感動・ヒューマンドラマ

ドラマ「家族の旅路」原作小説のあらすじとネタバレ!結末は?

小説「父と子の旅路」が「家族の旅路」というタイトルで連続ドラマ化!

滝沢秀明さんが主演ということで早くも注目を集めていますね!

2005年には単発ドラマ化された「父と子の旅路」ですが、今回は連ドラということでキャストもだいぶ豪華になっている印象。

特に作中でも最重要登場人物である「柳瀬光三」役が遠藤憲一さんという点には期待大です!

私は原作小説を読んだのですが、ドラマで滝沢秀明さんと遠藤憲一さんがあんなことになると思うと…今から楽しみで仕方ありません。

というわけで今回は「家族の旅路」の題でドラマ化される小杉健治「父と子の旅路」のあらすじとネタバレ!

主人公に隠された秘密とは?そして結末は…!?

ドラマ「家族の旅路」あらすじとネタバレ

小説「父と子の旅路」は全7章構成。

今回は原作の章区切りごとにあらすじ・ネタバレを進めていきたいと思います。

 

※簡潔にネタバレだけ知りたい方にはこちらの記事もおすすめ!

小説「父と子の旅路」のネタバレ解説!ドラマ「家族の旅路」原作!小説「父と子の旅路」が「家族の旅路」と改題されてドラマ化! タッキーこと滝沢秀明さんが主演や主題歌を担当し、話題になりました。 ...

より詳しく内容を知りたい方はこのまま続きをどうぞ!

 

第1章 母と娘

河村礼菜(24)は今日も病室の母を見舞っていた。

母・あかねは末期がんで余命わずか。

これまで散々好き勝手に生きてきて、育児などしたこともない奔放な性分のあかねだが、命の終わりに瀕して思うところがあるらしい。

病室でのあかねはずいぶんとしおらしく、よく物思いに耽っていた。

礼菜はそんな母親のため、親子の縁が切れて久しいあかねの父・花木重彦を訪ねる。

しかし、結果は門前払い。

母親と祖父を再会させようという目論見はあえなく潰えたが、礼菜に収穫がなかったわけではない。

「あいつが誰かに会いたがっているというのなら、自分が捨てた子じゃないのかな」

礼菜の父・河村真二はあかねにとって2人目の夫。

初婚の相手との間には男の子を儲けたが、あかねはその子と旦那を捨てて真二と駆け落ちしたのだという。

『自分には兄がいる』

その新事実は礼菜を喜ばせたが、事はそう単純ではなかった。

兄の居場所は不明。

居場所を知っているであろう兄の父・柳瀬光三は…一家三人を惨殺した凶悪犯として服役中だった。

 

★ここまでの登場人物まとめ

【河村家】

・河村真二…ヤクザであり、喧嘩の末に命を落とした。犯人は捕まっていない。

・あかね…元ホステス。自分勝手な女だったが、病を機に改悛した。余命わずか。

・礼菜…真二とあかねの娘。母親のために兄を探すことに。

【柳瀬家】

・柳瀬光三…1人目のあかねの夫。死刑囚。

・光男…光三とあかねの子。礼菜の異父兄。

【その他】

・すみ江…礼菜の養母。若い頃、あかねに預けられて礼菜を育てた。

・花木重彦…あかねの父。あかねを毛嫌いしており、親子の縁を切っている。

 

 

第2章 26年前

26年前、柳瀬光三は博多にいた。

あかねを見たという目撃情報があったためだ。

…。

もともと山口の工場で働いていた光三は、夜の店であかねと出会い結婚した。

長男・光男を授かり、天涯孤独だった光三はこれまでにない幸福に包まれていた。

だが、あかねは何一つ母親らしいことをしようとせず、しまいには再び夜の店に出勤するようになる。

必然的に、光男の面倒は光三が1人で見た。

それでも光三は幸せだった…まだ、この時までは。

後にあかねは東京から追ってきた男と駆け落ちした。

そして、光三にはガンが見つかった。

(このままでは誰が光男の面倒を見るというのか?)

光三は自分のためではなく我が子のために、こうして博多まで母親を探しに来たのだった。

…だが、結果は空振り。

たまたま入った屋台の親父から「あかねと河村はヤクザに追われていたから、もうここにはいないだろう」と聞かされる。

落胆する光三を見かねたのか、親父は「そんな女のことは諦めろ」と言い、秘密裏に子どもを望む夫婦に赤ん坊を斡旋している岐阜の産婦人科医のことを教えた。

 

迷った末に、光三は東京にあるあかねの実家を訪ねてみることにした。

勘当されたとはいえ、光男は花木家の孫だ。

もしかしたら、自分のかわりに光男を育ててくれるかもしれない。

誰とも知らぬ人間に育てられるよりは、血縁者に育てられた方が光男も幸せになれるだろう。

書面の住所を手掛かりに花木家を訪れた光三だったが、表札には「大富」の文字が。

聞けば花木家は半年前に引っ越したのだそうだ。

子連れで疲れ切っていた光三を見かねた大富家の主人の計らいにより、その日は大富家に泊まらせてもらうことに。

大富家には光男と同じくらいの子供がいた。

 

 

翌日。

光男を大富家に預け、光三はひとりで花木家へ。

事情をあかねの父・重彦に話すが、取りつく島もなく追い返されてしまう。

さらに気づけば財布もない。

(こうなったら大富に金を借りて、岐阜の産婦人科医に光男を任せるしかない…)

光三はとぼとぼと大富家に引き返した。

 

『空白の時間』

 

一家三人惨殺事件が発生した。

被害者は大富夫婦と、同居していた大富の父。

現場には泣きじゃくる大富家の赤ん坊(生後六か月)だけが残されていた。

警察は柳瀬光三を容疑者として捜査を進め、やがて光三を逮捕した。

発見されたとき、光三のそばに光男の姿はなかった。

 

★ここまでの登場人物まとめ

【大富家】

・大富康彦…夫。

・晴香…妻。

・祐介…当時赤ん坊だった唯一の生存者。後に晴香の兄夫婦である浅利家に引き取られた。

 

★POINT

・なぜ光三は犯行に及んだのか?そもそも本当に光三がやったのか?

・光男をどうしたのか?事件後、光三は岐阜へと向かっている。やはり産婦人科医に預けて養子に出したのか?

 

 

第3章 異父兄

礼菜は母のため、光男を探すことに。

最も確実に光男の行方を知る方法は、光三から聞き出すことだ。

そのためにはまず、光三の居場所を突き止めなければならない。

礼菜はまず、当時光三を逮捕した担当刑事である松枝栄二郎を訪ねた。

 

松枝は当時の事件を振り返り、礼菜に長年のわだかまりを語って聞かせた。

『実直で子煩悩な光三が、果たして我が子の前であんな残酷な事件を起こすだろうか?』

取り調べを進めるにつれて松枝は「光三は犯人ではない」と感じるようになったという。

ところが、光三はやがて「私がやりました」と自供した。

最初の「家に行ったらすでに犯行の後だった」という供述は嘘だったのだろうか…?

光三の供述にはあやふやな部分も多い。

…あの日、本当は何があったのか?

関係者の多くは冤罪の気配を感じていたという。

 

松枝から興味深い話を聞けたのはいいが、そもそも死刑囚に会えるのは親族か弁護士のみだ。

たとえ光三の居場所を突き止めたとしても、礼菜では直接会うことはできない。

そこで礼菜は次なる手として残された大富家の子供に目をつけた。

大富家の遺児は現在、弁護士になっているという。

礼菜はその人物・浅利祐介に光三の再審を弁護させることで、事件の真実と光男の居場所を明らかにしようと考えた。

 

 

礼菜の話を聞いたとき、祐介は難色を示した。

当たり前だ。自分の両親の命を奪った犯人の弁護など、引き受けられるはずがない。

ところが、光三が無実である可能性が高いと聞き、祐介の心は揺れる。

信頼していた弁護士を亡くし、裁判を戦う気力を失ってしまった光三を救えるとしたら、それは被害者の子供である祐介だけなのだ。

ここで祐介が立ち上がらなければ、光三が救われることはない。

迷った末に、祐介は決意を固めた。

「弁護を引き受けようと思う。そして事件を調査し、やはり彼が犯人だとしたら改悛し素直な気持ちで罪を認めるよう説得する。もちろん、無罪だと思ったら、柳瀬光三を救い出してやりたい」

目の前の難題から逃げるわけにはいかない。

祐介は何か運命めいたものを感じていた。

 

★ここまでの登場人物まとめ

【浅利家】

・浅利孝信…大富晴香の兄。事件後、祐介を引き取った。明石在住。

・浅利祐介…事件のことは養父母から聞かされた。凄惨な過去を持ちながら真っすぐな弁護士に成長。養父母のことを慕っている。

【その他】

・松枝栄二郎…光三を逮捕・取り調べした元刑事。現在は定年により退職。

・津村洋次郎…病で亡くなるまで光三の弁護に人生を注ぎ込んだ弁護士。光三が無罪だと信じていた。

 

 

第4章 風雪

祐介と礼菜はまず津村弁護士の家を訪ね、津村の妻から資料を入手した。

当初、凶器となった包丁は被害者宅のものが使われたとされていたが、実際には外部から持ち込まれたものだった。

津村は事件の前日にサングラスをかけた若い男が近所の店で包丁を購入したことを掴んでいた。

 

次に2人は津村亡き後の光三の心の拠りどころとなっている浦里牧師を訪ねた。

浦里牧師も光三は無罪だと思っているようだ。

光三は光男のことと同じくらい見捨ててしまった大富家の子供(祐介)のことを気にしているという。

 

また別の日、祐介と礼菜は元刑事の松枝を訪ねた。

鍵となるのは一貫して光三が口を割らなかった光男の居場所だ。

警察は岐阜で赤ん坊の斡旋をしていた産婦人科医のことを掴んでいたが、光三と光男は無関係だったという。

ならば、光三は光男を誰に預けたのか?

光三は「あなたが無実ならなぜ通報しなかったのか?」という質問に対して「いち早く子供をある人に預けなければならなかったため」と答えている。

なぜそこまで急ぐ必要があったのか?

そこまで考えて祐介の頭の中に最悪の想像が浮かび上がる。

あるいは…光男はもう生きてはいないのかもしれない。

 

そして、ついに祐介と柳瀬光三が初めて顔を合わせる日がやってきた。

光三はしきりに感動している様子だが、再審への意欲は薄いようだ。

祐介は光三を励まし、無罪を勝ちとりましょうと説得する。

「晴れて無罪になって、光男くんに会いに行きましょう。あなたは光男くんの将来を考えて、光男くんのことを隠していた。この26年間、沈黙を守り、光男くんを守ってきた。でも、もう光男くんは26歳です。どんな真実を知ろうが耐えうることができるはずです」

「そうでしょうか。今までの自分の人生が否定されてしまうようなショックを覚えるのではないでしょうか。凶悪犯の子だとわかっても、動揺しない人間がいるでしょうか」

「あなたは無実です。光男くんのためにも、私はあなたの無実を証明し、自由の身にさせてあげたいのです」

「無理なんです」

「何が無理なんですか」

「…」

光三は俯いて何も話さない。

祐介は今日のところは引き上げることにした。

「柳瀬さん。26年間、辛かったでしょう。私は弁護士としてきっとあなたの無実を晴らし、あなたを自由の身にさせてみせます。あなたも頑張ってください」

光三は祐介に深々と頭を下げる。顔を上げたとき、浅利祐介と目が合った。

どこかに赤ん坊の頃の面影を感じて、つい声を上げそうになってしまう。

(光男!)

すんでのところで、その言葉は呑み込まれた。

 

 

★Side・柳瀬光三

実のところ、光三は犯人ではない。

冤罪を受け入れたのは、そうしなければ警察が光男の行方を探し始めてしまうと思ったからだ。

それに、ガンに侵された体では先も長くないだろうという考えもあった。

ところが、どうしたことか手術は成功した。

もはや光男の前に現れるつもりはない。

だが、せめて遠くからその姿を見るくらいなら叶うかもしれない。

未来への希望が湧いた光三は裁判では一転して、無罪を主張した。

だが、自供があるという事実と「光男の行方について語らない」という点が裁判官の心証を悪くした。

結果、最高裁までもつれこんで極刑が確定。

誤審だとして津村が再審を請求したが、却下されてしまった。

こうして無実の罪で投獄された光三だが、後悔はなかった。

光男さえ幸せに育ってくれれば、それでいい。

今の光三の願いはただそれだけだった。

 

★POINT

・光三は犯人ではなかった。ならば、大富家の事件の真犯人は誰か?

・事件当日、光三は光男をどうしたのか?

 

 

第5章 血の絆

再審請求には「原判決を破棄するにたる新しい証拠」が必要だ。

津村弁護士は

1.凶器が光三が自供した場所から発見されていないこと

2.事件現場には「何かを探していた痕跡」があったこと

3.光三の衣服に返り血がなかったこと

を理由に再審を請求していたが、いずれも決め手にはならなかった。

再審請求を通すために最も効果的な方法は「真犯人を見つけること」だが、今となってはそれも難しいだろう…。

 

光三との面会を終えた後、祐介はふと思い立って山口へと向かった。

山口は光三とあかねが一緒に暮らしていた土地である。

当時の同僚たちから光三の話を聞く。

彼らは口をそろえて「柳瀬はいい奴だった」と証言し、そして「浅利先生は若い頃の柳瀬によく似ている」と言った。

山口では他にも光三とあかねが暮らしていた場所にも行ってみた。

そこから見える景色(五重塔)に言いようのない懐かしさを覚えて困惑する祐介。

(まさか…)

祐介の中で不穏な影が急速に形を成していく。

養母によれば、自分の母子手帳は残っていなかったそうだ。

(まさか、自分が光男なのか…?)

もし祐介の想像が正しいのだとしたら、光三は自分のためにどれだけの犠牲を払い、どれだけ辛い思いをしてきたというのだろうか。

2度目の接見で、光三は再審を望まないと言ってきた。

それもすべて、祐介(=光男)を守ろうとしてのことだったのだろうか。

…真実を明らかにしなくてはならない。

 

 

★Side・柳瀬光三

事件の日、光三が花木家から大富家に戻ると、すでにそこは地獄と化していた。

大富夫婦、大富の父、そしてまだ幼かった大富家の子供(祐介)…みんな無惨な姿で息絶えていた。

そんな中で光男だけが無事だったのは奇跡と言っていいだろう。

衝撃的な惨状を目の前にして混乱する光三の頭に、ふと悪魔的な閃きがよぎる。

(ここで祐介と光男をすり替えれば…)

大富の妻には子供に恵まれない兄夫婦がいると聞いた。

光男を祐介に仕立て上げれば、きっとその兄夫婦が可愛がってくれるはずだ。

岐阜の産婦人科医を通して誰とも知らぬ人間に光男を預けるより、その方が幸せになれるだろう…。

「光男、父さんを許してくれ。父さんは光男と一緒に生きていきたいのだ。光男の成長を見、行く末を見届けたい。でも、それが叶わないんだ」

もちろん光男と別れることは五体が引きちぎられるほどに悲しく切ない。

だが、病で先のない自分では光男の面倒を見続けることはできない。

ならば、せめて光男には人並みな幸せを味あわせてやりたい…。

「光男、元気でな」

光三はタンスを漁り母子手帳を奪うと、祐介の亡骸を抱えて岐阜へと向かった。

そして、電車を下りた先で目にした寺の本堂の床下に亡骸を埋めた。

…。

あれから26年。立派になった光男に再会できた今、光三に思い残すことはなかった。

 

 

第6章 旅路の果て

祐介の脳裏に一つの仮説が閃いた。

『真犯人は花木家が引っ越したことを知らなかったのではないか?』

もしこの仮説が正しかったとすれば、真犯人の本当の狙いは花木家だったということになる。

さっそく祐介は花木家を訪ねた。

重彦が言うには、花木家を襲うような人間がいたとすれば河村真二くらいのものだったという。

裕福な花木家とは対照的に、当時の河村夫妻はずいぶんと金に困っていたらしい。

 

祐介は26年前の河村夫妻の足跡を改めて整理してみることに。

そもそも、あかねが東京から山口へと流れてきたのは、当時の恋人だった河村真二が逮捕されたからだった。

そこであかねは柳瀬と結婚し、光男を産んだ。

その後、あかねは出所して山口まで追ってきた河村と駆け落ち。

一時は博多にいたが、赤座組に追われて東京へと戻ってきた…。

赤座組と河村との間にあったトラブルは金銭関係の類だろうか?

だとしたら、河村が花木家を襲う理由にはなる。

あかねとも親しかった礼菜の養母・すみ江によれば、河村は常々「花木家の財産は本来あかねのものだ」と言っていたらしい。

ますます疑いは強くなるが…同時に大きな問題も浮かんでくる。

もし河村が真犯人だとすれば、礼菜やあかねの立場が悪くなってしまうのだ。

あかねは共犯だった可能性もあるし、礼菜は凶悪犯の子どもというレッテルを貼られてしまう。

どうしたものだろうか…。

 

 

柳瀬光三との3度目の接見。

祐介はすでに「すり替え」についてほとんど確信を持っていた。

気が重い…。

前回と同じく、光三は再審請求をしないと言う。

祐介が河村犯人説を語って聞かせると光三はひどく動揺した。

「柳瀬さん、本当は子ども(祐介)も一緒に犯人の手にかかっていたのではないですか?」

「違います!二人は無事でした。お願いです、やめてください。仮に河村が犯人だったとしても、もう生きてはいないのです。今さら事件を蒸し返してもなんにもなりません」

頑なな訴えは、光男を守りたいという強い意志の表れだろう。

痛ましいほどの光三の信念を曲げさせることは非常に困難であるように思われた。

「それほどまでして光男くんの秘密を守り通したいのですか。あなたは光男くんのために自分の人生を犠牲にした。それでいいのですか」

「違います。犠牲になんてなっていません」

「でも、あなたはそのために26年間も辛い日々を送ってきたじゃありませんか。それほど光男くんが大事だったのですか」

「先生、あなたも結婚し、子供をもったら、今の私の気持ちがわかってもらえると思います。どうか、私を解放してください。私の我が儘をお許しください。このまま、ここで生をまっとうすることが私にとっての幸福なのです。この通りです」

手を合わせて頼み込む光三の姿に祐介はショックを受けた。

柳瀬光三は決して真実を語らないだろう。

愛する我が子を守るため、光三は秘密を抱えたまま人生を終えるつもりなのだ。

そして、そうまでして守りたい子供とは…自分のことなのかもしれないのだ。

祐介のなかで複雑に絡まり合った感情が暴れまわっている。

実の父かもしれない光三、実の母かもしれないあかね、実の妹かもしれない礼菜、今まで愛情をもって育ててくれた養父母。

次々といろんな人物の顔が浮かぶ。

(いったいどうすればいいんだ)

気づけば祐介は感情に突き動かされるまま、口を開いていた。

再審弁護のきっかけをくれたのが礼菜であること。

あかねが末期がんに侵されていること。

山口での不思議な既視感。

「あの事件の後、僕は明石に引き取られました。最初の頃、ぼくは父親のことを探し回って泣きじゃくっていたと、あとで養父母が言っていました。ぼくは母親を恋しがらず、父親を追い求めていたそうです」

柳瀬の顔が歪む。あわてて抑えた口元からは嗚咽がかすかにもれた。

祐介は何か言おうと口を開いたが、声にならなかった。

そして…

先生、もうここには2度と来ないでください。もう、私のことを忘れてご自分の道をお行きください。私も陰ながら、あなたのご活躍をお祈りしています」

踵を返して去っていく光三の背に、祐介は叫びそうになる。

(父さん!)

だが、声は喉元でとどまり、光三は一度振り返ると部屋から出ていった。

(…とうとう父と呼べなかった)

 

 

礼菜から呼び出された。

何も知らない頃、祐介は異性としての礼菜に惹かれていた。

礼菜も祐介に好意を抱いていて、若い2人は恋人になる寸前という雰囲気だった。

だが、それは過去の話だ。

自分が光男かもしれないと考えた祐介は、ある日を境に礼菜との間に距離を置くようになった。

父親違いとはいえ、実の妹かもしれないのだ。

礼菜は寂しそうなそぶりを見せたが、直接何かを言ってくるようなことはなかった。

久々に会った礼菜に、祐介は光三の件について報告する。

柳瀬光三が再審を拒否したこと。

真犯人は河村真二である可能性が高いこと。

ただでさえ祐介から冷たくされて傷ついているのに、その上、自分が凶悪犯の子どもかもしれないと聞かされて、礼菜はひどく不安気だった。

「父がそんな人間だったなんて耐えられない…。柳瀬さんを追いやった元凶が父だったなんて、これから先の私の人生を縛るに決まっている。母がいなくなったら、私はひとりぼっち。ますます父の呪縛に私は絡めとられる」

「君はひとりぼっちじゃない。光男という兄さんがいる」

「光男兄さんが見つかったの?」

礼菜は絶望の淵から這い上がるような思いで問い返した。

今の礼菜にとって最も恐ろしいことは、天涯孤独の身になってしまうことなのだ。

「見つかった」

「兄さん、どこに?」

問いながら、礼菜は得体のしれない不安を全身に感じていた。

「目の前だ。君の目の前にいる」

 

 

★Side・柳瀬光三

ついに光三に刑の執行が予告された。

当日の朝いきなり知ることになるのが通例だが、光三は囚人の中でも特に模範的であったため、所長が配慮して通達してくれたのだ。

「その日」が来るのは3日後。

光三にはもはや思い残すことはなかった。

後悔はない。

あかねとの出会いは人生の輝きであり、光男の存在は一人ぼっちだった自分の人生の全てだった。

光三はあかねに手紙をしたため、親しくしている刑務官の森下に「刑が執行されたら渡してほしい」といって預けた。

森下刑務官は光三のために泣いてくれた。

…思えば、長い旅路だった。

こんな人生だったが「再び光男に会えた」ということだけで十分に幸せだ。

いや、もしも大人になった光男に会えなかったとしても、自分は満足して旅立つことができただろう。

なぜなら収容されていた26年間、光三の中には常に光男がいたからだ。

それは想像というよりも観念に近い。

心の中の存在であるとはいえ、光三は光男を近くに感じない日はなかった。

この26年間、光三は光男と2人で旅路を歩んできたのだ。

 

 

第7章 帰郷(前編)

浦里牧師から3日後の光三の刑執行を聞かされる祐介。

最後に面会が許されるのは身内だけ。

今の祐介ではもはや光三に会うことすらできない。

(このままでいいのか…)

迷う祐介だったが、養父の言葉で目が覚める。

「祐介、自分の心に正直になれ」

養父母はずっと前から祐介が「柳瀬光男」であることに気づいていたのだという。

「そうか、やっぱりぼくが光男だったのか…。祐介じゃないのに、どうしてぼくを育てたんだ?」

「気づいたとき、祐介はもう俺たちの子になっていたんだ。今さら祐介じゃないとわかったからといって手離せるわけはない。結論は決まっていた。この子を祐介として育てていこう。そう母さんと誓い合ったんだ」

祐介に愛情を注ぐ一方で、養父母はずっと光三を見捨ててしまっていることに負い目を感じてきたのだという。

祐介と光男のすり替えを警察に申し出ていれば、光三は無罪を勝ち取れていたかもしれないのだ。

「祐介、柳瀬さんに会って、せめて父さんと呼んであげるんだ」

 

気兼ねしていた養父母からの後押しもあり、祐介は光三のもとへ。

だが、特例として許しが出た最後の面会は光三自身の意志によって拒否されてしまった。

祐介は森下刑務官から手紙のことを聞くと、今すぐあかねにそれを届けるように頼み込んだ。

…。

ほどなくして、祐介はあかねから呼び出された。

きっと手紙を読んで思うところがあったのだろう。

 

病室にて。

祐介はあかねから手渡された光三の手紙に目を通す。

そこには光男を産んでくれたあかねへの感謝の言葉が連ねられていた。

『あなたが念じれば、光男の姿を見ることができるかもしれません』という一節は、暗に祐介が光男であることを匂わせているようだ。

手紙を返すと、あかねは絞り出すような声で言った。

「河村真二の墓を調べて。そこにあのひとを助けられるものが入っているわ。お願い、あの人を助けて」

「まさか、出刃包丁が…?」

「そうよ。私が河村の遺骨と一緒に納めたの」

 

あかねの告白を受け、すぐに祐介は行動を起こした。

日弁連の人権擁護委員会へ光三の救済を申し込むと、各所の尽力により刑の執行は取りやめになった。

警察やマスコミとも連携し、祐介は河村家の墓が掘り起こされる現場に立ち会う。

墓の中からは…あかねの証言通り包丁が見つかった。

津村が掴んでいた「事件前日に若い男が買った包丁」の型番とも一致している。

間違いない。これが26年前の事件の凶器だ。

 

★Side・柳瀬光三

どうも様子がおかしい。

今日が刑執行の日なのに「お迎え」がない。

不審に思っていると「刑が中止されたのだ」と森下刑務官が教えてくれた。

喜びよりも戸惑いの方が大きい。

もはや未練はないのだ。

ひと思いにすべてを終わらせてほしい。

困惑する光三に、森下が「面会人が来る」と告げる。

「まさか、浅利弁護士では?」

「違う」

こう答えた後、森下はにやりと笑ったような気がした。

午後になり、面会人がやってきた。

接見室に入ると、そこで待っていたのは光男…いや、浅利祐介だった。

もう光男とのことは終わっているのであり、目の前の若者は祐介でしかない。

さきほどの森下の否定はどういうことだったのか…。

 

 

第7章 帰郷(後編)

「真犯人が特定できました。弁護士会の支援を得て、あなたの再審に向けて動き出すことになりました。処刑は中止になったのです」

「今さら、生きることの希望が持てると言われても戸惑うだけです。私は人生をもう一度やり直す気力はありません。私の人生は終わったも同然なのです」

「確かにあなたはやるべきことを立派に果たしました。だから、今度は自分のために人生を使うのです。あなたはそれを全然やってないでしょう」

「そんなことはありません。私は自分のために…」

「あなたは光男くんのために自分を犠牲にされたんです。これからの人生を光男くんと一緒に過ごされたらいかがですか」

光三は緩やかに首を振った。

今さら名乗り出たら、かえって子供を不幸にしてしまう。

それに、育ててくれた養父母がどう思うだろうか。

「あなたは大きな勘違いをしています。光男くんを育てた養父母は光男くんの素性に気づかなかったと思いますか」

「えっ」

「養父母は光男くんに告白したのではないでしょうか。おまえは柳瀬光三の子だと」

祐介の言葉を聞くたび、光三は落ち着きを失っていく。

「あなたは光男くんのために26年という歳月を犠牲にしたのです。そのおかげで光男くんは幸福に育ちました。今度は光男くんがあなたを守っていく番なのではないですか。光男くんはそうしたいはずですよ」

いきなり立ち上がり、光三は出口に向かった。

長い獄中生活のせいだろうか。

光三には目の前にある幸福が恐ろしかったのだ。

「父さん!」

祐介の声が光三を呼び止める。

その瞬間、光三の心は26年前へと戻っていた。

「光男…」

長い間封じ込めていた思いが爆発し、光三は夢中で光男に駆け寄った。

「光男!」

「父さん、ありがとう。26年間、ぼくを守り続けてくれてありがとう。でも、もういいよ。もう済んだんだ。あとは父さんが自分の人生を歩むんだ」

「こんなことがあるのか。ほんとにこんなことがあるのか」

光男の温かい優しさを全身に感じながら、光三は無尽蔵に涙を流した。

 

 

警察による捜索が行われ、寺の下から大富祐介の遺骨が見つかった。

鑑識にかけられた凶器の包丁からは被害者の血痕が確認された。

すでに再審請求は出されている。

あかねは引き続き事情聴取を受け、事件の全貌が明らかになった。

やはり真犯人は河村真二であり、花木家と間違えて大富家を襲ったのだった。

あかねがそのことに気づいたのは事件から2年後のこと。

たまたま凶器を発見したことですべてを知ったのだという。

その時に警察に訴え出なかったのは脅迫されていたためであり、また、礼菜を守るためでもあった。

そして、最後の秘密が明かされる。

河村の後頭部を石で殴って絶命させた犯人は、あかねだったのだ。

あの夜、河村は喧嘩をしてボロボロになっていた。

よろよろと歩き、何もないところでつんのめって転ぶほどに弱っていた。

気づけばあかねは倒れた河村の後頭部めがけて石を振り下ろしていたのだという。

実家の家族の命を奪おうとした河村を許せるはずなどなかった。

その後、あかねは河村の墓に凶器の包丁を隠し、口を閉ざした。

河村の犯行について黙していたのは、自身が河村を手にかけていたからだった。

…。

一同が引き上げたあと、病室に祐介だけが残った。

「あなたが光男だったのね。生まれたばかりの頃しか見ていないから」

「父さんの冤罪が晴れる日は近いよ、ありがとう」

「礼菜のこと、お願いね。頼んだわ」

「わかっている。彼女のことはぼくに任せてほしい」

「一番、あの娘を辛い目に遭わせてしまったわ」

「父さんの苦労からしたら、たいしたことはない」

自分たち父子を捨てたあかねへの怒りを込めて吐き捨てると、祐介は立ち上がった。

「待って!ごめんね。母さんを許して」

「父さんが帰ってきたら、許すことができると思う」

病室を出てロビーに降りると、礼菜が待っていた。

実の父が凶悪犯で、さらにその父を手にかけたのが母親だったのだ。

礼菜にとっては厳しい現実だと言わざるを得ない。

「酷いわ」

「あのひとは自分の両親たちを狙った人間が許せなかったんだ。義絶はしていても、やはり心の奥には親たちへの想いがあったんだ。そのことをわかってやってほしい」

「ええ、わかってる。酷いと言ったのは、祐介さんと私が兄妹だったってこと。酷すぎるもの」

泣き顔になった礼菜はふいに笑顔を向けた。

「でも、わたしに祐介さんみたいな兄さんがいたなんて嬉しいわ。ひとりぼっちじゃないんだものね」

「そうさ。これからは俺が守ってやる」

「ありがとう」

礼菜の笑顔が崩れ、泣き笑いのようになった。

 

請求から3か月後には再審裁判が始まった。

裁判は2回の公判で結案し、請求から半年後には判決が出た。

『無罪』

拘置所を出ると、光三は危篤状態にあるあかねのもとへと駆け付けた。

「柳瀬だ。光三だ。わかるか」

光三が呼びかけると、昏睡状態にあったあかねはうっすらと目を開けて唇を小さく動かした。

声にはならなかったが、光三には「ごめんね」と聞こえた。

「君には感謝している。君と出会えてよかったよ。ありがとう」

「母さん、ありがとう」

祐介も初めてあかねのことを「母」と呼び、感謝の言葉を告げた。

あかねの表情に満足そうな微笑みが浮かんだ。

礼菜と光男、それに光三に看取られ、あかねは安らかな顔で旅立った。

ささやかな葬儀には重彦の姿もあり、片隅で静かに涙をぬぐっていたのが印象的だった。

 

 

★Side・柳瀬光三

光三は光男の部屋で過ごした。

光男と酒を酌み交わした。

ときには礼菜が加わることがあった。

光男を育ててくれた浅利夫婦が東京にやってきたときも礼菜を交えて食事をした。

冬晴れの日、光男と礼菜と一緒に津村弁護士の墓参りに行った。

墓前に無罪になったことを謹んで報告し、未亡人にも感謝の意を伝えた。

数日後、山口に住む会社の元同僚から手紙が届いた。

そこには「就職のこと、住む場所など心配無用。皆が君を歓迎する」と書いてあった。

その夜、帰宅した光男に手紙を見せた。

「父さん、まさか」

「向こうで暮らすつもりだ」

「なぜ?」

「26年間の暮らしを守るためだ」

獄中での26年間、決して無為に過ごしてきたわけじゃない。

常に光男の幸福を祈り、心象のなかの光男とともに暮らしてきた。

光三はそういう観念の世界でつくりあげた光男との生活を大切にしたいのだ。

光男といっしょに暮らすことは26年間の歳月を無意味にしてしまう。

…この理屈を光男は分かってくれるだろうか。

今はわからなくとも、いずれわかってくれるはずだ。

長い沈黙の末に、光男は言った。

「父さんの好きなようにしたらいい。でも、山口まで送っていく。父さんの住む場所も知っておきたいし、それより父さんとあの町を歩いてみたいから」

「我が儘を言ってすまない」

光三は昔の自分の顔だちによく似た光男を眩しげに見た。

 

あかねの四十九日の法要が終わった翌日、光三は新幹線で山口に向かって出立した。

ふと、先日浅利夫婦から言われた言葉が甦る。

「あなたのおかげで私たちは子供と一緒に暮らす喜びを味わうことができたのです。妹一家を失った悲しみも、あなたが光男くんを授けてくれたおかげで救われたのです」

子どもをすり替えたという罪深き行為を否定されて、光三はどんなに救われたことか。

礼菜のことも快く引き受けてくれ、近々養子縁組をするという。

ふと横を見ると、光男が富士に目をやっていた。

思えば26年前、赤ん坊だった光男も窓ガラスにしがみつくようにして富士を見つめていた。

あの時の赤ん坊が、今では立派な大人に成長している。

(俺ほどの幸福者はいない)

ささやかな喜びを光三はしみじみと感じていた。

<父と子の旅路・完>

 

 

まとめと感想

小杉健治「父と子の旅路」がドラマ化!

今回はドラマ「家族の旅路」原作小説のあらすじ・ネタバレをお届けしました!

前半にはミステリーやラブストーリーの気配もあったのですが、後半に行くにつれて物語の主軸は「家族愛」へとシフト。

小説「父と子の旅路」は「我が子の幸せのために冤罪で極刑を受ける」という尋常ならざる父の覚悟が感動を呼ぶヒューマンドラマでした。

結末については「これ、光三さんこのまま処刑されちゃうんだろうなぁ…」と思っていたのですが、予想外に大団円なハッピーエンドでほっとひと安心。

嫌な読後感が残らないキレイな結末だったと思います。



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