映画「彼女がその名を知らない鳥たち」を観てきました!
ひと言で感想を述べるなら…「この感動を、どう言葉にしていいのかわからない」
月並みな言葉で表現したくないほど味わい深い感動。
普段の良作が「面白かったよー。おススメ!」という感じなら、この作品は「マジでこれだけは絶対に映画館で観た方がいい。マジで」という感じ。
とにかく期待を遥かに上回る最高の仕上がりに大満足!…を超えて圧倒されてしまいました。
「私が選ぶ今年の邦画トップ3」入りは確実ですね。
というわけで、今回はそんな映画「彼女がその名を知らない鳥たち」の感想をお伝えしていきたいと思います!
Contents
映画「彼女がその名を知らない鳥たち」のネタバレ感想!
「『心が震える感動』とはこういうことか…」
映画の上映後、放心状態にあった私の心に浮かんできたのは、そんな感想でした。
「今までの『感動作』って何だったんだろう?」
そう思ってしまうほど、映画「彼女がその名を知らない鳥たち」のもたらす感動は別格なものでした。
もちろん目からは涙がドバドバ。
恐るべし、白石和彌監督!
恐るべし、蒼井優!
恐るべし、沼田まほかる!
この作品の感想は「ああ、この映画見に来て本当に良かった…」という一言に尽きます。
みなさんも是非、劇場でこの感動を味わってください。…と、これで〆てはあまりにも内容が伝わらない。
というわけで、もう少し具体的に「何が、どこが良かったのか?」というポイントについて考えていきたいと思います。
ラストがすべてを持っていった!
この映画の真価が発揮されるのは結末部分!
思いっきりネタバレになりますが、陣治が十和子のために飛び降りるシーンですね。
ここは原作小説でも十分印象的な場面でしたが、やはり映像の力(白石監督の演出)はスゴイ!
映画では陣治が飛び降りる刹那、まるで走馬灯のように2人が積み重ねてきた時間が回想されます。
映画内では語られなかった2人の出会い。
陣治の一生懸命さに、初めて十和子が笑った日。
黒崎を刺してしまった日のこと。
記憶を封印した後の生活。
そのすべての時間に、1ミリの隙間もなく陣治の十和子に向けた『愛』が敷き詰められていました。
ああ、それなのに、まさに今、陣治は十和子への『愛』のために命を捨てようとしている真っ最中!
どんな気持ちで陣治は飛び降りていったのか?
十和子はどんな気持ちでそれを見ていたのか?
少し想像するだけで全身に鳥肌が立ち、胸が震えてくるほどの感動が押し寄せてきます。
正直、私は原作小説を読んでいたのでこのラストを知っていました。
もう一つ正直に言うと、やはりオチがわかっていると、そのぶん感動が薄れてしまう…ということも少なくありません。
それなのに、映画「彼女がその名を知らない鳥たち」のラストシーンは「オチを知ってる?だからどうした」と言わんばかりに私の心と涙腺を鷲掴みにして、思いっきり揺さぶってきました。
その『力』はすさまじく、問答無用で目から涙を溢れさせてきます。
こんな体験を、私はこれまで味わったことがありませんでした。
ただ一言「感動した」で済ませたくない『別格の感動』
ラストシーンで襲ってくるアレは、劇場で映画を観た者だけが共有できる特別な感覚なのだと思います。
こればっかりは上手く言語化できないので、是非、劇場で直接体験されてみてください。
きっと、これまでに経験したことないほどの感動を味わうことができるはずです。
蒼井優が魅せる!
阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊。
名だたる人気俳優を尻目に、この映画で一番『魅せた』キャストは間違いなく蒼井優さんでしょう!
もともと実力派という冠のある女優さんでしたが、私はこの作品で蒼井優さんの底知れない実力を初めて実感しました。
というのも、蒼井優さん、完璧に『十和子』なんですよ!
これは一般的に言う「はまり役だ」という賛辞とは全然次元の異なる話です。
・養ってもらっているくせに陣治を我がまま放題に罵る『憎たらしい十和子』
・黒崎や水島の前でだけ見せる『甘えた表情の十和子』
・陣治や自らの記憶を疑い始めた頃の『怯えた十和子、困惑する十和子』
他にも「我を忘れて黒崎を刺す十和子」「すべてを思い出し、ただただ泣くことしかできない十和子」などなど…。
この十和子というキャラクターは(現実の人間がしばしばそうであるように)実に多面的な表情を持っています。
それは「本当に同一人物か?」と思ってしまうくらい大幅な表情の変化。
そんな情緒不安定なまでの十和子の多面的表情を見て、違和感を抱くことなく「1人の人物の異なる側面だ」と自然に納得できたのは、ひとえに蒼井優さんの『演技力』あってのこと…!
感情の、そして表情の引き出しの多さ。
その引き出しを自在に使い分けることのできる器用さ。
そして何より、どの表情にも必ず宿っている『生々しさ』(人間臭さ)
こんな芸当を見せられては、もう蒼井優さんのファンになる他ありません。
もうね、私の中の「実力派女優ランキング」急上昇ですよ!一躍トップですよ!
もちろん男性陣のお芝居もすごく良かったのですが、結果的にこの映画で強烈に印象に残ったキャストは蒼井優さんでした。
蒼井優さんが好きなら、もちろんこの映画は必見。
そうでない方も、この蒼井優さんだけは見ておいてホント損はないと思いますよ!
※ちなみに蒼井優さんは現在公開中の映画「ミックス」にも出演されているほか、同じく現在放送中のドラマ「先に生まれただけの僕」でもヒロインを演じられていますね。
不快から愛へ
映画「彼女がその名を知らない鳥たち」には「原作を尊重している作品なんだな」という印象を抱きました。
かなり序盤から「原作に近い雰囲気だな」と感じていましたし、ストーリーも基本的には原作に忠実。
もともと原作ファンだった私としては、この点もかなりポイント高かったですね。
中でも、私が観る前から注目していたのは「作品のテーマ(軸)がどのように表現されているのか?」という点。
具体的に言えば「不快感が愛へと変わる瞬間」です。
原作からしてそうなんですが、この作品、とにかく終盤まで登場人物みんなが「最低」
・下品で不潔でストーカー気質な陣治
・容姿のいい男に依存する一方、陣治をいいように使っている十和子
・自分の出世のために十和子を利用した黒崎
・妻子がいながら十和子の身体を弄んだ水島
本当に、ろくな人間がいません。
当然ながら読者(あるいは観客)としては、ストレスが溜まります。
「どいつもこいつもムカつくなぁ~」と不快ゲージがぐんぐん上昇。
このまま映画が終わろうものなら「金返せ!」と言いたくなること請け合いです。
しかし!
もちろん天下の沼田まほかる作品が、そんな体たらくを見せるはずもなし!
すべてはラストに待ち受ける感動のための布石。
『実は陣治の行動はすべて十和子を守るためのものだった』
この事実が明らかになった瞬間、それまでの『不快感』が一気に消え、これが『愛の物語』だったことに気づかされます。
その落差!
心が動揺している隙を突いて襲ってくる感動の大波!
ラストに待ち受けるこの仕掛けこそ「彼女がその名を知らない鳥たち」の肝だと思うのです。
それで、その肝心な瞬間が、映画ではどうだったかというと…
期待を遥かに超えた名シーンに!
正直、このシーンに関しては原作小説を越えていると思いました。
原作をリスペクトしながら越えてみせる…なかなかできることじゃありません。
映画が終わったあと、半ば放心状態になっている私の心を満たしていたのは不快感ではなく『愛』でした。
9割がた不愉快な内容にしておきながら最後に残るのが「愛」って…やっぱりすごい構成ですよ。
原作を読んだ方も、そうではない方も、ぜひこの不思議な感動を体験してみてください!
なかなか、こういう映画に出会える機会も少ないですからね。
※余談…R15指定
実は映画「彼女がその名を知らない鳥たち」はR-15指定作品。
その理由は単純明快で、めちゃくちゃベッドシーンがあるからです。
正確には数えていませんが、少なくても5回以上。
しかも、十和子…もとい蒼井優さんの艶っぽいこと色っぽいこと!
ベッドシーンにも、白々しいものから迫真のものまでいろいろとあるものですが、今回のそれは明らかに後者。
ひと言でいえば、生々しい。
息づかい、苦悶の表情、甘えた声。
男性諸君には「いいからこれだけ見に来い!」と言いたいくらいです(笑)
その一方で、女性陣には「松坂桃李のベッドシーンだけは見ておいた方がいい」とも言いたい(笑)
そんなわけで、映画「彼女がその名を知らない鳥たち」を観る際にはベッドシーンにも注目すべし!(?)
※余談2…白石和彌監督
面白い映画に出会うと、監督が気になるものですよね。
白石和彌監督は映画「凶悪」などで知られる監督ですが、個人的には昨年の「日本で一番悪い奴ら」も好きでした。
まだ40代前半とお若い白石和彌監督は、まさに「次代の邦画を担う監督の一人」という感じ。
これからは「白石和彌監督作品」という一文に目を光らせていこうと思います!
なお、現在発表されている来年(2018年)の白石和彌監督作品は「サニー/32」「孤狼の血」の2本。
サニーは「凶悪」の高橋泉さん(脚本)とのタッグ作品で、面白そうなサスペンス(ホラー?)
そして「孤狼の血」は、またまたかなり『グッとくる』小説をベースにした渋い刑事もの。
個人的には役所広司さんを始めとした豪華キャストが起用されている「孤狼の血」に大注目しています!
まとめ
映画「彼女がその名を知らない鳥たち」がついに公開!
ずっと楽しみにしていたので、公開初日の初回に観てきました!
結論から言えば…心から大満足!
原作でも印象的だったラストシーンが本当に素晴らしくて、気づけば感動の涙が目から滴り落ちていました。
映画「彼女がその名を知らない鳥たち」の公開規模は決して大きくないみたいですが、本当にその理由がわかりません。
「これ!今見るべき邦画はこれ!」
と声を大にして言いたくなる名作です。
映画『彼女がその名を知らない鳥たち』の配信は?
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