今年注目の夏ドラマは「dele(ディーリー)」!
深夜ドラマですが、山田孝之さんと菅田将暉さんのコンビものと聞いては期待せずにはいられません!
なので、さっそく小説版「dele」を読んじゃいました。
ドラマ「dele」と小説「dele」の関係は次の通り。
・そもそも映像化を目的として小説「dele」が執筆された(最初から主人公コンビは山田孝之・菅田将暉を想定して書かれていた)
・ドラマ「dele」はオリジナルストーリー(複数の脚本家による競作)
なので、小説を読んでもドラマのネタバレにはなりません。
※「dele2」の結末はかなりドラマの最終回っぽいですが…
今回はそんな連作短編小説「dele」各話のあらすじとネタバレをご紹介していきたいと思います!
※物語が完結する続編「dele2」のあらすじネタバレを追記しました!
Contents
小説「dele」のあらすじとネタバレ!
★はじめに
小説「dele」には5つの短編が収録されています。
ドラマの予告にはアクションシーンや緊迫したシーンが多かったですが、小説はどちらかといえばヒューマンミステリーという感じですね。
登場人物紹介の後、さっそく1話から始めていきたいと思います!
★主な登場人物
・坂上圭司(演:山田孝之)…故人のデジタル遺品を消去する『dele.LIFE』の所長。車イスに乗っているが運動神経は良い。無愛想で論理的。愛用のPCの名前は「モグラ」
・真柴祐太郎(演:菅田将暉)…『dele.LIFE』の新人。社会的にグレーな仕事を転々としてきた。お人好しな性格。同居しているネコの名前は「タマさん」
・坂上舞…圭司の姉で『坂上法律事務所』の所長。『dele.LIFE』とは業務提携している。
・藤倉遥那…祐太郎の妹の同級生。幼馴染としてたびたび祐太郎の家に出入りしている。新人ナース。
1.ファースト・ハグ
「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する。それが『dele.LIFE』の仕事だ」
『dele.LIFE』の事務所は高層ビルの地下にある。
所属しているのは所長の圭司と、新人の祐太郎の2人だけ。
依頼主はあらかじめ『dele.LIFE』と契約し、「○○時間スマホが起動しなければ指定のデータを削除してほしい」といった取り決めを交わしておく。
指定の時間が過ぎると圭司のPCに連絡が入り、遠隔操作でデータを削除する…というシステムだ。
削除するデータの中身は見ない、というのが圭司の主義だった。
今日もまた圭司のPC(通称「モグラ」)に連絡が来た。
依頼人の名前は新村拓海。28歳。
仕事の第一段階は必ず「死亡確認」だ。
何らかの事情でスマホやPCに触れなかっただけ、というケースも考えられる。
しかし、今回の場合、確認はすぐにとれた。
拓海は刺し傷のある遺体として河原で発見され、ニュースになっていたからだ。
仕事の第二段階にして最終段階は「データの削除」
圭司は遠隔操作で削除できるため、通常なら数分もかからない。
しかし、困ったことにどうやら拓海のスマホは充電が切れているようだ。
充電さえあれば電源が落とされていようと問題ないが、電気が通っていなければどうすることもできない。
というわけで、やっと祐太郎の出番となる。
祐太郎の役割は使い走り全般。
今回の場合、拓海のスマホを見つけて充電することがミッションとなる。
祐太郎はまず拓海の自宅へと向かった。
「ども、自分、拓海さんの中学の時の後輩っす」
するりと嘘をついた祐太郎を出迎えたのは、同棲中の恋人・ユミと赤ちゃんだった。
「拓海は悪いグループと付き合いがあった」という情報は得られたが、肝心のスマホはなし。
…そういえば、拓海が削除してほしかったデータとは何なのだろうか?
「依頼を遂行するためだから!ね?スマホの場所のヒントがあるかもしれない」
拓海はスマホと同様にPCのデータ削除も依頼していた。
そちらならすぐにアクセスできる。
削除対象のデータは見ない主義の圭司だったが、好奇心丸出しの祐太郎の説得に折れ、PCのデータを開いてみることにした。
「これは…住所録?」
調査の結果、拓海が持っていたのは詐欺被害者の名簿だと判明。
「つまり、ターゲットリストか」
詐欺グループの末端だった拓海は名簿を写真に撮り、自分で稼ごうとした。だからグループから始末された。
そんな筋書きが見えてくる。
しかし、祐太郎はいまいち納得できなかった。
拓海は確かに詐欺グループの一員だったのだろう。だが、そんな大胆なことができる人柄ではないはずだ…。
PCにはスマホの場所のヒントはなかった。
スマホの場所を知っている人間がいるとしたら、犯人くらいか…。
困りあぐねていると、祐太郎に電話が。
相手はなんと拓海が所属していた詐欺グループの人間だ。
話を聞いているうちに事情がわかってくる。
どうやら詐欺グループは拓海が名簿を盗んだことに気づいていなかったらしい。なので当然、拓海の事件の犯人ではない。
では、いったい誰が拓海の命を奪ったのだろうか?
名簿の人間に片っ端から電話をかけて回る。
拓海はこのリストに名前を連ねる「赤井恵子」を探していたようだ。
調べてみると赤井恵子はすでに他界しており、今は息子の赤井良樹(46)が一人で自宅に住んでいる。
いよいよ大詰めだ。
2人は赤井家へと向かった。
留守中の赤井家に侵入。
そこで見つけたのは大量の血の跡だった。
良樹のPCには拓海の事件を調べまわった形跡がある。
間違いないだろう。
拓海を刺した犯人は赤井良樹だ。
しかし、いったい何故?
帰宅した良樹はしばらく呆然としていたが、我に返ると車イスの圭司に襲い掛かった。
しかし、圭司はいとも簡単に撃退。
続いて祐太郎もあっさりと良樹を返り討ち。
関節を極めた状態で尋問を開始した。
良樹から聞き出した事件の全貌は次の通り。
1.拓海が所属している詐欺グループは赤井恵子からすべてを奪っていった。当時、良樹は地方赴任中。赤井老人は悲しみに暮れたまま亡くなった。
2.詐欺グループが奪った品物の中に家族写真が入っていることに拓海は気づいた。拓海はそれを良樹に返そうとしたが、怒り狂った良樹に刺されて亡くなった。
3.良樹は遺体を河原に捨てた。スマホは後から見つけたため、遺棄現場とは違う場所に捨てた。
「俺が悪いのかよ!」
泣きながら叫んだ良樹に、圭司はクールに答えた。
「ああ、そうだな。あんただけが悪いんじゃないけどな」
その後、祐太郎がスマホを見つけ出し、圭司がデータを削除したことで依頼は達成された。
祐太郎「拓海さんは写真を捨てられなかった。家族を持って、捨てられない人になってたんだ。まともな仕事につくために就職活動も始めていた。拓海さんは、ただ変わりたかったんだ。今までの自分じゃない、父親としての自分に」
スマホの中には、隠れて撮ったのであろうユミや赤ちゃんの写真がぎっしり詰まっていた。
いずれスマホが警察からユミの手に渡ったとき、彼女の胸の中で、新村拓海は赤ん坊を抱きしめる。
自分なんかが抱いたら壊してしまいそうで、汚してしまいそうで、泣いてもあやすことさえできなかったその子を初めて抱きしめることができるのだ。
<ファースト・ハグ 完>
2.シークレット・ガーデン
「依頼人は安西達雄氏。76歳。大手ゼネコンの取締役。その後、相談役まで務めた人だ。舞を経由してうちと契約している」
圭司の姉である坂上舞は「坂上法律事務所」の所長だ。
富裕層の個人を専門に扱う舞の事務所から紹介されて契約に至るケースはままある。
そして、舞から紹介された案件では「火葬が終わるまではデータを消去しない」というのがルールになっている。
そんなわけで、まだデータを消すわけにはいかない。
祐太郎は圭司の代理で通夜に参列することになった。
通夜ではちょっとした事件に遭遇した。
亡くなる2日前に安西氏と結婚したという若い女が現れたのだ。
女の名は高嶋由希子。
由希子は喪主である息子の雅紀(48)に「結婚を認めてほしい」と訴えた。
誰がどう見ても遺産目的であることは明らかだ。
「私たちは愛し合っていた」という女の言葉に、同席していた安西氏のヘルパー・宇野青年は「そんなはずはない」と断言する。
結局、雅紀は手切れ金として500万円を約束することで、この不愉快な話を終わらせた。
本来ならば金を払う必要はないかもしれないが、雅紀は「父には好きな人がいた」と感じていた。
現に、安西氏が亡き妻に送った安物だが大切な指輪が家から消えている。きっと誰かに贈ったのだ。
その相手が高嶋だった場合、遺産のことで揉めるかもしれない。その可能性を考慮しての判断だった。
実際、高嶋は「もっととれるはずだったのに」とでも言いたげな表情でその場を去っていった。
高嶋と雅紀が去った後、宇野青年は「そんな馬鹿な…」と呆然とつぶやいていた。
遺産問題が絡むとなれば、舞の仕事にも関わる。ならば、それに協力するのが業務提携している『dele.LIFE』の義務だ。
祐太郎はそんな調子で圭司を説得し、安西氏から削除依頼されていたデータを開く。
中身は写真。
どこかの庭だろうか。ほとんどの写真にはモデルのような美女が写っている。
年齢的にも体格的にも、その美女は明らかに高嶋由希子ではない。
安西氏の奥さんが亡くなったのは2年前。もっとも古い写真の日付は1年半前。時期的には重なっていない。
しかし、20代後半と思われる美女と安西氏が恋人関係だったとも考えにくい。
・写真の美女(本命の愛人?)は何者か?
・高嶋由希子は何者か?
・それぞれ安西氏との関係は?
・2人の女に接点はあるのか?
浮かんできた疑問を解消するため、圭司と祐太郎は動き出した。
最初に判明したのは高嶋由希子の素性。
高嶋は葬儀会社の社員で、安西氏の妻の葬儀を通じて安西氏と出会っている。
そこから高嶋はごく自然に安西氏に近づき、後妻の座を狙っていたようだ。
遺産目当ての結婚詐欺まがい、といったところだろうか。相当にたちが悪い。
ただ、安西氏は高嶋の思うようにはならなかった。
高嶋からのアプローチのことごとくを受け流し、最後には「もう連絡しないでほしい」とまで伝えている。
おそらく高嶋は安西氏の病院を見張り、タイミングを計って勝手に婚姻届を出したのだろう。
これが通夜の事件の真相だ。
一方、圭司がどれだけ探しても写真の美女の情報は何も出てこなかった。
データのない謎の女の正体とは…?
情報収集も兼ねて、祐太郎は安西氏の告別式へ。
そこで見たのは遠くから安西氏の出棺を見守る例の美女の姿。
すぐに見失ってしまったが、美女は確かに実在した。
「あ、そう」
祐太郎の報告に興味なさそうに返事をすると、圭司は依頼されていたデータを削除した。
仕事完了。
事件がネットニュースになったのは、その翌日のことだった。
『高嶋由希子が路上で見知らぬ女に刺されて死亡した』
記事を見てすぐに祐太郎と圭司は例の美女による犯行だと直感した。
しかし、なぜ例の美女は高嶋由希子の結婚詐欺のことを知っていたのだろうか?
通夜での話し合いの席には雅紀と高嶋、そして宇野しかいなかった。
情報が漏れたとすれば、一番考えられるのは宇野か…?
「そういえば宇野は告別式にはいなかった」という祐太郎の一言で、圭司は閃いた。
写真のデータを解析し、その2人の顔を照合する。
「やはりな。2人は同一人物。宇野が写真の女だ」
宇野は自宅ではなく、留守中の安西家にいた。
その姿は祐太郎が告別式で見たときと同じ、そして写真と同じ白いワンピース。
宇野は動揺するでもなくぽつぽつと事情を語り始めた。
1.宇野はトランスジェンダーだった。体は男性だが、心は女性。ずっとそのことを隠して生きてきた。
2.安西氏はそんな宇野に許しを与えた。この家にいるときは好きな格好でいていい、と。
3.宇野と安西氏は恋人関係ではなかったが、内心ではお互いに惹かれていた。安西氏が亡き妻の指輪を送った相手は宇野だった。
通夜の時に宇野が「そんな馬鹿な…」とつぶやいたのは高嶋と安西の関係のことではなく、自分に贈られた指輪に込められた意味に初めて気づいたからだった。
4.高嶋を刺した犯人は宇野。
「安西さんのためではないです。私があの女を刺したのは、嫉妬したからです。嘘でも、安西さんを達雄さんと呼べたあの女に。ただあの女が女であることに。私は嫉妬したんです」
宇野は警察に自首するという。
安西氏との関係は隠して「一人の友人として許せなかった」ということにして。
かつて安西氏と宇野が仲睦まじく写真を撮りあった安西家の美しい庭には、今はもう誰もいない。
<シークレット・ガーデン 完>
3.ストーカー・ブルーズ
「依頼人は和泉翔平。31歳。アルバイト」
翔平は元ひきこもりニート。
重度のコミュ障で、仕事場でも「使えないやつ」として嘲笑の的になっていた。
そんな翔平は現在、昏睡状態にある。
赤信号の横断歩道にふらふらと飛び出し、トラックと衝突したためだ。
…という情報を、祐太郎は翔平の妹から聞き出した。
「昏睡中か…」
祐太郎の報告を聞いた圭司は難しい顔になった。
データを消すべきか悩んでいるようだ。
「中身を見て判断すれば?」
いつもの調子で祐太郎による好奇心丸出しの説得が始まり、やはりいつものように圭司はしぶしぶ祐太郎の説得に応じる。
データを調べてみて発覚したのは、翔平はストーカーであるという事実だった。
相手の女性は竹内真美。25歳。
翔平が働いている携帯ショップに真美が客として訪れた…これが2人の接点だ。
翔平は真美のメール送受信を自分に転送するよう設定していたし、データの中には隠し撮りの写真もあった。
ひとまず、翔平が真美のストーカーであることは間違いない。
話をややこしくしているのは、翔平の他にもストーカーがいたというもう一つの事実だ。
真美の携帯メールから読み取れる状況は次の通り。
・真美は前の会社で家庭のある上司と男女の仲になっていた。現在、その上司は秘密がバレて離婚の危機。
・もう一人のストーカーは、そのことを知る真美の元同僚・松井茂。
・松井は上司との関係というネタで真美を脅していた。目的は金ではなく真美自身。前の会社で松井は真美を口説こうとしていた。
「つまりストーカーの前に別のストーカーが現れたってこと?」
祐太郎の問いに圭司が答える。
「そうなるな。気づいたストーカーはどうすると思う?」
「彼女を守るために、別のストーカーをなんとかしようとする」
「だな」
妹の話によれば、翔平は道路に出る前に誰かとぶつかっている。
もし事故ではなく事件だとすれば、犯人は松井茂か…?
祐太郎はまず、松井と接触してみることに。
その結果、
・松井は翔平のことを知らない。
・事故の日は出張で海外にいた(ので犯行は不可能)
という事実が判明した。
…松井は犯人ではない。
謎が深まったところで、圭司から連絡が入った。
新たに判明したのは「脅迫メールは途中から別人に引き継がれている」という情報。
松井は脅迫メールを5通送ったが、反応がないと知り、それ以上メールを送ることをやめた。
ところが、脅迫メールは6通目以降も続いている。
6通目以降の送信者は…翔平しか考えられない。
しかし、なぜ?
自作自演で脅迫を続け、真美を助けて感謝されたかったのだろうか?
もしくは…翔平は本物の脅迫者になってしまったのだろうか?
怯える真美を写真に撮って楽しんでいた…?
祐太郎は最後のピースを持つ人物・竹内真美に会いに行く。
声をかけるなりストーカーの仲間だと勘違いされてしまったが、そのまま情報を聞き出す。
真美の話でつながった真相は次の通り。
・脅迫されたことをきっかけに真美と上司は復縁。結婚してやりなおすことになった。
・事故の日、翔平はなぜか真美の前に現れた。そして上司との結婚の話を聞いた。
・大きなショックを受けた翔平は、よろよろと帰り、そのまま道路へ…。
祐太郎は思った。
翔平が真美の前に現れたのは、きっと罪の告白がしたかったからだろう。
それなのに脅迫者として拒絶され、何も言えないまま結婚の話まで聞かされた。
事件ではなく、ショックによる事故。
「報われない人だよな」
事務所に帰る頃には、祐太郎の考えは変わっていた。
圭司を相手に想像を語る。
「翔平さんは、竹内真美さんが病的に好きだったんじゃなくて、実は声をかけるチャンスをうかがっていただけなんじゃないかな。ただ声をかけるだけでも、翔平さんにはとてつもなく難しいことだった。だから、竹内真美さんのことを知ろうとした」
脅迫を引き継いだのも、楽しむためではなく、ただ声をかけるきっかけになると思ったから。
「長く続ける気はなかったと思うよ。早く声をかけなきゃって思って、だから写真を撮ってさ、頑張ってイメージトレーニングをしたんだ。おはよう、こんにちは、こんばんは。何か困ったことでもあるんですか?たった一言でいいから声をかけようとしていた」
「そして金曜日、ついに決心して、竹内真美さんの前に出ていった。でも、タイミングが悪かった。何も言えないまま、竹内真美さんにきつい対応をされてしまう」
罪の告白ではなく、たった一言、たとえば「こんばんは」と声をかけたかった。
そこから竹内真美となにかが始まるわけではない。和泉翔平にもそんなことはわかっていた。
和泉翔平は、ただ目の前にある扉を開けたいだけだった。
祐太郎の推察を聞いて、圭司は言った。
「だとしたら、惨めだな。惨めすぎる」
「そうかな。俺はそういう人となら友達になりたいと思うけどな。なってあげたいとかじゃなく、何だろうな、普通に自然と仲良くなれる気がする」
きっと翔平は目を覚ますだろう、と祐太郎は思った。
<ストーカー・ブルーズ 完>
4.ドールズ・ドリーム
「依頼人は渡島明日香。38歳」
仕事の第一段階「死亡確認」は祐太郎の役割だ。
明日香はガンで入院していたが、容体が悪化。
24時間スマホに触れないほどの状態に陥っていた。
存命中なので、データはまだ消せない。
明日香の夫・渡島ハヤト氏が『dele.LIFE』の事務所に乗り込んできた。
「妻が依頼した削除予定データを見せてほしい」と要求してくる。
しかし、圭司は「それはできません」と取り付く島もない。
渡島氏の様子が気になった祐太郎は、事情を探ってみることにした。
渡島家の人間関係は次の通り。
・渡島ハヤト…夫。
・渡島明日香…妻。入院中。
・渡島奏…一人娘。5歳。母親から教わったピアノを弾くのが大好き。
・佐藤…奏のベビーシッター。
明日香が健康でありさえすれば、絵にかいたような幸せな家庭だ。
…おそらく明日香はもう長くない。
まだ5歳の奏ちゃんは、成長しても母親のことを覚えていられるのだろうか?
祐太郎は思った。
(本当にデータを削除してもいいのか?それがどんなものであれ、奏ちゃんの思い出になるかもしれないのに…)
データ削除を中止させるには、依頼人自身に依頼を取り下げてもらうのが一番だ。
祐太郎は明日香が入院している病院へと向かった。
…遅かった。
祐太郎が病院に到着した時、すでに明日香の容態は急変していた。
おそらくはこのまま…。
緊急手術の最中、祐太郎は憔悴しきった渡島氏から思いもよらない告白を聞いた。
「データのことはもういいんだ。奏のためというのは言い訳だった。すまない」
当初、渡島氏は「奏のためにデータを見せてほしい」と主張していた。
だが、真実は違った。
渡島氏がぽつぽつと話してくれた事情は、次の通り。
・渡島氏は前任のベビーシッターと間違いを犯してしまった。
・そのことに明日香が気づいているのでは?と渡島氏はずっと不安だった。
・データの開示を求めたのは、その手がかりが見つかるかもしれないと思ったから。
妻に浮気がバレているかどうか。
そんな不安は、今となってはもうどうでもいい。
最愛の妻が、今にもこの世を去ろうとしているのだから…。
やがて看護士が渡島氏を呼びに来た。
最期の別れの時間だ。
祐太郎は1階のロビーで渡島氏が出てくるのを待つことにした。
1時間…3時間…5時間…。
渡島氏がロビーに下りてきたのは、明け方になってからだった。
「さっき逝ってしまったよ」
渡島氏は崩れるように膝をつき、嗚咽を漏らし始めた。
吠えるような泣き叫び。
祐太郎はただ黙って見ていることしかできなかった。
祐太郎は家に帰らず、そのまま早朝の『dele.LIFE』事務所へ。
明日香のことを報告すると、さっそく圭司はデータを削除しようとする。
依頼内容は、クラウド上のフォルダ「T・E」を空にすること。
ファルダそのものではなく中身だけを消してほしい、という少し変わった依頼だった。
「…あ?どういうことだ?」
作業の手が止まり、圭司がつぶやく。
指定されたフォルダ「T・E」には何のデータもなく、最初から空だったのだ。
何かの手違いだろうか…。
謎は残るが、圭司は気にせず宣言した。
「この依頼は、これで終わりだ」
「そう…だよね」
どうにも納得できない。
祐太郎は調査を続行することにした。
そもそも「T・E」とは何を意味しているのだろうか?
答えは案外早く見つかった。
渡島氏と関係を持った前任のベビーシッターの名前が「エンドウタエ」だったのだ。
イニシャルで「T・E」
事務所に戻り、圭司と話す。
「空で正しかった?」
「そうだと思う」
祐太郎の考えはこうだ。
第一に、明日香は渡島氏の浮気に気づいていた。
しかし、確証は持てなかった。
だから「T・E」のフォルダをつくった。
もしも浮気の事実がなければ、そのフォルダ名は何の意味もなさない。
しかし、もし浮気が真実であるならば渡島氏は必ずその意味に気づく。
「だからあれは『T・E』っていうタイトルを見せるためだけにつくられたフォルダなんだよ。ただ、渡島氏を苦しめるためだけにつくられたんだ」
翌日、圭司と祐太郎の2人は招待されて渡島家へ。
沈みがちな雰囲気の中、奏が1曲しか知らないピアノ曲を演奏する。
その曲を聞いたとたん、圭司の表情が一変した。
「人形の夢と目ざめ」
ドイツ語での読みは「トラウム・ウント・エアヴァッヘン」
『T・E』だ。
その曲を手がかりに事情を聞くと、すべての真相が明らかになった。
1.奏はお古のスマホにピアノ曲を録音しては、入院中の母親に聞かせていた。
2.明日香は演奏を聞くと、その証として演奏データを消していた。
3.奏のスマホの中にも「T・E」のフォルダがあり、それはクラウド上のフォルダとリンクしていた。
「あれは奏ちゃんの演奏を入れるためのフォルダだったんだ」
クラウド上の演奏データが消えれば、同時に奏のスマホからも演奏データが消える。
幼い奏は「母親が聞いたから消えたのだ」と思うだろう。
自分がいなくなっても、ずっと近くで見守っている。1人じゃないわ。
そんなメッセージを込めて、明日香は「T・E」の中身を消してほしいと依頼したのだろう。
2人きりでは広すぎるリビング。
けれど、奏ちゃんがそこでピアノを弾くとき、聞いているのは渡島氏1人ではない。
スマホもそのメロディを聴いている。
他人には寂しく見えようとも、それも1つの温かな家族の光景だ。
祐太郎にはそう思えた。
<ドールズ・ドリーム 完>
5.ロスト・メモリーズ
「依頼人は広山達弘。53歳」
広山氏は外資系の投資顧問会社に勤める一方で、自宅を無料塾として開放し、貧しい家庭の子やドロップアウトした子供たちに学びの機会を与えていた。
いわゆる人格者である。
広山氏は53歳という若さでこの世を去ったが、ある問題を家庭に残していった。
「銀行口座からお金が消えてるんです。2000万円以上はなくなっている」
一人息子で大学生の広山輝明は「このままでは塾の経営が危ない」と不安がっているし、残された妻も「いったい何にそんな大金を使ったのか?」と夫のことを信じられなくなっている。
祐太郎は何とかしてあげたい、と強く思った。
状況を打破するヒントがあるとすれば、やはり削除指定のデータの中だろう。
いつもの問答を経て、折れたのはやはり圭司の方だった。データを開く。
指定されたフォルダの中身は、ネット銀行の口座を管理するアプリ。
入金総額は約2200万円。
振込先はいつも同じ「ハピネスケア かえでの郷」という介護付き老人ホームだった。
初回に150万円、それから7年間に渡って毎月20万円振り込まれている。
口座の残金は540万円。
…どういうことだ?
広山氏の両親は若い頃に他界している。いったい何故老人ホームに振り込みを?
それに振り込み名義が「ミカサユキヤ」となっているのも気にかかる。
祐太郎が頭をひねっている側で、圭司は依頼通りアプリを削除した。
これで口座のことは誰にも分らない。振り込みは残金が尽きるまで自動で行われ続ける。
翌日。事務所に行くと、圭司が調査をしてくれていた。
「三笠幸哉(ミカサユキヤ)」は32年前に亡くなっている。享年21歳。
原因は海で溺れたこと。大量飲酒の痕跡があった、と当時の記事には書かれていた。
32年前と言えば、広山氏は当時21歳。
年齢的にも出身地的にも三笠幸哉とは共通点が見られる。
そして「かえでの郷」には三笠ヤスオという入居者がいる。
ここから見えてくる答えは…
「依頼人は三笠幸哉の事故に罪悪感を抱いていた。無理に酒を飲ませたとか、ふざけ半分で酔っている三笠幸哉に泳ぎに行くことをそそのかしたとか。事故の原因をつくったのが依頼人だったのかもしれない」
「だから三笠幸哉さんのお父さんのために、お金を?」
一見、筋は通っているが、まだ謎は残っている。
・なぜ広山氏は三笠幸哉の名義を使っているのか?
・亡き息子の友人からの経済的支援を、ヤスオ氏は受け入れたのか?
疑問を解消するため、2人は千葉にある「かえでの郷」へと向かった。
第一の疑問はすぐに解けた。
入居には身元保証人が必要だ。
だから広山氏は息子に成りすましたのだろう。
しかし、もう一方の疑問の答えはわからない。
「広山達弘氏は亡くなった」と告げると、ヤスオ氏はショックからか急に体調を崩し、ベッドに運ばれた。
圭司は密かに、ヤスオ氏に宛てられた手紙を盗み見る。差出人は三笠幸哉。
そこには謎を解くヒントが記されていた。
・ヤスオ氏は若い頃に人の命を奪い、刑務所に入っていた。
・幸哉と母親はそのせいで辛い目にあった。幸哉は父親のことを恨んでいた。
・三笠幸哉はヤスオ氏と縁を切りたがっていた。
そこに、ヤスオ氏が養護施設の職員に話したという息子の華々しい経歴を重ねあわせて考えれば…
「32年前に溺れたのは広山達弘だ」
おそらく本物の広山は自ら命を絶とうとしていたのだろう。
その状況を本物の三笠幸哉は利用した。
遺体に「三笠幸哉」と名をつけ、自らは「広山達弘」という新しい名前を得た。
三笠幸哉は広山達弘に成り代わり、そして53歳で亡くなったのだ。
本物の広山は両親を早くに亡くし、親戚付き合いもなかったという。不可能ではない。
やがて本物の三笠幸哉は社会的に成功し、自分の貧しい子供時代を思い出し無料塾を開設した。
そして年齢とともに考えが変わり、父を許す気持ちになった。
だから三笠幸哉は家族に隠れて、父であるヤスオ氏を老人ホームに入れることにした。
皮肉にも、本当の自分の名前を名義にして。
老人ホームへの支払いはあと2年ほどでストップする。
しかし、職員によれば放り出すようなことはしないという。何らかの手を講じる、と。
また、無料塾の方も助けてくれているボランティアの人々がきっと力になってくれるはずだ。
残りの540万円がなくても。
圭司と祐太郎は広山達弘氏の本当の名前を、遺族には伝えないことにした。
「俺たちにできることはないのか?」
「何もしないこと。それだけだ」
三笠幸哉としての息子の32年間は、ただヤスオ氏の中だけに残る。
2人だけの、父子の記憶。
暴かれるべきではない。
やがて訪れるヤスオ氏の終わりとともに、それらの記憶はすべて失われるのだ。
<ロスト・メモリーズ 完>
エピローグ
「なあ、ケイはどうしてこの仕事を始めたんだ?」
「何となくだ。特に理由はない。なんでだ?」
「いや、別に」
「そう」
「たださ、俺が会社をつくるなら、たぶん、まったく逆のことをするだろうなと思って」
「逆のこと?」
「あなたの死後、この世界に残したいものを俺に預けてくれって。俺はそれが世界に残るよう、全力で守るからって」
「全力でか。お前らしいよ」
祐太郎は財布から一枚の写真を取り出し、眺めた。
「ケイ、頼みがあるんだ」
「頼み?」
「俺が死んだら、この写真、もらってくれ」
「誰?」
「妹。十三歳でこの世を去った」
「十三歳か。どうして?」
「病気。小さい頃から、とても難しい病気にかかってたんだ」
「そう」
「俺が死んだらさ、ケイは真っ先に駆けつけてくれ。この写真、俺は必ず持っているから。見つけて、俺に代わって持っていてくれ。それだけでいいから。捨てたりしないでくれ。間違っても、俺と一緒に燃やしたりしないでくれ」
祐太郎は写真の中の妹の頬に指をあてた。
「どんどん消えてくんだ。残しておきたいのに、毎日、毎日、俺の中から妹が少しずつ消えていく」
「年を考えれば、俺の方が先だ。もっと若いやつに頼めよ」
「こんなこと、頼める友達がいないんだ」
「お前、本当に見かけだおしだよな」
会話が途切れる。しばらく沈黙した後、圭司がぽつりと言った。
「覚えておくよ」
「ああ、頼む」
「そうじゃなくて、俺がお前を覚えておくよ」
「え?」
「お前が死んでも、俺はお前を覚えている。お前と今日、こんな風に話したことも、覚えておく。お前の妹の話もな」
「うん」
祐太郎は頷き、写真を財布にしまった。
目を閉じると、思いがけない鮮やかさで妹がふわりと笑った。
<dele・完>
【ここから追記分です!】
小説「dele2」がやっと発売されたので、さっそく読んでみました!
「dele2」の見どころは、祐太郎と圭司の過去につながる事件!
・祐太郎の妹はなぜ亡くなったのか?なぜ祐太郎の家庭は崩壊したのか?
・圭司が削除した父親のデータとは?
前作で伏線を張っていたこれらの謎が一気に動き出し、驚くべき真実へとたどり着く最終話は必見です!
というか、これ…もしかしてドラマの最終回の原作なのでは?
ちょっと先にネタバレすると、「dele2」では
・圭司の両足のこと
・祐太郎を「dele.LIFE」に呼び寄せた人物のこと
など設定的に気になることを全部解決しちゃってるんですよね。
祐太郎と圭司の関係性についても最高な感じでラストを迎えていますし、むしろドラマが全然違う結末になっていたらビックリです。
というわけで今回は、小説「dele2」のあらすじとネタバレ!
逮捕?敵対?祐太郎と圭司を結ぶ過去の因縁とは!?
小説「dele2」のあらすじとネタバレ!
★はじめに
物語の核心に迫る超重要な話は「最終話 チェイシング・シャドウズ」です。
その前に2つの短編を挟みますが、特に最終話への伏線等はないのでラストだけが気になる方は飛ばしてください。
なお、章番号は小説「dele」から続いているものとしてカウントしています。
6.アンチェインド・メロディ
「依頼人は横田英明氏。35歳」
母親に電話して死亡確認をとると、祐太郎は英明の自宅へと向かった。
パソコンがオフラインになっているため、データを削除するためには電源を入れる必要がある。
現場到着。
ピッキングで鍵を開け、目的のノートパソコンを回収する。
ここまでは順調だった。
「警察の者ですが、どなたもいらっしゃいませんね?鍵、開けますよ」
「うっそ」
予想外のバッティング。
祐太郎はなんとか刑事たちの追走を振り切って、『dele.LIFE』の事務所に逃げ帰ってきた。
削除を依頼されたフォルダの中に入っていたのは、40曲ほどの音楽データだった。
英明の部屋には楽器や楽譜が散見された。英明がつくった曲だろうか。歌詞は入っていないが、悪くない。
英明の曲を次々に再生していく。
祐太郎はその中に、2年前に大流行した楽曲が混ざっていることに気がついた。
「コリジョン・ディテクション」の「くず星のバラッド」
一時期はどこへ行っても、この曲が聞こえてきた。
そうか、英明はプロの作曲家だったのか…。
祐太郎がそう納得しかけたとき、圭司が口を開いた。
「コリジョン・ディテクション。結成は5年前。すべての楽曲をつくっているのは…横田宗介、か」
「え?」
宗介は英明の弟だ。バンドではギターとボーカルを担当している。
不細工な兄貴とは似ていない、整った顔の弟だった。
しかし、どういうことだ?
英明のパソコンに入っていた40曲ほどの楽曲は、すべてコリジョン・ディテクションの曲として発表されているものだった。
公式ページに英明の名は一切出ていない。
圭司は楽曲データをUSBに移すと、パソコンからは完全に削除した。
「その音楽データをどうするかは、お前が決めろ。ただし、死者への礼儀だけは忘れるな」
祐太郎は内心、圭司の言葉に驚いた。
祐太郎がこの事務所に来たばかりの頃、圭司は依頼人の事情に関わろうとしなかった。興味を持っていなかった。
祐太郎が来てから、圭司は少しずつ変わってきているようだ。
それは突然の出来事だった。
祐太郎の部屋に横田宗介が訪ねてきたのだ。
イライラしているのか、態度が悪い。
宗介は英明の部屋に落ちていたカード入れを返してほしければノートパソコンを渡せ、と居丈高に要求する。
「明日中にスタジオに持ってこい。忘れんな」
遥那によれば、現在、宗介は薬物絡みのゴシップで騒がれているのだという。
だから警察に届けずに直接、乗り込んできたのだろうか。
翌日、祐太郎は指定されたスタジオへと向かった。
楽曲データを抜いたノートパソコンを返却する。
宗介は中身を確かめもせず、あっさりと免許証を祐太郎に返した。
ミッション終了。
あとは素知らぬ顔をしてスタジオを後にすれば、それで終わる。
しかし、祐太郎は宗介に話しかけずにはいられなかった。
「あんたは横田さんが作った曲を、あたかも自分が作ったように偽って演奏していた。そうだよね?」
ゴーストライター。
宗介は否定しなかった。兄が金を、弟が女を得る。お互いに利益のある関係だったと宗介は語る。
英明の名義を使わなかったのは、体重130キロオーバーの醜い兄ではファンからの支持を得られなかったからだ、と。
…肥満。
英明氏は路上で倒れて、そのまま息を引き取った。医師の診断は心不全。
確かに肥満は心不全の原因にはなる。
しかし、例えば薬物の過剰摂取による心不全、というケースも考えられるはずだ。
祐太郎は臆せず自分の推理を宗介にぶつけた。
「あんたは何らかの方法で横田さんに薬物を投与した。横田さんはそのせいで心不全を起こして亡くなった。横田さんは正当な評価を求め始めていたんじゃないか?だから、あんたは実のお兄さんを手にかけた」
「帰れよ、バカ」
宗介が言ったのは、その一言だけだった。
祐太郎はUSBのことを告げず、そのままスタジオを後にした。
結局、英明は宗介に新曲を渡さないために、削除を依頼したのだろう。
USBを圭司に渡す。圭司の指が軽やかに動くと、音楽データはこの世から消えた。
後日談。
コリジョン・ディテクションは解散を発表した。
宗介は行方不明。一部では薬物の件で逃亡しているのではないか、という噂が流れていた。
そんな、ある日のこと。
「ちょっと、付き合え」
祐太郎は圭司に連れられて、駅にほど近い広場へと足を運んだ。
「あそこにいるやつ、見えるか?」
無精ひげに、ぞんざいな服装。
雰囲気はガラッと変わっていたが、それは間違いなく横田宗介だった。
そうすけは古びたアコースティックギターを弾きながら、ブルースを歌っていた。
コリジョンで歌っていた英明のロックではなく、自分でつくったブルース。
その曲は万人受けするものではないかもしれないが、深い哀愁のこもった本物の歌だった。
「コリジョンなんとかなんて、これに比べれば子供だましだ」
「横田宗介にだって、曲作りの才能はあった。そういうこと?」
「横田英明以上の才能がな」
「だったら、なんで横田さんの曲を?」
「宗介が言っていた通り、兄貴はそれしかないやつだったんだろ?横田英明には、それしかなかった。他には何もない兄貴のために、弟はその曲を歌ってやった」
圭司の推測は論理的だった。
・宗介は自分にも才能があるのに、兄のために兄の曲を歌っていた。
・英明はそれを喜びつつも、心苦しさを覚えていた。
・その苦しさから、英明は薬物に手を出していた。宗介は兄を薬物から救うため売人と接触し、世間の誤解を招いた。
きっと、それが真実だったのだろう。
「自分が弟の才能を縛り付けていることは、依頼人もわかっていたんだろう。けれど、それをやめることはできなかった。その歌だけが自分のすべてだから。やめなきゃいけない。ずっとそう思ってきた。薬物も。弟に嘘をつかせることも。けれど、やめられないこともわかっていた。弱い男だったんだろう。だから、せめてもの思いで死に急いだ」
「じゃ、横田さんがうちに削除依頼をしたのは」
「弟を解放させるためだ。これからは自分の音楽をやってくれ。そういうメッセージだったんだよ。そして、そのメッセージは弟に届いた」
パソコンに楽曲データがないことを確認した宗介が再び祐太郎の前に現れなかったのは、そういう理由だったのだ。
祐太郎はその心中を想像しながら宗介を見る。
長い封印から解放された音楽が奏でられていた。じっくりと耳を傾けさえすれば、体の芯が揺さぶられるような音楽だった。
が、その音楽に耳を傾ける人は誰もいなかった。多くの人がただ横田宗介の前を通り過ぎていく。
「最高にご機嫌な音楽だよ」と圭司は言った。
<アンチェインド・メロディ 完>
7.ファントム・ガールズ
「依頼人は波多野愛莉。24歳」
モグラが仕事を告げる電子音を鳴らしたのは、ちょうど愛莉の隣人だという少女・ドウモトナナミ(14)が事務所に乗り込んできていたときだった。
よって、死亡確認はすぐに完了。
「波多野さんは…」
「亡くなりました」
ナナミは表情一つ動かさずに言う。
あとは依頼人のスマホを探し出し、通信できる状態にすれば削除を実行できる。
「波多野さんのスマホは…」
「私の家です」
ナナミは次のように説明した。
・愛莉が病院に運ばれたあと、ナナミは愛莉のスマホに不審なアプリ(dele.LIFE)を見つけた。
・ナナミはアプリを削除しようとしたが、不可能だった。だから、スマホからSIMカードを抜き、Wi‐fi接続を切った。愛莉はナナミのWi‐fiを使っていた。
なるほど。圭司がスマホにアクセスできないわけだ。
ナナミは愛莉が削除を依頼したデータを見たいと話す。
しかし、もちろん圭司はそれを許さない。
ナナミは「スマホは渡さない」と宣言すると、事務所から去っていった。
ナナミにどんな事情があろうと、こちらは仕事だ。
愛莉の住所がわからなかったので、祐太郎はナナミを尾行することにした。
ナナミはまっすぐ家には帰らず、高級ブランド店やジュエリーショップに立ち寄りながら、どこかへと歩いていく。
それにしても子供があんな高級店に何の用があるというのだろう?
ナナミはしきりとショーウインドウの商品をスマホで撮っていたようだが…。
尾行中、圭司から着信。
波多野愛莉の情報について、圭司は手短に説明した。
・愛莉はIT系企業に勤める会社員。
・SNSではちょっとした人気者で、ブランド服や安くはない食事の写真をUPしていた。
・SNSからうかがえる愛莉の生活は贅沢そのものであり、とても愛莉の年収では足りないはずだ。
・同じくSNSを見る限り、愛莉には病気にかかっている様子はなかった。
どういうことだ?
気にかかるのは実生活と年収との乖離だ。別に親や恋人が金持ちだった、というわけでもないらしい。
愛莉は仕事とは別に何か収入があったのだろうか?
次にナナミが訪れたのは、外資系の高級ホテル。
クリスマスツリーのイルミネーションをスマホで撮影すると、ホテル内のカフェレストランへと入っていく。
一番安いランチだが、お値段は三千円。
やはりスマホで写真を撮っている。
愛莉もそうだが、ナナミも子供とは思えないほど金を持っているように見えた。
圭司に電話して、推理を披露する。
「波多野さんとナナミちゃんは、何か共通の金づるをつかんでたんじゃないかな?」
2人の贅沢ぶりを説明するには、それしかない。
ナナミは金づるに関するデータが削除されないか心配で、事務所に乗り込んできた。
…つじつまはあう。
ただ、目の前の少女が何かの悪事に手を染めているとは思えなかった。
ナナミが次に立ち寄ったのはデパート。
女性向けのフロアを見て回った後、ナナミはトイレに入っていった。
さすがに女子トイレまで追いかけるわけにはいかず、祐太郎はトイレの出入り口を見張ることに。
…遅い。遅すぎる。
祐太郎が不審に思い始めたころだった。
「あ、てめえか!」
1人、また1人と男たちが祐太郎の前に集まってくる。
やけに攻撃的な態度だ。
プロではなく、素人。
しかし…何者だ?
男たちの攻撃をかわしながら逆に問い詰めていくと、少しずつ事情が見えてきた。
ナナミがSNS上で「ストーカーに追われている」と助けを求めていたのだ。
愛莉と同様、ナナミもSNS上では多くのファンを持つ人気者だった。
だから、すぐにSOSの効果が表れ…今に至る、ということらしい。
ナナミは祐太郎の尾行に気づいていたのだ。
男たちはなおも集まり続け、騒ぎはどんどん大きくなっていく。
祐太郎はその隙を突いて走り去っていくナナミを目撃していたが、自分が逃げ出すのに手いっぱいで、その日は結局ナナミを見失ってしまった。
事務所に戻って、事の顛末を圭司に報告する。
圭司は心底楽しそうに笑った後、ニヤリと口元を歪めて言った。
「大人が子供にやられっぱなしじゃまずいだろ?」
情報戦となれば、圭司の独壇場だ。
圭司はまず愛莉とナナミが使っていたIPアドレスを調査。
その結果、2人は近所に住む男のWi-Fiに無断でタダ乗りしていた、ということが発覚した。
IPアドレスからナナミの住所を探る作戦は失敗。
しかし、住んでいるエリアは絞れた。
しらみつぶしに足でナナミの家を見つけるのは、祐太郎の仕事。
ずいぶん時間がかかってしまったが、ついに祐太郎は通りから隠れるような場所にあるナナミの住処を見つけ出した。
というか、家の前でナナミと鉢合わせした。
逃げられないと悟ったのだろう。
ナナミは祐太郎を部屋の中へと招き入れた。
ナナミが住むアパートは外見も内装も「ボロい」ものだった。
とても贅沢な暮らしをしているようには見えない。
聞けば、ナナミは母親と二人暮らしで、その母親は昼と夜で仕事を掛け持ちしているという。
そう、ナナミのSNS上のプロフィールは嘘だったのだ。
本当のナナミはお嬢様学校に通う令嬢ではなく、不登校の中学生。
隣に住む愛莉とは、アパートの取り壊しに反対する籠城仲間だった、とナナミは話す。
ナナミから聞く愛莉の話は、悲惨なものだった。
一度は就職したものの、心身を壊して退職。
その後、再就職しようとしたが、どこからも採用されなかった。
生活費は体を売って稼いでいたという。
絶望していた愛莉に、ナナミはSNSに虚構の自分をつくりあげることを勧めた。
自分と同じように。心の支えをつくるために。
SNSにUPしていた服は試着室の中で撮られたものであり、おしゃれな食事は手づくりのものだった。
SNS上の2人は虚構の存在。
他人は2人のしていたことを虚しいというかもしれない。
しかし、当の愛莉とナナミは楽しかった。
2人でいろんな工夫をして、本当に楽しい時間を過ごしていた。
…少なくても、ナナミはそう思っていた。
「波多野さんはどうして死んだの?」
祐太郎の質問に、沈痛な表情でナナミが答える。
「自分で。お風呂場で、のどを切って…」
「君が見つけたの?」
「…うん」
ナナミは愛莉のスマホを取り出し、祐太郎に差し出した。
「どうして波多野さんのデータを削除してほしくなかったの?」
「結末をつけたかったんです」
「結末?」
「もう一人の愛莉の結末。一生懸命、ハッピーなものを探し続けた波多野愛莉は、ついに素敵な彼氏と出会い、高級ホテルのテラス席でランチを食べた後、イルミネーションがきらめくクリスマスツリーの前でプロポーズされました。皆さん、今までありがとう。このアカウントは、今日で停止します。皆さんの上にも、どうかどうか、おっきなおっきな幸せが訪れますように。フィン。そう締めくくりたかったんです」
ジュエリーショップや高級ホテルに出入りしていたのは、虚構をつくる材料を集めるためだった。
しかし、ナナミはせっかく撮った写真をSNSにUPしていないという。
「愛莉が削除依頼したのは、もう一人の愛莉のデータだと思います。愛莉はたぶん、もう一人の愛莉に耐えられなくなったんです。自分だって、こういう愛莉でありえた。そう考えて、たぶん、惨めで、耐えられなくなったんだと思います。だったら、それは私が愛莉を追い詰めたということですよね」
後悔。罪の意識。
ナナミはそれらに圧し潰されそうになっている。
「俺は思うんだけど、波多野さんは…」
「あなたは愛莉のことを知りません。愛莉のことを何も知りません」
「ああ、うん。そう。そうだね」
祐太郎は椅子から立ち上がった。
ナナミにかける言葉は一つも思い浮かばなかった。
事務所に帰って、圭司にスマホを渡す。
「依頼人の波多野愛莉はこのスマホにあるすべてのデータを削除するよう。設定している」
やはり愛莉は、もう一人の愛莉に圧し潰されたのか…。
「ただし、SNS上のデータは含まれない」
「え?」
つまり、消えるのは現実の愛莉に関するデータだけ。
反対に虚構の愛莉に関するデータは、この世界に残り続ける。
「それっていいのかな?ナナミちゃんと2人でつくったもう一人の自分を、波多野さんは嫌っていなかったって、そういうことだと考えていいのかな?それともやっぱり、波多野さんはもう一人の波多野愛莉に圧し潰されたって受け取るべきなのかな?」
「あるいは、波多野愛莉にとって、デジタル世界に作り上げた波多野愛莉は、もう一人の自分なんかではなく、唯一の友達と一緒に遊んだ記録だったのかもしれない。それが波多野愛莉がこの世界に残したかった、たった一つのものだったのかもしれない」
「そう思う?」
「そういう可能性もあると思うって話だ」
圭司の指が動き、依頼されたデータが削除される。
「これは、どうしたもんかな。うちがもらってもいいもんかな」
そう言いながら手帳型のケースからスマホの本体を取り出した圭司は、すぐにケースに戻して、祐太郎に向けて突き出した。
「いや、形見としてドウモトナナミに渡してきたらどうだ?問題ないだろ」
「でも、中身は空っぽなんでしょ?ナナミちゃん欲しがるかな」
「スマホの中のデータ削除は依頼されたが、外のデータ削除は依頼されていない」
「外?」
祐太郎はスマホを受け取ると、ケースから本体を取り外した。
スマホ本体の裏側には、プリクラで撮った写真が貼られていた。
なんの加工も施されていない、素のままの愛莉とナナミ。
どちらも無愛想な表情を浮かべている。
「もう少し笑うか何かすればいいのに」
「そういう二人だったんだろ」
「そっか。そうだよね。俺、行ってくるよ」
「ああ」
圭司に頷き返すと、祐太郎はナナミのアパートに戻るために事務所を後にした。
<ファントム・レディ 完>
最終話 チェイシング・シャドウズ
「依頼人は室田和久。62歳。大越美容クリニックの理事長で、以前は相和医科大学で教授をしていた」
「…相和医大?」
「どうかしたか?」
「…いや」
いつも通りの仕事の始まり。
しかし、祐太郎はこの時すでに胸のざわつきを感じていた。
対象のパソコンの電源を入れるため、祐太郎は室田氏の自宅へ。
ニートの息子・一郎をだますのは簡単で、目的はすぐに達せられた。
しかし…
「違うな。このパソコンじゃない」
圭司によれば、室田氏から削除依頼されたデータは、別のパソコンの中にあるらしい。
だが、一郎はそんなものはないと断言している。
祐太郎は仕方なく、一郎から可能な限り室田氏の情報を引き出してみることにした。
その結果は次の通り。
・室田氏は相和医大付属病院にも所属していた。専門は循環器内科。かつては科長を務めていた。
・3年前、附属病院で起こった情報漏洩事件の責任を取り、室田氏は辞職している。ただし、室田氏は最後まで「身に覚えがない」と主張していた。
・室田氏は真柴姓の人間からの電話に怯えていた。
室田家からの帰り道、祐太郎は苦々しくつぶやいた。
「…何なんだよ、今更」
事務所に戻った祐太郎はイライラしていて、著しく冷静さを欠いていた。
圭司が尋ねると、祐太郎は今回の事件に関係するかもしれない、過去の忌まわしい事件について語り始めた。
「9年前、相和医科大学付属病院で、新薬の治験中の患者が死んだ。ちょうど新薬の開発を日本の成長産業の一つに据えようっていう国の動きと重なったころだったから、ちょっとしたニュースになった。病院側は記者会見を開いて、患者に投与されていたのは新薬ではなく偽薬のブドウ糖で、患者の死亡は治験とは無関係だと説明した。遺族に公開されたデータでも、確かにその患者に投与されたいたのはブドウ糖だとされていた。でも、しばらくして、担当だった若い医者が遺族を訪ねてきた。あれは新薬の副作用だった疑いがある。医者はそう言った」
「遺族は真実を知りたくて、病院を相手に訴訟を起こすことを決めた。その途端に妨害が始まった」
長く連絡を取っていなかった親戚や知人からの「やめておけ」という忠告。
ネットで拡散した遺族に関する悪質な噂話。
「それでも訴訟準備を進めていると、患者の父親は突然、長らく務めていた会社から解雇された。理由は全然、納得できるものじゃなかった」
新薬開発を旗振りしている厚労省からの圧力。
「それでも遺族は戦い続けるつもりだった。けれど、重要な証人だったはずの担当医や弁護士までもが、遺族から離れていった。気づいてみると、味方は誰もいなかった。とどめは担当医の事故だった。車ごと海に飛び込んで、その若い担当医は亡くなった。原因は不明。まともに捜査されなかった」
「それまで精力的に訴訟準備をしていた患者の両親は、ふっと訴訟を諦めた」
嫌がらせはぱたりと途絶え、父親には好条件の就職話が舞い込み、病院からは私的なものとして多額の見舞金が振り込まれた。
「その治験を取り仕切ったのが、相和医大付属病院の循環器内科なんだ」
「そしてその治験中に亡くなったのが」
「ああ、真柴鈴。俺の妹だよ」
今回の依頼。室田が削除依頼したデータは、もしかしたら鈴の事故に関するものかもしれない。
「どうする?」
「そのデータを見つけて、公表する。あのとき何があったのかを明らかにして、そこに関わった人間を、全員、引きずり出してやる」
訴訟が潰されたあと、祐太郎の家族は崩壊した。
両親は離婚し、祐太郎は祖母に預けられた。
復讐のため、そして何より鈴のために、すべてを明らかにしなければならない。
「9年前にやるべきだったんだ。今度こそやるよ。ケイが依頼通り削除するっていうなら、俺は…」
「馬鹿言うな」
祐太郎の言葉を、圭司がさえぎる。
「そのデータ、見つけるぞ」
「…ありがとう」
室田和久 → 日下部勲
室田の自宅から拝借したIDカードを使って、夜の相和大学付属病院に潜入する。
今回は圭司も一緒だ。
科長室に設置されている古いパソコンに室田の隠しデータが入っているのでは、と思ったのだが…
「違うな。このパソコンでもない」
またしてもハズレ。
しかし、収穫はあった。
病院内の機密データを持ち出すことに成功したのだ。
事務所に帰ってデータを解析した圭司が告げる。
「結論から言うなら、妹さんの治験データは改ざんされていない」
「え?」
「室田がやったのは妹さんのデータの改ざんじゃない。たぶん、別の不正だ」
治験では新薬の効果を正確に測るため、本当の新薬(実役)を投与する患者グループとプラセボ(偽薬)を投与する患者グループの経過を比較する。
しかし、そもそも投与される薬が実役が偽薬かは医師にも知らされていない。
製薬会社と病院の間には専門の業者が入り、どの患者に新薬偽薬を投与しているか管理している。
医師は何かトラブルが起こった時にだけ、物理的に保管されている封筒(エマージェンシーキー)を開き、そこで初めてどちらが投与されていたかを確認できる。
「妹さんが亡くなったとき、このエマージェンシーキーが開封されたはずだ。そして、妹さんに投与されていたのはプラセボだと発表された」
「…つまり、鈴のエマージェンシーキーがすり替えられていた?」
「そう思う。が、問題がある。いくら責任医師の室田でも、割り付け業者が管理しているエマージェンシーキーには手を出せない。物理的に保管されているものだから、外からクラッキングでどうにかすることも不可能だ。実際のところ、医師はエマージェンシーキーがどこにどうやって保管されているかさえ知らないだろう。すり替えるには、どうしても割り付け業者の内部に協力者が必要になる」
「協力者か。そんな人どうやって…」
「ああ、どうやって捜したものか、俺も頭を抱えたんだが、意外に簡単に見つかった」
「え?は?見つかったの?」
「クサカベイサオ。室田の同級生で、割り付け業務も受託している医療サービス会社に勤めている」
祐太郎はやはり室田一郎の名前を使って、日下部勲と面会。
場所は日下部の勤める『AMADAメディカルサービス』だ。
目的は会社内に保存されているであろう「改ざんされた割り付け表」のデータ。
これを病院の治験データと突き合せれば、改ざんの事実が証明できる。
正体がバレかける危ない場面もあったが、なんとか祐太郎は日下部のパソコンに圭司のUSBをさすことに成功。
これでバックドアがつくられ、圭司が遠隔操作でデータを洗うことができるようになったはずだ。
日下部勲 → 富樫達彦
「どうだった?」
「システムには入れた。が、9年前の割り付け表のデータは消されていた。誰かが9年前のデータだけ削除したんだ」
次につながる手がかりは、日下部のメール。
日下部は事故の3か月後から急に富樫達彦という男とやりとりをしている。
メールの中に出てくる『PMDA(医薬品医療機器総合機構)』は厚労省が所管する独立行政法人だ。
事実上、国はこのPMDAを通じて治験を管理している。
そして富樫達彦は、当時の厚労省のナンバーツー。
厚労省で新薬開発振興の旗振りをしていたのが、この富樫だった。
富樫の妻は日下部の姉である彩。つまり、日下部にとって富樫は義兄にあたる。
「遺族に訴訟を断念させる。二人の間でそういうやり取りがなされたんだろう。いや、メールから推測するなら、富樫が主導し、日下部は黙認した」
室田和久も日下部勲も心からの悪人には思えなかった。
「こいつなんだ」
祐太郎は拳を握りしめた。
家に帰ると、玄関の鍵が開いていた。
中に入ると、見知らぬ男が座っている。年齢は50代くらいか。
「みんなが幸せになるためのアドバイスをしよう。真柴祐太郎、お前、今やってること全部やめろ」
「は?」
父親の新しい家族、母親の新しい家族、遥那…男は次々と祐太郎に近い人々の名前を挙げていく。
「やめなければ、みんなが不幸になる」
脅迫。
祐太郎は直感した。9年前、真柴家への妨害工作を行っていたのはこの男だ…!
「命じたのは富樫か?」
男はにやにや笑うだけで答えない。
後を追われないよう家に火をつけてから、男は去っていった。
…許せない。あの男も、富樫も。
少しだけ迷ったが、圭司には連絡しないことに決めた。
これから祐太郎は富樫の家に向かう。
住居侵入罪程度では済まないかもしれない。
暴行罪か、傷害罪か、それとも…。
圭司を犯罪に巻き込みたくはなかった。
裏社会の使い走りをしてきた祐太郎にとって、少しばかりのセキュリティなど障害にはならない。
やすやすと富樫の家に侵入する。
隠れることなく富樫のいる部屋に入ると、体を拘束してから言った。
「真柴。その名前に聞き覚えは?」
「真柴…じゃあ、君はあの子の…」
「兄だ。真柴祐太郎」
「なるほど、そうか…」
富樫は諦めたように抵抗をやめた。拘束を解く。
「君は、どこまで知ってるんだ?」
「治験中に、薬の副作用で妹は死んだ。それを隠ぺいするために治験の責任者の室田は、高校の同級生だった日下部を使って、エマージェンシーキーをすり替えた。うちの親が真相解明に動き出すと、焦った日下部はあんたに善後策を相談した。当時のあんたは、厚労省で、国内の新薬開発を促進するために動いていた。あんたは人を使って、うちの親の訴訟を潰した」
富樫が首を振る。
「違うな。いや、起こったことで言えば、そうなのかもしれない。が、違う」
「何が違うんだ?」
「治験事故の隠ぺい、新薬開発の促進。そうじゃない。それはもっと個人的なことだったんだ」
富樫は一連の事件の裏側について語りだした。
きっかけは室田と少年との会話。
妹の治験に不安を覚えていた少年に、室田はつい言ってしまった。
「最悪、効かないことはあるかもしれない。けれど、悪くなることはないよ。参加して、損はない」
が、少年の妹は亡くなった。
世間話のような会話だ。公式な説明ではない。
「が、そのやりとりが表沙汰になれば、室田はその軽率さを厳しくとがめられただろう。医師免許剥奪まではされないだろうが、大学病院は追われることになる」
「そのくらいの責任はとれよ」
「室田には、医者にしたい息子がいたんだ。その息子の前で、室田は立派な医者であり続けたかった」
室田は日下部の協力を得て、鈴に投与されていたのは偽薬だったということにした。
「が、その後しばらくすると君たち遺族がそこに疑問を感じ始めた。君たちは真相を求めて動こうとしていた」
「そこであんたが登場するわけだ」
「私は二人の罪が露見することを避けたかった」
「新薬開発の…あんたの仕事の妨げになるからか」
「それは二次的な理由でしかない。私が動いたのは、妻に非難が集まるのを避けたかったからだ」
「どういうことだ?」
「勲くんの姉は、つまり私の妻は、難しい病気を抱えていたんだ。神経疾患の一種でね。結婚前から歩くのが困難だった。勲くんはそんな姉を心配していた。いつか姉に効く治療薬を。そんな思いで、彼は医療データ会社に入ったんだ。勲くんが室田に手を貸したのは、そのころ、その治験薬を開発したのと同じ製薬会社が、彼が期待する薬剤の開発に取り掛かるとアナウンスしたからだ。姉に有効かもしれない新薬。その開発の妨げにならないよう、勲くんは室田に協力した」
富樫はなおも話し続ける。
「もちろん愚かしいことだ。事前に相談があれば、止めたんだがね。勲くんから話を聞いたときは、すでに隠ぺい工作がなされ、病院発表もなされた、ずっとあとだった。勲くんの罪が暴かれれば、その動機も明らかにされるだろう。そうすれば妻にも非難が向かう。いや、たとえ非難されなかったとしても、妻は自分を責めただろう。そんな事態は招きたくなかった。」
富樫は厚労省のルートを通じて遺族の父親の会社に圧力をかけたことを認めた。
一方、担当医師の事故については本当に事故だったという。
「他にもずいぶんエグいことをしてくれたよな。あんたの部下の独断か?報告くらいは聞いているんだろ?あの男…」
富樫と視線が合う。その表情に、祐太郎は眉をひそめた。
「え?あんたの部下じゃないのか?」
「ああ、いや…」
「そうか。まだ誰かいるんだな?あの男は、その誰かの命令で動いている」
室田や日下部と同様、目の前の富樫も醜いバケモノには見えない。
祐太郎は、富樫が日下部に書いたメールの文面を思い出した。
「『先生』か。あんたがこの件を相談した『先生』がいるんだったな。誰だ?」
「それは…話せない。その人にも事情があったんだ」
「何だって?」
「その人も家族に病気の人がいた。妻と似た症状でね、歩くことが困難だった。彼も当時アナウンスされた新薬に強い期待を抱いていた。私から相談を受けた彼は、君の両親の訴訟をどうにかしてやめさせようとした。彼にしても苦渋の思いでしたことなんだ。どうか名前は勘弁してほしい」
「その製薬会社が、自分の家族の病気に効く新薬を開発してくれるかもしれない。そんなクソみたいな期待のために、そいつがどれだけひどいことをしたか。そいつのために、俺たち家族は家族である支えを亡くしたんだ。俺たちが弱かった。ああ、そうなんだろう。そうだとしても、そいつだけは絶対に許さない。名前を言えよ。あんたにできるのはそれだけだ」
富樫は目を伏せた。
「病気なのは彼の息子なんだ。親だぞ。なんだってするだろう?それに彼は…もう生きていない」
富樫の言葉を聞いた瞬間、祐太郎はすべてを理解した。強いめまいに襲われる。
「そうか。その先生は医者じゃない。そうか、そういうことか…」
訴訟に関する「先生」。息子は歩行困難な病気。本人は没後。
導かれる答えは、ひとつだった。
ピンポーン。
富樫家のインターホンが鳴った。
訪ねてきたのは警察。誰かが通報したのだ。祐太郎を逮捕させるために。
祐太郎は勝手口から逃げだした。
富樫達彦 → 坂上圭司
祐太郎が『dele.LIFE』の事務所についたのは、夜の十二時近かった。
いつもの場所に圭司がいる。
祐太郎が言いたいことは、すでに察しているようだ。
祐太郎は「まったく気がつかなかった」と苦笑してから、謎解きを始めた。
「室田から削除依頼があったのは、鈴の事故について偽装工作をした証拠となるデータった。ケイはそれを見た。それがバレたら、その偽装工作に携わった人たちが芋づる式に洗い出されてしまう。最終的には、遺族に嫌がらせをして訴訟を諦めさせた、ある弁護士の卑劣な罪も明らかになってしまう。だから、ケイはデータを削除した後、他にまずいデータが残ってないか、事件の関係者が持っているデータをチェックすることにしたんだ。そして、自分の父親にとって不利なものとなるデータを削除した。相和医大付属病院。AMADAメディカルサービス。そこにはどんなデータが残ってたんだ?俺を使って、親父にとって不利なデータを消して回ってたんだろ?」
その行為自体も許しがたいが、なぜそれを遺族である祐太郎に手伝わせたのか?
祐太郎はそのことに怒っていた。
そもそも、祐太郎が『dele.LIFE』で働いていること自体が不自然なのだ。
祐太郎は『dele.LIFE』のカード(名刺)を持っていた。
しかし、それはどう考えても祐太郎のもとにあるべきものではなかった。
最初から全部、圭司が仕組んでいたと考えるのが自然だった。
でも、何のために?
「いや、お前をここに呼び寄せたのは俺じゃない。夏目だよ」
祐太郎の前に『dele.LIFE』で働いていた人物・夏目。
「俺がどう反応するかを見たかったんだろ。夏目はそういう奴だ。俺がそれに気がついたのは、お前から妹さんの写真を見せられたときだ(1巻ラスト)」
本当の謎解きが始まる。
すべてを説明するために、圭司は深く息を吸った。
「父がやったことは、父の死後、パソコンを整理したときに知った。父は裏の仕事を任せていた男に、真柴家の訴訟潰しを命じた。その詳細を、俺は父のパソコンの中に見つけた。愕然としたよ。いつも冷静で、賢く、穏やかで、正しかった父がこんなことをしていたのかと、驚愕した。父が残したデータの中には妹さんの写真があった」
圭司の父はデータの中に「真柴」の名前を記していなかった。だから、圭司は祐太郎の正体に気づけなかった。
「そのデータを全部削除したんだな?」
「ああ」
家族や世間に、父の本当の姿を知られないために。
「そして今回、俺を使って関係各所のシステムに入り、そこにあった不利な情報を削除した。父親が使っていた男に挑発させ、俺が富樫家に行くよう仕向けた。俺が逮捕されれば、すべては終わるはずだった」
「いや、違うな」
圭司は即座に否定した。そもそも圭司と汚れ仕事の男(アイバ)はもう何年も会っていないという。
「俺を止めるより、お前を止めた方が早いと思ったんだろう」
「止める?ケイがやろうとしてること?」
「父が残した不正のデータを見て、俺はとっさにそのデータを削除した。そしてこれだけは、舞と母に知られてはならないと思った。俺はそのために夏目を呼び寄せた」
夏目は圭司の大学の先輩で、クラッキングの天才。
いわば、圭司の師匠のような存在だったらしい。
「夏目は妹さんの治験に関するデータ改ざんの証拠になるようなデータを片っ端から削除していった。夏目の腕があれば難しいことじゃない。その作業を終えた夏目に、俺はもう一つ、別の依頼をした」
「どんな?」
「事件に関わった3人。室田、日下部、富樫の社会的信用を失墜させてほしいと」
目的は父親の不正が世に出にくくするため。社会的地位が落ちれば、世間の関心も薄まる。
室田は病院の情報漏洩事件、日下部は盗撮の疑い、富樫は裏金。
3人は夏目が仕組んだ罠にかかり、それぞれ確かに社会的地位を失っていた。
やがて仕事が終わると、夏目は『dele.LIFE』から去っていった。
かつて、圭司と夏目が何をしたのかはわかった。
だが、そのせいで新たな疑問が生まれた。
「ちょっと待って。今、夏目はケイの父親にとって不利になるデータを削除したって言った?」
「ああ」
「それじゃ、ケイは今回、何をしたんだ?俺を使って、相和医大付属病院に侵入したり、AMADAメディカルサービスのシステムに侵入したりした、あれは何のためだ?親父さんにとって不利なデータを消すためじゃなかったのか?」
坂上圭司 → 真柴祐太郎
「夏目が情報漏洩事件を起こしたせいで、相和医大付属病院は情報セキュリティに異常に気を遣うようになった。AMADAメディカルサービスもそうだ。夏目がクラッキングを仕掛けたことによってセキュリティをさらに強固にし、万全なものにした。おかげで、俺程度の技術では外からシステムに入ることが到底できなくなった。データをいじろうと思えば、内部端末からアクセスして、バックドアをつくるしかない。お前には、そのために動いてもらった」
「それで、何をしたの?」
「室田と日下部は共謀して治験データのすり替えと改ざんを行った。が、その証拠は夏目がすでに消してしまった。だから、俺はその証拠を作り直して、相和医大付属病院とAMADAメディカルサービスのシステムに押し込んだ。元厚生労働審議官とある弁護士とが犯した卑劣な罪を証明するメールデータも作って、ついでに押し込んだ」
「そこにあるデータを消すんじゃなく…作った偽物のデータを入れたのか」
祐太郎は絶句した。
「その後、お前は富樫の家に行く。通報で駆けつけた警察官に逮捕される。お前は何をしに富樫の家に行ったのかを警察で証言する。警察は動かないだろうが、報道されれば、多くの目が富樫に行く。そうなれば、いずれ誰かが証拠を見つける」
「ケイが押し込んだ証拠を」
「ああ。誰も見つけなければ、漏洩させるつもりだった」
事件の証拠隠滅ではなく、その逆。
それが圭司の計画だった。
圭司は引き出しからUSBメモリを取り出し、祐太郎に渡した。
「ここにも、俺が作ったデータが入ってる。テレビ局にでも、新聞社にでも持っていけばいい」
「でも、偽物のデータだ」
「誰が気づく?不正そのものは事実だ。そしてあるべき場所を探せば、そこからきちんとこのデータは出てくる」
「そのために今回の依頼を?じゃあ、室田の依頼って、あれは嘘なんだね?室田は削除依頼なんてしていなかった。ケイがでっち上げたんだ」
「9年前、何が起こったのか。お前には知る権利があった。そしてお前には、関わった人を裁く権利もあった。室田、日下部、富樫、俺の父、そして俺自身。気が済むようにしろ。俺はその裁きをここで待つ。何をされても恨まないよ」
祐太郎はUSBメモリを受け取り、強く握ると、無言のまま事務所を後にした。
どうすればいいのか、わからなかった。
真柴祐太郎 → 真柴鈴
家に帰ると、遥那がクリスマスの飾りつけをしていた。
和室にはとことん似合わない。
その光景を見て、祐太郎は思い出した。
「忘れてたよ。毎年、鈴と遥那はリースをつくってた」
大事な思い出が、消えていく。
覚えていたいとどれだけ強く願っても、忘却を止めることはできない。
なら…
「俺は、どうすればいい?」
いつのまにか祐太郎の目からは涙があふれていた。
独り言ともとれるその言葉に、遥那は答える。
「思い出せばいいんだよ。その時に思い出せる限りを思い出せばいい」
「でも、それじゃ、だんだん欠けていって、徐々に薄れていって、いずれなくなっちゃうんじゃないか?」
「そうなんだろうね」
「それじゃ、悲しいだろ?」
「悲しいよ。とても悲しい」
「じゃあ、どうすればいい?」
「今と同じだよ、祐さん。そういうときに人は、泣けばいいんだと思うよ」
うなだれていた祐太郎の頬に、遥那がそっと頬を寄せた。
自分が求めていたのは、ただこうやって静かに涙を流せる時間だったのかもしれない。
涙をこぼしながら、祐太郎は気持ちが安らいでいくのを感じていた。
結末
翌朝、祐太郎が『dele.LIFE』の事務所に行くと、いつもの場所に圭司がいた。
祐太郎はデスクの前に進み、USBメモリをぱちりと置く。
「返すよ。俺には必要ないみたいだ」
その意味を確かめるように、圭司は問う。
「これを使えば、妹さんの事故の真相を隠そうとした全員の罪を暴くことができる。それがお前の望みだったはずだ」
「そうだね。俺もそう思ってた。でも違った」
「どういうことだ?」
「俺の望みは一つだけ。鈴のことを考えるときには、混じりっけのない感情で鈴のことを思い出したい。それだけだったんだ。誰かを恨んだり、疑ったり、自分を責めたり、恥じたり、そういう感情抜きで、ただ純粋に鈴のことを思い出したい。それができれば、俺はいいんだ」
「本当にいいのか?室田や日下部や富樫や俺の父、そして俺がしたことは許されない行為だ」
「もしケイがそう思うなら、これはケイが使えばいい」
「俺が?」
「メディアに流してもいい。警察に渡してもいい。舞さんとお母さんにだけ見せるっていうなら、それでもいい。誰にも見せず、これは生涯自分の中にしまい込むっていうなら、それも一つの覚悟だと思う。どうすれば、お父さんを思い返すとき、ただ純粋にお父さんを思い出すことができるようになるか、自分で考えなよ。ケイは俺なんかよりずっと頭がいいんだから」
圭司はUSBをじっと見つめて、ぼそりと言った。
「そうか。これは最初から、俺の問題なのか」
何度か頷いた圭司は、USBメモリを手にして、デスクトップパソコンに向かった。
「祐太郎、もう帰っていいぞ」
「え?」
「また連絡する」
それが圭司なりの別れだということに、祐太郎はすぐに気づいた。
「わかった」と答える。別れの言葉は思いつかない。
祐太郎はゆっくりと事務所を、そして圭司の後ろ姿を見渡した。
最初に来た時、この事務所は祐太郎にとって異界で、そこにいるのは孤独な異界の主だった。
今、出ようとしている事務所は、祐太郎にとって心が安らげる場所で、そこにいるのは心を許せる友人だった。
「初めて名前で呼ばれたよ」と祐太郎は言った。
「そうだったかな」と圭司はとぼけた。
祐太郎は振り返り、事務所を出て、ドアを閉めた。
<チェイシング・シャドウズ 完>
エピローグ
9年前の事件は、圭司の手により世間に公開された。
一時はメディアが大きく取り上げたが、時とともに関心は薄れていく。
やがて、世間はその事件のことを忘れ去った。
その日、祐太郎は遥那と一緒に、鈴の墓参りに来ていた。
「それで、祐さんはこれからどうするの?」
「違う仕事をするよ。っていうか、もうしてる」
相変わらず、社会的にはグレーな仕事だった。
「前の仕事は、やっぱり、もうなしなの?」
「そうだね。もう難しいだろうね」
あれから圭司からの連絡はない。やはりあれは別れの言葉だったのだろう。
2人に霊園の清掃員が近づいてきた。
清掃員は花束を供えに来ていた兄は元気か、と祐太郎に問う。
…兄?
「あの、車椅子の」
それは…。
一瞬、息が詰まった。深呼吸してから答える。
「それは、俺の友達です」
『また連絡する』と圭司は言った。
それは別れの言葉ではなく、期限のない約束だったのかもしれない。
いつか遠い未来に、再び圭司と過ごせる日々がやってくる。
そういうことも、あるのかもしれない。
ふと、そう思った。
<dele2(ディーリー2)・完>
まとめ
ドラマとは違う、もう一つの「dele(ディーリー)」
今回は小説「dele」「dele2」のあらすじ・ネタバレをお届けしました!
ドラマとは違う、といってはみたものの、最終話の「チェイシング・シャドウズ」はどう考えても物語のオチですよね。
・祐太郎の妹の死の裏には、病院や厚労省を巻き込んだ隠ぺい工作が隠されていた。
・実はその隠ぺい工作には弁護士だった圭司の父親も加わっていた。
・圭司の父親は悪事をなしたものの、その動機は圭司の両足を治したいからだった。
祐太郎と圭司、2人の過去の因縁が交わるミステリー感あふれる物語。
2人の関係性に心打たれるラストシーンも含めて、最高の結末、最高の物語でした。
…なので、ドラマでこれ以外の結末になったら正直、ビックリです。
どう考えても「dele」本筋のラストはこの小説で描かれているものでしょうから、たぶんドラマでは明確にオチをつけないじゃないかな、と予想。
ドラマの先にある物語として、この小説最終話がある、という立ち位置に収まるのではないかと予想します。
で、ドラマが好調だったら映画化でこの最終話を公開したりして…。
…やばい。ありえる。
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