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三浦しをん「光」のネタバレ!映画のあらすじと結末は?小説の感想も

三浦しをんさんの小説「光」が映画化!

瑛太さんや長谷川京子さんなど豪華キャストを迎えて映像化されます。

三浦しをんさんといえば「舟を編む」などが有名ですが、この「光」は未読…

というわけで、さっそく映画の原作となる小説「光」を読んでみました!

感想を一言で言うと…「圧巻」

ジャンルとしてはサスペンスになるのだと思いますが、狂気的な展開というよりも人間の持つ暗い本質に迫っていく感じにゾクゾクさせられました。

そんなわけで、今回はそんな三浦しをん「光」のネタバレ!

あらすじから結末までチェックしていきたいと思います!

三浦しをん「光」のあらすじ・ネタバレ!

三浦しをん「光」は5章に区切られていて、章ごとに視点(目線)の人物が入れ替わっていく形式です。

今回はそのまま小説の雰囲気を残しつつ、物語を追っていきたいと思います!

※以下、ネタバレ注意!

 

1章:過去の信之視点

東京の南海に位置する離島、美浜島。

島に住む中学生・黒川信之の頭の中は、同級生の美少女・中井美花のことでいっぱいだった。

たった一人しかいない同学年の美花と体を重ねるようになったのはいつからだったろう。

信之は美花を前にすると体の自由を失う。

まるで操られているかのように、信之は美花に絶対の愛をささげていた。

島の中で、このことを知るのは年下の幼馴染・黒川輔(たすく)だけ。

輔は父親から虐待を受けている卑屈な性格の小学生だ。

輔は信之によくなついている。今のところ、誰にも秘密は漏れていない。

 

ある夜、信之は美花に山の神社に呼び出される。

期待を胸に家を抜け出す信之だったが、運悪く顔を腫らした輔に見つかってしまい、ついてこられてしまう。

(…2人きりのはずだったのに)

正直なところ、信之は輔のことが嫌いだった。

そして、3人が山の上部にある神社で合流した時、それは起こった。

津波。

どこまでも暴力的な波が美浜島を徹底的に壊滅させる。

その夜、美浜島は美しい緑の島から、腐臭と瓦礫の島へと変貌した。

 

生き残ったのは、たった6人。

信之、美花、輔、灯台守の爺さん、輔の父・洋一、観光客・山中。

最初は津波に歓喜していた輔だったが、肝心の父親が生きていると知り絶望する。

一方、美花も自身に性的な目を向けてくる山中が生き残っていることに気持ち悪さを覚えているようだ。

 

重機と人員が島に到着し、後始末が行われている。

数日もすれば信之たちも島から出ることになるだろう。ここにはもう人は住めない。

 

島での最後の夜、信之は美花と山中の姿が寝所にしている教室にないことに気づく。

信之の嫌な予感は的中した。

神社の境内、山中が美花に覆いかぶさってうごめいている。

美花の口が「たすけて」と動いたように見えた。

信之は山中を美花から引きはがし、容赦なく殴る蹴るを加える。

「誤解がある!」と弁明する山中。「嘘をつかないで!」と泣き叫ぶ美花。

美花のお願いが聞こえ、信之は山中の首に手をかけ、そのまま絞めて命を断った。

2人は証拠を消し、教室に戻る。ばれるわけがない。

 

翌日、信之たちはヘリで美浜島を後にした。

 


 

2章:南海子視点

美浜島の惨劇から15年以上が経過していた。

南海子には役所勤めの夫と幼稚園生の娘がいる。

近所付き合いと娘の小学校受験の準備に追いかけられる毎日。

夫は優しいが何となく愛がないように感じる。

娘の椿はどんくさくて、いつも南海子をイライラさせた。

ありふれている退屈と不満。

 

南海子の欲求不満のはけ口は、かび臭いボロアパートに住む工場勤務の男。

南海子は時間を見つけてはアパートに通い、男に抱かれていた。

 

だから、娘の椿が変質者にいたずらされたときも、南海子は男のところにいた。

罪悪感。

夫は南海子のことを責めたり追及したりしない。

欲求解消の秘密はバレていない。

それがまた、南海子を苦しめた。

 


 

3章:輔視点

現在、輔は工場を転々としながら生活している。

島を離れた後も父親から虐待を受け続けたが、今は父親とも離れて1人だ。

 

輔が南海子と寝ているのは偶然ではない。

信之の妻だったから声をかけたのだ。

信之ばかりが幸せになるなんて許せない。

輔はなかばストーカーのように信之の居場所を特定し、近くの工場で働き始めた。

 

輔には信之を脅すネタが3つある。

1.南海子との関係

2.椿が変質者にいたずらされたこと

3.信之が山中を亡き者にしたこと

あの夜、輔は現場を目撃していた。

首を絞めた跡の残る山中の写真も証拠として持っている。

どれもバラされれば困ることばかりだ。

輔は信之に金を要求したが、実のところ本当の目的は違う。

輔はただ、信之が狼狽するさまが見たかったのだ。

憧れ、憎しみ、信頼…輔の中に渦巻く信之への感情は複雑だった。

 

ところが、輔の計画はある事件によって中断される。

酒乱で暴力的な父親・洋一が、輔の前に現れたのだ。

洋一は再び暴力を振るい、輔に金を用意しろと命令する。

いまや身体能力的には輔の方が勝っているが、トラウマから父親に逆らうことができない。

輔は証拠写真をネタに美花を脅すことを洋一に提案する。

美花は芸能界に入り、篠浦未喜という人気女優になっていた。

金ならたんまり持っているはずだ。

 

輔は脅しの手紙を未喜に送ったが、どれほど待っても返事がない。まずい。

そんな中、輔の前に信之が現れる。

(…美花に言われてきたのか?)

信之は輔に取引を持ち掛けた。

「俺が金を用意するし、洋一を消してやる。だから、家族に近づくのはもうやめろ」

輔は信之を疑いつつも、取引に応じる。

 

それから数週間後、洋一はかび臭いアパートの一室で冷たくなっていた。

もともと酒で身を崩していたのだ。

信之が用意した金で毎日大酒を飲んでいた洋一がこうなることは自然の成り行きだった。

信之は洋一を埋めるための穴が無駄になったと言う。

もともと酒で息の根を止めるつもりだったわけではないらしい。

とにかく、輔はようやく本当の意味で自由になれた。

 


 

4章:信之視点

美浜島を出て、信之は施設に入った。

いつまでも美花と一緒だと思っていたのに、すぐに離れ離れになってしまった。

それから美花に会いに行ったこともあるが、暗に拒絶された。

そして、現在。

信之は家庭を築いたが、それでも信之の中心にいるのは美花だった。

 

いくら年賀状を送っても無視されていた美花から連絡が来た。

呼び出されるままに高級ホテルに向かう信之。

美花は輔からの脅しについて相談し、解決してほしいと信之に頼む。

もちろん信之は了承する。

美花のために人を消すのは初めてではない。

 

信之は何も知らないふりを装って輔に近づき、取引を持ち掛ける。

(洋一の次に、輔を亡き者にする)

全ては美花のために。

 

信之は輔をけしかけて酒と睡眠薬で洋一の自滅を誘発。

続いて、洋一を埋めるために掘ったと告げた穴に輔を誘い込んだ。

2打。

スコップを振るうと輔は動かなくなった。

用意したサバイバルシートとスーツケースで遺体を梱包し、丁寧に石灰で腐臭対策をする。

穴を埋め戻し、信之は考える。

(仕事場にも家にも戻らない。これからは美花と一緒にいよう)

 

事の顛末を美花に報告し、そのまま美花の体を貪った。

それからは毎日、信之はホテルで美花を抱いた。

しかし…

 

美花「あなたは過去を秘密にする代わりに私を抱く」

美花は信之に脅迫されているという。

気づいてはいた。美花にとって自分が特別ではないことなんて。

美花「見返りをちらつかせて私を抱いてきた、ほかの大勢の男とおんなじ!」

美花はどうやって芸能界で生き残ってきたのか。

きっと多くの男に抱かれたのだろう。

信之「きみが『お願い』と言ったから輔を手にかけたんだ」

美花は命を奪うなんて思わなかったと信之を責める。

美花「もう消えてくれる?『お願い』よ」

信之「それが美花の望みなら」

美花「私に何かを求めるのはやめて。あの夜から、求められても何も感じないんだから。もう放っておいて」

 

美浜島でのあの夜も、美花はきっと無理やりされていたわけではないのだろう。

どうしてこうなった?

ただ、美花を愛していただけなのに。

「消えて」と美花に言われた以上、もう二度と美花に会うことはない。

これからどうすればいい?

また同じ日常に戻る?それがいつまで続く?

寿命を迎えるまでか、遺体が見つかり逮捕されるまでか。

どちらがより地獄に近いのだろう?

2週間ぶりに、信之は家路についた。

 


 

5章:南海子視点(結末)

信之がいなくなった。

職場を無断欠勤していると連絡が来て、南海子はパニックに陥る。

信之は他の女のところに行ったのだろう。私と椿を捨てて。

夫の稼ぎがなければ、これからどうやって生活していけばいいというのだろう。

そんな中、黒川輔から南海子に封筒が届く。

中身は

・輔からの手紙

・証拠写真のネガ

・180万円(信之が洋一に渡すために用意した金の残り)

輔の手紙を見て、南海子は深い絶望に陥る。

『輔は信之に消された。この世にはもういない』

『黒川信之は過去にもひとをころしている』

ひとごろしの妻。ひとごろしの娘。

 

失踪から2週間、夫は帰ってきた。娘は無邪気に喜んでいる。

きっと夫は私や娘のことを愛していない。

私も夫の秘密を知りながら、何も知らない妻を装う。

表面上の日常が返ってきた。

 

それから南海子は夫と娘と一緒に、黒川家の墓参りに行った。

次の休日。南海子たちは美浜島の近くを通るという客船に乗った。

輔の手紙を読むまで、南海子は夫の出身地さえ知らなかった。

津波で壊滅した島は、かつて人が住んでいたとは思えない美しい緑と花の島へと変貌している。

咲き誇る血の色をした花は、娘の名前と同じ椿だった。

<三浦しをん「光」・完>

 


 

感想と補足

解説の中で触れられているのですが、この「光」の中心的なテーマは「日常に潜む暴力」だそうです。

一読した時にはもっと違うテーマを連想していたので意外でしたが、確かに一貫して「光」には「暴力」が描かれているなと納得しました。

小説を読んでいると、登場人物はもれなく「ろくでもない人間」だと思われます。

体面を気にしてばかりの南海子は自分勝手でつまらない人間。

輔はいつまでも未熟で、最後まで周りの都合に振り回されてばかり。

信之は美花以外に拠りどころがなく、妻や娘を心から愛せてはいない。

美花は魔性の女なのか無自覚な被害者なのか、とにかく男を狂わせる。

そんな登場人物たちの思惑が交錯し、結局誰もが幸福になることなく物語の幕は閉じます。

今回のあらすじ・ネタバレでは心情描写など細かい部分をカットしているので伝わりづらいかもしれませんが、私はそこに匂い立つ「人間らしさ」を感じました。

「なんて克明に、なんて残酷に、『人間』を描くのだろう」

これが最初に書いた「圧巻」という感想の正体です。

 


 

きっと三浦しをん「光」は、読む人によって感想が変わる作品なのだと思います。

希望があるのか、ないのか。

登場人物それぞれへの共感具合。

解説にて著者はこう語っています。

「この小説には明快な答えはないと思います。読んでくださった皆さんに考えてほしいんです。日常の中に潜んでいる暴力について。どうしたらいいのか?私もいまだに考えています」

「ちょっと深いテーマの作品が読みたいな」と思った時、三浦しをん「光」はおススメです。

きっと、いろいろなことを考えさせられるはずですよ。

 

まとめ

三浦しをん「光」が映画化!

徐々に明かされていくそれぞれの思惑、衝撃的なサスペンス、そして複雑な感情がないまぜになる結末。

2017年秋の話題作になりそうな予感です!

また、個人的には原作となる小説の方もおすすめ。

今回のあらすじ・ネタバレでは伝わらなかった感情の機微をぜひチェックしてほしいと思います!

同じ三浦しをんさんの「舟を編む」や「まほろ駅前」シリーズが好きな人ならハマるかも!

ちなみに映画「光」の監督は映画『まほろ駅前多田便利軒』でコンビを組んだ大森立嗣監督なんだそうですよ。

もちろん映画版「光」の方も必見です!



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