ラストに驚き 記事内にPRを含む場合があります

『パレートの誤算』あらすじネタバレ!内通者は誰?結末まで解説!

柚月裕子『パレートの誤算』を読みました!

  • 生活保護の現状と問題
  • 殺人事件をめぐるミステリー

ふたつの要素が両立した社会派ミステリーで、探偵役が市役所職員のケースワーカーというのが新鮮でした。

※ケースワーカーとは、生活保護受給者の住所を定期的に訪問し、就労などの支援を行う行政の担当者のこと

今回はそんな小説『パレートの誤算』のあらすじを結末までネタバレ解説していきたいと思います!

あらすじ

ベテランケースワーカーの山川が殺された。

新人職員の牧野聡美は彼のあとを継ぎ、生活保護受給世帯を訪問し支援を行うことに。

仕事熱心で人望も厚い山川だったが、訪問先のアパートが燃え、焼け跡から撲殺死体で発見されていた。

聡美は、受給者を訪ねるうちに山川がヤクザと不適切な関係を持っていた可能性に気づくが……。

(文庫本 背表紙より)

ネタバレ

亡くなった山川亨(37)は仕事熱心で物腰も柔らかなイケメン紳士。

「あの人に限って悪いことをするはずがない!」

と誰もが口を揃えて証言する、非の打ち所がない人物です。

当然、

  • 誰かに恨まれていた
  • 金銭や女性関係のトラブル

などの噂もなし。

ではいったいなぜ、そして誰に、山川は殺されたのでしょうか?

疑惑

事件現場のアパートは入居者全員が生活保護受給者であり、地域担当の山川は何度も足を運んでいました。

聡美は山川の後任ケースワーカーとして焼け出された元住民に会いに行くのですが、そこであることに気がつきます。

聡美が注目したのは元住民の安西佳子(35)

もとは水商売の世界にいましたが、アルコールの飲みすぎで体を壊し、今は生活保護を受給しています。

山川は報告書に事細かく佳子の経歴を書き連ねていましたが、彼氏(というか内縁の夫)である立木智則(45)のことは書いていませんでした。

山川なら絶対に受給者の配偶者について把握しているはずなのに……なぜ?

※受給者にパートナーがいる場合、生活保護が取り消される場合があるため

独自に調べてみると、なんと立木智則は暴力団「道和会」の構成員でした。

きなくさい話は、それだけはありません。

行方不明になっている元住人の金田良太もまた道和会とつながりがあり、アパートではたびたびヤクザらしき男が目撃されていたといいます。

にもかかわらず、山川は佳子、金田、他のどの住人の報告書にもヤクザのことを書いていませんでした。

ぱんだ
ぱんだ
あやしい……

そして、とどめの一手は山川が所持していた高級腕時計のコレクション。

ひとつ百万円もするようなブランド時計を、山川はいくつも持っていました。

もちろん公務員の給料だけではとても買い揃えることなんてできません。

じゃあ、高級時計を買うための金の出どころはいったい……?


貧困ビジネス

『山川は道和会の貧困ビジネスに加担していたのではないか?』

聡美は次第に山川への疑いを強めていきます。

貧困ビジネスとは

低所得者の弱みにつけ込んで利益を得るあくどいビジネスのこと。

住居がない生保受給者に住む場所を用意してやる代わりに、受給者が手にする生活保護費から毎月、大半の金を搾取していく、など。

調べてみると、道和会の縄張り(シマ)に住んでいる受給者のほとんどが菅野病院で受診していることが発覚します。

家から離れた個人病院でわざわざ受診する必要なんて、ふつうはありません。

となれば考えられるのは、やっぱり貧困ビジネス。

道和会は生保受給者や菅野病院とグルになって、医療費を不正受給していたのです。

そのことに山川が気づいていなかったはずがありません。

山川は道和会の貧困ビジネスを見逃していた……?

そう考えれば高級時計コレクションを買う金の出どころにも説明がつきます。


道和会の魔の手

行方不明だった金田良太が遺体で発見されました。

他殺で、おそらく犯人は道和会の人間……。

生前、金田は聡美に「これ以上、首を突っ込まないほうがいい」という忠告の電話をかけていました。

※実は金田は聡美の兄の同級生で、聡美は前にも不良から助けてもらったことがありました。

このまま山川の事件を調べ続ければ、聡美の身も危ないかもしれない……。

そんなタイミングで、聡美は課長の猪又から生保担当から外れるように言い渡されます。

もうすぐ定年の猪又からしたら、問題を起こしそうな聡美にこれ以上勝手に動き回られたくなかったんですね。

しかし、聡美は簡単には諦めません。

パソコンに山川が作成したパスワードつきのフォルダがあるのを見つけた聡美は、データをUSBにコピーして警察に届けようとします。

しかし、警察に向けてアクセルを踏み込む前に、聡美は駐車場で何者かに後頭部を殴られ、そのまま拉致されてしまうのでした。

ぱんだ
ぱんだ
え!?

縛られて押し込まれた車のトランクの中で、「それにしても行動が早すぎる」と聡美は考えます。

襲撃犯たちの口ぶりから、その正体が道和会の人間で、目的が山川のデータであることはすぐにわかりました。

しかし、聡美が山川のデータを見つけたのはその日のうちの出来事です。

そのことを知っているのは……

聡美はハッとします。

同じ山川の後任ケースワーカーとして一緒に真相を探っていた、いわば相棒の小野寺淳一(30)

山川のデータの存在を知っているのは小野寺くらいしかない、と聡美は考えます。

小野寺は道和会とつながっている内通者だった……!?


内通者の正体

一方その頃、刑事の若林永一郎は新しい情報を手にしていました。

亡くなった金田の携帯履歴。

始末される一週間前から、金田は市役所の代表番号に三回も電話をかけていました。

いったい誰にかけていたのか?

さらに捜査を進めた若林は、ついに金田と電話で話していた人物の特定に成功します。

若林(こいつが道和会とつながっていたってのか。タヌキが!)

聡美の異変に気づいて警察に助けを求めてきた小野寺に、若林は告げました。

 

「さっき金田の携帯履歴からデータが出た。そのなかに、お前んとこの課長の携帯番号があった」

 

そう、内通者の正体は聡美たちの上司である猪又孝雄だったのです!

聡美は気にしていませんでしたが、山川のデータのことをは同僚の西田美央にも知られていました。

そして、先に帰った美央は「今日は飲み会で、猪又課長も出席する」と言っていました。

つまり、猪又もまたその日のうちに山川のデータの存在に気づけていたのです。

危機一髪

これで若林たち警察が聡美を無事に救い出して事件解決……だと思うじゃないですか。

もうね、全然、間に合わないんです!

拉致された聡美は埠頭の倉庫に連れていかれて、道和会のヤクザに思いっきり殺されそうになります。

頭に当たったら一発アウトであろう鉄パイプを振り回すチンピラから、縛られた状態でなんとか逃げ回る聡美。

あとでわかるのですが、肩が複雑骨折し、肋骨が三本折れる大怪我を負い、それでも紙一重のところを逃げ回り続けます。

しびれを切らした男たちは船で沖に出て、そこでゆっくり聡美を始末することに。

男に担がれ船に乗せられる直前、万事休すというところで……

やっとパトカーが到着!

無事に、とは言えませんが、聡美はなんとか九死に一生を得たのでした。

このときの若林のセリフ。

「よう、生きてたか。ひどい目に遭ったな」

は抜群にかっこよかったです!

若林は全体的には憎まれ口をたたく嫌なやつというキャラだったんですが、ここぞというときの頼もしさがすごくかっこよかったです。

聡美を助けるために無茶な命令を出しながら

「俺の首などどうでもいい! 市民の命がかかってるんだ!」

と言う場面なんかグッときましたね。

『孤狼の血』もそうでしたが、柚月裕子さんの描く渋カッコいい男性は素敵すぎます。


真相

きっかけは猪又の女遊びでした。

夜の店で猪又は一人の女性に入れ込んでいたのですが、その女性はヤクザの女……というか安西佳子でした。

弱みを握られた猪又は道和会に命じられるまま、生活保護の申請を受理していきます。

※本来、厳しい審査が必要

道和会による生活保護費の不正受給を見逃していたんですね。

不正受給によって道和会は年間三千万円もの利益を、税金から得ていました。

作中では毎月の生活保護費は(その市役所だけで)二億円にも上るとのこと。

あまりの金額にちょっとびっくりしますよね。

そんな猪又の不正に気づいたのが、主任の山川です。

山川は猪又の不正の証拠を集め、そのデータを突きつけて猪又に自首を迫りました。

猪又は昇進をちらつかせたり、泣き落としにも訴えましたが、信念をもって仕事をしている山川には通じません。

このままでは警察に通報され逮捕されてしまう、と焦った猪又は衝動的に山川の命を奪ってしまいました。

ぱんだ
ぱんだ
犯人は猪又だったのね!

混乱した猪又は道和会に助けを求めました。

その結果、道和会の準構成員である金田がアパートに火をつけて後始末をした……というのが事件の真相です。

金田は道和会に高飛びさせてもらうはずだったのですが、いつまで待っても道和会はなにもしてくれません。

しびれを切らした金田は猪又を脅して金を用意し、自分で高飛びしようとしたのですが……そのことが道和会にバレて始末されてしまいました。

山川は最初の評判通り清廉潔白な人物でした。

報告書に道和会のことを書かなかったのは、内通している猪又の目に触れる文章だったから。

所持していた高級時計コレクションは、ネットオークションの売り買いでコツコツと集めたものでした。

山川が残したロック付きのデータの中身は、猪又の不正の証拠。

それを聡美が警察に持っていこうとしたので、猪又は焦って道和会に《処理》してもらおうとしたんですね。


結末

猪又や拉致実行犯は逮捕され、道和会とグルだった菅野病院も家宅捜索されました。

聡美は全治二か月の怪我で入院中。

小野寺から担当していた生保受給者から心配されていると聞かされ、早く仕事に復帰したいと思います。

※最初はいやで仕方がなかった仕事なのに、聡美も成長したんですね。

では最後に、総括の言葉を小野寺くんにお願いするとしましょう。

※以下、小説より一部抜粋

「たしかに生保のあり方には、問題が多い。不正受給やら貧困ビジネスが、あとを絶たない。でも生保という行政の制度があったから、育つことができた子どもがいることは確かだ。

様々な理由で、自分の力で生きていけない人は、いつの時代にも必ずいる。そういう人を救うために生保は、必要な制度だ。

言うなれば、生保は自分の力で生きていけない人の――社会的弱者と言われている人たちの最後の命綱だ。その命綱を、悪用する奴らを俺は許せない」

聡美もそうでしたが、小野寺も最初はケースワーカーの仕事を嫌がっていました。

そんな二人が最後には仕事に誇りを持つまでに成長した、という場面で物語は幕を閉じます。

タイトルの意味

結末では「パレートの誤算」と題された学生の寄稿文が登場します。

パレートの法則とは、

『組織の利益の8割は2割の人間が生み出している』

などの例で紹介される別名「80対20の法則」です。

似たものに「働き蟻の法則」というものがあって、

  • アリの集団には一定数の働き者がいる一方で、一定数はまったく働かないアリもいる
  • 働き者だけを集めても、その集団のなかではやはりまったく働かないアリが一定数発生する

ということがわかっています。

社会を例にとると、生保受給者は

「働かないアリ = 利益を生まない80%の人間」

に見えます。

寄稿文ではそのことに触れてこう書かれています。

働かない蟻だって、一匹一匹が懸命に生きているのだ。

わたしたちも、それぞれが事情を抱え、社会の助けを借りながら自立に向けて頑張っている。

社会的弱者と呼ばれているわたしたちが努力して自立できれば、今度はわたしたちが、いまの自分たちのような人たちの助けになれるかもしれない。

働かない蟻にも、パレートの法則の二割以外の部分にも、存在意義はある。

パレートも自分が唱えた法則で、それらが無価値だとは述べていない。

もし、そのように解釈している人がいるとしたら、それはパレートにとって誤算だといえるだろう。

小野寺の結末のセリフもそうですが、作者からのメッセージを感じる文章でした。


感想

正直に言うと、ちょっと「もの足りないな」と思いました。

わたしはこれまで

  • 『孤狼の血』
  • 『凶犬の眼』(孤狼の続編)
  • 『盤上の向日葵』

と柚月裕子さんの小説を読んできたのですが、それらの作品と比べるといまいち響きませんでした。

文庫版の解説でも少し触れられていましたが、もし主人公が若林刑事だったら、同じ物語でも全然違った(孤狼のような)読み味になっていたのではないかと思います。

柚月裕子さんは作品ごとにけっこうテーマや作風を変えてチャレンジされているようで、言ってしまえば(個人の好みとしての)当たりはずれがあることを実感しました。

『孤狼の血』のような「仁義なき戦い」の世界観や登場人物を期待されている方には、『パレートの誤算』はおすすめしません。

よかったところ

フォローするわけではないですが、別に『パレートの誤算』がつまらなかったわけではありません。

  • 今まで全然知らなかった生活保護の現場仕事について詳細に描かれている
  • 聡美や小野寺は事件を通じてケースワーカーの仕事に誇りを持つように成長していく

いわゆる「お仕事小説」に分類されるような内容なので、

「え!? 生活保護ってそんなに税金が使われてるの!?」

と新たな発見があったり

「よし、わたしもお仕事頑張るぞ!」

とやる気が出たりします。

また、ラストで聡美が拉致されてからの描写は「これこれ、これが読みたかった!」と期待していたもので、

  • 若林刑事がクビを覚悟で聡美を救出しようとする場面

には胸が熱くなりましたし、

  • 聡美が心臓病の母のためにも、と粘り強く生き残ろうともがく場面

には手に汗握りました。

テーマが違うとはいえ、このあたりは「ああ、やっぱり柚月裕子さんの小説だなぁ」という感じですね。

ネタバレを読んで「おもしろそうじゃん!」と思った方は、ぜひ小説も読んでみて下さい。

まとめ

今回は柚月裕子『パレートの誤算』のあらすじネタバレ解説をお届けしました!

では、最後にまとめです!

3行まとめ
  • 事件の背後にはヤクザの貧困ビジネスが隠されていた
  • ヤクザに内通している協力者は課長の猪又だった
  • 山川は猪又の不正を見抜いたため始末された

かなり映像化に向いている作品だと思うので、WOWOWのドラマにも期待です!

ドラマ化情報

WOWOWドラマ『パレートの誤算 ~ケースワーカー殺人事件』は2020年3月から放送スタート!(全5話)

気になるキャストは

  • 橋本愛さん(牧野聡美役)
  • 増田貴久さん(小野寺淳一役)

といい感じ!

第1話は無料放送ですが、2話から先を見るにはWOWOWへの加入が必要になるのでご注意ください。

WOWOW公式サイトを見る

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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