感動・ヒューマンドラマ

「彼らが本気で編むときは」のあらすじと感想!※結末のネタバレ有り

ぱんだ
ぱんだ
ようこそ!

生田斗真さんがトランスジェンダーの女性役を演じることで話題の映画「彼らが本気で編むときは、」

個人的には「かもめ食堂」の荻上直子さんが脚本・監督という点からも気になっている映画です。

というわけで、さっそく映画公開に先駆けて発売されたノベライズを読んでみました。

今回は映画「彼らが本気で編むときは、」のあらすじを紹介しつつ、作品に対する感想を書いていこうと思います。

※作品のネタバレを多分に含んでいますのでご注意ください!

 

 

映画「彼らが本気で編むときは、」のあらすじ紹介

映画「彼らが本気で編むときは、」はいわゆるLGBTをテーマにした作品ですね。

生田斗真さんが演じる「リンコ」は「T=トランスジェンダー=性同一性障害」にあたり、女性の心をもって生まれてきた男性という役どころになります。

といっても、リンコの体はすでに「工事済み」

戸籍上はまだ男性だけど、外見は「男性の名残が残る女性」という状態です。

物語はそんなリンコと恋人・マキオが同棲している家に、小学5年生の女の子「トモ」がやってくるところから始まります。

 

★映画「彼らが本気で編むときは、」あらすじ

母親のヒロミが仕事をやめてどこかの男と消えたのは、これで2回目だ。

1回目はトモが小学3年生だったとき。

母子家庭にも関わらず母親らしいことは何一つしないヒロミは、母であることよりも女であることの方が大事らしい。

トモは1回目の時と同じように、ヒロミの弟であるマキオの家で生活することにした。

マキオ「あのさ、実は一緒に住んでいる人がいる。とても、大切にしている人なんだ」

そう言ってマキオがトモに紹介したのは、リンコというとても美しい人だった。

リンコは無機質だったマキオの部屋をおしゃれに飾り付けており、料理の腕もばっちり。

何かとトモのことを気にかけてくれるとても優しそうな人だった。

ただ一つ、トモにはリンコの性別だけがわからない。

とても幸せそうにしているマキオとリンコを前に、トモはその質問を口に出すことができなかった。

こうして、3人で一緒に暮らす日々が始まる。

 

 

「彼らが本気で編むときは、」結末までのストーリー

簡単にではありますが、あらすじの続きから結末に至るまでのストーリーについてもご紹介しますね。

※以下、ネタバレ注意!

 

最初こそリンコに緊張していたトモだったが、心優しいリンコと過ごすうちにすっかりマキオの家の一員として馴染んでいく。

いつも意地を張って大人びた態度をとっていたトモにとって、そこは心から子供らしく振る舞うことができる場所。

マキオ・リンコもそんなトモを心から可愛がり、家族の一員として接する。

幸せな日々。男や女といった性別の違いなど、何の問題にもならない。

3人はまるで仲の良い本当の家族であるかのように、きらきらとした日々を過ごしていく。

しかし、

そんな3人を世間の偏見の目が襲った。

「ずいぶん変な人と一緒にいるから」

トモのクラスメイトの母親であるナオミが口にした言葉に、トモは大激怒!

手にしていた食器用洗剤をナオミの服にぶちまけて、スーパー内でちょっとした騒ぎになってしまう。

(リンコはこんなに心が美しい人なのに、なぜ差別的な目で見られなければならないのか)

事件の後、悔しさと怒りがおさまらないトモに、リンコは編み物をしながら言った。

リンコ「アタシはね、これで、すっげー悔しいこととか、悲しいことを、全部チャラにするの。ざっけんじゃねーよ、ちくしょーって、ひと目ひと目編みながら。そうするとね、いつのまにか心がすーっと平らになる」

今、リンコが編んでいる棒状の不思議な編み物は、切除した男根への供養なのだという。

煩悩と同じく数、108個それを編んだら、いっせいに燃やして、戸籍を女にするつもりなのだ。

トモ「…アタシもボンノウ、作ってみたい」

トモはリンコから編み物を教わることにした。

 

リンコ「ねえ、マキオ。アタシね、トモのことが可愛くて可愛くて、どうしようもない」

リンコ「もし…もしもさ、このままトモのママが帰ってこなかったら、トモのこと養子に出来るのかな」

マキオ「え」

リンコ「アタシ、戸籍を女に変えて、マキオと結婚したら、トモのママになれるのかな」

黙っているマキオに、リンコが唇を噛みながら言う。

リンコ「ごめん、結婚までは考えてないか。図々しいよね」

最初はマキオの方が告白してきた。リンコの勤める老人ホームにマキオの母が入ることになって、そこで一目ぼれをしたと。

マキオはLGBTではないが、真剣にリンコを愛してくれている。

だからつい、調子に乗ってしまった。

マキオ「そんなことない。ボクはそんなふざけた気持ちでリンコさんとつきあってない。受け入れます、全部」

マキオ「リンコさんがそう思ってくれるなら、トモのこと、真剣に考えてみよう、一緒に」

リンコ「…うん」

 

 

ある日、トモはふとヒロミを見かけたような気がする。

しかし、ヒロミは家には帰っていなかった。

トモの内で、母親の不在が大きな不安へと変わってく。

「ママでもないくせに!」

不安定になったトモはリンコともケンカしてしまう。

(トモのママが帰ってくる…?)

そのことにショックを受けたリンコは自転車で軽い事故を起こしてしまった。

検査入院のために通されたのは、男性部屋。

マキオは人権侵害を訴えたが、看護師は取り合わない。

(なぜ、リンコばかりがこんな目にあわなければいけないのか)

トモは悔しくて、悲しくて、編み物を始める。

トモ「く…くやしい」

リンコ「えらいね。よくがまんしたね」

このことを機に、リンコはある決心を固めた。

 

検査の結果は問題なし。

3人は夕暮れの土手に座っていた。リンコとトモは編み物をしている。

リンコ「アタシね、さっさと供養を終わらせて、とっとと女になるって決めた」

すると、それを聞いたがマキオが

「ボクにもやらせて」

不器用なマキオが、トモから教わって編み棒を動かしている。

夕暮れ時の土手。3人は仲良く供養の編み物を編んでいく。

 

3人そろっての休日。

トモとマキオとリンコは海に出かけた。

道中でも海についてからも、3人はずっと編み物を編んでいる。

そして、夕暮れ時、ついにボンノウが108個編みあがった。

3人は笑いあいながら棒状の編み物を積み上げ、リンコがそれに火をつける。

3人は無言でオレンジ色の日を見つめていた。

 

 

その、数日後。

ついにヒロミが帰ってきた。

トモもマキオもリンコも微妙な表情でヒロミを見つめる。

マキオ「どこいってたんだよ」

ヒロミ「んー、あちこち。おかげでスッカラカンよ。また頑張って働かなきゃ」

ヒロミ「帰ろ」

ヒロミはさっさと帰ろうとするが、トモは動かない。

マキオ「姉ちゃん、実はトモのことなんだけど…引き取りたいんだ。リンコさんと一緒に、トモのこと、ちゃんと育てていきたいと思ってる」

ヒロミ「え?冗談でしょ。そんなの無理に決まってるじゃない。だって、あの人…」

激高するヒロミに、リンコが頭を下げる。

リンコ「トモのこと、大切にします。お願いします!」

ヒロミ「何言ってるの?あげるわけないじゃない。トモは私の子よ」

マキオ「…姉ちゃん、今回が初めてじゃないじゃないか。トモのこと放り投げて、仕事辞めて男とどっか行っちゃって。無責任にもほどがあるよ」

ヒロミ「ちょっと預かってもらっただけでしょ。私ね、女なの。母である前に、女なのよ。そりゃ、一人で育ててどうしようもないときだってあるでしょ?何、そんなのも許してもらえないの?」

リンコ「許せません」

リンコ「女とか母とかの前に、まず子どもを守らなきゃ。人として、大人として」

ヒロミ「じゃ、あんた、あの子が生理になったときにちゃんと教えられる?わかんないでしょう!あんたは、母親にはなれないの!」

ヒロミのその一言で、マキオとリンコはうつむいてしまった。

それをみたトモの中で、何かが音を立てて切れる。

トモ「リンコさんはご飯作ってくれた。キャラ弁作ってくれた。髪もかわいく結んでくれた。編み物を教えてくれた。一緒に寝てくれた」

トモはヒロミをばしばしと叩き、泣きながら訴える。

トモ「…どうして、ママはしてくれないの?どうしてもっと早く迎えに来てくれないの?」

ヒロミ「…わかんないよ、そんなの。たまにどうしようもなくなって…」

ヒロミは立ち上がり、玄関へと向かう。

トモ「ママ…?」

置いていかれたくない。

トモはヒロミの背に抱きつき…

トモ「ママと一緒にいる」

絞り出すように言った。

トモも、ヒロミも泣いている。

トモ「でも…今日はママひとりで帰って…」

ヒロミと一緒にいる。でも、今夜はここにいたい。トモの正直な気持ちだった。

 

その晩、トモはマキオ・リンコと川の字になって寝た。

トモはリンコの胸に顔をうずめ静かに泣いた。

リンコも、こらえきれずに泣いた。

マキオも泣きそうになっている。

一晩を明かし、トモはヒロミの家に帰ってしまった。

トモのいない部屋で、マキオは肩を振るわせて泣くリンコの背中をしっかりと抱きしめた。

 

マンションに帰ると、ヒロミはいなかった。

しかし、家事をしたらしい跡が垣間見える。

これからいい方向にやり直せるのだろうか?

トモは最後にリンコから渡された包みを開ける。

中には、毛糸で編んだオッパイが入っていた。

胸が膨らまないリンコのために、リンコの母がつくってあげたという毛糸のオッパイ。

トモはそれに手を伸ばした。

<彼らが本気で編むときは、・完>

 

 

「彼らが本気で編むときは、」の感想

『LGBTの人々がいかに悩みながら育ち、大人になってからも偏見の目にさらされているのか』

私が「彼らが本気で編むときは、」に感じた第一印象は、こういう啓蒙的な一面でした。

映画や小説を読んでいれば、私たちは自然とリンコに対し許容的になり、理由なく差別の目を向けてくる人々を憎らしく思います。

しかし、実際に現実の世界に戻ってみればどうでしょうか?

・子どもの友達がLGBTの人と一緒にいるのを見たら?

・例えば、自分の兄弟がLGBTの人と結婚すると言ったら?

私たちはたちどころに物語の中の「悪役」になってしまいかねません。

そういう危うさを排し、偏見の目でLGBTの人やその家族を泣かせてしまわないように、私たちは冷静な目で「人間」を見つめなければならない。

ある意味では当たり前のことですが、それが「私が彼らが本気で編むときは、」から感じたことでした。

 

また「彼らが本気で編むときは、」ではLGBTに関する問題と同列に、「家族の在り方」というテーマについてもメスを入れています。

作中には、さまざまな形の親子が登場しました。

・ネグレクト気味で母親としての自覚が足りないヒロミと、そのせいで子供らしい態度を抑え込んでしまったトモ

・トモの同級生のカイは男でありながら男の子に恋したLGBTでしたが、母親にLGBTを否定されてしまい、思い詰めてオーバードーズしてしまいました

・リンコは幼い時からLGBTとしての自分に苦しんでいましたが、全てを受け入れて愛情を注ぎ続けてくれた母・フミコのおかげで美しい心を持つ人に育った

・ヒロミとマキオの母であるサユリは夫に逃げられ、ヒロミとは常に衝突し、マキオを溺愛するあまり自身が認知症になるまでマキオを束縛し続けた

映画「彼らが本気で編むときは、」において、幸せな家族の条件はただ一つ『健やかな愛情』だけです。

両親が揃っていることや、お金持ちかどうかなどといった点は問題ではありません。

親が当たり前に子供のことを第一に思い、子供の成長を大切に考えていれば、子は強く健やかに育つ。

一方、親が子よりも自分のことを優先したり、自分の価値観を子供に押し付けてしまっては、どんなに他の条件が良くても子は歪んでしまう。

『家族とは、親子とはどうあるべきか?』

それを教えてくれたというのが、「彼らが本気で編むときは、」に対する第2の感想です。

 

 

最後に、ストーリーとその結末に対する感想を。

物語の結末で、トモはそれでも「実の母」を選びました。

そうなる予感はあったものの、ヒロミを客観的にみる第3者としては「本当にこの先大丈夫なのだろうか?」と不安になりますし、マキオやリンコの気持ちを想えば「残ってほしかった」と思ってしまう気持ちもあります。

しかし、もしそのままトモがマキオの家に残ったとしたら、トモは「母親を捨てた子」になってしまいますし、一生「母親から愛されなかった子」のままになってしまいます。

それでは、いくらマキオやリンコが愛情を注ぎ続けたとしても、トモに癒えない傷が残ってしまうかもしれません。

そういう意味では、産みの母親のもとに帰るというのは、トモにとって最適な選択だったのだと思います。

あとは、今回の一件を受けてヒロミが改心することを祈るばかりです。

この数カ月を通してトモも人間として大きく成長しましたし、ヒロミにも改心し始めた兆しが見えます。

きっと物語の結末の後、トモとヒロミはいい母娘になり、リンコやマキオとも末永く仲良くしていくことでしょう。

いくばくかの願いを込めて、そう思います。

 

まとめ

今回は映画「彼らが本気で編むときは、」のあらすじ紹介と感想をお届けしました!

あらすじでは結末までの流れをネタバレしつつ紹介しましたが、大筋だけ拾っているためカットしているエピソードも多いです。

映画の全貌はぜひ劇場でお確かめください。

全体的な感想としては、荻上直子さんらしい、とても温かな空気が流れている作品です。

LGBTの問題に興味がなくとも、生田斗真さんや桐谷健太さんを目当てに見に行ってみてはいかがでしょうか。

きっと、じんわりと温かい気持ちになれるはずですよ。

映画「彼らが本気で編むときは、」は2017年2月25日公開です!


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