ラストに驚き

『マスカレード・ナイト』ネタバレ解説と感想!犯人と密告者の正体は?

東野圭吾『マスカレード・ナイト』を読みました!

舞台は前作から数年後。

年末のパーティに現れるという殺人犯を追って、再び新田刑事(木村拓哉)がホテル・コルテシア東京に潜入します。

そんな新田の前に現れる怪しさ満点の客!客!客!

はたして犯人はどんな《仮面》をつけて欺いてくるのでしょうか?

そして、謎の密告状の真意とは?

というわけで今回は小説『マスカレード・ナイト』のネタバレ解説(と感想)をお届けします!

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

練馬のマンションの一室で若い女性の他殺体が発見された。

ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティに犯人が現れるという密告状が警視庁に届く。

新田浩介は潜入捜査のため、再びフロントに立つ。

コンシェルジュに抜擢された山岸尚美はお客様への対応に追われていた。

華麗なる仮面舞踏会が迫るなか、顔も分からない犯人を捕まえることができるのか!?

ホテル最大の危機に名コンビが挑む。

(文庫裏表紙のあらすじより)

事件の概要

被害者は和泉春奈、28歳。

死因は《感電死》でした。

ぱんだ
ぱんだ
感電?

はい。胸と背中に電気コードをはりつけて、反対側をコンセントにつないで……という方法で心臓に電気ショックが与えられていました。

犯行は睡眠薬で眠らせている間に行われていて、遺体には外傷なく、部屋に争った形跡もなし。

おそらくは自然死に見せかけるための手口だったのでしょう。

 

容疑者

今回の事件の場合、疑わしい人物は最初からはっきりしています。

部屋への出入りが確認されていた男性、つまり被害者の恋人です。

被害者は妊娠していたので、犯行動機にも想像がつきます。

ただし、困ったことに警察がいくら調べても『恋人』がいったいどこの誰なのか、さっぱりわかりません。

犯行手口の鮮やかさに加えて、徹底的に身元を隠す慎重さ。

犯人にとって今回が初犯ではない……つまり、今回の事件が連続殺人の一部である可能性が疑われました。

 

密告者

今回の事件は匿名の密告(通報)によって発覚しました。

この時点で妙な話です。

密告者はなぜマンションの一室に死体があると知っていたのでしょうか?

さらに密告者は続けて次のようなメッセージを警視庁に送っています。

犯人が、以下の日時に、以下の場所に現れます。逮捕してください。

12月31日 午後11時

ホテル・コルテシア東京 カウントダウン・パーティ会場

不自然な点は明らかです。

密告者はなぜ犯人がホテル・コルテシア東京に現れると知っているのか?

そして、犯人を知っているのなら、どうしてその正体を明かさないのか?

密告者もかなり怪しいと言わざるを得ません。

いったい何が狙いなのでしょうか?

「犯人が密告者だった(同一人物だった)」というオチではありません。

ネタバレ

「さあ、解いてみろ」と読者に提示された謎は、大きく3つ。

  1. 犯人は誰なのか?
  2. 密告者は誰なのか?
  3. 犯人はなぜパーティに現れるのか?

最初にちょっとだけネタバレしておくと、犯人と密告者は宿泊客のなかに紛れています。

ホテルの従業員、警察関係者は捜査線上から外して構いません。

※なのでネタバレでも取り扱いません

ここからは尚美と新田が出会う4組の宿泊客について紹介します。

さて、怪しいのは誰でしょう?

【宿泊客】日下部篤哉

日下部篤哉(くさかべとくや)はコンシェルジュである尚美に「プロポーズの演出に協力してほしい」と申し出ます。

  • レストランを貸し切りにしてほしい
  • バラで飾られた道を用意してほしい

やや難しいお題でしたが、尚美を困らせるほどではありません。

完璧にセッティングをする尚美でしたが、問題はここからでした。

なんと相手の女性である狩野妙子から「うまくプロポーズを断る方法を考えてほしい」と依頼されたのです。

これには尚美も頭を抱えました。

聞けば、妙子は特別学校の教員であり、アメリカへ渡る日下部とは結婚できないということでした。

 

解決

小手先の技ではなく、誠意ある対応を。

尚美は日下部の演出プランを一部変更して、二重サプライズを用意しました。

具体的には、二人が歩く道を飾る花を、バラからスイートピーに変更したのです。

バラの花言葉は「愛情」

一方、スイートピーの花言葉は「門出」

尚美が『二人の人生の新しい門出』を演出したことで、妙子の真摯な気持ちは十分に伝わり、日下部は妙子の選択をありのままに受け入れることができました。

【宿泊客】仲根緑

仲根緑はかなり怪しい女性でした。

最初に新田が気づいたのは「マキムラ ミドリ」というクレジットカードの名義。

なぜ偽名を名乗っているのか?

同じ部屋に「仲根伸一郎」と宿泊していることから、夫婦に見せかけるための偽装、つまり不倫関係にある客という線が疑われます。

ところが、よくよく調べてみると、どうやら部屋には緑しか宿泊していないようなのです。

監視カメラで確認したところ、緑以外に客室を出入りした人間はいませんでした。

にもかかわらず、緑は2人分のディナーを注文し、2人分のアメニティを消費していました。

つまり、二人で宿泊しているように偽装していたのです。

これは怪しい……。

 

解決

仲根伸一郎は故人でした。

緑は亡き恋人と来るはずだったホテルに、一人で宿泊していたのです。

食事を二人分注文していたのは偽装ではなく、故人を偲んでのこと。

「仲根緑」という予約名も同様です。

気持ちに整理がついたのか、緑は予定を早めて(カウントダウン・パーティの前に)チェックアウトしました。

ぱんだ
ぱんだ
じゃあ、シロだね

【宿泊客】曽野昌明

曽根昌明はホテル・コルテシア東京の常連客。

といっても、普段は平日の夕方に不倫相手と密会するためのデイユース(休憩)利用ばかりです。

ところが、今回の曽野は家族連れ。

不倫で利用するホテルをわざわざ曽野が選ぶとは思えないので、きっと妻にねだられたのでしょう。

中学生になる息子を含めて、三名での宿泊でした。

 

事件?

偶然か、故意か。

曽野の不倫相手である貝塚由里もまたホテル・コルテシア東京に宿泊していました。

由里は曽野の妻の友人であり、ばったり鉢合わせたことから一緒に食事をする場面も……。

曽野にとっては居心地の悪い、針の筵のような時間が続きます。

といっても、最後まで不倫がバレるといったトラブルは起こりませんでした。

曽野は急用が入ったらしく、妻と子と不倫相手を残して(カウントダウン・パーティの前に)早めにチェックアウトしました。

ぱんだ
ぱんだ
びみょう……?

【宿泊客】浦辺幹夫

浦辺幹夫は男性一人での宿泊客。

申告した地方の住所とは異なる、都内の住所から発送した自分あての荷物が届くという不審な出来事が新田の目に留まります。

しかし、ホテルマンに話を聞いてみると発送元は古本街であり、ホテルでのんびり読書するためだったのかと納得。

あらためてホテルにはいろんな人間が泊まるものだと実感する出来事でした。

 

意外な展開

浦辺は事件の関係者でした。

被害者である和泉春菜と男女関係にあったのです。

一方で、浦辺は被害者のマンションで出入りを目撃されていた男とは風貌が全く異なります。

要するに、和泉春菜は二股していたのでしょう。

浦辺が春菜の自宅の場所さえ知らなかった理由も、他に男がいたからと考えれば納得できます。

さて、浦辺がホテル・コルテシア東京に宿泊していたのは、もちろん偶然ではありません。

《何者か》に脅されて、指示通りに行動しているのだといいます。

古本かと思われた荷物の中身は、ずっしりと重い鍵付きのバッグでした。

中身は多額の現金だと予想されます。

追加情報

カウントダウン・パーティ(通称「マスカレード・ナイト」)まで残りわずか。

ぶっちゃると、この時点では犯人も密告者も全然わかりません。

新田たちもさっぱりわかっていませんでしたし、読者視点でも同様です。

最後に怪しい宿泊客について少しずつ情報を足しておこうと思いますが、これが終わったらいよいよ、

  • パーティーでの事件
  • 犯人の正体
  • 密告者の正体

などなど怒涛の謎解きタイムが始まります。

では、その前に少しだけ追加情報です。

 

日下部篤哉

日下部はプロポーズを断られた翌日には他の女性に一目惚れしていました。

誰であろう、あの仲根緑です。

コンシェルジュである尚美に「あの女性と二人きりで話したい」と無理難題を持ちかけ、尚美は見事に要望に応えるのですが、それは置いておくとして。

正直、日下部にはかなり怪しい部分があります。

第一に、12月30日(フラれた後)に外で狩野妙子と会っていたこと。

ふつうに不自然ですし、このとき日下部は仲根緑に一目惚れしていたはずなので、ますます変です。

そして第二に、狩野妙子の名刺の情報がすべて嘘だったこと。

妙子が務める特別学校なんてものは存在していませんでした。

まったくもって謎だらけですが、とにかく怪しいことだけは間違いありません。

 

浦辺幹夫

『そもそも、犯人は何の目的でパーティに現れるのか?』

新田たちは犯人と密告者の間で何らかの取引が行われるのではないかと推理しました。

具体的には、密告者が犯人を脅していて、金を巻き上げようとしているのではないか、という想定です。

そのように仮定すると、密告者が犯人の正体を明かさない理由に説明がつきます。

この場合、浦辺を脅迫しているのは《犯人側》です。

金の受け渡しを(代理で)させようという魂胆でしょう。

新田たち警視庁捜査一課は、パーティ中は浦辺を徹底的に監視することにしました。

マスカレード・ナイト

12月31日、午後11時。

ついに、パーティが始まりました。

参加者は400人以上で、しかも全員が仮面や仮装で顔を隠しています。

新田たち警察チームは、事前の打ち合わせ通り浦辺幹夫を監視。

《犯人》らしき人物から電話で指示を受けて、浦辺はバッグを移動させたり、誰かに向けて合図を送ったりするのですが……。

 

新田(待てよ……俺たちは操られているんじゃないか?

 

少し先回りしてネタバレすると、新田の読み通り、浦辺幹夫は警察の目を引き付けるための囮(おとり)でした。

警察はまんまと犯人に騙されていたというわけです。

一方その頃、尚美は犯人に襲われていました。

場所はホテル内のチャペル。

尚美はただコンシェルジュの仕事の一環で様子を見に来ただけだったので、わけがわからないうちに殴り倒され、拘束されてしまいます。

犯人は尚美の胸と腹に電気コードをとりつけて、タイマーをセットします。

「カウントダウン」

年越しのカウントダウンがゼロになり、新年を迎えた瞬間にタイマーが起動するに違いない……。

尚美はすぐに気づきましたが、拘束されているため手も足も出ません。

残された時間はわずか10分。

尚美のそばには、もう一人、犯人の(本来の)獲物らしき人物が転がされているようでした。

一方、新田はしっかりと不審者(実はチャペルから戻ってきた犯人)を発見していました。

ただし、すぐに逮捕できるような証拠はなにもなく、新田はただ不審者を足止めすることしかできません。

10……9……8……

そうこうしているうちに、カウントダウンが始まりました。

3……2……1……

 

ゼロッ!

 

叫ぶと同時に、仮装していた宿泊客たちが一斉に仮面を外します。

新田はやや強引に不審者の仮面をはぎ取りました。

仮面の下の素顔は、なんと……!

仮面の下の素顔

※以下、小説より一部抜粋

「驚いたな」

相手の素顔を見て、新田はつぶやいた。

まったく知らない男の顔があった。

「何が?」

相手が訊ねてきた。

「人間の目というのは不思議ですね。もしそのままの素顔のままだったら、たぶん俺は気がつかなかった。でもこうして仮面をつけると」

新田は自分の仮面を相手の額に当てた。

「あなたの目と口しか見えなくなる。すると不思議なことに、あの化粧が頭に浮かんでくるんです。目元に施された派手なメイクが」

仮面を外し、続けた。

 

「仲根緑さんの顔が」

 

相手が、ようやく表情を変えた。冷笑と呼べるものを浮かべたのだ。

「カウントダウンはゼロになった。私の勝ちだ」

仲根緑は中性的な声で言った。

「新田刑事、おまえたちの負けだ」

事件の終わり

犯人逮捕によって、何が何だかわからないうちに事件は終わりを迎えました。

カウントダウンまでに助けられなかった尚美はちゃんと無事で、新たな被害者はいません。

犯人は尚美の時計に合わせてタイマーをセットしていました。

ところが、尚美の時計が遅れていたおかげで、救助が間に合ったのです。

時間に余裕を持って行動するため、わざとよく狂う時計をつけていた――尚美のプロ意識が命を救ったのでした。

さて、ここからは真相が明かされる謎解きタイムです。

クライマックスが終わったにも関わらずさっぱり意味がわからないままの今回の事件、裏ではどんな思惑が交錯していたのでしょうか?

犯人の正体

結局、宿泊客のなかに紛れている犯人とは仲根緑のことでした。

しかし、そうするといくつもの疑問点が浮かんできます。

  • 犯人は男性だったはず
  • 仲根緑はチェックアウトしていたはず

などですね。

小説ではいろいろと説明が挟まるのですが、まだるっこしいので結論からお伝えします。

仲根緑は生物学上の性別でいえば男性です。

本名は森沢光留(もりさわひかる)

裕福な医者家系に生まれたお坊ちゃまで、肩書きは神経科クリニックの院長先生です。

森沢は完璧な女装をすることが可能であり、仲根緑の正体が男性であるとは誰も見抜けませんでした。

ぱんだ
ぱんだ
心は女性だった?

そのあたりがまたややこしいのですが、森沢本人は「男性でも女性でもない」と主張しています。

この発言の真意を理解するためには、少し森沢の過去について説明する必要があってですね……。

簡単にまとめるとこうです。

  1. 森沢には仲の良い妹がいた
  2. ある日、妹は男性に無理やり暴行された
  3. その後、妹は自ら命を絶った

この出来事がトラウマとなり、森沢は男性でありながら男性を憎むようになります。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

さて、ここでようやく話が事件につながります。

森沢は亡き妹の影を求めて、妹に似ている男性恐怖症の女性を狙うようになりました。

森沢はほとんど洗脳に近いやり方でターゲットの心を支配し、かつて妹が着ていたロリータファッションを着させるなどしていました。

実は和泉春菜に関しては

  • 過去のトラウマから男性が苦手
  • 部屋には趣味じゃないロリータ服があった

といった情報が提示されていました。

森沢はそうして「妹の身代わり」にした女性を何人も手にかけてきたわけですが、これには理由があります。

彼女たちが他の男性と恋に落ちたからです。

森沢にとってそれは浮気というより《裏切り》でした。

だから、命を奪った。

感電という手口を好んだのは、せめて遺体を美しく保つため、そして苦痛を与えないためでした。

和泉春菜の場合は、浦辺幹夫が恋の相手でした。

お腹の子どもの父親は浦辺幹夫であり、和泉春菜は妊娠を心から喜んでいました。

※まあ、浦辺幹夫(本名は内山幹夫)は既婚者だったんですけどね……

密告者の正体

森沢(仲根緑)が犯人であることはわかりました。

では、森沢は何のためにカウントダウン・パーティに現れたのでしょうか?

実は『密告者と取引するため』という新田たちの推理はかなり惜しかったのですが、実際にはもう少しだけ複雑な事情がありました。

そのあたりを説明するために、まずは一番最初の《匿名の通報》から振り返っていきましょう。

 

発見者

和泉春菜の遺体を最初に発見したのは曽野です。

といっても、あの不倫男の曽野ではありません。

彼の息子である曽野英太くん(中学生)のことです。

英太くんは父親の趣味である望遠カメラを使って、定期的に和泉春菜の部屋を覗き見ていました。

ずっと同じ姿勢でベッドに横たわっていることに違和感を覚え、遺体であると気づいたわけです。

 

密告者

しょっぱなから意外な人物にスポットライトが当てられましたが、英太くんの出番はここまで。

警察に密告状を送ったのは、英太くんから事情を聴いた曽野万智子(曽野の妻)です。

万智子は(これまで名前すら出ていなかったにも関わらず)一癖も二癖もある女性で、森沢を脅して一億円もの金を手に入れようと計画していました。

共犯者として親友の貝塚由里を引き込み、準備は万端。

当初の計画では、金だけ奪ったら、あとは警察に森沢を逮捕させるつもりでした。

 

計画変更

ところが、最終的に万智子の計画は大きく変更されます。

なぜなら、由里と夫が不倫関係にあると万智子が気づいたからです。

万智子は激しく怒り、由里を裏切ることにしました。

具体的には森沢にこっそり連絡して「金はいらないし秘密も守るから、由里を殺してほしい」と依頼したんです。

森沢は万智子の提案に乗りました。

 

貝塚由里

場面は再び「マスカレード・ナイト」の最中に戻ります。

森沢は浦辺(内山)を囮にしつつ、呼び出した貝塚由里を静まり返ったチャペルで待ち構えていました。

ところが、先にチャペルに尚美が来たので、しかたなくこれを拘束。

あとから現れた由里ともども始末することにしたのでした。

心理トリック

今度は森沢の視点に立って事件を振り返ってみましょう。

森沢にしてみれば、大晦日の夜に貝塚由里を始末することだけが目的でした。

ただし、いくら万智子が裏切ったからといっても、警察の動きを無視するわけにはいきません。

浦辺という囮を用意するだけではなく、森沢は計画の数日前から宿泊し、警察の警備体制を確認することにしました。

もちろん疑われてはいけないので、女性として宿泊することにします。

「牧村緑」という身分は闇サイトで購入したものであり、クレジットカードまで持っています。

にもかかわらず、森沢はあえて「仲根緑」という名前で、つまりあえて疑われるような名前でホテルに予約を入れました。

そして、わざわざ「夫と宿泊しているふり」をして警察に怪しませてから、亡き恋人と来るはずだったという嘘のストーリーを披露しました。

それはなぜか?

取調室で、森沢は新田を相手に次のように語ります。

 

怪しんで怪しんで、最後に疑問が解けたとき、人は一切疑わなくなる。牧村緑がチェックアウトした後に殺人事件が起きても、誰も彼女について深く調べようとしないだろう。なぜなら彼女のことはもうわかっているからだ。事件とは無関係。調べる必要などない」

 

新田たちがまんまとしてやられたこの心理トリックは、そのまま読者に対して仕掛けられた罠でもありました。

「仲根緑の秘密はもう分かった」という思い込みが、彼女(彼)を容疑者から除外してしまったのです。

真の犯行動機

森沢は「別に一億円払ってもよかった」と供述します。

実際、裕福な医者家系である森沢にとって、一億円くらいは自由になる金だったのでしょう。

にもかかわらず、森沢はわざわざ危険を承知で貝塚由里を始末しようとしました。

それはなぜか?

実は、そこには森沢の本当の犯行動機が隠されていました。

それは……

 

「おまえたち、警察への復讐だ」

 

ここからは森沢の言葉をそのままお伝えしようと思います。

※以下、小説から一部抜粋

…………

「取り調べで妹がどんなことをさせられたか、おまえは知っているか。襲われたときのことを何人もの刑事の前で、何度も何度も繰り返ししゃべらされ、細かいことを根掘り葉掘り訊かれ、おまけに人形相手にどんな格好で犯されたのかを演じさせられたんだ。

それでも妹は、警察が犯人を捕まえてくれるものと信じて、耐えた。必死で堪えた。だけどどうだ? 結果はどうだった?

警察は結局、犯人を見つけられなかった。

担当の刑事が薄笑いを浮かべ、妹に何といったと思う?

お嬢さん、犬に咬まれたと思って早く忘れることだ――そういったんだ。

犬に咬まれた? 魂を失うほどの出来事なのに?」

森沢は両手をきつく握りしめた。その拳がわなわなと震えている。

 

「妹が自殺を図ったのは、それから間もなくのことだ」

 

低い声でいった後、再び新田を睨んできた。

「いつか、この恨みを晴らさねばと思っていた。そこへ今回の事件だ。絶好のチャンスだと思った。

殺人犯を捕まえるために警察は万全の体制を敷いている。

そんな中で殺人事件が起きたらどうだ?

警察の権威は失墜する。

世間から非難され、笑いものになるだろう。

これだ、これほど痛快なことはない。

天国の世羅(妹)に顔向けができると思った。

だから話に乗った。あいつの取引に応じた。すべて世羅のためだ。復讐のためだ」

結末

森沢の逮捕によって、事件は幕を下ろしました。

ラストシーンは、平穏を取り戻したホテル・コルテシア東京に新田が泊まりに来る場面でしめくくられます。

尚美がロサンゼルスの系列ホテルに移る(栄転する)ことになったので、その前に泊まりに来たというわけです。

そうそう、尚美の栄転といえば「マスカレード・ナイト」の直前まで日下部があやしい行動をとっていたことを覚えていますか?

実は日下部はホテル・コルテシアの北米人事部長であり、尚美が優秀な人材かどうかをチェックしていたんです。

最初のプロポーズも、その後の一目惚れうんぬんも、尚美が無理難題にどう対応するか確かめるためのテストでした。

もちろん狩野妙子もコルテシアのスタッフ。

日下部が外で狩野と会っていたことも、狩野の名刺が嘘だらけだったことも、これで説明がつきますね。

さて、最後に事件を乗り越えた新田と尚美のやりとりを紹介して、このネタバレ解説にも幕を下ろすとしましょう。

※以下、小説のラストシーン

…………

「あなたにお礼をいってなかった。捜査協力に感謝します」

山岸直美は不意をつかれた様子を見せた後、にっこり笑って手を差し出してきた。

「こちらこそ、命を助けていただいたこと、一生忘れません」

二人で握手した。山岸尚美の手は柔らかかった。

「ロサンゼルスでも、がんばってきてください」

「新田さんも、お身体にお気をつけて」

手を離し、新田は歩き出したが、すぐに立ち止まって振り向いた。

「明日の(一緒に食事する)店の手配をお願いします。ゆっくりと話せる店がいい」

「かしこまりました」

山岸尚美は自信に溢れた表情でいった。

「どうぞ、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」

新田は軽く手を上げて応え、大股でエレベーターホールに向かった。

<完>

取材協力:ロイヤルパークホテル

ぱんだ
ぱんだ
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感想

いやぁ、おもしろかった!

最初から「意外なやつが犯人だから疑ってかかれ」と口を酸っぱくして注意されていたせいで、誰も彼もがあやしく思えてきて、最終的にはちょびっとだけしか登場しない人物まで含めてほとんど全員疑ってました(笑)

でも、まさか、仲根緑が犯人だったとは……。

本人が言っていたように「秘密が分かったのだからシロ!」という思い込みに惑わされて、まっさきに容疑者から外してしまっていました。

東野圭吾氏の手のひらの上でコロコロ転がされていたわけですが、悔しさよりも「なるほどなあ」という納得感が強く、要するにおもしろかったです。

あとはそう、前作から引き続き一流ホテルという舞台設定そのものも興味深かったのですが、今作では尚美がコンシェルジュという役職になっていて、その仕事ぶりもおもしろかったですね。

日下部の件だけではなく、日頃からお客様の無理難題じみたリクエストに「無理です」を封印して誠実に対応するまさにプロフェッショナル。

実際に尚美のようなプロのコンシェルジュが働いているのだと想像すると「すごいな」と感心するばかりです。

ちょっとだけ不満も

全体的にはとてもおもしろかったのですが、実はちょっとだけ不満もあります。

「ミステリ小説として読者へのヒントがあまりに少なすぎたのではないか?」という点です。

いや、もっと飾らずにいいましょう。

ラストの謎解きシーンを読んだとき、わたしは正直、こう思いました。

 

「そんなのズルくない!?」

 

結局、犯人は森沢光留で、密告者は曽野万智子と貝塚由里だったわけですが、作中にはそれまで森沢の「も」の字も、万智子の「ま」の字もまったく描かれていませんでした。

だから、真相を読んだときはまさに「寝耳に水」な気分でしたね。

第一、映像のない活字メディアで「女性」と断言されていた緑が「実は男性だった」というのは反則ではないでしょうか。

あらためて読み返してみると、なるほど、伏線らしきものはちらほら散見されますが、真相を導けるほどのものではないと強く感じます。

「さあ、謎を解いてみろ」という読者への挑戦っぽい姿勢を打ち出すのなら、せめてもう少し謎を解くヒント(伏線)が必要だったのではないかと思いました。

ぱんだ
ぱんだ
悔しかったんだね……

まとめ

今回は東野圭吾『マスカレード・ナイト』のネタバレ解説をお届けしました!

前作と同じく、一流ホテルには怪しい客がいっぱい!

それぞれの《仮面》をつけた宿泊客たちはみんな怪しさ満点で「もうみんな犯人見える」と楽しみながら(?)読むことができました。

今回のネタバレでは省略したエピソードも多いので、気になった方はぜひ読んで確かめてみてくださいね。

余談ですが映画のイメージが強くて、読書中はもう完全に「新田 = キムタク」で脳内再生されていました。

映画化情報

キャスト

  • 木村拓哉
  • 長澤まさみ

公開日

2021年9月17日(金)公開予定

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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