を救ってやってくれ。もう君しかいないんだ……」

考えるより先に足が動いていました。

晴人は有明家へと走ります。

美咲が姿を見られるのを嫌がったので、部屋の前、襖(ふすま)ごしに話しかけました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「美咲……」

返事はない。それでも襖の向こうに気配を感じる。

「お兄さんから聞いたよ。病気のこと」

部屋の向こうにいる彼女を想像した。一人で座っている美咲の姿を。たった一人で病気と闘っている恋人のことを。

「……気付いてあげられなくてごめんね……」

その苦しみを思うと言葉が詰まって声が震えた。

「すごく苦しかったはずなのに……怖かったはずなのに……それなのに僕は、君の気持ちに気付いてあげられなかった……」

今でも信じられない。君が人の何十倍も早く年老いているなんて。

だって僕の中の美咲はまだあの頃のままだから。僕と同じ24歳のままなんだ。

だからそんなの……ちっとも信じられないよ……。

「でも僕は、美咲がどんな姿になっても――」

晴人の目から涙があふれた。

 

「好きだよ……」

指先で襖に触れた。美咲に触れるように。

「……君が大好きだよ……」

この日から晴人は時を惜しむように有明家に通い始めます。

けれど、美咲の命の炎はもう消えかかっていました。

ここからクライマックス、そして結末へと物語は進んでいきます。

変わらないもの

(美咲のために自分は何ができるだろう?)

晴人が出した答えは「写真」でした。

先輩カメラマンに頼み込んで、晴人は写真展に参加させてもらいます。

展示するのは、ありったけの想いを込めた、今の自分にできる全力の写真たち。

晴人は「写真展に来てほしい」と襖越しの美咲に頼みます。

 

美咲は悩みに悩みましたが、最後には「後悔したくない」と晴人に姿を見られる覚悟で写真展に足を運ぶことにしました。

晴人がどんな写真を撮ったのか、晴人の写真が見たいと強く想いました。

息を切らし、杖を頼りに歩く姿は、通りがかりの《若者》に心配されるほどよぼよぼです。

それでも美咲はついに一人で、自分の力だけで写真展にたどり着きました。

そこに飾られていたのは……

※以下、小説より一部抜粋

…………

壁に飾られた白黒写真。なんの変哲もない風景の数々。

でもそれらを見た瞬間、美咲の目から涙がこぼれた。

見覚えのあるその風景は、いつか晴人の隣で見た景色だった。

初めてのデートで訪れた四ツ谷の桜並木、食事に出かけた新宿のレストラン、美咲が働いていた美容室・ペニーレインの写真もある。

夏に一緒に行った隅田川、花火を見上げたビルの隙間、プロポーズしてくれた由比ヶ浜。

季節は違っても、たしかにそこに晴人と見た景色が広がっていた。

 

――いつか見てくれますか? 僕の写真。

心の奥で晴人の声がした。

――これからたくさん勉強してたくさん腕を磨きます。だからいつか自信作が撮れたら、そのときは僕の写真を見てください。

約束、守れてよかった……。

勇気を振り絞ってここに来てよかった。

晴人君の写真を見れて本当に良かった。

――僕、頑張ります! その言葉を信じて、もう一度カメラ頑張ります!

彼はあの約束を叶えてくれた。わたしのために一生懸命写真を撮ってくれたんだ。

こんなに想われて、わたしは幸せ者だ……。

作品の最後にタイトルが記されていた。

その文字を見て、美咲は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

『変わらないもの』

ずっとずっと変わっていくことが怖かった。

人の何十倍もの速度で年老いていくことが怖くて仕方なかった。

日々変わっていく自分の姿を見るのが苦しくてたまらなかった。

酷いことを言って大切な人を傷つけてしまう自分が大嫌いだった。

でも――、

美咲は涙を拭った。

変わらないものもあるんだ……。

この写真の中には、あの頃のわたしと晴人君がいる。

そう思うとたまらなく嬉しかった。


桜のような僕の恋人

写真展の会場に晴人の姿はありませんでした。

聞けば、どうやら有明家に美咲を迎えに行っているらしく、すれ違いになってしまったようでした。

美咲は来た道を戻りながら、晴人の姿を探します。

そしてついに、発症してからずっと直接は会っていなかった彼が目の前に現れて……。

※以下、小説より一部抜粋

…………

公園の入り口に晴人が立っている。彼は辺りを見回して誰かを探しているようだった。

わたしを探してくれているんだ。

美咲は緊張で震える足を踏み出した。

晴人との距離が少しずつ縮んでいく。

彼がこちらを見た。目が合った。

嬉しさと怖さで足が震える。

彼もゆっくりこちらへ向かって歩いてくる。

美咲は一歩一歩晴人に近づいていく。

そしてあの頃のように彼の名前を呼ぼうとした。

「晴人――」

そのとき、北風がいたずらに美咲のニット帽を飛ばした。

晴人の傍らに落ちた桜色のニット帽。

彼はそれを拾い上げると笑顔を浮かべた。

美咲も微笑んだ。

晴人がニット帽を差し出す。

 

「どうぞ」

その瞬間、美咲の笑顔は泡のように消えた。

「どうしました?」彼は怪訝そうに首をかしげる。

気付いてない……。

晴人君は、わたしだって気付いてないんだ……。

わたしが変わっちゃったから、こんな姿になっちゃったから、だから気付けないんだ。

わたしだよって言いたい。でも言ってしまったら晴人君は……。

美咲は涙を堪えて口を閉ざした。

笑おう……。

これが最後だから。晴人君に会える最後なんだから。

 

美咲は目の前にいる恋人に向かって精一杯笑ってみせた。

あふれ出しそうな涙を堪えながら、たとえ気づかれることはなくても、それでも嬉しそうに微笑んだ。

そして晴人が差し出すニット帽を受け取った。

その瞬間、ほんの少しだけ指先が彼の手のひらに触れた。

手をつないでいた頃の感触がよみがえる。

荒れた手を好きだと言ってくれた晴人の声が。

晴人君はわたしにたくさんの思い出をくれた。

忘れたくない思い出をたくさんたくさんくれた。

だから晴人君――、

 

「ありがとう……」

かすれた声でそう告げた。

晴人はニット帽を渡すと会釈して歩き出した。

小さくなっていく彼の背中を美咲はいつまでも見つめていた。

やがて見えなくなる瞬間まで微笑みを浮かべながら……。

(不思議と悲しみはなかった)

美咲は「あの頃のわたしを覚えていてほしい」と安心していました。


結末

美咲がこの世を去ったのは、写真展から数日後のことでした。

晴人は有明家を訪ねて美咲の部屋に入り、そこでようやく自分の過ちに気づきます。

部屋にあった桜色のニット帽を、その持ち主の老婆のことを、晴人は覚えていました。

僕は気づけなかったんだ……。

あのとき、あそこですれ違った老婆は美咲だったんだ。

「……美咲……ごめん……ごめんなさい……」

どれだけ泣いてもういない恋人に謝っても、晴人の後悔は消えませんでした。

それから晴人はカメラの仕事をやめ、廃人のようになって日々を無気力に過ごします。

けれど、どれだけ悲しみの底に沈んでいても、結局のところ、人間は生きていかなければなりません。

周囲の人々に支えられて少しだけ元気を取り戻した晴人は、貴司から受け取った手紙を開きます。

それは、生前の美咲が晴人に遺した手紙でした。

『ずっとずっとこれからも、わたしは晴人君のことが大好きです』

そう締めくくられた手紙には次のような追伸が書かれていました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

今回は結局会えなかったね。

体調があんまりよくなかったから、写真を見てすぐに帰ることにしたんだ。

だからいつかまた会えることを楽しみにしてるね。

そのときは晴人君の写真ももっともっと見たいな。

わたしは晴人君のファン一号だから。

これからも素敵な写真を撮ってね。

たくさんたくさん撮ってね。

ずっと応援してるからね。

 

晴人君、ありがとう。

有明美咲

美咲は晴人が傷つかないように、優しい嘘を残してくれていたんですね。

うるっとくるシーンでした。

エピローグ

また桜の季節が巡ってきました。

晴人の愛した美咲はもういません。

けれど、晴人と美咲が過ごした時間まで、二人が愛しあっていた事実まで消えてしまうわけではありません。

満開の桜を見上げながら、晴人は恋人の顔を思い浮かべました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

彼女は桜のような人だった。

いつもひたむきで、一生懸命で、この満開の桜のように僕の人生を鮮やかに彩ってくれた。

そんな素敵な人だった。

もっともっと咲いていてほしかった。

散ってなんてほしくなかった。

一緒にまたこの桜を見たかった。

でもそれはもうできない。

この春の中を探しても、彼女はもうどこにもいないのだから……。

 

だから僕は春が来るたび君を思い出す。

傷つけたことも、一緒に過ごした時間も、その笑顔も、優しさも、全部全部忘れないように。

君を写した写真は一枚もないけれど、それでもこの心に焼き付けていたい。

 

晴人は肩に下げたニコンF3を構えてファインダーを覗いた。

静かにシャッターボタンを押す。

美咲に届くようにと願いながら。

喜んでほしいと願いながら。

ゆっくりと、心を込めて。

音を立ててカメラが風景を切り取る。

そして晴人は、美咲のいない新しい季節を写真の中に収めた。

<おわり>

ぱんだ
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感想

うるっと目が潤む場面もあったけれど、感涙とか号泣とかではなかったな……というのが素直な感想です。

原因はわかっていて、読み手であるわたしがこの手の物語をもういっぱい読んじゃってるからなんだと思います。

どうしても「いつものパターンだよね」と思ってしまって、昔ほど素直に泣けなくなってしまいました。

そういう意味で『桜のような僕の恋人』は特に若い世代におすすめしたい一冊ですね。

それと、こういうタイプの物語は映像になると感情に訴えるパワーがMAXになりますから、映像化(後述)のほうにも期待したいと思います。

ここが良かった!

『桜のような僕の恋人』を読んでいて、ジーンと目頭が熱くなる場面が二つありました。

ひとつはもちろんクライマックスのシーンです。

美咲が手紙の中で「結局会えなかったね」と優しい嘘をついているところは、予想できていたような気もするのにやっぱりグッと来るものがありました。

先ほどはちょっとクールに「泣くほどでもなかったな」なんて言ってみましたが、映像化されたら絶対にボロ泣きする自信があります。

ぱんだ
ぱんだ
もうひとつは?

小説では貴司や綾乃の視点で描かれているシーンがいくつかありました。

大切な人がすぐそばにいて、けれど自分にはなにもできなくて……という美咲の家族の心情には胸が締めつけられるようでした。

主人公やヒロインよりも、ともすると彼ら「家族」のほうに強く感情移入してしまうのは、わたしの年齢がよりそちらに近いからでしょうか。

美咲の家族の悲しみという視点があることによって「ああ、本当に美咲は病気なんだな」という説得力が増していたような気がします。

小説を読み終わって物語をふり返ったとき、貴司や綾乃が無力さに打ちひしがれているシーンが特に印象的に思い出されました。

あなたはどの場面に心動かされましたか?

コメントで教えてくれるとうれしいです。


まとめ

今回は宇山佳佑『桜のような僕の恋人』のあらすじネタバレをお届けしました!

春夏秋冬、季節の移り変わりとともに切なさが加速していく、教科書のような「泣ける恋愛小説」でした。

ヒロインが致命的な病気になる、というシチュエーションは今や定番といってもいいほどですが、若い盛りの女性が急速に年を取っていくというのはかなりエグい状況ですよね。

「会いたいけど、会いたくない」という美咲の葛藤が涙を誘う、儚い一冊でした。

 

映像化情報

『桜のような僕の恋人』がNetflix映画として配信決定!

キャスト

  • 中島健人(Sexy Zone)
  • 松本穂香

配信日

2022年配信

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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