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有川浩「旅猫リポート」のあらすじとネタバレ!感動の結末や感想は?

   

こんにちは、若竹です。

有川浩「旅猫リポート」が映画化!

福士蒼汰さんが主役を務めるということで話題になっていますね。

有川浩ファンの私としては嬉しいところなのですが、うっかり「旅猫リポート」は未読だったため、この機会に小説「旅猫リポート」を読んでみました。

その結果は…号泣(笑)

ある種「ベタ」な展開ではあるものの、有川浩さんの手によるものなので「ありきたりだな」などとは1ミリも感じません。

そして予感していたはずの結末には、ただただ感動していました。

というわけで今回は、そんな小説「旅猫リポート」のあらすじとネタバレです!

猫と旅する主人公が抱えた秘密とは?

映画化でも必見の感動のラストとは!?

 

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有川浩「旅猫リポート」のあらすじとネタバレ!

猫はおおよそ生後1年で20歳相当の成猫になる。

その野良猫が宮脇悟と出会ったのは、ちょうどその頃だった。

悟は人間にしては猫の気持ちをよく察する青年で、気位の高いその野良猫も悟にだけは少しだけ気を許していた。

だから運悪く車にひかれ足を折ってしまった時、野良猫はとっさに悟に助けを求めたのだ。

『い・たーーーーーーーい!』

マンションの階段を誰かが降りてくる。

悟「やっぱりお前か。すごい切羽詰まって呼ぶから目が覚めたんだ。…呼んでたよな、俺のこと」

猫『呼んだ呼んだ超呼んだ。若干遅いよお前』

悟「えらかったな、俺を思い出して」

猫は動物病院に運ばれ、悟の家で療養した。

そして猫はそのまま、悟の猫になった。

カギしっぽのカタチが数字の7に似ているから、名前は「ナナ」

オスなのに女の子っぽい名前だと猫は抗議したが、決定は覆らない。

悟はナナを連れてペット可の家に引っ越し、それから悟のナナの生活が始まった。

悟はナナのルームメイトとして申し分ない人間だったし、ナナも悟のルームメイトとして申し分のない猫だった。

 

ナナ(僕たちは本当に上手くやってきたんだ、この5年間)

ナナは猫としてすっかり壮年になり、悟は30を少し超えた。

悟「ナナ、ごめんな。お前を手放すつもりはなかったんだけど」

ナナ『いいよいいよ、気にすんなよ。僕は物の道理の分かった猫だよ』

1人と1匹は、銀色のワゴンに乗り込む。

悟がナナを手放すための旅が始まる。

 

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レポート1:コースケ

澤田幸介は悟の小学校時代の同級生。

そして、ナナを引き取ってもいいと連絡した1人目の候補者でもある。

悟「今日、奥さんは?」

幸介「ちょっと実家に帰っちゃってて…」

幸介は現在、父親から継いだ写真館を経営中だが、その父親の無神経さが頭痛の種。

ことあるごとに経営に口を出し、あげく流産した妻にひどい言葉を投げかけた父親のせいで、幸介は奥さんに逃げられかけていた。

幸介としては、猫好きな妻のためにもナナを引き取りたいということらしい。

幸介「それにしても写真見て驚いたよ、ハチに瓜二つだな」

悟「俺も初めて見かけたときびっくりしたよ。一瞬ハチかと思った」

幸介「何か、時間ってあっという間だな。幸介と一緒にハチ拾ったの、昨日のことみたいなのにな。覚えてる?」

 

【回想】

小学校時代、悟と幸介は同じスイミングスクールに通う友達同士だった。

4年生の時、2人は捨てられている子猫を見つけて夢中になる。

まずは幸介が家で飼ってもいいか両親に聞いてみることになったのだが…

「駄目だ駄目だ、猫なんか!」

父親が強硬に反対し、話にならなかった。

仕方なく幸介は悟の家に子猫を持って行くことに。

幸介「猫、お父さんが駄目だって…」

悟「任せて、僕にいい考えがあるから!」

そういうと悟はスポーツバッグを肩にかけてきて、出がけに母親に宣言した。

悟「僕、幸ちゃんと家出してくるから!」

「はァ!?」

こうして、町内を騒がせる家出騒動が始まった。

悟としては本で読んだ物語を思い出し、家出まですれば幸介の両親も猫を飼うことを許すだろうという計算だったらしい。

しかし、もちろん現実はそううまくいかない。

2人の居場所はすぐに両親にバレた。

そして悟と幸介は大人たちに追いかけまわされながら、ついに学校の屋上にまで追い詰められてしまった。

悟「来るなーーー!来たら飛び降りるぞーーーー!」

ザワッ

悟「って幸ちゃんが言ってまーーーす!」

幸介「ええ!?」

悟「幸ちゃん、ちょっと軽めに柵を乗り越えてくれる?」

幸介「無理だよ!ていうか勝手に僕の命を賭けないでくれる!?」

悟「だって幸ちゃん、猫飼いたいんだろ!?」

幸介「そりゃ飼いたかったけど…。ていうか、まず悟んちで飼えないかどうか頼んでくれてもいいんじゃないの!?」

悟「え!?僕が猫もらってよかったの!?」

こうして一夜の家で劇は幕を閉じ、ハチと名付けられることになる子猫は悟の家で飼われることになった。

もちろん、2人とも大人たちからこっぴどく怒られたのは言うまでもない。

 

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それから2年後。

小学校6年生の時に、悟の両親が亡くなった。

悟は年若い叔母さんに引き取られることになり、可愛がっていたハチも遠い親戚が引き取ることに。

幸介は落ち込む悟のためにも、ハチを引き取りたいと申し出たが…

「駄目だ駄目だ、猫なんか!」

小学生だった幸介には、父親の決定を覆すだけの力はなかった。

幸介「ごめん…お父さんが駄目だって」

一番の親友の力になれなくて、父親のことが悔しくて、幸介は泣いた。

悟「いいよ。幸ちゃんが頼んでみるって言ってくれて嬉しかった」

悟はそう言って泣き笑いの顔になった。

そして、引っ越していった。

【回想終わり】

 

ナナ『猫を引き取ったら、猫好きの奥さんが戻ってきてくれないかな…なんてへなちょこの男にもらわれるなんて、猫の尊厳にかけて断固としてNOだ!』

幸介の家についてからというもの、ナナは一向にゲージから出てこない。

悟「ちょっと無理そうだね…。あのさ、幸介は、猫を飼うなら奥さんと新しい猫を探した方がいいんじゃないかな」

幸介「え、どういうこと」

悟「俺の猫を引き取ったら、お父さんにハチのことを当てつけてるみたいじゃないか」

幸介「…」

悟「幸介と奥さんが飼う猫は、何の事情も引きずってないまっさらな猫の方がいいと思うんだ」

幸介は返事をしなかったが、もうわかった顔をしていた。

 

悟は幸介に礼を言って、澤田写真館を後にする。

悟「幸介にはお前じゃない方がいいと思ったんだ。でも、絶対信頼できるもらい手を探すから」

ナナ『いいっていいって。そもそもこっちは頼んでないんだから』

ナナ『さあ、このワゴンに乗って、君が次に僕を連れていくのは誰のところだい?』

 

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レポート2:ヨシミネ

2人目の候補者・吉峯大吾は悟の中学校時代の同級生だ。

吉峯自身は別に猫好きというわけではなかったが、農家としてネズミ狩りのできる猫は重宝するという。

その点、以前拾ってきた子猫は狩りの本能が薄いらしく、使い物にならないと吉峯は嘆く。

悟「じゃあ、元気になったことだしもう1回捨ててくるか?」

吉峯は仏頂面で横を向く。吉峯はマイペースで朴訥とした男だが、根は優しいのだ。

 

【回想】

教師「吉峯くんはご両親のお仕事がとても忙しいので、おばあちゃんのおうちに下宿するために東京から転校してきました。ご両親のために寂しいのを我慢できる吉峯くんはえらいですね。みんな仲良くしてあげましょう」

吉峯「あの、なんで先生が俺んちの事情、勝手に言うんですか?気まずいですけど。家のこととか関係なく接してほしいです」

教室はしんと静まりかえっていた。初手から引かせてしまったらしい。

教師「先生、吉峯くんが寂しくないようにと思って…」

吉峯「俺の席どこですか?」

若い教師はわっと泣き出し、外に駆けていく。結局、席はわからないままだ。

「空いてる席、座りなよ」

そう言って声をかけてきた悟もまた、同じく家庭の事情を「配慮」された口らしい。

こうして、2人はすぐに友人になった。

悟は吉峯と園芸部を復活させ、吉峯の祖母の家にも頻繁に遊びに行くようになった。

 

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そして夏休み。

吉峯の両親がついに離婚することになった。

「お父さんのところとお母さんのところ、どっちに来たい?」

そう言う両親の目には、できることなら相手側を選んでくれたらいいのに、といううっすらとした期待の色が浮かんでいる。

親にそんな視線を向けられたこと、また、自分が親をつなぎとめる存在になれなかったこと。

傷ついた吉峯の心に、悟が寄り添う。

吉峯「親の離婚なんてよくある話だもんな。宮脇なんてもっと大変だもんな」

悟「人と比べるもんじゃないだろ、そういうの。吉峯はかわいそうだと思うよ」

吉峯「でも俺はばあちゃんもいるしさ」

悟「でも俺は両親に一回もめんどくさがられなかったよ」

それ以上は、言葉が出てこない。

吉峯(ああ、俺はかわいそうなんだ)

吉峯は、離婚の話を聞いてから初めて泣いた。

 

だから、あの事件のときのアレは吉峯からの恩返しだったのかもしれない。

悟「今から小倉に行けないかなって思って」

修学旅行で来ていた福岡から近いとはいえ、普通に考えれば団体行動中にそんな勝手は許されない。

それでも悟は、小倉の親戚に預けられたハチの様子を見に行きたかったのだ。

吉峯「そんなに会いたいのか、その猫に」

悟「家族だったんだ」

吉峯「…行こうぜ」

2人は夜のホテルから脱走したが、あえなく駅に先回りされ捕まってしまう。

教師たちから説教をくらうなか、吉峯は身を挺して悟をかばった。

吉峯「俺、離婚した両親と天神の屋台でラーメン食べたことがあるんです。近くまで来たら両親のこと思い出してつい懐かしくなっちゃって…。そしたら宮脇がつきあってくれたんです」

 

もちろんこれは嘘だ。

悟「吉峯…」

吉峯「もういいんだ」

吉峯(いいから黙ってろ、世界でただ1匹の猫を安い同情のおかずにされたくなかったら)

案の定、教師たちの追求の声は止まった。

罰も軽いもので済んだ。

【回想終わり】

 

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翌朝。

悟と吉峯は、吉峯の祖母の墓参りに出かけて行った。

その間にナナは、吉峯が拾ってきた茶トラの子猫に狩りと喧嘩の作法を伝授する。

ナナ『よしよし、上出来だ。僕が怒った顔をしたらすかさずファイティングポーズだ。ヨシミネを感心させてやれ。いいか、僕らが帰るまで続けるんだぞ。気を抜くな』

茶トラの気合は充分。そこへ悟と吉峯が帰ってきた。

すかさずナナと茶トラは一触即発の空気をつくり出す。

悟「あれー!?昨日はけっこう仲良くしてたのに。どうしたんだよ、急に」

悟はいろいろ手を尽くすが、茶トラとナナはいつまでたってもケンカ腰(のふり)のまま。

悟「残念だけど、相性合わないままだったら、両方にかわいそうなことになるから…」

吉峯「そうか…残念だな、いい猫なのに」

ナナ『ヨシミネ、お前のことは嫌いじゃないけど悪く思うなよ。僕はまだまだあの銀色のワゴンから降りるつもりはないんだ』

悟「残念だよ、ほんと」

吉峯「そう言いながらちょっと嬉しそうだぞ、お前」

悟「そりゃあまあ…ナナと離れがたいのも事実だし」

悟とナナは吉峯の家を後にする。

 

ナナ『ねえサトル。旅が始まってからサトルの育った町を2つ見た。農村を見た。海を見た。これから僕たち、この旅が終わるまでにどんな景色を一緒に見られるんだろうね』

 

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レポート3:スギとチカコ

杉修介と妻の千佳子は悟の高校生時代の同級生。

現在はペット可のペンションを経営していて、自らも犬の虎丸と猫のモモを飼っている。

2人とも悟とナナを温かくペンションに迎え入れたが、それとは別に杉は悟に複雑な思いを抱いてた。

 

【回想】

側溝に落ちていた老犬を助けた。

それが杉と悟の出会いだった。

とはいっても、杉が悟に協力したのは(あとで協力しなかったと千佳子の耳に入ったら困る)という打算が働いたからだったが。

杉と千佳子は幼馴染であり、昔から杉は千佳子に惚れていたのだ。

ともあれ、老犬は最終的に千佳子の家で引き取られることとなり、それがきっかけで3人は特に仲良くなった。

 

千佳子の家は果樹園をやっている。

夏休み。悟は小倉のハチに会いに行く旅費を稼ぐため、千佳子の家でバイトすることに。

もちろん悟と千佳子を2人きりになどしておけない杉も一緒にバイトだ。

 

ある日、悟は珍しくバイトに遅刻してきた。

顔色は蒼白で、どんどん具合が悪くなっていくように見える。

千佳子「もしかして、昔飼ってた猫に何かあったんじゃない?」

悟「…車に…はねられて…」

押しつぶされたような声。悟の目から涙がしたたり落ちる。

千佳子「…大事な猫だったんだね」

悟「家族だったんだ」

千佳子「…間に合いたかったね」

千佳子のいたわりの何と優しいことだろう。

それに比べて杉には、何の言葉も浮かんでこない。

悟への嫉妬の気持ちもあるのだろう。杉は自分の人間の小ささを恥じた。

杉「…バイト、どうする?続けるか?」

悟「小倉、行く意味なくなっちゃったしな」

千佳子「行った方がいいよ、小倉。お金貯めて、ちゃんとお別れしてきたほうがいいよ」

千佳子「ちゃんと悲しんでおいでよ。間に合わなかったけど会いに来ようとしてたんだよって言っておいでよ。宮脇がちゃんと片付けてあげないと、猫だって心配で浮かばれないよ」

その言葉が、どれだけ悟に深く響いたか。

悟は千佳子の言葉通りバイトをつづけた。

小倉から帰ってきた悟は、どこか吹っ切れた様子だった。

 

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千佳子「宮脇って、好きな子いるのかなぁ」

杉と2人の時、千佳子がそうつぶやいた。

杉の恐れていたことがついに起こった。誰がどうみても自分なんかよりも悟の方が魅力的だ。千佳子をとられてしまう。

そうして杉は引け目と僻みに押しつぶされた。

杉「俺、千佳子のことが好きなんだ。子供のころからずっと」

打ち明けた相手は千佳子ではなく、悟だった。

悟「分かるよ」

杉(分かるだろう?…お前には絶対分かるはずなんだ)

杉は悟が遠慮すると計算して、自分の気持ちを打ち明けた。

だって、そうするしかない。

やがて悟は、杉の気持ちを尊重したまま高3の春に転校していった。

杉は確かに寂しかったが、それ以上に安心感を覚えていた。

 

しばらくして杉と千佳子はつきあうようになった。

進学先は二人で相談した東京の大学。

杉はそこで思いがけず悟と再会する。

悟「俺、高校の頃、ホントは千佳子のことちょっと好きだったんだよな」

やっぱりだ。

悟「だけど、杉がいるから無理だろうなって。当たって砕けてもいいから、一回くらい言っとけばよかった」

杉(1回くらい言っといたら…たぶん、歴史は変わっていた。たぶん、今からでも…)

杉「頼む。千佳子には、言わないで」

みっともなく、こずるく、杉は悟に頭を下げた。

また悟のやさしさにつけこんで口をふさごうとしている。

悟「お前たちはたぶん、お前が思ってるより大丈夫だよ」

悟は苦笑しながら答えた。

 

大学を卒業して数年後、杉と千佳子は地元で結婚した。

式には悟も参列した。

今でも杉の心には、悟へのうしろめたさが残っている。

杉(俺は、本当にできることならお前みたいな人間になりたかったんだ)

だから、杉は心から悟のためにナナを引き受けたいと思っている。

【回想終わり】

 

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問題はナナと虎丸の相性だ。

初日から虎丸は悟に向かって吠え、ナナともケンカしている。

年若い虎丸は主人である杉の複雑な気持ちを察して、悟とナナを敵視しているのだ。

虎丸『お前がいたらご主人と奥さんがずっとミヤワキのことを考えるんだ!俺のご主人は奥さんがミヤワキのことを思い出すと苦しいんだ!』

ナナ『言われなくても、お前みたいに頭の悪い犬野郎がいる家なんてこっちから願い下げだよ!』

虎丸『ちくしょう、帰れ!ミヤワキを思い出すものをこの家に入れるわけにはいかないんだ!だって』

ナナ『黙れ!それ以上言ったら痛い目に遭わせるぞ!』

虎丸『だって、そいつからはもう助からないにおいがする!』

ナナ『僕は黙れと言ったんだ!』

ナナは虎丸に躍りかかり、キレイな三本傷を鼻に刻んだ。

こんな様子では、今回もお見合いは失敗だ。

悟「ごめん、せっかく預かってくれるって話だったけど、連れて帰るよ」

ナナ『ありがとうよ、虎丸。僕はサトルと旅をしに来たんだ。この家にもらわれに来たんじゃない。お前のおかげですんなり帰れた』

 

帰り際、運転席の窓から悟が言った。

悟「俺、高校の頃、千佳子さんのことちょっと好きだったんだ。知ってた?」

杉の表情が硬くなる。

千佳子「いつの話してんのよ。いまさらそんなこと言われたって」

悟「だよな」

二人は声をあげて笑う。杉もほっとしながら周回遅れで笑った。笑いながら、ちょっと泣きそうな顔になっていた。

 

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レポート3.5:最後の旅

悟とナナはフェリーに乗って北海道へ。

これが、1人と1匹にとって最後の旅になる。

 

雄大な北海道の大地を楽しみながら旅する悟とナナ。

途中、車から降りたナナがススキの原に迷い込みそうになったとき、悟は初めて本音を口にした。

悟「置いていくなよ…そばにいてくれよ」

悟はナナの飼い主を探しながら、それでも見合いが失敗するたびにどこか嬉しそうだった。

ナナ『僕は絶対にサトルを置いていったりしない』

声を抑えて泣く悟の手を、ナナが丁寧に丁寧に舐めた。

 

その後、1人と1匹は悟の両親の墓参りをして最後の目的地・札幌へとたどり着いた。

 

レポート4:ノリコ

香島法子は悟の叔母だ。前職は裁判官。

転勤の多い独身の身でありながらも姉の忘れ形見を引き取って、悟を育てたその人である。

 

法子は悟があの絶望的な電話をかけてきた日を思い出す。

「悪性の腫瘍が見つかった」

すぐに手術を受けたが、すでに手の施しようはなかった。

余命1年。

悟は会社を辞め、身の世話を頼むため法子と同居することに。

法子もまた甥の世話をするため前職を辞し、ある程度時間の融通が利く弁護士に転向した。

 

悟「ごめんね、結局ナナまで引き受けてもらうことになって」

法子「いいのよ」

法子は悟のためにペット可のマンションに引っ越した。

法子は猫が苦手だし、何より世話になる身で申し訳ないと悟はナナを手放そうとしたが、ついに当ては全滅してしまったのだ。

最初、法子はナナにおっかなびっくりに接したが(ナナの我慢の甲斐あって)徐々に猫のいる生活に馴染んでいく。

 

一方、悟は通院生活に入っていた。

悟は朝に病院に出かけたら、夕方まで帰ってこない。

腕は注射の跡だらけになり、体力もどんどん落ちていく。

 

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そうして年が明けた。

悟はお雑煮に少し手を付けただけで箸をおいた。豪華なおせちもほとんど食べていない。

法子は一瞬、悲しそうな顔をした。

悟「おいしかった。叔母さんの料理ってやっぱり母さんと味付けが似てるよね」

悟はにこりと笑って言う。

悟「叔母さんが俺を引き取ってくれてよかった」

法子「私は…そんないい保護者じゃなかったわ。私じゃない方がきっと…」

法子は昔から歯に衣着せない言い方しかできない不器用な人間だった。転勤も多く、悟を寂しがらせたに違いない。

悟「叔母さんが引き取ってくれてよかったよ」

法子「私は、引き取った最初にあんなことを言ったのに」

 

法子『黙っていてもいつか分かることだから言っておくわね。悟はお父さんとお母さんと血がつながってないの

 

悟「だっていつか分かることじゃないか。叔母さんはなにも間違ってないよ」

悟の母は、子供ができない体質だった。

悟はもともと法子が担当した育児放棄事件の赤ちゃんで、乳児院にいくところを法子の姉夫婦が引き取ったのだ。

 

法子「でも、私は義兄さんと姉さんを失くしたばかりの悟にあんなこと…」

悟「確かに、聞いたとくはびっくりしたよ。でも、早く教えてくれたから、俺は自分が幸せなんだってすごく早くから理解できたんだ」

怪訝な顔をする法子に、悟が笑いかける。

悟「俺、叔母さんが教えてくれるまで、自分と両親の血がつながっていないなんて、全然、露ほども思ったことがなかったんだよ。それくらいお父さんとお母さんは俺を本当の子どもにしてくれたんだ。生みの親に要らないって捨てられたのに、よそのお父さんとお母さんにそんなに大事にしてもらえるなんて、こんなすごいことってそうそうないよね」

ナナ『分かるよ。僕は、サトルが僕をサトルの猫にしてくれたとき、きっと悟と同じくらい嬉しかったよ。野良なんて捨て置かれて当たり前なのに、サトルは足を折った僕を助けてくれた。それだけで奇跡的だったのに、サトルの猫になれるなんて、僕は世界中で一番幸せな猫だったんだよ』

ナナ『だから、サトルが僕を飼えなくなっても、僕は何も失わないんだ』

ナナ『ナナって名前と、サトルと暮らした5年を得ただけなんだ』

ナナ『たとえサトルが僕より早くいなくなってしまうとしても、それでもサトルに出会わないより出会った方が僕は幸せだったんだ』

ナナ『だって僕は、サトルと暮らした5年をずっとずっと覚えておける』

ナナ『コースケや、ヨシミネや、スギやチカコや、そして何よりサトルを大きくなるまで育ててくれて、僕と巡り合わせてくれたノリコ。サトルを取り巻く人たちも、ずっとずっと覚えておける』

ナナ『こんな幸せなことって他にあるかい?』

 

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法子「転勤が多かったせいで子供の頃も寂しい思いをさせたわ。友達ができるたび引き離して」

悟「でも、行った先々で友達ができたよ。見合いは失敗したけど、みんなナナを引き取りたいって言ってくれたんだよ。いざっていうとき、大事な猫を引き受けてくれる人がこんなにいるなんて、すごく贅沢な人生じゃないか」

悟は法子の手を両手で包むように握った。

悟「申し出てくれた人がみんな駄目でも、最後は叔母さんが引き受けてくれる」

法子はうつむいたまま肩を震わせている。

悟「それに何より、叔母さんは俺をお父さんとお母さんに出会わせてくれたんだ。その叔母さんに引き取られて、お父さんとお母さんの思い出を話しながら今まで過ごせて、俺が幸せじゃないわけないだろう?」

ナナ『だからほら、泣くんじゃないよノリコ。べそべそ泣いて過ごすより、最後まで笑って過ごした方が、きっともっと幸せになれるよ』

 

悟は頻繁に病院に泊まるようになった。

泊まる日数は少しずつ長くなっていく。3日、7日、10日…。

身体は以前とは別人のように痩せ細り、いつのまにか頭も丸めてしまっている。

そしてある日、ついにナナはピンときた。

(もうサトルは帰ってこない)

ナナはニャアと鳴き、自分も連れていくように訴えかける。

悟「そうだね、ナナ、一緒に行きたいね」

ところが悟はナナをケージに閉じ込めてしまった。

悟「ナナはお利口だから、これからもいい子に出来るよね」

ナナ『何言ってんだよサトル!待て、バカ!僕を連れていけ!』

悟「置いていきたいわけないだろう、大好きだよバカ!」

ナナ『僕だって大好きだ、ばかやろう!』

悟はナナの呼び声を振り切るように部屋を出て、叩きつけるようにドアを閉めた。

 

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一度だけ、庭でなら面会できると法子がナナを病院に連れて行った。

別れ際、悟は最後に中身が出ちゃうほど抱きしめて、ようやくナナを手放す。

ナナ『ふたりでいるのがこんなにしっくり来るのに、僕らが離れてるなんて本当におかしなことだと思わないかい?』

ナナは法子の目を盗んで逃げ出し、野良猫に戻った。

 

病院の近くで生活していれば、一日に一回、決まった時間に悟に会える。

ナナは悟の通い猫になった。

ナナ『僕はサトルのたった1匹の猫だ。誇り高い猫たる僕は、決して相棒を見捨てたりしない』

ナナ『さよなら、バイバイ、また明日。きっと必ずここで会おうね』

ナナは毎日、悟のもとに通った。

そして、ある日ついに…

 

「ご臨終です」

悟の容体が急変し、まもなく息を引き取った。

ナナは法子につれられて悟の最期を看取った。

悟は唇の形だけで「ありがとう」と呟いていた。

力を失った悟の手に、ナナが何度も頭をこすりつけていた。

 

法子「悟を連れて帰ろうね、ナナ」

嗚咽を漏らす法子の手を、ナナがざらざらした舌で舐める。丁寧に丁寧に。

法子「悟は幸せだったって信じていいかしら」

ナナは法子の手に額をこすりつけ、それからまた丁寧に丁寧に手をなめた。

 

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ラストレポート

悟の葬式は母方の親族だけでひっそりと執り行われた。

法子は悟から頼まれたリスト通りに訃報を送り、またその対応でしばらく慌ただしくしていた。

法子「悟はよくしてくれる人が本当にたくさんいたのねぇ、ナナ」

ナナは、あれから法子と一緒に暮らしている。

 

ある日、マンションに喪服を着た懐かしい面々が訪ねてきた。

コースケと、ヨシミネと、スギとチカコ。

4人は初対面だったが、悟の思い出話とペット自慢とでさっそく意気投合している。

みんなが帰った後、法子が呟いた。

法子「悟は幸せだったわね」

ナナ『幸せだったって臨終直後に保証したじゃないですか。サトルもきっと苦笑しているよ』

 

それから何年も経った。

コースケは奥さんとよりを戻し、新しく飼い始めたサバトラを看板猫にペットスタジオを始めたらしい。

ヨシミネは毎年、大量の野菜を送ってくる。

スギ夫妻には子供ができた。

そして法子は、捨ててあった子猫を思わず拾ってきた。

手のかかる子猫に振り回されて法子は忙しそうにしている。

 

「そうかぁ、叔母さんが猫を拾うようになるなんてね。叔母さんにとっては初めての猫だね」

ナナ『そうだね、僕はいつまでもサトルの猫だからね』

「もうそろそろこっちへ来るかい?」

ナナ『うん。ミケが一人前になったら、そろそろ旅立とうかな』

まだ夢でしか見られない、この場所へ。

 

ねえ、サトル。僕らは本当に本当にたくさんのものを見たね。

サトルが育った町。

青い苗がそよぐ田園。

恐ろしげな重たい音を立てる海。

ぐぅっとこちらに迫ってくるような富士山。

乗り心地最高の箱テレビ。

道端に咲く紫と黄色の力強い花々。

海のようなススキの原。

そして何より、愛しい人々の笑顔。

 

僕のリポートはもうすぐ終わる。

それは決して悲しいことじゃない。

僕らは旅の思い出を数えながら、次の旅へ向かうんだ。

先に行った人を思いながら。後から来る人を思いながら。

そうして僕らはいつかまた、愛しいすべての人々と、地平線の向こうで出会うだろう。

<旅猫リポート・完>

 

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有川浩「旅猫リポート」の感想(と解説)

小説「旅猫リポート」は最初に1つの謎を提示しました。

『なぜナナを手放さなければいけないのか?何のための旅なのか?』

結末から振り返ってみれば、悟がこの世を去る前に大切な人々と会っておくための旅であり、ナナと最後の時を過ごすための旅だったわけですよね。

 

実のところ、多くの読者がそうであるように、私も途中で「あ、これ悟の命が…?」と勘づきました。

小学校の思い出、中学校の思い出、高校の思い出…、とまるで人生を振り返っていくような回想は、悟に未来がないことを連想させましたから。

では、結末が予想された結果、「旅猫リポート」はその魅力を失ってしまったでしょうか?

もちろん、答えは「No」です。

悟がこの世から旅立つまで、私の目からは何度も涙がこぼれました。

しかし、それは陳腐で悲劇的な涙ではなく、どこか温かい気持ちの混じった悲しみの涙であったと思います。

 

『幸せと生き方についての話』

もし「旅猫リポートってどんな話?」と聞かれれば、私はそう答えたいと思います。

産みの親からは捨てられ、育ての両親とは小学生の頃に永別し、愛する飼い猫とも分かたれ、子供時代を慣れない土地で過ごし、あげくの果てに30歳そこそこの若さで余命1年の宣告。

宮脇悟という人物の境遇ははっきり言って、これ以上ないほど不幸なものでした。

しかし、それに反して彼は明るく優しい人気者に育ち、愛しい大切な人々(と猫)と絆を結び、ナナが保証したように幸せにこの世を去っていきます。

私は宮脇悟を尊敬し、悟の人生に憧れを抱かざるを得ません。

たとえ私がこのままいくら長生きしようが、悟ほど幸せに人生を終えられるとは到底思えないからです。

つまるところ「旅猫リポート」は私に「それ」を教えてくれる本だったのだと思います。

「旅猫リポート」は児童書や絵本としても出版されているようなので、ぜひ多くの青少年にもこの素晴らしい本が発するメッセージを受け取ってほしいですね。

また、多くの人生に疲れ気味の大人にとっても、この本は何か大切なものを思い出させてくれる1冊になると思います。

猫好きの人にはもちろん、そうでない人にも有川浩「旅猫リポート」、おススメです。

※断然ネコ派の私としては、ナナの愛らしさ、いじらしさを堪能できるというポイントだけとっても必見の価値があると思っています。

 

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まとめ

有川浩「旅猫リポート」が映画化!

今回は原作小説のあらすじ・ネタバレをお届けしました。

いやぁ、予想以上の感動作でしたね!

この悟を、あの福士蒼汰さんが演じるんでしょう?

好感度爆上げ間違いなしですよ(笑)

…とまあ冗談はさておき、実際、福士蒼汰さんは悟のイメージにピッタリだと思います。

それよりも気になるのは全編通して福士蒼汰さんと共演する「ナナ」!

人間の言葉を理解する聡明で悟大好きなナナがどのように実写化されるのか?

また、声はどうなるのか?

悟とナナの場面は作中でも大事なシーンばかりですからね。

このあたりの仕上がりが映画全体の評価を分けかねません。

そんなわけで映画では福士蒼汰さんはもちろんのことナナにも注目していきたいと思います。

※というか猫派なのでむしろ目はナナに釘付けかも(笑)

 

映画「旅猫リポート」は2018年に全国公開!

まだまだ先ですが、公開が待ち遠しいばかりです。

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