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小説「マチネの終わりに」の感想と考察!結末のその後は?モデルは誰?

   

こんにちは、若竹です。

平野啓一郎「マチネの終わりに」をたった今、読み終えました。

私はジャンル問わずいろいろな本を読むタイプなのですが、正直、ここ最近では一番心揺さぶられた小説でした。

この余韻が薄れないうちに、感想を書いておきたいと思います。

また、小説を読んだ方なら気になるポイントであろう

・あの結末の「その後」はどうなったのか?

・登場人物にはモデルがいるのか?作中の出来事は実話なのか?

という点についても言及していきたいと思います。

 

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小説「マチネの終わりに」の感想

少しネタバレしてしまうと、小説「マチネの終わりに」は実話をベースにした物語です(詳しくは後述)

主人公である蒔野聡史と小峰洋子にはモデルがいます。

小説ではこのことを第1章が始まる前の「序文」で明言しているので、読者は自然と「これは実際にあった出来事なんだ」という頭で物語を読み進めることになるんですね。

おそらくは、そのせいなのでしょう。

私は「マチネの終わりに」という作品全体に対して『ものすごく生々しいな』という印象を抱きました。

まるで現実の友人から体験談を聞かされているような感覚、とでもいえばいいのでしょうか。

作中で起こっている出来事、登場人物が考えていること。

そのどれもが非常に身近に感じられたんです。

 

ちょっと考えてみてください。

例えば「恋人と死別する悲劇の物語」があるとしましょう。

クライマックスでは誰もが涙を流すような物語。

でも、それがフィクションなのか実話なのかで、涙の質って変わってくると思いませんか?

前者の場合、頭のどこかには「これはフィクションだ」という安心感があるわけで、読後にはスッキリとした感動が残るでしょう。

一方、後者の場合、読者はより重たいものを受け取ることになります。

読後には大きなショックや心の揺れが残り、おそらく爽快感は感じません。

このように、特に意識はしていなくても「フィクションか実話か」という前提は、読者の読書体験を大きく左右するものなのだと思います。

 

……という事情を念頭に置いて、改めて小説「マチネの終わりに」のあらすじを振り返ってみましょう。

 

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【起】蒔野聡史と小峰洋子が出会い、一夜にして深く惹かれ合う。

フィクションとしてはおなじみの展開ですが、現実の出来事としてはかなり希少でドラマティックな展開ですよね。

これが創作物だったら「なるほど、で、次はどうなるのかな?」と軽く流すところですが、実話がベースにあるという意識で読んだ私は「え、それって完全に運命じゃん!」と思わず興奮してしまいました(笑)

しかも、主人公の男女はどちらも40歳前後。

人生経験を経て、何事にも慎重に対処する知恵を身につけている年齢です。

そんな年齢の、とりわけ理知的な人間である2人が同時に相手を愛するようになるだなんて、(変な言い回しですが)まるで物語の中の出来事じゃないですか!

物語の冒頭部分で、私はすでにロマンティックとしかいいようのない出会いに心をときめかせていました。

 

【承】蒔野は洋子に愛を伝える。洋子はそれまでの婚約を破棄して、蒔野への愛に生きることを決意する。

私は読者としてすっかり2人の恋を応援する立場にいましたから、この展開には思わずガッツポーズをとりました。

それにしても、すごいのは洋子の思い切りの良さですよね。

物語上の必然ではなく、現実の出来事だとして考えてみてください。

一方的に婚約を破棄するだなんて、簡単にできることではありません。

結婚式や新婚旅行に関する予定のキャンセル、婚約者とその家族への謝罪。

洋子の経歴にも消えない傷として、婚約破棄のことは残り続けます。

周囲からは好奇の視線を向けられることになるでしょう。

それを全部呑み込んで、洋子は自分の気持ちに正直になることを選んだのです。

しかも、まだたった3回しか会ったことのない相手に!

子供を産みたいと考えている洋子が、付き合いの浅い蒔野を選ぶという選択には非常に重い覚悟がうかがえます。

それでも愛を選んだ洋子の決断に、私はなんだか勇気づけられたような気がしました。

 

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【転】三谷早苗の妨害と運命のいたずらにより、蒔野と洋子はすれ違ってしまう。そして、そのまま結ばれることなく別のパートナーと結婚し、子供を儲ける。

ここ!ここです!

私は正直、もう見ていられなくて何度も読み進めては本を閉じる、という行動を繰り返してしまいました。

人生の中で巡り合える確率の極めて低い、運命の相手。

奇跡のようにしてやっと出会った蒔野と洋子が、どうしてこんな辛い目に合わなければならないのでしょうか。

2人が結ばれて、幸せになってはいけない理由など何一つとしてなかったのです。

それなのに、早苗の自分勝手な行動が悪魔的に作用した結果、蒔野と洋子はお互いの本心を知ることなく「突然、相手から拒絶された」と思い込んで関係を途絶させることになります。

温厚な私もさすがに「何してくれとんじゃ、この女ァ!」と心の底から怒りが沸き上がってくるのを止められませんでした。

目の前にいたら、間違いなく殴っていましたね。

しかも、何ですか。

百歩譲って「一瞬魔が差した」というなら許せなくもないですが、早苗はちゃっかり隠ぺい工作までしてすれ違いを補強し、自分には「これまで悪いことしてこなかったから一度くらいの罪は許されるはず」という意味不明な言い訳をして、挙句の果てには蒔野と結婚までしてしまう始末!

アホか!!

誤解を恐れずにいうならば、このあたりの展開には本当にイライラさせられました。

罪を犯した早苗がのうのうと幸福を享受しているのは間違っていると強く思いました。

とはいえ、よくよく考えてみれば、現実は往々にしてそういう側面を持っています。

勧善懲悪のルールが絶対的なのは物語の中だけであり、現実ではずる賢い人間ほど成功するのが世の常です。

そういう意味では、実話をベースにした「マチネの終わりに」が、現実を感じさせる『ままならない』展開になるのは、当たり前のことなのかもしれません。

そして、その圧倒的な現実味が「マチネの終わりに」の大きな魅力である以上、私をここ最近で最もムカムカさせた早苗の言動も、この作品にとってはなくてはならない魅力の一部分…なのかもしれませんね。

(とはいえ、早苗のことを絶対に許さないという気持ちは変わりませんが)

 

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【結】早苗の罪が露呈し、蒔野と洋子はあの日の真相を知る。しかし、すでにそれから数年の歳月が経ち、お互いの環境は大きく変わってしまっていた。

小説のラストは、2人が数年ぶり4度目の再会を果たしたシーンで幕を閉じました。

ここで「ようやく2人の愛が成就してハッピーエンド」となれば大団円だったのですが、結末は「え、そこで終わるの!?」と叫びたくなるようなシーンで終了。

いわゆる「この後の展開は読者の想像にお任せします」タイプのラストとなりました。

気になる「この後の2人がどうなったか」は後述するとして……この結末に私は「ああ、美しいな」という感想を抱きました。

本来ならば「切ない」という感想がピッタリなシーンですし、私ももちろん切なさを感じはしたのですが、それよりも先にどうしようもなく『美しい』という感想が心の中を占めてしまったのです。

出会いから5年半。

惹かれ合い、すれ違い、未練を残しながらも現実を生きて……その末の再会。

いったい2人はどんな心境だったのでしょうか?

かつて愛した、そして今も愛しているかもしれない運命の相手との再会。

この上ない喜びと、現実を壊してしまいそうな不安、それに失ってしまった時間とチャンスへの後悔。

あらゆる感情がぐちゃぐちゃになりながらも、2人はお互いに会いたいと思わずにはいられませんでした。

そうしてやっと巡り合えた時の蒔野の微笑みと、洋子の涙。

多くを説明しない2人のその表情こそが、相手を想い続けてきた愛の歴史の集大成のようで、私にはとても美しいものだと感じられたのです。

 

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蒔野聡史と小峰洋子のモデルって?どこまでが実話なの?

小説の序文で、著者はこのように断っています。

蒔野聡史と小峰洋子にはそれぞれにモデルがいるが、差し障りがあるので、名前をはじめとして組織名や出来事の日付など、設定は変更してある。

結論からいえば、蒔野と洋子にはやはりモデルがいるし、作中の出来事もある程度は実話に基づいたものです。

著者である平野はもともと蒔野(のモデル)と知り合いで、後に洋子(のモデル)とも連絡を取るようになったと説明しています。

では、蒔野と洋子のモデルとなった人物とはズバリ誰か?

それは今なお明らかにされていません。

蒔野のモデルも洋子のモデルも、同じ時代を生きる実在する人間です。

彼らのプライバシーを考えれば、当然の措置だと言えるでしょう。

読者の中には蒔野と洋子の経歴を参照すれば、ある程度はモデルの候補が絞られてくると考える方もいるかもしれませんが、おそらくは無駄に終わるでしょうね。

そんなわかりやすいヒントを著者や編集者が見逃すはずがありません。

蒔野聡史のモデルが何かしら広義のアーティストである可能性は否定できませんが、おそらくはギタリストはおろか音楽家ですらないのではないかと思われます。

 

では、「マチネの終わりに」はどこまでが実話でどこまでがフィクションなのでしょうか?

その割合については想像するほかありませんが、序文を読み解くと

・大枠の出来事そのものは実話である

・2人の心情については著者が創作したものである

という内情が見えてきます。

また、平野は序文のなかで

出会った当時、彼らは四十歳という、一種、独特の繊細な不安の年齢に差し掛かっていた。

と記しており、物語の中でも特に重要な要素である蒔野と洋子の年齢については、モデルの実際の年齢に即したものであることを認めています。

 

最後に、興味深い話を一つ。

著者の平野啓一郎氏は1975年生まれで、小説「マチネの終わりに」を発表した2016年には41歳という年齢でした。

蒔野・洋子のモデルとはちょうど同年代ということになりますね。

さらに平野氏は音楽愛好家として知られており、作中にもたびたび登場するショパンやラヴェルなどのクラシックにも造詣が深い一方で、大学では軽音楽部に所属し、ギターを担当されていたそうです。

作中で蒔野がクラシックギターの演奏家として描かれていたのは、このあたりに理由がありそうですね。

ただし、平野氏は国内外のアーティストとも交流があるため、実際にそれらアーティストの中に蒔野のモデルとなった人物がいたという可能性も捨てきれません。

蒔野のモデルは、実は本当に著名なアーティストなのかもしれません。

 

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結末の「その後」はどうなったの?

あまりにも「で、この後はどうなったの!?」と気になりすぎるラストでした。

・再会した2人はどんな言葉を交わしたのか?

・蒔野と洋子は結婚することになるのか?

・それとも「最愛の友人」という形に落ち着いてしまうのか?

実話が元になっている以上、確実に「その後はどうなったのか?」という疑問への『答え』は存在しています。

しかし、読者がその『正しい答え』を知る機会はありません。

残念ながら平野氏は小説「マチネの終わりに」の「その後」について、続編や短編という形の執筆活動はおろか、インタビュー等でも言及してはいないのです。

それこそ「読者の想像にお任せします」という感じですね。

 

……と、ここで文章を締めくくっては何だかスッキリしませんし、ちょっと私なりに結末の「その後」を想像してみることにしましょう。

 

「その後」を想像してみる

「こうあってほしい」という希望としては、もちろん蒔野と洋子には一緒になってほしいと思います。

ただ「こうなるんじゃないかな」という予想をしたときに、私はどうしても再会した2人がすんなり一緒になる未来を想像できませんでした。

最も大きな問題は、やっぱり蒔野の家庭ですよね。

蒔野は真実を知ってもなお早苗への「愛着にも似た愛情」を失っていませんでしたし、何より早苗との間に生まれたばかりの娘・優希の幸福を最優先にしたいと考えていました。

洋子はきっとそんな蒔野の気持ちを尊重するでしょうし、自身も父親から捨てられた(という思い込みの)経験があることから、蒔野を奪うことで優希の実の両親を引き裂くような真似はしないでしょう。

皮肉なことに、2人が理知的で思いやりのある人間であるがゆえに、2人は一緒になることができないのです。

 

とはいえ、私はそれをバッドエンドだとは思いません。

蒔野聡史にとって人生で最も愛した女性は小峰洋子であり、小峰洋子にとって人生で最も愛した男性は蒔野聡史である。

再会を果たした2人は、現実的な問題とは別に、きっとそのことについて確認し合うことでしょう。

そして夫婦という形ではないにせよ、交流を再開させるのです。

聡明な洋子はきっと音楽家としての蒔野の精神的な支えであり続けるでしょうし、蒔野はその天才的な音楽で洋子を魅了し続けます。

その精神的な関係性は、きっと夫婦である蒔野と早苗の関係性よりはるかに強固で深いものです。

蒔野と洋子は、そんな運命的なパートナーと結ばれなかったことに一抹の寂しさを感じつつ、それでも「相手と深く心を通わせることができる」という関係性に、一種の満足感・幸福感を抱くのではないでしょうか。

 

やがて時が流れ、天に召されるとき。

蒔野が最期に思い浮かべる顔は洋子であり、洋子が最期に思い浮かべる顔も蒔野である。

結末の「その後」の2人の関係性は、きっとそのようなものになるのではないでしょうか。

そんな2人がついに結ばれなかったという筋書きは悲劇的ではありますが、だからといって蒔野も洋子も「いっそ出会わなければよかった」とは思わないでしょう。

ならばその結末は必ずしも不幸なものではなく、むしろ余人をして「そんな相手に巡り合えただなんて羨ましい」と憧れられるようなものであるはずです。

私はそんな2人の「その後」を想像し、やはり「ああ、美しいな」と思いました。

 

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まとめ

今回は平野啓一郎「マチネの終わりに」の感想などをお届けしました。

この小説を語るうえで外せないのは、何といっても「実際の出来事と実在する人物」をモデルにした作品だということ!

それを頭に入れておくだけで、この小説への印象はガラリと変化します。

なんというか「物語」を読んでいるのではなく、「人生」を垣間見ているような気分とでもいうのでしょうか。

実話がベースになっていることで、とたんに登場人物たちを身近に感じ、その言動に生々しいリアリティを感じるようになるんですよね。

そんな精神状態で、こんなもどかしいストーリーを読み進めていくものですから、もう感情はぐらぐら揺らされっぱなし!

まるで友人の思い出話を聞いているかのように、時には喜び、時には激怒し、時には同情し、なんだか気疲れしてしまいました(笑)

ホント、こんな読書体験は久しぶりです。

読んでいる時には思わず「これ以上読み進めたくない」と本を閉じてしまうほど辛いシーンもあったのですが、読み終わってみると「ああ、なんてすばらしい本を読んだんだろう!」という感動で心がいっぱいでした。

物語として面白いだけではなく、読者に教訓を授けたり、あるいは自分自身について考える機会を与えてくれるような一冊です。

読み手の年齢によっても感想が変わる内容だと思うので、本棚からときおり引っ張り出しては繰り返し読みたい本だな、と思いました。

 

ちなみにこの「マチネの終わりに」は2019年秋に映画が公開されます。

何と主演:福山雅治さん(蒔野聡史役)、ヒロイン:石田ゆり子さん(小峰洋子役)という豪華キャストです!

これはもう見るしかない!という期待しかないですね。

公開日が待ち遠しい限りです。

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 - 小説, 映画

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