平山夢明「Diner ダイナー」が映画化!
『主演:藤原竜也 × 監督:蜷川実花』という宣伝文句に惹かれて原作小説を読んでみたのですが、思っていた100倍ヤバかったです。
何がヤバいのかというと、まずはシンプルにグロい!
血が飛び散るとか、手足がもげるとかは可愛いもので、生きたまま○○を○○されて、おまけにそれを食べさせられたりします(伏字内はお察しください)
正直、スプラッタ表現だけで《R-15》どころか《R-20》くらいに規制されていいレベル。
「でも、主演が藤原竜也さんで、ヒロインもいるわけだし……恋愛要素とかもあるんでしょう?」
A:ないです。
藤原竜也さん演じる主人公《ボンベロ》はヒロインである《カナコ》のことを使い捨てのウェイトレスとしか思っていません。
一緒にピンチを乗り越えていくうちに……なんて甘い展開はありません。
なんなら、ボンベロは我が強くて使いにくいカナコのことを積極的に潰そうとしてくるほどです。
「え……じゃあ、ただ血生臭いだけの映画なの?」
A:いいえ、とびっきりの超エンターテイメント作品です!
矛盾するように思われるかもしれませんが、「Diner ダイナー」の面白さは幅広い層におススメできるものです。
派手なアクションあり、泣けるエピソードあり、ヒリヒリする心理駆け引きあり。
そして何より《めちゃくちゃ美味しそうなグルメ》と《最っ高のエンディング》あり!
原作小説を読み終えたときの《満腹感》はちょっと他の作品では味わえないものでした。
というわけで、今回はそんな映画「Diner ダイナー」のあらすじ・ネタバレをお届けします!
予測不可能な結末は、まさかの全滅エンド!?
Contents
「Diner ダイナー」あらすじ
きっかけはお金欲しさに携帯闇サイトのバイトに手を出したことだった。
まさか、その日のうちに拉致・拷問され、最後には山中に生き埋めされることになるなんて、誰が予想できただろう?
重たい土を被せられながら、わたしは生き延びられる方法を急いで考えて、叫んだ。
「あのっ、わたし、料理が得意なんです!」
なんで料理……。
我ながら呆れるしかない命乞いだ。
けれど、なんと結果的にはその一言でわたしは助かることになる。
そうして連れてこられたのは、なぜか飲食店。
どうやらわたしはこの店のオーナーに買われて、ウェイトレスとして働くことになったようだ。
店長のボンベロは言う。
「この店は殺し屋専用の定食屋《ダイナー》だ」
やってくる客はみんな超危険人物ばかり。
これまで在籍していた8人のウェイトレスは、みんな客の気まぐれで潰されたという。
……つまり、わたしはいつ客に消費されるかわからない使い捨ての9人目。
命、全然助かっていなかった。
※定食屋《ダイナー》……定食屋と書くと「から揚げ定食」とか出てきそうな感じですが、アメリカの定食屋《ダイナー》はハンバーガーがメイン。画像検索すると美味しそうなハンバーガーやTHE・アメリカな店の内装が見つかります。
あらすじの補足&この後の物語
というわけで、定食屋「キャンティーン」で働くことになったヒロイン《オオバカナコ》(=大馬鹿な子)
「このままじゃヤバイ!」ということで、人質をとることで延命を図ります。
具体的には、オーナーが大切にしている1億5千万円相当の《ディーヴァ・ウォッカ》を店の中に隠して「わたしが死んだら二度と見つからないわよ!」とボンベロを脅しました。
この後、カナコは何度もピンチに陥るのですが、この脅しのおかげで命拾いしていきます。
さて、ちょっと話は変わりますが、映画の原作小説「Diner ダイナー」は連作短編集のような構成になっています。
6つのメインエピソードにプロローグとエピローグを加えた全8章構成。
それぞれの章でちょっとした(?)事件が起こっては解決していくのですが、同時に章が進んでいくにつれて少しずつ《主軸の物語》も明らかになっていきます。
章の進行とともに明らかになっていくのは、たとえばこんな情報たち。
1.店長のボンベロもまた元殺し屋であり、オーナーの《コフィ》に忠誠を誓っている。
2.《組織》には6人の長が存在する。コフィも長の1人である。
3.組織にはかつて《デルモニコ》という偉大な指導者がいた。コフィはデルモニコの甥(おい)であり、デルモニコ亡き後、そのすべてを受け継いだ。
4.もともとボンベロが忠誠を誓っていたのはデルモニコだった。デルモニコ亡き後、ボンベロは遺産の一部としてコフィに継がれた。
5.組織の長たちはデルモニコは暗殺されたと信じていて、今でも犯人捜しを続けている。
6.証拠が指し示すデルモニコ暗殺の犯人は……コフィ。
う~ん、きな臭くなってきましたね!(笑)
物語の本である《コフィの裏切り疑惑》は最終章の大事件へとつながっていきます。
「Diner ダイナー」ネタバレ
結末はまさかの全滅エンド!?
結論からいえば、デルモニコを暗殺したのはやっぱりコフィでした。
組織内の調査により犯行がバレたコフィは、あっさりと始末されてしまいます。
こうなるとコフィの身内も同罪であの世行き、というのが裏社会のルール。
ところが、ボンベロはこれまでの働きを認められて追放処分で許されることになりました。
「ボンベロ、長老たちはおまえの忠誠を評価している。ゆえにおまえは殺さず、追放処分とする。ただし、二度とこの世界に近づいてはならんし、この町に現れてもならん。お前はたった今、この時点から一般市民として普通に暮らして死ぬのだ」
ただし、定食屋「キャンティーン」は閉店。
そして、カナコは始末されることに。
これまでの物語の中で「カナコは生かしておく」と決めていたボンベロですが、さすがに組織の決定に逆らうことはできません。
カナコは袋を被せられ、男たちに連れていかれるのでした……。
「さよなら、ボンベロ、さよなら。……いろいろ、ありがと」
ところが、地下の「キャンティーン」から運び出される途中で、カナコは何者かに強奪され、再び店内へと連れ戻されます。
頭の袋をとられたカナコが目にしたのは、怒った表情のボンベロでした。
「ありがとうってなんだ! ありがとうなんて言われることは、ひとつもしてない! 俺は、ありがとうって言われるのが大っ嫌いなんだ!」
こんなことを言いながらも、ボンベロは組織を敵に回してまでカナコを助けることを選んだんですよね。
で、その後はまさにクライマックスという言葉がピッタリな大乱戦!
これまで登場した客という客が、全員敵に回ります!
ボンベロはすべてにおいて圧倒的に不利な状況の中、「キャンティーン」を舞台にバッタバッタと容赦なく敵を片付けていきます。
ただ、ちょっとやりすぎて長の1人である無礼図《ブレイズ》まで手にかけてしまったことで、いよいよ交渉による解決は不可能に。
どちらかが全滅するまで終わらない泥沼の銃撃戦。
どう考えても大怪我を負っているボンベロが無尽蔵に突入してくる組織の連中に勝てるわけがありません。
つまり、全滅するのは確実にボンベロとカナコの方……。
そんな切迫した状況の中、ボンベロはカナコに「料理をしろ」と命じます。
「おまえは料理が上手いということで俺は買った。だが、俺はそれを確認していない。雇った以上、お前にその価値があったと確認する義務が俺にはある」
その一言には数え切れないほどの意味が込められていました。
カナコを戦場から遠ざけたいという意図。
自分以外には絶対に調理場で料理させなかったボンベロが料理を他人に任せるという信頼。
そして、最後にカナコの料理を食べてみたいという純粋な願い。
そうして、カナコがつくったのはホワイトソースを使ったハンバーガー。
名づけて『Bombero’s Back(ボンベロの背中)』
あちこち焦げ目のついたボンベロの後ろ姿から連想した一品。
ボンベロは一口食べると次のように評しました。
「悪くない。が……次はもっと旨く焼け」
最終局面。
銃弾の嵐の中、ボンベロは店の隠し通路からカナコを脱出させます。
「これは古い排気口で数ブロック先まで続いている。行き止まりに梯子がある。早く行け」
「ボンベロは?」
「俺はここを通れない」
「いやだ!」
「だめだ! 行け」
「やだよ、一緒にいるよ」
「無駄死にするな。何のために俺が……」
「勝手だよ! 勝手すぎるよ!」
カナコを黙らせるように、ボンベロはいきなり自分の右目に指を入れ、義眼を掴みだしました。
「中に口座と暗証番号を書いたものが入っている。店でも開け。必ず喰いに行く」
そしてボンベロはカナコを無理やり押し込むと、捨て台詞を残して扉を閉めたのでした。
「面白かったぜ! オオバカナコ」
やがて激しい爆発音が建物全体を揺らし、あたりは静かになりました。
エピローグ
わたしがドライバー向けのダイナーを始めて1年が過ぎようとしていた。
わたしは毎日、夜明け間際に起きる。
夜明け前の静かな道路の彼方から、今にもひとりの男が来るような気がしてならない。
キャンティーンのあった建物は半ば倒壊してしまったとニュースでやっていた。
史上最悪の抗争事件と報じられ、組織はほぼ壊滅状態になったらしいなどという続報もあった。
死傷したなかにボンベロらしき者は含まれていなかった。
ボンベロは愚か者ではない。
あの時、きっと勝ち目があって勝負に出たんだ。
わたしはあの店で変わった。
それが良かったのか答えは出ていないけれど、前より獰猛になれたことは気に入っている。
人は自分に合った靴を履くべきだと思う。
押しつけられた靴ではなく、自分で探して納得した靴を。
そうすれば驚くほど遠くまで歩くことができる。
ボンベロは来る。
なぜなら、あの人の靴はわたしなんかよりずっとタフで頑丈だから……。
<Diner ダイナー・完>
感想
というわけで、カナコは生存、ボンベロは生死不明という結末でした。
現在連載されている続編「ダイナー2」でもボンベロはまだ行方不明のまま。
ただ、展開的に『生きている』と解釈してもよさそうです。
映画がヒットすれば続編の方も映画化されるかもしれませんね。
さて、話を戻して今回映画化される1作目の「ダイナー」について。
率直に感想を述べるなら「面白かった!」の一言に尽きます。
正直、最初は「なんか中二病っぽい?」とか「グロい描写ばっかりなのかな?」とか思っていたのですが、実際に読んでみるとそれだけじゃなくて《いろんなエンタメ》が織り込まれている欲張りな作品だということがわかりました。
確かに全体的にダークな雰囲気が漂う作品ではあるのですが、その中でも笑えるところ、泣けるところ、感動するところがしっかりあるんですよね。
しかも、それらのシーンが休む間もなく連続して続いていくので、読んでいる方の心境はジェットコースター状態!
気がつけばラストのアツい展開に突入していて、「それは反則だろ!」というボンベロの笑顔とセリフの余韻を味わう暇もなく、物語は終わりを迎えていました。
ご都合主義すぎない、ちょうどいい塩梅のエピローグを読みながら思い返してみると「Diner ダイナー」には……
- 命をかけた心理駆け引きあり
- 切ない恋の物語あり
- 派手なアクションあり
- 反吐が出るような下衆な敵がぶっ飛ばされるカタルシスあり
- etc……
たぶん、どんな趣味嗜好の人でも絶対に1つは「いいじゃん!」と引っかかるところがあるんじゃないかな、と思われます。
省略しちゃった重要ポイントをちょっとだけ解説
★オオバカナコの秘密
序盤から伏線があったカナコの秘密。
その正体は「自分の子どもの命を奪った過去がある」ということ。
カナコは結婚して子供が生まれたあとも、赤ん坊を放っておいて夜遊びを続けていました。
で、ある朝、目覚めてみると自分の体の下で赤ん坊が冷たくなっていたんです。
授乳中に寝落ちしてしまって、赤ん坊を押しつぶした状態になってしまっていたんですね。
その後、カナコはバツイチとなり、生活も自暴自棄に……。
カナコが裏社会の《奈落》に落ちてきたのは、そういう背景があったからなのでした。
結果的にいえば、カナコはボンベロと出会い、キャンティーンでの日々を生き抜いた経験のおかげで、新たな人生の一歩を踏み出すことができました。
「ダイナー」はカナコが生まれ変わり、立ち直るための物語だった……というのは言いすぎでしょうか。
★定食屋「キャンティーン」の成り立ちとボンベロの立ち位置
そもそもキャンティーンはデルモニコが有能な殺し屋たちを長生きさせるために考え出した場所です。
というのも、殺し屋はどんなに優秀でも、最後は精神的におかしくなって命を落としてしまうもの。
そこでデルモニコは彼らにはリラックスできる場所が必要だと考えました。
《定食屋があるかないか》なんてささいな違いだと思われるかもしれませんが、実際、「キャンティーン」は彼らの癒しや生きがいとして機能していました。
たとえば客の1人である《スキン》はボンベロが母親の味そっくりにつくってくれる《蜂蜜のスフレ》を食べるために生きていましたし。
そんなわけで「キャンティーン」は組織の中でも不可侵の領域として守られていた特殊な場所だったんです。
また、「キャンティーン」は客だけではなくボンベロにとっても大切な場所でした。
というのも、殺し屋には足を洗うことなんて許されていません。
仕事ができなくなったり、仕事が嫌になっても、続けていくしかないんです。
さもなければ、組織によって消されるだけ。
そんな中、汚れ仕事にうんざりしてたボンベロは「キャンティーン」の店長という特殊な立ち位置に収まることで珍しい《元・殺し屋》になることができました。
そうした経緯があったから、そしてデルモニコの恩義に報いるためにも、ボンベロは「キャンティーン」を何より大切に思っていたんですね。
※最後にボンベロが組織に反抗したのは、閉店が決定し、そうしたしがらみの一切から解放されたからでもあるのでしょう。
まとめ
今回は小説「Diner ダイナー」のあらすじやネタバレをお届けしました!
「まともな登場人物、ゼロ人!」という設定の中、繰り広げられるのはドキドキする駆け引きに、思わぬ裏切りや協力、そしてド派手なドンパチ!
漫画版の掲載誌が「週刊ヤングジャンプ」だということに納得しかない極彩色の総合エンタメには「おもしろい!」の一言しか出てきません!
ずーーーっとカナコにそっけなくしていたボンベロがラストにとった行動には、「そう! これが見たかったんだよ!」と絶賛の嵐!(私の中で)
「そうそう、それなんだよ!」というツボを外さない結末には大満足でした!
藤原竜也さんが主演ということで、なんだか頭使いそうな難しい映画だと思われるかもしれませんが、実際には頭空っぽにして楽しめる作品なので、ぜひ騙されたと思って見てみてください!(ただし、血の描写ダメな方には非推奨)
映画『Diner ダイナー』の配信は?
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すみません、最後の方のシーンにカナコを逃がす、とか色々ありますが、レオンがDEAオフィサーに(ゲイリーオールドマン演じるスタンスフィールド)住居まで攻め入られて、少女マチルダを通気口のようなところで逃がすシーンに、セリフも状況も酷似していますが……。製作者サイドがこの有名な映画を知らないはずはないですよね。何故ぱくったんですかね、オマージュって感じでもないですし。::::