ラストに驚き

小説『向こうの果て』あらすじネタバレ解説!感想は「切なすぎる」

竹田新『向こうの果て』を読みました!

『彼女はなぜ同棲相手を殺したのか?』

あらすじからは想像できない、切なくて衝撃的な物語でした。

どうぞ最後までご覧になってください。

今回は小説『向こうの果て』のあらすじがよくわかるネタバレ解説(と感想)をお届けします!

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

同棲相手を殺害した容疑で逮捕された池松律子。

将来を期待される若手検事・津田口が取調べに当たるが、罪は認めるも動機については語らない。

調べを進めると、彼女を知る男達の証言によりいくつもの顔が浮かび上がる。

娼婦のような女、残酷な女、噓つきな女、太陽のような女……。

真実の顔はどれなのか。

津田口自身もまた、彼女に翻弄され始め――。

(文庫裏表紙のあらすじより)

事件の概要

被疑者・池松律子は35歳。場末のスナックで働くホステスです。

一方、殺された君塚公平は律子の幼なじみであり、彼女のヒモでした。

律子は酒癖が悪く、いつも迎えに来る公平を殴ったり蹴ったり罵倒したり、それはもう見ていられないほど厳しく当たっていました。

「頼むから死んでくれよ。お前の顔見るだけで反吐が出るんだよ」

こんな調子↑です。

しかし、被害者である公平はそんな律子に文句ひとつ言わず、逆に「僕が悪いんです」と庇いさえしていたといいます。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

公平は末期の膵臓がんに冒されていました。

そして、その保険金の受取人には律子が指名されていました。

保険金目当ての殺人という検察の見立てを、律子は肯定します。

「私は保険金が欲しくて公平を殺したの。これが事実」

本人が認めている以上、ふつうなら取り調べはもう十分です。

しかし、担当検事の津田口は律子の証言に違和感を覚え、彼女の過去から真実を探り出そうとします。

事件の裏側にはいったいどんな真実、どんな感情が隠されているのでしょうか?

<ネタバレにつづく>

事件の追加情報

  • 公平は包丁で二回刺されていた
  • 律子は公平を刺したあと、アパートに火をつけた

ネタバレ

律子の過去を調べた津田口は、彼女が不幸な人生を送ってきたことを知ります。

両親から虐待されて育ったこと。

12歳の時に両親が火事で他界したこと。

律子を引き取った叔父と男女の関係になったこと。

その叔父に両親の保険金を使われたこと。

現在はホステスですが、体を売って生活費を稼いでいた時期もありました。

現在に至るまで、律子と深い関係を持った男は全部で5人。

  • 行島道夫(叔父)
  • 京波久雄(1人目の夫。金持ち)
  • 村上姫昌(同棲した幼なじみ)
  • 山之内一平(2人目の夫)
  • 君塚公平(事件の被害者)

彼らが語る律子の印象は、それぞれ別の女のようにバラバラでした。

最初の夫である京波は律子のことをこう↓評します。

「生まれや育ちとは全く関係なく、律子には生まれついての気品と気高さみたいなものが備わっていました」

末期がん患者である公平を日常的に罵倒し、殴っていた律子と同一人物とは思えない評価です。

京波が律子と離婚したのは「律子の浮気」が原因でした。

しかし京波は当時政略結婚を両親から頼まれていた自分のために、わざと律子が別れやすいように浮気したのだと考えています。

親の因縁

事件をひも解き、律子について理解するためには親の代の因縁から始める必要があります。

いまさらですが、律子が取り調べを受けているのは昭和60年のことです。

親世代の物語ともなれば、話は戦前にまでさかのぼります。

律子の父親は民謡の歌手である池松喜平という男で「池松喜平一座」といえば地元青森だけではなく、東北全土で絶大な人気を博していました。

一座の中心メンバーは3人。

  • 池松喜平(唄)
  • 君塚隼吾(三味線)
  • 村上松夫(手踊り)

名字でお気づきかもしれませんが、それぞれの子どもがこの3人↓になります。

  • 池松律子
  • 君塚公平
  • 村上姫昌

子どもたち3人は生まれたときからの幼なじみでした。

律子はいつもいじめられていたので、彼女を守ることこそが公平と姫昌の使命でした。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

さて、池松喜平一座の名が売れていくと、メンバーの人間関係に大きな変化が訪れました。

座長である喜平の態度が尊大になり、暴君として他のメンバーを脅かすようになったのです。

特に親友だったはずの隼吾への当たりは強く、殴ったり蹴ったり罵倒したり、理由もなく土下座させることもありました。

ぱんだ
ぱんだ
うへぇ……

喜平の変わりようは一座の中だけにとどまりません。

妻や娘にも暴力を振るうようになりました。

喜平が暴れると、今度は母(喜平の妻)のキヨが律子を殴ります。

律子の体の痣は日に日に数を増し、痛ましい姿になっていきました。

 

昭和60年。取調室で津田口の前に座っている律子が言います。

「ねえ、絶対に秘密だよ。お父さんを殺したのも私なの

火事の真実

『律子はかつて自宅に放火して両親を殺した。大人になってからは幼なじみの君塚公平を虐げ、やはり殺した』

律子と公平の関係は、悲しいかな喜平と隼吾の関係にそっくりです。

血は争えないというか、親世代の歪みがそのまま子世代に引き継がれ、その末に事件が起こったかのように見えますね。

しかし、真実は違います。

第一に、律子の家に火を放ったのは子どもたち3人が協力しての計画でした。

しかも律子が主犯だったわけではなく、エスカレートしていくDVを見かねた公平と姫昌が言い出したことでした。

着火する実行犯は公平の役目。

第一発見者として通報するのが姫昌の役目。

その夜は家に喜平だけで、珍しく酒も飲まずに寝ていました。

公平は家中にガソリンを撒くと、マッチを取り出します。

そして……

※以下、小説より一部抜粋

…………

マッチの箱をゆっくりと開け、一本のマッチを取り出した。

その時ふと、気配を感じて顔を上げると、喜平が寝ころびながら俺(公平)の方をジッと見ていた。

驚く俺を尻目に喜平が言った。

「俺はもう、とっくの昔に化け物になってたんだな」

そう言った喜平の顔は、泣いているようにも笑っているようにも見えた。

(中略)

「寄こせ」

喜平はいとも簡単に俺からマッチを取り上げ、さっきまで寝ていた自分の布団に戻っていった。

やがて喜平はマッチに火をつけ、自分の布団にその火を落とした。

喜平が低い声で言った。

「行け!」

俺はその声に突き動かされるように、外に向かって走り出した。

背中から喜平の大きな声が聞こえてきた。

「律子に伝えてくれ。お前は生きろ」

律子の秘密

結局、家を燃やしたのは喜平自身でした。

そこから逃げなかったので焼身自殺ということになります。

律子の母のキヨは、燃え盛る家の中に入っていって夫と一緒に亡くなりました。

「いやだ、私を一人にしないで」

喜平にさんざん暴力を振るわれてきたキヨですが、夫のことを心から愛していたようです。

しかし、なぜ喜平は自ら死を選んだのでしょうか?

それに、気のいい青年だった喜平の変貌ぶりも、考えてみれば不自然です。

そこには哀しい《理由》がありました。

ぱんだ
ぱんだ
理由って?

一言でいってしまえば、律子は喜平の実の子どもではありません。

キヨが他の男と寝て、そうして生まれたのが律子だったんです。

喜平はその事実に耐えられず、妻や(血のつながらない)娘に暴力を振るうようになりました。

キヨが同じDV被害者である律子を殴っていたのは「この子どもさえ生まれていなければ」という思いがあったからです。

「お母さんの子どもに生まれてきて、ごめんなさい」

幼くして生まれてきたことを母に謝っていた律子は、いったいどんな気持ちだったのでしょう。

幼少期の辛い経験が池松律子という人間の心を歪め、壊したことは疑いようもありません。

ぱんだ
ぱんだ
しんどい……

さて、話はまだまだ複雑になっていきます。

律子の実の父親、キヨの不倫相手は、よりにもよって親友の君塚隼吾でした。

キヨは寂しかったんです。

有名になるにつれて飲み歩くようになり、家に寄りつかない夫。

妻である自分よりも喜平と強い絆で結ばれている親友の隼吾。

キヨは寂しさゆえに、一夜の過ちを犯してしまいました。

そうして不義の子としての律子が生まれ、運命が狂い始めます。

ぱんだ
ぱんだ
……

今度は喜平の立場になってみましょう。

喜平は親友と妻、信頼していた二人から裏切られ、荒れるようになりました。

しかし、三味線の天才である隼吾を一座から追い出すわけにもいきません。

裏切られたショックは怒りとなり、喜平は隼吾や妻娘を殴るようになります。

しかし、そんなことをしても喜平の気が晴れるわけではありません。

むしろ大好きだった人々に暴力を振るう自分に嫌気が差し、自己嫌悪に陥る一方です。

殴っては自己嫌悪に陥り、そしてまた殴っての負の無限ループ。

いまなら喜平がぽつりと言った言葉の意味がよくわかります。

「俺はもう、とっくの昔に化け物になってたんだな」

喜平が死を受け入れたのは、誰も幸せになれない負の連鎖を断ち切るためでした。

本当は、律子を愛したかった。

その本心が、最後の言葉からも読み取れます。

「おまえは生きろ」

しかし、喜平の自殺は律子を自由にするどころか、むしろ呪いのように心を囚(とら)えてしまいました。

それもそのはずです。

怪物だった父親を殺したのならともかく、結局、律子は(本心では)愛情のある父親を死に至らしめてしまったのです。

もし自分がもっと我慢していたら、両親は死なずに済んだのかもしれない……。

後悔と罪悪感。

律子が「ふつう」に生きられなくなったのは、この事件のせいです。

両親が亡くなってからの律子は「生きる屍」でした。

夢もなく、欲もなく、希望もない。

律子の2番目の夫である山之内一平は、彼女についてこう評します。

「あいつは自分ってものがないんだよ」

自分がないから、男たちに合わせてカタチ(在り方)が変わっていきます。

自分を引き取った叔父に自ら体と両親の保険金を差し出し、

1人目の夫である京波のためにわざと浮気をして、

2人目の夫である山之内には有り金を全て差し出しました。

献身的な女性というより、律子はやっぱり「生きる屍」だったのでしょう。

「なにもかもどうでもいい」という捨て鉢な本心が、男たちとの関わり方から伝わってくるようです。

そうして流れ流されて律子が辿り着いたのが、場末のスナックで働くホステスという今の場所でした。

律子はそこで自分を探していたという公平と出会い、同棲を始めます。

ただし、律子と公平の関係は、これまでの男たちとのそれとはまったく違ったものでした。

律子は公平といるときだけ「自分自身」でいられたんです。

しかし、公平は末期の膵臓がんに冒されていました……。

事件の真相

※以下、小説より一部抜粋

「津軽で別れたままだったら良かったのに、どうして会いにきたのよ」

「お前を戻してやりたかったんだ。俺がこの世から消えてなくなる前に、お前が生きるはずだった光の世界に……」

「あんたと今さら離れて、どうやって生きればいいのよ!」

長い沈黙が、俺(公平)たちを包んだ。

「俺はまた、お前を苦しめることしかできなかったんだな」

(中略)

「……なんだか、すごく疲れた」

そう言うと、律子はゆっくりと立ち上がり、台所からナイフを取り出した。

そしてそのナイフを俺に手渡し言った。

「殺して……」

律子にかける言葉が見つからない。

「大丈夫、私を殺してもあんたはきっと天国にいけるから。だってあんた、一度も私を抱かなかったじゃない。あの儀式の夜(※)から一度も……」

※青森時代。律子の初めての相手は公平だった

律子は、何も悪くない。

「もう、一人になるのはいや」

律子が静かに泣いている。

俺はナイフを握りしめながら、ゆっくりと律子に近づいた。

律子が嬉しそうな顔で笑う。

突然、落雷の音が鳴り響いた。

俺は思わずナイフを落とした。

俺が落としたナイフを見つめながら、律子が言った。

「ごめん。そうだよね」

「…………」

「私みたいな想いをさせるわけにはいかない、こんな寂しい想いは、私だけでたくさん」

「律子……」

俺は小さく律子の名を呼んだ。

「大丈夫。一人は慣れてるから」

そう言って、律子は無理に笑顔を作って、俺の足元に落ちているナイフを拾った。

(中略)

手に持っていたナイフで、律子が俺の腹を刺した。

ナイフから、律子の溢れるような想いが伝わってきた。

痛いほどの律子の気持ちが。

俺は律子を強く抱きしめた。

「お前ずっと、確かめてたんだろ」

「…………」

「俺が、本当にこの世に存在してるのかって」

「…………」

「だから俺を殴って、蹴って」

律子が俺の腕の中で小さく震えている。

「律子、よく見ろ。俺の中から血が流れてる」

「…………」

「俺はちゃんと生きて、お前の前にいる」

「…………」

「もう大丈夫だ。俺たちはこれでずっと一緒だ」

「…………」

「お前の中で、お前が死ぬまで俺たちは一緒に生き続ける」

律子が血だらけの手で、俺の頬を優しくなでる。

「だから頼むから、お前は生きてくれ」

俺はあの日と同じように、マッチに火を灯す。

その小さな火を、絨毯に落とした。

(中略)

俺は律子が持っていたナイフを強引に奪い取り、自分で自分の腹をもう一度刺した。

京波(※)が嫌がる律子を抱きかかえるようにして外に出る。

俺はそのうしろ姿に向かって叫んだ。

「律子、お前は生きろ!」

京波は律子を毎日見守っていました(というかストーカーでした)

火事の第一発見者である京波は、部屋に踏み込んできて律子を連れ出しました。

律子は本当なら、燃える家の中で公平と一緒に焼かれたかったのではないかと思います。

結末

あらためて事件を整理すると、律子が公平を刺したことは確かです。

しかし、それは保険金目的でもなければ、憎しみによる行動でもありません。

律子は公平が存在していることを感じたくて、いわば《愛》のために彼を刺したのです。

そこに殺意はありませんでした。

仮に殺意があったとしても、すぐに後を追うつもりだったに違いありません。

事件の全貌を掴んだ津田口は、裁判当日に罪状を「嘱託殺人」に変更しました。

「おい、嘱託殺人ってなんだ」

「被害者の君塚公平が、律子に殺してほしいと頼んで殺させたってことです」

殺人罪に比べて、嘱託殺人の方が刑は軽くなります。

執行猶予で実刑にならない可能性もあります。

しかし、検察というのは基本的に被告人をより重い罪で訴える立場です。

津田口の行動はある意味、検察組織に対する裏切りであり、当然のように大問題になりました。

そして最終的に、津田口は検事を辞めることになります。

要するにクビです。

ぱんだ
ぱんだ
でも、なんでそこまで?

津田口は純粋な正義感から律子の刑を軽くしたわけではありません。

津田口にはたった一人の姉がいます。

名前は美奈子。

ギャンブル狂いの両親に捨てられた津田口が検事になれたのは、姉の自己犠牲のおかげでした。

美奈子は弟を立派な検事にするために体を売って金を稼ぎ、大学へ行かせました。

やがて美奈子は結婚しましたが、娼婦だった過去が夫にバレてしまい、首を絞められて殺されかけます。

美奈子は病院へ搬送されましたが、意識のない植物状態となり、物語終盤で亡くなりました。

ぱんだ
ぱんだ
そんな……

津田口は知らず知らず律子に姉の姿を重ねてしまい、検事として冷静な判断ができなくなってしまったんですね。

しかし、子どものころからの夢だった検事をクビになっても、津田口に後悔はありません。

「僕はきっと、池松律子に恋をしていたんだと思います」

公平はもうこの世にいませんが、律子にはもう一人、彼女のことを心から愛している幼なじみ・村上姫昌がいます。

「池松律子の事、よろしくお願いします」

一般人となり、もう律子と関わることのない津田口の言葉に、姫昌は応えました。

「俺なりにできることをやるよ。俺も公平と同じ想いだ。どんなに苦しくても絶対に光はある。だから、律子に生きててほしいんだ」

 

律子が死んだのは、その翌日のことでした。

真っ白なシーツを細く裂いての、首つり自殺でした。

ぱんだ
ぱんだ
えっ……

エピローグ

君塚公平は小説家でした。

彼が最後に執筆した作品は今、巡り巡って津田口が預かっています。

タイトルは『太陽のような女』

その小説は「幸せになれていたはずの律子」を主人公とした物語でした。

ラストシーン。津田口は公園で一人『太陽のような女』を開きます。

※以下、小説より一部抜粋(作中作「太陽のような女」の内容です)

…………

「お母さん、洗濯物畳むの手伝ってあげるね」

長女の陽子がそう言って私の横に座ると、積み木で遊んでいた弟の太一が飛んできてお姉ちゃんの真似をして言う。

「僕も手伝う」

「じゃあお母さんは、お庭でリンゴ磨いてくるね」

私はそうやって庭に出た。

真っ赤なリンゴが山積みにされている。

夫が丹精込めて作った自慢のリンゴ。

私はこれを一つに一つ丁寧に磨き、梱包して出荷するのだ。

私たち家族四人は、このリンゴのおかげで毎日平和に暮らしている。

(中略)

子供たち二人から太陽のにおいがする。

私はいつもその匂いを、胸いっぱいに吸い込む。

遠くから私を呼ぶ声がする。

「律子――」

夫が両手いっぱいに、真っ赤なリンゴを抱えて帰ってきた。

子供たちがその声を聞いて、夫の元に駆け寄る。

夫はリンゴがたくさん入った籠を置いて、子供たち二人を空高く抱き上げる。

子供たちの嬉しそうなはしゃぎ声が聞こえる。

私は笑顔で夫に向かって言う。

 

「公平。お帰り」

だけど太陽がまぶしくて、なんだか幸せで、私は少しだけ泣きそうな気持ちになった。

<完>

感想

律子の不幸を思うと、わたしはゾッとします。

なぜって、関係者のうち誰一人として悪人がいないからです。

喜平が荒れていたのは、妻の不貞を知ったから。

キヨが不倫したのは、寂しかったから(ある意味、喜平のせい)

君塚隼吾だって親友を裏切るつもりなんてなくて、流されてしまっただけです。

諸悪の根源ともいえる親たちには、それぞれ同情できる余地があります。

「俺(隼吾)も喜平もキヨさんも弱い人間だ」

隼吾が言うように、彼らは悪人ではなく「弱い人間」だったのだと思います。

 

律子の人生をあらためて振り返ると、彼女はいつも愛されていました。

喜平や隼吾に愛され、公平や姫昌に愛され、京波や山之内一平に愛されていました。

なのに、池松律子は不幸のどん底を歩くような人生を送り、その果てに自殺してしまいます。

数奇な運命、と言わざるをえません。

律子はたくさんの愛に囲まれながら、けれどちっとも幸せになれなかったのです。

律子にとっての最後の希望は、君塚公平だけでした。

けれど、その公平も病に冒されていて……。

いったい律子がどれだけ絶望したことか。その深さは想像もつきません。

律子はきっと、公平と心中したかったのだと思います。

けれど、そんな希望とも言えないような最後の最後の願いまで、摘み取られてしまいました。

公平の愛によって、京波の愛によって、摘み取られてしまいました。

そして最後には津田口の愛によって、律子はまた「自分のために津田口の人生を狂わせてしまった」という重い荷物を背負わされてしまいます。

最後までちっとも幸せになれないまま、律子は息絶えました。

律子の不幸を思うと、わたしはゾッとします。

愛に満ちた物語でありながら、ゾッとするほどの絶望を突きつけてくる物語でもありました。

タイトルの意味

『向こうの果て』とはいったい何を指したタイトルだったのでしょうか。

作中にそれらしい言い回し(タイトル回収)はありません。

単純に取調室の「向こう側」にいる律子のことを指しているという解釈ではどうでしょうか。

その場合「果て」とは彼女の生い立ちのことだったり、文字どおり人生の果てのことだったりするのだろうと読み解けそうです。

一方で、わたしはエピローグで登場した公平の小説『太陽のような女』こそタイトルに深く結びついているのではないかとも思います。

『太陽のような女』は幸せになれていたはずの「向こう側」の律子を描いた物語です。

「果て」には終わりという意味の他に、遠いかなた(最果て)という意味もあります。

遠い遠い向こう側の世界では、律子は幸せになれていた……。

そう解釈するとなんともいえない気持ちになります。

遠い遠い《向こうの果て》までの距離を想うと、胸の奥から切なさが湧き出てくるようでした。

ぱんだ
ぱんだ
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まとめ

今回は竹田新『向こうの果て』のあらすじネタバレ(と感想)をお届けしました。

読後に余韻が残る、味わい深い小説でした。

誰に感情移入するか、出来事をどの角度から読み解くか、読み手によってこの物語の味わいは違ったものになるのではないかと思います。

一気読みできるほど読みやすく、のめり込める小説なので、気になった方はぜひお手に取ってみてください。

※読んだ方は感想をコメントで教えてくれると嬉しいです

 

ドラマ情報

WOWOWドラマ『向こうの果て』

キャスト

  • 主演:松本まりか

放送日

2021年5月14日(金)よる11:00~(全8回)

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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