前回は小説「教場」の内容をご紹介しました。
今回はその続編「教場2」のあらすじネタバレ(と感想)をお届けします!
あらすじネタバレ
【はじめに】
前作と同じく、「教場2」は6つの短編で構成されている連作短編集です。
舞台は前作の後輩にあたる第百期短期過程の風間教場(クラス)
今回も短編ごとに主人公が異なります。
では、さっそく第1話から見ていきましょう!
ちなみにドラマ化されるのは1話と4話。
詳しくは最後の「ドラマ情報」をご覧ください。
第1話 桐沢篤
警察手帳を紛失したと気づいた瞬間、桐沢篤は顔を青くした。
バレれば即退校(クビ)
点検教練の授業がある以上、ごまかすこともできない。
それに、あの担任教官の目にかかれば手帳の紛失など一発で見抜かれてしまうに違いない……。
◆
案の定、風間公親は桐沢の異変にすぐに気がついた。
ただ、桐沢にとって運が良かったのは、風間が資質のない学生を容赦なく切り捨てる教官であると同時に、有望な学生を積極的に残す教官だということだった。
元医者という異色の前歴を持つ桐沢は、まさしく後者にあたる。
「この先、医者であることは役に立ちそうか」
「地域警察官は、まっさきに受傷者のもとへ駆けつけることが多い職業です。その場で手当てすれば助かる命がきっとあるはずです。お言葉ですが、役に立たないはずがありません」
桐沢のまっすぐな受け答えに、風間は小さく頷いた。
「いいだろう。きみに見どころがあるのは確かだ。ありすぎると言ってもいい。したがって、わたしの判断で、この不始末はいったん不問に付そう」
ただし――
なくした警察手帳を見つけること。
それが風間の出した条件だった。
「捜索にはわたしも手を貸そう。紛失したと言ったが、盗まれた可能性は?」
「それはありえません」
「なぜ?」
「恨まれる覚えなどないからです。誰からも」
警察手帳を失くしたのは、入校から1か月が過ぎたころだった。
日数にして35日。
たったそれだけの期間で、そうそう誰かから恨みを買うようなことはないだろう。
断言した桐沢に、しかし風間はこう告げた。
「きみは35日しか生きてこなかったのか」
元刑事だという風間の手腕は見事なものだった。
見ているこちらの息が詰まりそうなほどの、容赦のない追い込み。
あの眼を前にして後ろ暗いことを隠し通せる人間はいないだろう、と桐沢は思った。
「では確認する。きみが手帳を盗んだ犯人なんだな」
「はい、わたしが……やりました」
諦めきった表情で、南原哲久はそう言った。
◆
南原はかつて桐沢の患者だった。
腕に鉄パイプが刺さってできたという傷があり、新人内科医だった桐沢がそれを縫合したのだ。
桐沢はまだ研修医だったが、夜間だったので他に人はいなかった。
このときのことは桐沢も記憶している。
だから入校してからというもの、何度も南原に話しかけていた。
そして、そのたびになぜか無視され続けていた。
……いったいなぜ、南原はかつて世話になった桐沢のことを無視していたのか?
つまるところ、南原が桐沢の警察手帳を盗んだ理由はそこにあった。
◆
入校前、南原は拳銃を密造していた。
腕の傷は鉄パイプによるものではなく、拳銃の暴発によるものだったのだ。
わざわざ夜間の個人病院を選んだのは、外傷に詳しくない新人内科医を狙ったため。
南原の思惑通り、当時の桐沢はその傷がどうやってできたものか見抜けなかった。
ところが、警察学校の授業には法医学というものがある。
まさに「その傷がどうやってできたのか?」見分ける力を養うための授業だ。
このまま授業が進めば、いずれ桐沢が南原の傷の真相に気づく恐れがあった。
だから南原は警察手帳を盗むことで、桐沢を退校に追い込もうとしたのだった。
◆
南原が警察学校を去ったことで、風間教場はまた1名減り37名となった。
第2話 忍野宗友
最近、警察学校では備品の盗難が続いている。
ファーストミット、パソコンのマウス、木琴のマレット。
どれも使い古しで、価値などないに等しいものばかりだ。
いったい犯人はどうしてそれらの物品を盗んだのだろう?
◆
「犯人が次に狙っているものはこれだ」
風間が示したのは、授業で使った10円玉だった。
「これをあえて盗ませる」
犯人はおそらく備品の10円玉と引きかえに、同じ製造年の10円玉を置いていくはずだ。
その10円玉についた指紋を調べれば、おのずと犯人はわかる。
◆
鑑識捜査の授業。
10円玉についた指紋は坂根千亜季のものだった。
先の授業で備品の10円玉に最後に振れたのは千亜季だ。
つまり、風間の思惑とは裏腹に、10円玉は盗まれていなかったということになる。
◆
授業後、忍野宗友は風間に呼び出された。
「犯人には今晩のうちに退校を言いわたす。この先、きみは独りだ。覚悟はいいか」
◆
実は盗まれた物品にはひとつの共通点がある。
それは直前に千亜季が触れたものだということだ。
そこから推察される犯人像は『千亜季に想いを寄せる人物』ということになるだろう。
忍野はそんな犯人の正体が友人の堂本真佐丈であることに気づいていた。
気づいていたから、堂本が備品の10円玉を盗む前に別の10円玉とすり替えておいた。
堂本はいじめから忍野を守ってくれた恩人だったから。
……しかし、そんな小細工は風間には通じなかった。
◆
その後、堂本は退校。
忍野は警察学校での一番の友人を失った。
第3話 津木田卓
日ごろの恨み。
あるいは《魔が差した》のか。
津木田卓は鬼教官の貞方が愛用している筋トレマシンに、拭き掃除に使ったバケツの中の汚水をぶちまけてしまった。
バケツを落としたのは3階のベランダから。
津木田の掃除担当は4階なので疑われることはない、という計算が働いている。
肝心の3階の担当はおそらく同じ班の乾。
ふだんから態度の悪い乾に責任をかぶせることで、津木田は2重の仕返しを果たしたというわけだ。
犯行当時、乾は3階に不在だった。
バケツが落ちたのは強風のせいということになり、乾は貞方からこってり絞られる……はずだった。
◆
津木田の犯行には致命的なミスが2つあった。
1つ目のミスは、逃げるときに同じ班の秦山達樹と目が合ったこと。
2つ目のミスは、3階の掃除担当が乾ではなく秦山だったこと。
つまり、津木田は何の恨みもない秦山に罪を着せてしまったということになる。
それに、秦山が「3階から逃げる津木田をみました」などと証言したらどうなる?
退校処分になる未来が、津木田にははっきりと見えた。
◆
ところが、運は津木田に味方した。
授業中の頭部打撲のせいで、秦山の記憶が飛んだのだ。
事件の真相をすっかり忘れた秦山は、貞方に謝罪して許しをもらったという。
風間からの問いかけにも、秦山はこのように答えた。
「バケツが落下した際、3階にいたのは秦山、きみだけか」
「そうです。わたしだけです。他には誰も見ていません」
風間は少し考えるそぶりをみせたあと、バケツを落とした罰として秦山に特別授業を課すと言い渡した。
あのとき、津木田は先に汚水を落として、そのあと、バケツを落とすつもりだった。
強風に煽られた、という設定にするためだ。
しかし、いざ実行する段階になって、津木田は急きょ計画を変更した。
器具の近くに貞方教官の姿を認めた津木田は、中身ごとバケツを貞方の頭めがけて投げつけたのだ。
狙いはわずかに逸れ、バケツは貞方のすぐ近くの地面に落ちた。
汚水の重みが加わったせいで、バケツは真っ二つに割れた。
風間の目から見れば、それはバケツが人為的に落とされたことを示す証拠に他ならなかった。
◆
事故ではなく事件だと見抜かれたとしても、誰が犯人かわからなければ同じことだ。
唯一の目撃者である秦山は、風間に課された罰則授業のせいか見るからに元気を失っている。
退校は時間の問題、といったところか。
秦山が退校してさえくれれば……。
◆
救助の授業中。
津木田は3階から地面のマットに飛び降りるよう命じられた。
いざ飛ぼうとすると足がすくむ。
結果、同じ班のメンバーに手をつないでもらい、ブランコの要領で揺らしてもらうことで、3階から2階のベランダに飛び移る練習をすることになった。
今、津木田の全身は頼りなく空中に揺れている。
津木田を支えているのは、つないでいる秦山の手だけだ。
教官の声が飛ぶ。
「秦山、間違っても外側に振ったときに手を放すなよ。マットの範囲外に津木田が吹っ飛んでいくことになるからな」
「はい」
津木田の全身にゾクッと悪寒が走った。
秦山の返事に、まるで感情が込められていない。
津木田の体がベランダ側(内側)に大きく揺れても、秦山は手を放さなかった。
秦山は津木田に顔を近づけ、小声でささやく。
「思い出した」
「……は?」
「あのとき見た。おまえを」
生命の危機にあるからか、津木田はその一言ですべてを察した。
風間が秦山に課していた罰則授業の目的は、あのときの状況を再現し、秦山に追体験させることだったのだ。
その結果、秦山はこうして記憶を取り戻してしまった……。
「人をスケープゴートにしやがって」
詫びの言葉を探す間もなく、秦山が腕を外側に振った。
こっちの手首を掴む指から、すっと力が抜けたのがわかった。
第4話 菱沼羽津希
優れた容姿。
整った顔立ち。
外見の華やかさにおいて菱沼羽津希の右に出る者はいない。
だからテレビや雑誌の取材対応には、いつも羽津希が選ばれる。
羽津希はいわば警察学校の『広告塔』なのだ。
◆
その日、羽津希はローカルテレビ局の取材に応じた。
入校以来、テレビカメラの前に立つのは3度目だ。
コンタクトを落としてしまい、ぼやけた視界でインタビューを受けることになるというアクシデントこそあったものの、羽津希はそつなく役割をこなした。
◆
放送の録画をチェックする。
いつも通り、特に問題はなさそうだ。
気になることといえば、隣で手話翻訳している同期の枝元佑奈のことくらいか。
佑奈はレスリング経験者という珍しい経歴を持つ学生で、手話も得意にしている。
隣で手話翻訳するよう頼んだのは羽津希自身だった。
お世辞にも美人とは形容できない佑奈の顔が、放送ではなぜかいつもより魅力的に見える。
……せっかく《引き立て役》として選んだのに。
羽津希は人知れず眉をひそめた。
◆
実のところ、羽津希は放送にあるメッセージを込めていた。
佑奈に頼んで『尊敬しています』と表現するべきところを、『好きです』という手話に変えてもらったのだ。
「風間教官のことを心から尊敬しています」
ちょうどこんな発言の際に。
羽津希はいわゆる『枯れ専』で、ひそかに風間のことを慕っていたのだった。
◆
放送に仕込んだささやかなメッセージは、すぐさま風間に見抜かれてしまった。
「きみの問題点を大きく3つ挙げてみようか」
そう言って風間は羽津希の問題点を並べ立てた。
- その1、行動が身勝手で謙虚さにかけること。
- その2、容姿が外見にばかり気を取られすぎていること。
- その3、仲間を尊敬できていないこと。
言い終わると、風間は一枚の用紙を差し出した。
退校届の紙である。
「これを持っておけ。この1週間、きみの言動をよく観察しよう。このまま学校にいてもらっては困る、そうわたしが判断した場合、これに名前を書いて提出してもらう」
退校を予告する『半引導』
風間が学生によく使う手だ。
自分の身に起こったことが信じられず、羽津希は言葉を失った。
羽津希は風間にいいところを見せようと、意気込んで授業に臨んだ。
しかし、結果は空回りしただけ。
対照的に、佑奈は授業で目覚ましい活躍を見せた。
さらに、子どもを危機から救ったことが地元のニュースとなり、内外からの評価はうなぎのぼり。
結果、次の広報誌の表紙には枝元佑奈が選出された。
選ばれることが当たり前だった羽津希にとって、初めての敗北だった。
衝撃――。
しかし、本当の衝撃は次の風間の一言によってもたらされた。
「残念だが、枝元は代表になれない。広報誌のモデルは在校生というのが決まりだからな。枝元は今月中に退校する」
聞けば、実家の旅館を継ぐため、これから女将になるための修行を始めるのだという。
一か月前から、その旨を風間には伝えてあったらしい。
再投票の結果、モデルに選ばれたのは羽津希だった。
しかし、そんなことはどうでもよかった。
なぜ佑奈はまだ警察学校に在籍している?
経済的な理由でもない限り、退校が決まった時点で辞めるのが普通だ。
誰も進んでこんな場所に長居したくはないだろう。
佑奈の実家は裕福で、金に困っているとは思えない。
……だったら、なぜ?
◆
羽津希は退校届を風間に提出した。
佑奈のおこぼれでモデルの座を拾うだなんて、プライドが許さない……というのはちょっと違う。
正確にはそのプライドをぽっきり折られたからこそ、羽津希はやめる決心を固めたのだった。
今思えば、最初から佑奈抜きの投票をしなかったのは、風間なりの懲罰だったのだろう。
2度目の投票。
羽津希は投票用紙に『枝元佑奈』の名を書いた。
……退校届を書いたのと、同じ筆跡で。
退校届を受け取ると、風間はそれを二つに引き裂き、くずかごに入れた。
「今回は大目に見よう。きみの問題点のうち『その3』はどうやら解消できたようだからな」
羽津希の問題点その3……『仲間を尊敬できないこと』
◆
なぜ佑奈はすぐに警察学校を去らなかったのか?
その答えはテレビ放送の録画の中に見つかった。
あのとき佑奈がやけに魅力的に見えたのは、瞳孔が目一杯まで開いていたから。
それは、意中の異性を前にしたときの開き方に違いなかった。
画面を拡大する。
巨大な佑奈の瞳には、よく知る白髪義眼の教官が映りこんでいた。
コンタクトなしで収録に挑んだ羽津希は気づかなかったが、テレビカメラの後ろには風間が立っていたのだ。
(……そんなに教官が好きだったのね。降参)
退校する佑奈への餞別として、羽津希は白旗のかわりに白いハンカチを贈った。
第5話 仁志川鴻
ドラマや映画で活躍する敏腕刑事。
仁志川鴻はその姿に憧れて警察学校の門をたたいた。
志望はもちろん刑事課強行犯係。
事件現場で鋭い洞察を見せたり、犯人と格闘したり……。
仁志川は早く刑事になりたくて、うずうずしていた。
◆
風間はそんな仁志川ら刑事志望の学生を集めると、特別な課題を与えた。
殺人事件の模擬捜査。
遺体に見立てた人形の状態や所持品から、犯人の手がかりを見つけ出す……まさに仁志川が待ち望んでいた実践的な訓練だ。
捜査のために与えられた期間は1週間。
仁志川は体の奥底からやる気が湧き出てくるのを感じた。
◆
……さっぱりわからない。
意気込みとは裏腹に、事件の捜査は遅々として進まなかった。
気になる遺体の所持品といえば『大量の馬券』と『花の彫刻があしらわれたジッポー』
風間の仕込みである以上、そこには何か意味があるはずだ。
しかし、それがわからない。
そもそも、犯人と被害者とはどういう関係なのだろうか?
行きずりの犯行か、それとも顔見知りの犯行か。
何度頭をひねっても、答えは見つからなかった。
◆
1週間後の発表日。
結局、仁志川はたいした成果を上げることはできなかった。
打ちのめされた思いで、仁志川は同期の能木毅人の推理を聞いた。
「犯人と被害者と顔見知りだと思います」
- 靴ひもの結び方から、被害者は右利きである
- 一方、ジッポーの彫刻は左利きを想定した側にあしらわれている
これらの事実から、ジッポーは犯人のものだと推察される。
また、ジッポーの彫刻は『強運』を意味するゲン担ぎであるため、犯人と被害者はギャンブル仲間であることも想像できる。
ここで注意したいのは、ギャンブル好きは「運が逃げる」として物の貸し借りを嫌う傾向にあることだ。
それなのに、犯人は被害者にジッポーを貸した。
その関係性は密なものだったと思われる。
ほとんど完璧のように思われた能木の発表を聞き終えると、風間は口を開いた。
「それから?」
学生たちはその問いに沈黙するしかなかった。
◆
あとから考え直して、仁志川はようやく風間が求めていた言葉にたどり着いた。
被害者はとても親しい友人に命を奪われたのだ。
だとしたら、被害者の心中はいかばかりだったか。
「きっと被害者は、無念極まりなかったことでしょう」
この一言をこそ、風間は学生たちの口から聞きたかったのではないか。
今回の特別授業の目的も、おそらくはここにある。
『机の上に教科書を積み上げ、捜査のテクニックや知識を詰め込むことにのみ血道をあげる上げるべきではない。何よりもまず、現場に残された被害者の声をくみ取ることを忘れてはならない』
仁志川は風間の教えをしっかりと胸に刻み込んだ。
第6話 美浦亮真
美浦亮真の成績は風間教場でもトップクラスだ。
しかし、彼には警察官として致命的な弱点がある。
それは『暴力が苦手』だということだ。
殴られるのが嫌い、という単純な話ではない。
美浦はどうしても生身の人間を殴ることができないのだ。
それでどうして警察官が勤められるだろう。
◆
「これを預かっておくように」
風間から手渡されたのは退校届の用紙だった。
『半引導』だ。
卒業までもう1か月もない。
ここでクビにされてなるものか、と美浦は焦った。
◆
護身術の授業。
お題は『ナイフを持った暴漢を、素手でいかに制圧するか』
「みんなの前で実演してみたいやつはいないか? お相手は特別に風間教官がつとめてくださるそうだ」
学生たちが沈黙するなか、美浦は震えを抑えながら手をあげた。
『半引導』を突き返す、これがラストチャンスになるはずだ。
◆
模擬戦が始まった。
『どう動けばいいか?』はしっかり頭に入っている。
しかし、やはり生身の人間を攻撃しようとすると体が思うように動かない。
すると、風間はそんな美浦をあざ笑うかのような口調で言った。
「そういえば、きみの親父さんも警察官だったな。わたしもよく知っているよ」
- パトロールの際は、犯罪が発生しそうなルートをわざと避けていた
- 相手が暴力団ふうだと、ろくに職務質問もしなかった
- 故人ノルマを達成できず、いつも遅くまで始末書を書いていた
「親が親なら子も子だな」
その一言が、美浦の頭の中の何かをはじけさせた。
雄たけびを上げ、風間の右手に手刀を叩きこむ。
風間の持っていたゴム製ナイフが地面に落ちた。
◆
「さっきのは、けっこう痛かったぞ」
「申し訳ありません」
「謝るのはわたしの方だ。さっきの発言は訂正する。言うまでもなく、きみのお父さんは立派な警察官だ。あれがきみを焚きつけるための暴言だったことは、もちろん承知だな」
「はい」
右手の甲をさすりながら、風間は頬を緩めた。
「誰かと格闘することなど、まるでできなかった。そのきみが、これだけ成長した。同僚と本気で殴り合うよう命じられ、尻尾を巻いて逃げ出した。6年前はな。そのきみがだ」
6年前、美浦は警察学校第八十九期長期過程の一員だった。
6年前は退校した。
しかし、今回は違う。
風間からの半引導は取り消された。
◆
卒業式当日。
「そうそう、わたしが奉職している理由を知りたいんだったな」
唐突にいわれ、美浦は思い出す。
風間は警察組織に数え切れない恨みがあると言った。
だから美浦は尋ねたのだ。「それなのに、なぜ奉職しているのか?」と。
そういえば、あのときは結局ちゃんと答えてもらってはいなかった。
過日のやりとりを思い出し、美浦は改めて尋ねた。
「教えていただけますか」
「会えるからだよ。きみのような学生に」
白髪義眼の担当教官の顔に、微かな笑みが浮かんだ。
〈完〉
感想
正直な感想は『ちょっと物足りないかな』でした。
いや、おもしろいんですよ?
おもしろいんですけど、期待以上のものではなかったというか……。
- よくいえば安定している
- わるくいえば新鮮味に欠ける
って感じで、及第点ではあるものの「おもしろい!」と喝采するほどではありませんでした。
考えてみれば、2冊あわせて同じ舞台設定の短編を12本も読んでいるわけです。
それはちょっと食傷気味にもなるかな、と。
そもそも、たぶん一気読みするようなシリーズじゃないんですよね。
「1日1短編」くらいのペースでゆっくり読んでいくぶんには最適な作品だと思います。
ちなみに、6つの短編にランキングをつけるとしたらこんな感じ。
- 第4話(菱沼羽津希)
- 第6話(美浦亮真)
- 第3話(津木田卓)
- 第1話(桐沢篤)
- 第5話(仁志川鴻)
- 第2話(忍野宗友)
上位に格付けしたのは、どれも結末に意外性があった短編です。
第4話は「絶対にドロドロのイヤミス展開になると思っていたのに、予想に反してさわやかな結末だった」という逆の裏切りが新鮮でした。
そういえば「教場2」は前作に比べて、イヤミスな話が少なかったですね。
第3話のラストはイヤミスでしたけれど、もうちょっとパンチがほしかったですし……。
たぶんイヤミス成分の少なさも、私が「物足りないな」と感じた原因なのだと思います。
まとめ
今回は長岡弘樹「教場2」のあらすじネタバレと感想をお届けしました!
では、最後にまとめです。
- 前作から続く安定のクオリティ
- イヤミスは少なめ
- 一気読みじゃなく、1話ずつゆっくり読んだほうがいいかも
前作とのつながりはほとんどなかったですね。
相変わらず風間はなんでもお見通しでした(笑)
ドラマ情報
さて、そんな「教場」がスペシャルドラマ化!
2020年新春に2夜連続で放送されます!
『フジテレビ開局60周年特別企画』と銘打たれているだけあって、とにかくキャストが豪華です!
風間公親 – 木村拓哉
宮坂定 – 工藤阿須加
平田和道 – 林遣都
楠本しのぶ – 大島優子
岸川沙織 – 葵わかな
日下部准 – 三浦翔平
樫村卓実 – 西畑大吾(なにわ男子 / 関西ジャニーズJr.)
都築耀太 – 味方良介
石山広平 – 村井良大
菱沼羽津希 – 川口春奈
南原哲久 – 井之脇海
枝元祐奈 – 富田望生
赤字にしてあるのは、小説「教場2」に登場したキャラクターです。
ドラマの原作は「教場シリーズ」で、菱沼羽津希より上は「教場1」の登場人物ですね。
いやぁ、それにしても本当にキャストが豪華!
今が旬の若手俳優詰め合わせ、みたいな(笑)
原作がおもしろかったので、ドラマにも期待したいと思います!
※「教場1」の内容はこちら!↓
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