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小説『竜の道』ネタバレ解説!ドラマは原作と全然違う!

白川道『竜の道』(飛翔編・昇龍編)を読みました!

先に感想からお伝えすると、

まぁ~~~~おもしろかったです!

舞台はかつてない好景気に狂乱する昭和の東京。

公衆電話やポケベルが使われている時代に、身寄りのない兄弟が己の頭脳と度胸だけでのしあがっていきます。

パッと見、ダブル主人公っぽい設定ですが、主人公は兄である竜一のほう。

「昭和の妖怪」みたいな海千山千の実力者たちを手玉にとり、利用価値がなくなればバッサリと容赦なく切り捨てる。

竜一の無敵っぷりには本当に惚れ惚れしました。

そんな竜一が危惧するのは、妹のように可愛がっている盲目の美少女で……。

ぱんだ
ぱんだ
なんだかおもしろそう!

そうです。おもしろいんです!

今回はそんな小説『竜の道』のネタバレ解説をお届けしたいと思います!

はじめに

あとでくわしく説明しますが、ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』は原作小説とけっこう違います。

ざっとあらすじを比べただけでも

  • 兄弟の出自が違う(大事)
  • 兄弟の目的が違う(とても大事!)
  • ラスボスが違う

などの設定変更が見られます。

ちょっと大げさかもしれませんが、ほとんど別の物語になってると言ってもいいでしょう。

そこで注意なのですが、これから始まるのはあくまで小説『竜の道』のネタバレ解説です。

もちろんドラマと共通する設定や出来事もあると思いますが、ドラマのネタバレとしては不確実であることをご承知おきください。

ちなみに小説『竜の道』は

  • 飛翔編(第一部)
  • 昇龍編(第二部)

にわかれているのですが、ドラマのベースはおそらく昇龍編です。

飛翔編

ぱんだ
ぱんだ
まずはあらすじから!

あらすじ

矢端竜一は魑魅魍魎が蠢く裏社会の支配を目論んだ。

手始めに、株の業界紙を発行する新聞社に潜り込み、その乗っ取りに成功する。

億を超える金に群がるクズ共を冷徹に操る竜一は、大物ヤクザ・曽根村の信頼を勝ち取るべく、殺人にまで手を染める。

野心の塊のような竜一の疾走。

それは、双子の弟・竜二と交わしたある約束を果たすためだった…。

(『竜の道(上)』裏表紙のあらすじより)


三つの約束

『竜の道』の物語は、双子が養父母を殺すところから始まります。

火事に偽装した完全犯罪。

捨て子だった竜一と竜二を奴隷のように働かせ、日常的に虐待までしていた最低な養父母を葬り去ることに一切の躊躇はありませんでした。

  • 生命保険金
  • 土地の売却金
  • ドケチだった養父母がため込んでいた金

兄弟のもとには数千万円の金が転がり込んできます。

しかし、それはある目的を果たすための軍資金にすぎませんでした。

ぱんだ
ぱんだ
目的って?

竜一と竜二が交わした約束は三つ。

  1. 世間を見返すこと
  2. とある大企業に復讐すること
  3. 実の両親を探しだして葬り去ること

二つ目の約束について、補足します。

世間から偏見と蔑みの目で見られながら育った兄弟にも、心が安らぐ時間がありました。

それは吉野一家と過ごす時間。

心優しい吉野夫妻は兄弟を差別することなく、お腹を空かせた兄弟に温かい食事を与えました。

吉野家の一人娘である美佐も兄弟になついていて、竜一も竜二も実の妹のようにかわいがっていました。

ところが、です。

吉野夫妻は一家心中して亡くなります。

ぱんだ
ぱんだ
え!?

吉野夫妻は運送業を営んでいたのですが、強引な方法でグループを拡大している二階堂急便に会社を乗っ取られてしまったんです。

不幸中の幸いというべきか、美佐だけは一命を取りとめました。

しかし、命と引き換えに美佐は視力を失ってしまい、痛々しい姿に……。

こうした経緯があって、竜一と竜二は二階堂急便への復讐を誓ったのでした。

なお、二つ目の約束には「美佐を自立させること」も含まれています。

当初の計画では、すべての目的を達成した暁には美佐と一緒に暮らす予定でした。


野望の第一歩

あらすじのとおり、竜一は度胸と頭脳を武器に裏社会でのしあがっていきます。

といっても、竜一はヤクザの世界に足を踏み入れたわけではありません。

竜一が目指すのはヤクザを使う側であって、組長や社長といった小さな肩書きに収まるつもりはさらさらないんですね。

「おまえの望みはなんだ?」

竜一は大物ヤクザ・曽根村からの問いに、次のように答えました。

…………

私はこの世の中で、私の力がどこまで通用するのかを知りたいのです。

私は生まれながらの捨て子で、頼るものすらおりません。

幼いころに世間から受けた辛酸は身体のの隅々にまで染みついております。

私に辛酸を味わわせた世間を見返したい。

そのためにはどうしたらいいか。

ずっとそのことを考え続けておりました。

そして得た結論はただひとつ。

会長(曽根村)が裏の世界を支配しているように、私が世間を支配すること。

私の意のままに世間を操りたいのです。

それも、決して表に出ることなく、操り人形を操る傀儡師のように、です。

…………

竜一は「株式日日新報」という株の新聞を発行する会社を乗っ取りましたが、それはまだまだ野望の一歩目にすぎません。

次のステップは『曽根村という後ろ盾を得ること』

曽根村からの信頼を勝ち取るため、竜一はまるで暗殺者のように曽根村の邪魔になる人間を(一切の証拠を残さず)消して見せました。

竜一の躍進は曽根村というバックがあって初めて成立します。

初期の竜一は曽根村の信頼を得ることに全力を注ぎ、見事、気に入られることに成功したのでした。


悪魔の申し子

飛翔編のラストで、竜一はブラジルのリオデジャネイロへと旅立ちます。

というのも、竜一は「斉藤一成」という天涯孤独の男になりすましていたのですが、その偽装がいまいち中途半端だったからです。

事実、曽根村は「もともと斉藤一成は頭が悪かった」という情報から、竜一の偽装を見抜いてしまいました。

リオへの旅立ちは曽根村の指示であり、そこで竜一は今度こそ見破られることのない完璧な戸籍を手に入れることになります。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

日本を発つ前に、竜一は大きな仕事を成し遂げて見せました。

『巨額詐欺事件』

くわしくは割愛しますが、竜一は悪魔のように知謀をめぐらせ、株の詐欺によって百億円もの大金を手中に収めることに成功します。

警察はもちろん犯人探しに血眼になりましたが、その頃にはもう「斉藤一成」はこの世に存在せず、竜一は顔も名前も別人になっている、という寸法です。

百億円を手に入れるのにかかった時間は、わずか二年。

竜一はまだ二十歳そこそこの若さでした。

飛翔編のラストシーンは、竜一がこれまで利用してきた(つまり少なからず竜一の情報を知ってしまっている)部下を容赦なく銃で撃つシーンでしめくくられます。

「竜二、すべてを終えた。おれが(リオから)帰るまで、元気にしていろよ」

「竜一こそ」

野望の前には人の命を奪うことなどどうということはない、と言わんばかりの兄弟の短い会話にはシビれました。

竜二の役割

一方、竜二は東大を卒業し、運輸省(現在の国土交通省)に入省。

※二階堂急便を監督する省庁だからですね

表向きはキャリアのエリート官僚としての生活を送りつつ、虎視眈々と復讐の爪を研いでいました。

「金に糸目はつけるな。常に華やかな生活をしろ」

竜一の指示に従い、竜二は惜しむことなく金を使いました。

そのいでたちはまるで人気俳優か人気モデルかのようで、竜二は女性にモテすぎてうんざりするほどでした。

そんな竜二に、竜一は新たな指令を下します。

「二階堂の娘を手に入れろ」

憎き敵・二階堂源平の一人娘である「まゆみ」を惚れさせることなど、竜二にとっては赤子の手をひねるようなものです。

竜一に比べて危険のない役割を与えられていることに、竜二は心苦しさを覚えるほどでした。

ちなみにまゆみには彼氏がいたのですが、竜一が始末しました。

こわっ!


その女、宇田咲

『竜の道』は本当に《男の世界》って感じの物語なんですが、ただ一人だけ異彩を放つ女性が登場します。

名前は、宇田咲。

曽根村の養女であり、竜一の妻になる女性です。

竜一は仕事ぶりによって曽根村からの信頼を勝ち取りましたが、咲と結婚することでさらに進んで曽根村の《家族》になります。

曽根村「おまえは、わしの息子だ」

といっても、咲はただの「曽根村とのつなぎ役」ではありません。

まさに「女傑」という言葉がピッタリの咲は、女性版の竜一といえるほどの頭脳と野心をあわせ持っています。

わたしが小説で特に好きだったのは、初対面の竜一と咲が問答するシーンです。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「日本を留守にし、私は違う人間となって戻ってくる。今、目の前にいる私は、そのときには、違う顔になっているはずだ」

咲に驚きの表情はなかった。それどころか、眉ひとつ動かさなかった。

顔など、どうでもいいことです。人間の本質が変わるわけでもないでしょう」

(中略)

「私と一緒になると、凡庸な幸せとは縁がなくなる。場合によっては、地獄を見ることになるかもしれない。その覚悟はあるかね?」

凡庸な幸せなど、露ほども興味はありません。地獄があるというのなら、それを見させてもらうのも、人間の一生でしょう」

…………

この短いやり取りだけでも、咲の人柄が伝わるかと思います。

正直、シビれました。

咲は飛翔編では影が薄いのですが、次の昇龍編では欠かせない登場人物として縦横無尽に活躍することになります。


昇龍編

ぱんだ
ぱんだ
あらすじからどうぞ!

あらすじ

巨額詐欺事件を首謀した竜一は50億の金を残し、ブラジルに潜伏した後、整形手術を施し東京に舞い戻った。

一方、官僚となった竜二は、その金を150億もの資産にし、兄を待つ。

狙いは、少年期の二人を地獄に陥れた巨大企業を叩き潰すこと。

バブル前夜のその夏、金と才覚を生かす兄弟の熾烈な復讐が始まる。

(『竜の道(昇龍編)』文庫裏表紙のあらすじより)

竜一は詐欺事件で手に入れた百億円のうち半分を曽根村に収めました。

竜二に手渡した金額が五十億円になっているのは、そうした理由からです。

ちなみに、昇龍編は飛翔編のラストから四年後の1986年(昭和61年)から始まります。

竜一の野望

竜一はブラジルで和田猛という日系ブラジル人の戸籍を手に入れ、帰国後は咲の籍に入りました。

新しい竜一の表の名前は「宇田猛(たけし)

竜一は投資会社「グローバルTSコーポレーション」を設立し、破竹の勢いで事業拡大を進めていきます。

もちろん二階堂急便を倒す力を手に入れるためでもありますが、竜一にとって復讐はただの通過点にすぎません。

竜一「おれの最終目標は、国内はおろか、海外からも認められる一大ホテルチェーンをつくりあげることだ」

竜一は野望の炎を胸に、どんどん金と権力を膨らませていきます。

すべては竜一の思うまま。

不安材料があるとすれば、外ではなく内側です。

  • 竜二とのズレ
  • 美佐の存在
  • 曽根村への依存

特に竜二と美佐の関係は、竜一の頭を最も悩ませる不安の種で……。

竜二の愛

竜二は美佐のことをひとりの女性として愛してしまいました。

そして、その気持ちは美佐も同じです。

竜二も美佐も本心では「今すぐ結婚したい」とまで思っているのですが、竜一にしてみればそれを許すわけにはいきません。

理由は二つ。

一つ目は、美佐と結婚することで竜二の気が緩み、復讐の意志が弱まってしまうことをおそれたからです。

「おれと竜二が進もうとする道に、美佐は障害となる。彼女といると、竜二の心が揺れ動いてしまう。おれはそれが心配なんだ」

竜一は三つの約束を果たしたあとも、竜二と天下を目指すつもりでした。

しかし、もともと心根が優しい竜二は、いつしか天下よりも美佐との幸せを掴みたいと願うようになっていました。

コインの表裏のように一心同体だった双子は、こうして美佐という存在のせいでふたつに割れてしまいます。

竜二はついに、

「三つの約束を果たしたあとは美佐と結婚したい(≒竜一の野望から降りたい)

と懇願し、竜一もそれを許しました。

ぱんだ
ぱんだ
もうひとつの理由は?

はい。実は竜一が竜二と美佐の関係を危険視している最大の理由は、こっちのほうです。


美佐の危険性

美佐は視力を失った代わりに、鋭い霊感を手に入れました。

予知能力によってピタリと自然災害を予言してみせた美佐は、今や「未来との架け橋を持つ少女」としてマスコミから注目されています。

そんな美佐ですから、もしも竜二とつきあいでもしようものなら、必ずやマスコミから好奇の目を向けられることになるはずです。

そうして竜二の過去が洗われれば、養父母を葬った火事に疑問を持つ人間が現れるかもしれません。

そして、その先にあるのは……

 

『火事は兄弟の犯行によるものであり、養父母と一緒に亡くなったはずの兄・竜一は今も生きている』

 

決してバレてはいけない真実に誰かが辿り着くとしたら、そのきっかけは美佐と竜二の関係ぐらいなものです。

竜一(竜二との夢を摘むのは、世間にいる敵ではなく、美佐のような気がした)

そして、もうひとつ。

美佐の霊感は予言だけではなく、なんと竜一の正体を見破ることもできてしまいます。

ぱんだ
ぱんだ
え!?

整形した宇田猛の顔は弟の竜二ですら気づけないほど完璧なものでした。

しかし、美佐は黙って横を通りすぎただけで、竜一に気づいてしまいます。

 

「いちあんちゃんよ」

美佐は竜一のことを「いちあんちゃん」、竜二のことを「にあんちゃん」と呼んでいます。

どんなに竜二が「竜一はもう生きていない。この人は別人だ」と言っても、美佐は納得しません。

結局、竜一は逃げるようにその場を立ち去るしかありませんでした。

竜一「この世のなかで、唯一欺くことができないのが、美佐というわけか」

竜一はますます美佐への警戒を強め、今後は一切美佐に近寄らないと心に固く誓うのでした。


二階堂つぶし

兄弟はいよいよ「二階堂急便」への復讐を始めます。

その最初の一手はこちら↓

…………

「竜二。おまえは、運輸省を辞めろ。そして、まゆみと結婚するんだ。結婚して、源平の心を掴め。二階堂急便を手中に収めろ」

「まゆみ、とか……」

竜二の心が痛いほどわかる。顔が、引きつっている。

「美佐とは、いずれ一緒になればいい。まゆみなんてのは、どうとでもなる」

「……わかった。そうしよう。竜一は危険な橋を渡っているのに、このおれひとりが、のほほんとして黙っているわけにはいかない」

「そうか。それでこそ竜二だ」

…………

復讐を誓った数年前、大企業・二階堂急便は雲の上の敵であり、二階堂源平は刃の届かないはるか格上の相手でした。

しかし、表と裏、すでに十分な力をつけた兄弟にとって、今や二階堂源平(二階堂急便)など恐れるに足る相手ではありません。

事実、強気なワンマン社長として有名だった二階堂源平は竜二に媚びへつらい、「娘と結婚してほしい」と土下座まですることになります。

まゆみは「竜二と結婚できなければ死ぬ」と言い出すほど竜二に飼いならされていましたし、竜二の有能さと資金力は源平にとっても喉から手が出るほどほしいものだったからです。

二階堂急便への復讐など、もはや兄弟にとってはさらなる飛翔のための踏み台でしかありません。

竜一は最終的に竜二を政治家にするつもりでいます。

政界との太いパイプを持つ二階堂急便に竜二を送り込んだのは、竜二を政治家にするための足がかりをつくるためでもありました。

竜二が二階堂急便を手中に収める一方、竜一は裏で二階堂急便を崩壊させるための仕込みを着々と進めていきます。

あとは時が来るのを待って、スイッチを押すだけ。

竜一が指先ひとつ動かすだけで、二階堂源平はいつでも地獄に突き落とされることになります。


結末

竜一の最大の武器は自らの才能と度胸ですが、その武器を自由に振るえているのは曽根村という後ろ盾のおかげです。

『竜一の背後には曽根村がいる』

この前提があるからこそ、竜一はこれまで存分に手腕を発揮できてきました。

ただ、それは見方を変えれば曽根村の影響力に依存している状態であるともいえます。

昇龍編で竜一は会社(グローバルTSコーポレーション)の事業拡大を急ぎますが、それは曽根村なしでもやっていけるようにするための土台づくりでもありました。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

そんななか、竜一の恐れていた事態が現実になってしまいます。

曽根村が脳梗塞で倒れ、病院に運び込まれたのです。

ぱんだ
ぱんだ
え!?

曽根村は幸い一命を取りとめますが、意識不明の重体。

確実に後遺症が残るだろうと医者はいいます。

竜一(回復したとしても、曽根村はもう廃人同然で、使えない)

曽根村と竜一の関係は個人的なものなので、このまま曽根村が亡くなれば「紫友連合会」とのつながりは切れてしまいます。

あまりにも早すぎる曽根村の退場に対し、竜一側の準備はまだ整っていません。

絶体絶命の大ピンチ!

ところが、竜一は……?

※以下、小説より一部抜粋

…………

だが、待てよ。

廃人にも廃人なりの利用法があるのではないだろうか。

考えがまとまったところで、竜一はウイスキーを注ぎ足した。自然と笑みが浮かんだ。

竜二はおれのことを天才だと言った。

マスコミは、悪魔の申し子と呼んだ。

ならば、そう生きればいい。

おれと一心同体の咲は、このおれの考えに同調するはずだ。

これからの計画は早める必要がある。

…………

心から尊敬していた曽根村さえ、使えなくなれば容赦なく踏み台にする。

果てしない野心と冷酷さを感じさせる、実に竜一らしい場面ですね。

「ここからさらにおもしろくなるぞ!」と予感させるこの場面で、しかし文末にはこんな二文字が並んでいました。

 

(未完)

 

ぱんだ
ぱんだ
えっ

『竜の道』は白川道先生の絶筆作です。

作者が亡くなったため、この先の物語はありません。

本来、『竜の道』は三部作になる予定だったそうです。

昇龍編のラストは、起承転結でいえば、ちょうど『承』が終わって『転』に突入したところだったように見受けられました。

ぱんだ
ぱんだ
結末はどうなる予定だったんだろう……

一応、昇龍編ではラストに向けた伏線の描写もありました。

少しでもモヤモヤが解消されるよう、わたしなりに本当の結末を考察してみたいと思います。


結末の考察

まずはこちらをご覧ください。

「大きな火、それも野原を焼き尽くすような大きな火だったわ。その火のなかに、あの人(咲)がいたの。それもひとりじゃなかった。誰かはわからなかったけど、男の人よ。ふたりとも、その火のなかで、なにかを叫んでいた……」

これは美佐が予知能力で見た「咲と竜一の未来」です。

そのまま解釈すると「咲と竜一は炎に包まれて死ぬ」という展開が予想できますね。

もちろん「だけど生きていた」という展開の伏線である可能性も否めませんが、実際に小説を読んだわたしの肌感覚としては、

 

『竜一と咲は破滅する』

 

というラストは非常にしっくりくるものでした。

無敵無敵で快進撃を続けてきた竜一が無敵のまま天下取って終わり、では物語としてイマイチ締まりません。

竜一も咲も十分すぎるほど悪人ですし、『短く太く生きる』みたいな人生観の持ち主です。

むしろ散り際こそひときわ輝いて、読者に鮮烈な印象を残すような名場面を演じてくれるのではないかと思いました。

ぱんだ
ぱんだ
じゃあ、竜二は?

仮に竜一が失脚したとして、竜二は一人でも「三つの約束」を果たそうとするでしょうか?

わたしは、そうはならないと思います。

時々、このまま美佐と誰も知らない未知の土地に行ってしまいたい気持ちに駆られることがある。

竜一への裏切り行為が頭によぎってしまうほど、竜二の心は美佐への愛でいっぱいです。

もし竜一がこの世を去ったなら、竜二はきっとすべてを捨ててでも美佐と安全に暮らしていける道を選ぶのではないでしょうか。

よく考えてみれば竜二は罪らしい罪を背負っているわけでもありませんし、降りかかる火の粉を払いのけるだけの能力と資金も持ちあわせています。

 

『野心に生きた竜一は一瞬の栄華を極めて滅ぶ』

『愛を選んだ竜二は穏やかな幸せをつかみ生きていく』

 

大まかな方向性としては、そんな結末が予定されていたのではないかと個人的には思いました。


ドラマと小説の違い

繰り返しになりますが、ドラマ『竜の道』は原作小説と全然違います。

どう違うのかというと、まずは……

根本的な設定

以下は、ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』公式サイトのあらすじです。

竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)は、生まれてまもなく小さな運送会社を営む吉江夫妻に養子として引き取られた双子の兄弟。

その後、夫妻の間に生まれた妹の美佐(松本穂香)を加え、5人家族として仲良く暮らしていた。

しかし、二人が15歳のとき、霧島源平(遠藤憲一)率いる運送会社の悪質な乗っ取りに遭い、多額の借金を抱えた両親は、自殺してしまう。

二人は、両親から命を、そして幼い妹の美佐から実の親を奪った霧島への復讐を誓い合う。

パッと読んだだけでも

  • 双子が美佐の家の養子になっている
  • (だから)双子は養父母を殺していない
  • 目的が源平への復讐に一本化されている

などの変更点が目につきますね。

※あとは美佐も失明していなかったり、霊感なかったりと設定大変更されています。

竜一・竜二の出自はそのまま双子の行動原理とリンクしています。

原作小説では(特に竜一は)「世間を見返したい」という野心が原動力でした。

一方、ドラマでは「源平への復讐心」が双子を突き動かします。

敵と結末

ドラマ『竜の道』は

「双子が(正当な理由から)巨大な敵に復讐する物語」

です。

霧島源平(小説では二階堂源平)がラスボスに設定されています。

小説は未完ですが、ドラマではオリジナルの結末まで描かれるということで、きっと源平への復讐完遂がゴールになっているのでしょう。

一方、原作小説における二階堂源平は言ってしまえば小物というか、双子にとっては利用して捨てるだけの(格下の)存在にすぎません。

主人公の竜一には源平個人への憎しみなどほとんどなく、その意識は最終目標である「一大ホテルチェーンをつくる」という野望に向けられていました。

※竜二は美佐のことが大好きなので源平への復讐心ありますけどね

ドラマに登場する

  • 霧島晃(源平の長男)
  • 霧島芙有子(源平の妻)

は小説には登場しないキャラクターです。

まとめ

『竜の道』はたしかに復讐の物語です。

しかし、ドラマと小説では《復讐》の意味合いがまったく異なります。

『育ての親の仇をとる』というドラマの物語はわかりやすくてシンプルですね。

双子が正義で、二階堂が悪。

その行動原理には血が通っていて、応援したくなります。

一方、小説における双子の復讐というのは辛い幼少期があったからこそのもので、その対象は『自分たちを救わなかった世間すべて』です。

※あとは自分たちを捨てた実の両親も復讐対象ですね

その行動は時に冷酷無比であり、竜一なんか片手で足りないくらいの人数をその手で無慈悲に始末しています。

竜一はもう「悪の主人公」といってもいいでしょう。

野望の道を突き進む竜一の姿はハードボイルドなカッコよさ、いわば悪の魅力にあふれていて最高でした。

ドラマがおもしろくなるかは今のところ未知数ですが、少なくとも原作小説『竜の道』は(未完でも)おもしろかったです。

機会があればぜひ小説もお手に取ってみてくださいね。

※文庫版の飛翔編と昇龍編あわせて1200ページ以上あります。


まとめ

今回は白川道『竜の道』のネタバレ解説をお届けしました!

では、最後にまとめです。

3行まとめ
  • 実は小説は未完
  • でも、めっちゃおもしろい!
  • ドラマと小説はホント全然違う

今回は泣く泣く省略したのですが、本当は竜一がいかに天才的に立ち回って成り上がっていったのか、くわしくお伝えしたかったです。

※図解まで用意したんですけど、やばいくらい長くなりそうだったので……

『竜の道』は近年の文芸とはまた毛色の違うハードボイルドな長編で、読んでいて新鮮な感動がありました。

ひとことで言うと「シビれる!」って感じですね。

未完にも関わらず小説になっているということは、それだけの魅力があるからということでしょう。

小説はドラマとは別ものなので、「ちょっと長い小説読みたいな~」という気分のときにでも是非チェックしてみてください。

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