映画『HUMAN LOST』を見たら、次は太宰治『人間失格』が気になりますよね!
私は太宰治『人間失格』を読んだことがなかったので、『HUMAN LOST』の小説版(ノベライズ)を読んですぐに調べました!
すると……
- 登場人物
- 作中の出来事
- セリフ
「お、コレは!」という共通点がたくさん見つかりました!
というわけで!
今回はかんたんに
- 映画『HUMAN LOST』と太宰治『人間失格』を比べてみると?
- 太宰治『人間失格』ってどんな小説なの?
- 『人間失格』は太宰治の人生とそっくり!
などのポイントについて、まとめていきたいと思います!
映画『HUMAN LOST』と太宰治『人間失格』の比較
まずは登場人物から!
基本的に『HUMAN LOST』の登場人物は太宰治『人間失格』とリンクしています。
小説『人間失格』における各登場人物はこんな感じ。
大庭葉蔵
主人公。超イケメンのメンヘラ。
自殺しようとしたり、心中しようとしたり、お薬飲んだり打ったりする。
最終的には虚ろに日々を過ごすだけの廃人のようになってバッドエンド。
その後の葉蔵の行方は誰も知らない……。
※ちなみに葉蔵は画家志望でした。
ヨシ子
純粋無垢な心の持ち主。葉蔵と結婚する(正確には内縁の妻)
しかし、人を疑わない性格が災いし、出入りの商人に犯されてしまう。
その恐怖体験から葉蔵をも怖がるようになってしまう。
※終盤の葉蔵が自己破滅的な行動をとるようになる理由がコレ。ちなみに『HUMAN LOST』での表記は「美子」
堀木正雄
高等学校時代の葉蔵が画塾で出会う年上の悪友。
葉蔵に酒、たばこ、女遊び、左翼思想などを教える。
葉蔵が人生を踏み外すきっかけになった人物。
※反体制派という点でシェルを潰そうとする『HUMAN LOST』の堀木と共通していますね。
竹一
葉蔵の中学時代の同級生。
葉蔵の『道化』を見抜いた(※後述)
葉蔵のことを「偉い絵描きになる」と予言した。
顔がむくれていて、貧弱な体格。
キーワード『道化』
『人間失格』の主人公・葉蔵は子どものころから他人の心がわからないという不安(恐怖)をかかえていました。そこで葉蔵は道化のようにおどけて他人を笑わせることで不安をごまかすと同時に、そんな自分の欠陥を見抜かれまいとします。
両親でさえ見抜けなかった葉蔵の『演技』をはじめて見抜いたのが、中学の同級生の竹一でした。そのときの葉蔵の恐怖はすさまじく、竹一と親友になることでなんとか不安をごまかしたのでした。
渋田(ヒラメ)
葉蔵の父親の太鼓持ち。
ずんぐりむっくりでずる賢い。
外見から鮃(ひらめ)とあだ名される。
葉蔵の身元引受人。
マダム
バアの女主人。行くあてのない葉蔵を温かく迎え入れた。
※『HUMAN LOST』マリアの元ネタ
ツネ子
カフェの女給。葉蔵と入水心中して亡くなる。
※『HUMAN LOST』での表記は「恒子」 ロストしてバアを破壊した人ですね。
あのシーンは『人間失格』のあの場面?
もちろん『HUMAN LOST』と『人間失格』の共通点はキャラクター名だけではありません。
作中には「人間失格を意識してるんだろうな」と想像できる場面がちょくちょく見受けられました。
わたしが「これはたぶんそうかな?」と思ったシーンはこちら!
※ストーリー順になってます。
葉蔵が堀木から渡されたクスリでロストする
『人間失格』において、堀木は葉蔵に酒やたばこなどの不良行為を教えていました。
やがて葉蔵は酒とクスリで身を持ち崩し、身内から脳病院(≒精神病院)に入れられたことで「自分は人間として失格なのだ」と悟るのですが、そこに至る道の最初の一歩は堀木の先導によって踏み出したものだといえるでしょう。
『HUMAN LOST』においては「ロスト = 人間失格」なので、
(間接的にせよ)『堀木のせいで葉蔵は人間を失格した』というのは共通点であるように思われます。
また、葉蔵が堀木の『崩壊曲線の未来』を一瞬でも正しいと信じたのは、原作でいう『堀木の左翼思想に染まった』の部分に相当しそうですね。
3人のアプリカント能力
『HUMAN LOST』における3人のアプリカント能力は
- 葉蔵……ロスト体から人間に戻る
- 美子……ロスト現象を抑える
- 堀木……ロスト体を操る
でした。
葉蔵の復活能力は心中に失敗して生き残った(冥府から戻ってきた)エピソードが元ネタっぽいですね。
原作のヨシ子は葉蔵に「酒をやめろ」と言い、結婚することで葉蔵にひとときの幸福をもたらします。これがロスト現象を抑える能力になったのかな。
堀木は前述したので割愛。
『アプリカント』ってどういう意味?
気になったのでググってみました。
[applicant]志願者.申込者.
熟語として
- successful applicant 合格者
- unsuccessful applicant 不合格者
という意味がありました。
単にアプリカントという表現をしているので、合格か失格かまだわからない志願者……といった意味で使われてるのかな?
恒子のロスト
『HUMAN LOST』では堀木のアンチGRMP薬によって恒子がロストし、暴走した葉蔵のロスト体に引きちぎられていました。
この場面は『人間失格』における葉蔵とツネ子の心中未遂を彷彿とさせますね。
葉蔵はカフェの女給だったツネ子と入水心中を試みますが、ひとりだけ生き残ってしまいます。
恒子と同じようにロストしながらも、アプリカント能力によって人間に戻った『HUMAN LOST』の葉蔵となんだか似ていますね。
葉蔵は再生曲線のビジョンを見て、美子を信じると決意する
この場面の『HUMAN LOST』小説版の記述がこちら。
美子の見せてくれたビジョンの美しさを、葉蔵は忘れない。(略)
「おれは彼女を信じるよ、正雄」(略)
はしめて、生きる意味が見つかった。(略)
美子の指が葉蔵の指に絡まり、葉蔵はそれに応えた。
ここは『人間失格』でいうと葉蔵がヨシ子と結婚(同棲)したあたりではないでしょうか。
葉蔵の人生の中で、唯一幸福に満ちていた短い期間が始まります。
美子が葉蔵の身代わりになる
『HUMAN LOST』では本当に衝撃的なシーンでした。
美子を失って絶望した葉蔵は、自らの心臓をデバイスソードで貫き『鬼』になります。
この場面は『人間失格』でいうとヨシ子が商人に犯されてしまうところでしょう。
これによりヨシ子は生来の純粋さを失い、夫である葉蔵さえ怖がるようになってしまいます。
葉蔵はこれに深く絶望し、酒に溺れ、最後には睡眠薬を大量に飲んで自殺までしようとしました(未遂)
葉蔵の「デバイスソードで自らの心臓を貫く」という行為は、絶望から大量服薬した『人間失格』の葉蔵の姿と重なりますね。
「恥の多い生涯を送って来ました」
『HUMAN LOST』の最後をしめくくるこのフレーズは、言わずと知れた『人間失格』を代表する一文ですね。
私はてっきりこのフレーズが『人間失格』の書き出しだと思っていたのですが、正しくは『第一の手記』(≒第一章)の書き出しでした。
※ちなみに『人間失格』の書き出しは「私は、その男の写真を三葉、見たことがある」
このように『HUMAN LOST』と『人間失格』には多くの共通点が見つけられましたが、ラストの展開はかなり違いますね。
『HUMAN LOST』では葉蔵が美子の信じた世界を実現するため、ヒラメの一員となって戦っています。
一方、『人間失格』のラストには1ミリも前向きな要素がありません。廃人同然になって無為に生きているだけの状態です。
原作をそのまま踏襲するとめちゃくちゃ後味の悪い結末になっていたでしょうから、『HUMAN LOST』のオリジナルなラストはよかったと思います。
太宰治と『人間失格』
『人間失格』はフィクションですが、その内容は太宰治の人生と重なる部分が多く、自伝的な小説であるとも言われています。
実際、太宰治の人柄は
- 女関係にだらしない
- 酒や薬に手を出しまくる
- 何度も自殺しようとしたり心中しようとしたりする
というもので、
「葉蔵ってつまり太宰のことだよね?」
と誰もが思うほど葉蔵と同じような人生を送っています。
同じように『人間失格』の登場人物にも実在のモデルがいて、堀木正雄のモデルは親友の山岸外史ですし、ヨシ子のモデルは初代という太宰が愛した女性です。
どこまでが実体験でどこからがフィクションなのか? と太宰治の人生と『人間失格』を比べてみるとすごくおもしろいので、おすすめです(飛ぶように時間が過ぎていくので注意!)
太宰治と5人の女性
太宰治の人生のなかで、わたしが特に興味を持ったのはズバリ女性関係です。
『人間失格』を読み解くうえでもポイントになる部分なので、かんたんに紹介してみます。
小山初代
芸妓。10代の太宰が出会い、実家から反対されても結婚を決めた女性。
『人間失格』においては煙草屋の娘であるヨシ子のモデル。
太宰の親類と密通し、太宰を絶望させた(ここも『人間失格』と似てますね)
のちに太宰と心中しようとするも、両者とも生き残ったので離別した(1937年。太宰当時28歳)
田部シメ子
カフェの女給。太宰と心中し、亡くなった(1930年。太宰当時21歳。太宰は生き残った)
『人間失格』においては葉蔵と心中したカフェの女給・ツネ子のモデル(作中でも葉蔵だけ生還)
(旧姓:石原)
津島美知子太宰治(本名は津島修治)の妻。
※1939年結婚。太宰当時30歳
太宰は遺書に「(美知子のことを)誰よりも愛していました」と書いている。
太田静子
歌人。太宰の愛人。太宰に小説『斜陽』の材料となる日記を提供した。
太宰との間に子ども(太田治子)をもうける(1947年。太宰当時38歳)
『人間失格』においては家出した葉蔵を家に住まわせ、漫画家の仕事を薦めた雑誌記者・シヅ子のモデル。
山崎富栄
太宰の愛人。太宰と入水心中した(1948年。太宰治38歳で死去)
現場には激しく抵抗した痕跡が残っており、実行直前になって太宰が生への執着から抵抗したのでは、とも考えられている。
太宰治の遺体が発見された6月19日は太宰の短編小説のタイトルから『桜桃忌』と名づけられています。
『人間失格』は太宰治の完結作としては最後の作品でした。
なお未完の遺作『グッドバイ』は大泉洋主演で映画化が決定。2020年2月14日公開予定。
まとめ
今回は映画『HUMAN LOST』と太宰治『人間失格』を比べて考察してみました。
では、最後にまとめです。
- 映画『HUMAN LOST』は小説『人間失格』の登場人物やストーリーを踏襲している。
- ただし、結末はオリジナル色が強い。
- 『人間失格』や太宰治の知識があれば、映画『HUMAN LOST』を120%楽しめる!
わたしは「太宰治……文豪ストレイドッグスのは知ってるよ?」くらいの知識しかなかったのですが、今回あらためて太宰治と『人間失格』について調べてみてとても楽しかったです!
交友関係とか調べだしたら止まらないですねコレ(笑)
今回の記事内容ではかんたんな部分にしか触れていないので、
- もっと詳しく知りたいこと
- わからなったことや疑問点
- 映画『HUMAN LOST』の考察
など、気になることがあれば、ぜひコメント欄で教えてください!
映画『HUMAN LOST』情報
まず目を引かれるのは声優キャスト!
- 大庭葉藏……宮野真守
- 柊美子……花澤香菜
- 堀木正雄……櫻井孝宏
- 竹一……福山潤
- 厚木……小山力也
- マダム……沢城みゆき
「1つの作品でこんなに主役級の人気声優がそろうことあるの!?」ってくらい豪華ですよね!
これだけでも「見なきゃ!」って感じですが、実は制作陣もすごいんです。
- スーパーバイザー……本広克行(「PSYCHO-PASS サイコパス」の総監督)
- ストーリー原案・脚本……冲方丁(小説「十二人の死にたい子どもたち」など)
第一報でこのメンバーを見たときは、
「この人たちが近未来SFで『人間失格』をリメイクするの!? 見なきゃじゃん!」
と思わずテンションがあがりました(笑)
正直、ショッキングなシーンもあるので
「老若男女におすすめ!」
とは言えませんが、
- PSYCHO-PASS サイコパス
- 十二人の死にたい子どもたち
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