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漫画『めぐる未来』あらすじネタバレ解説|最終回の結末は?【ドラマ原作】

辻やもり『めぐる未来』を読みました!

みんな大好きタイムリープものです。主人公の「未来」は妻を守るために何度も過去に戻っては、あの手この手で事件を阻止しようとします。

けれど、奮闘むなしく妻の「めぐる」は何度も殺されることに……。

最大の謎は犯人の正体、そして目的です。

いったい誰が、なんのために「めぐる」を殺そうとしているのか?

そこにはとんでもない真相が隠されていました。

というわけで、今回は漫画『めぐる未来』のあらすじがよくわかるネタバレ解説をお届けします。

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

感情を表に出さない夫・未来は、明るく無邪気な妻・めぐると幸せに暮らしていた。

だが、未来は妻にも秘密にしている、感情の起伏によって【過去に戻ってしまう病】を抱えていた。

そんなある日、未来のもとに不審な電話が……。

そして3日後、妻が死亡したことを知らされる。

感情が爆発して過去に戻った未来は、妻を救うために行動するが――。

(単行本1巻のあらすじより)

ループ1回目

めぐるは勤めている出版社の外階段、四階相当の高さから落ちて亡くなっていました。

未来は数日前にかかってきた不審な電話のことを真っ先に思い出します。

『ころすよ』

めぐるが何者かに殺されたのだとすれば、容疑者は社内の人間に絞られます。なぜなら、犯行現場の外階段は部外者が立ち入れない場所だからです。

未来はデザイナーとしてめぐるの出版社と契約を交わし、社内に潜り込みます。

めぐるを救うことそのものは難しくないように思われました。

めぐるの死亡推定時刻は6月16日の16時~16時30分にかけて。外階段という犯行場所までわかっているのですから、そこで待ち構えていればいいだけの話です。

そうして未来は外階段へと向かったのですが……意外なことに何も起こりませんでした。

未来が社内に乗り込んできたことで、犯人は計画を中止したのでしょうか?

ともあれ、16時30分をすぎてもめぐるは生きています。

未来は運命を変えることに成功した……なんて、まさかそんな甘い話で終わるはずもありません。

ぱんだ
ぱんだ
!?

その日の帰り道、めぐるは背後から黒いパーカーの男に刺されて亡くなります。

すぐ隣には未来もいたのに、どうすることもできませんでした。ほんの一瞬、めぐるから目を離しただけ。その一瞬の間にすべては終わっていました。

絶望する未来に、再び非通知の電話がかかってきます。

『ころしたよ。でも、そうぎのひはざんねんでした。おくさんがころされたのにずっとむひょうじょうで、かなしかったです』

めぐるが倒れると同時に、未来は刺される直前に戻ろうとしました。しかし、そのタイムリープは失敗に終わってしまいます。どの時間に戻るかは(少なくともこの時点では)コントロールできません。

葬儀の様子を知っているということは、犯人はやはり社内の人間だったのでしょう。

未来は問います。「おまえの目的は何だ……?」

男か女かもわからない、加工された音声で犯人は答えました。

『そういうところですよ。じかくがないのはいちばんの“つみ”だとおもいます』


ループ2回目

未来は再び6月14日に戻ってきました。

事件の2日前。今度こそはめぐるを救わなければなりません。

未来は病気の発症を防ぐため、子どもの頃から感情を抑えて生きてきました。そうした生い立ちのため人付き合いは苦痛ですらあり、めぐる以外の人間は誰も信用していません。

けれど、もはや手段を選んでいる場合でもありません。

未来はめぐると同じ営業部のふたりに協力を仰ぐことにしました。

めぐるの友人でもある干支ゆりか。そして、めぐるに好意を寄せる四季村隆道。

「お願いです。協力してください。このままだと妻は間違いなく殺されてしまいます…!」

あまりに突拍子もない言い分です。妄想に憑りつかれている、と判断されても仕方ありません。

事実、四季村は未来を信用せず、協力を断りました。

一方、干支ゆりかはというと……

「協力しますよ。全てあなたの妄想だったとしたら別にそれでも良い。だけど、このまま何もしないで本当にめぐるが殺されたら、『今の私』をどれだけぶん殴っても気が済まないくらい後悔する。それだけは絶対に嫌なんです」

そうして、3度目の6月16日が巡ってきます。

会社からの帰り道。犯人は前回と同じく未来とめぐるを尾行していました。

後方に待機している干支ゆりかから報告を受けると、未来は狭い路地に曲がります。そして不意に振り返ると、犯人に先制攻撃しました。天気は雨。たたんだ傘での一撃です。

黒いパーカーの犯人の手から刃渡りの長いナイフが落ちます。

成功した! そう思った次の瞬間でした。

(は……? 拳銃……?)

犯人は銃を取り出し、その銃口をめぐるに向けていました。とっさのことに未来の反応が遅れます。衝撃音が響いて……

 

犯人が、倒れていました。

いいえ、正確には組み伏せられていました。間一髪で突進してきた四季村が、体当たりした勢いで男を取り押さえていました。

一度は未来の協力を断った四季村でしたが、こっそりゆりかに連絡を取り、めぐるを助けるべく待ち構えていたのでした。

ぱんだ
ぱんだ
よくやった!

さて、ここで良い報せと悪い報せがあります。

犯人には仲間がいました。これが悪い報せです。

チンピラ風の仲間はめぐるの後頭部めがけてバットを振り下ろしてきました。かろうじて未来が庇ったものの、代わりに未来が昏倒してしまいます。

そのどさくさにまぎれて黒いパーカーの犯人も逃がしてしまいました。

では、次に良い報せです。

未来が目を覚ますと、そこは6月17日の世界でした。

(時間が進んでる……変えられたんだ。めぐるさんが生きてる未来に)

とはいえ、まだ安心はできません。犯人はいまだ逃走中です。まためぐるの命を狙ってくるに違いありません。

ところでその犯人ですが……単行本2巻のラストではその顔が明かされました。

額に大きな傷のある男。出版社の誰でもありません。

男は【共犯者】らしき人物と電話をしています。命令で動く兵隊(チンピラ風の仲間)のほかに、手を組んでいる相手がいるようです。

その共犯者こそ、出版社の誰かなのでしょう。

「今でも思い出すよね。あの時のこと」共犯者の声に、犯人の男は答えます。

「あぁ…忘れたとは言わせねぇぞ。襷(たすき)未来」


三度目の喪失

ここで一度、状況を整理してみましょう。

第一に、犯人は複数犯です。めぐるを外階段から突き落とした出版社の誰か、そしてめぐるを刺した黒いパーカーの男。

非通知で電話をかけてきた人物は葬儀の様子を語っていたことから前者だと思われます。

第二に、犯人たちの目的はどうやら未来のようです。これまでの発言から察するに、犯人たちは過去になんらかの因縁があり、未来のことを根深く憎んでいるようです。

彼らは未来への復讐として、めぐるを殺そうとしているのでしょう。とはいえ、未来には誰かから恨みを買った覚えなどありません。

しいて過去の出来事を挙げるとすれば、未来は中学生の頃に一度だけ《発症》により過去に戻ったことがあります。亡くなるはずだった男の命を救うためでした。

男は屋上から突き落とされて殺されるはずでした。見も知らぬ男でしたが、目の前で死なれたのでは放っておけません。未来は運命を変えて事件を未然に防ぎました。

警察から感謝状も贈呈された、どこからどうみても「正しい行い」です。この出来事が現在のめぐるを巻き込んだ事件に関係しているとは思えません。

ぱんだ
ぱんだ
ほんとにぃ?

まぁまぁ、そこはおいおいということで……。

さて、二度目の襲撃をくぐり抜けた未来たちでしたが、すぐさま次の展開が訪れます。

めぐるが行方不明になってしまうのです。

結論からいえば、めぐるは出版社の【ある人物】に拉致され、監禁されていました。

そうして最終的には監禁場所ごと燃やされ、またも亡くなってしまいます。

死に様を見せつけるためか、あるいは道連れにしようとしてのことか、犯人は正体を隠そうともせず、火の手の上がった監禁場所を未来たちに開示してきました。

その人物こそは、ゴスロリ服がトレードマークの日南小夜。めぐるが外階段から突き落とされた最初の事件では遺体の第一発見者だった人物です。

日南小夜は、めぐると一緒に焼死していました。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと!?


因縁

出版社の内部に潜む共犯者は日南小夜だったのでしょうか?

いいえ、だとしたら無理心中のような状況に納得ができません。犯人たちの目的は未来を苦しめることだったはずです。心中などという行為に行きつくはずがありません。

では、日南小夜は何者で、どうしてめぐると無理心中したのでしょうか?

過去に戻った世界で、めぐるはその答えを本人……日南小夜から聞き出します。

「それじゃあ私と……一緒に死んでくれる? 私……“あの人”に言われ続けて気づいたの。人生はどう生きるかじゃなくて、どう死ぬかが重要だって。今まで何やってもダメだった。整形しても着飾っても明るく振舞ってもダメ。だけど……憧れの人と一緒に死ねたら私の人生少しは報われるよね」

日南小夜は黒幕の男に操られていました。歪んだ思想をすりこまれ、めぐると心中するよう仕向けられていました。早い話が洗脳ですね。

けれど、男の支配はそれほど強いものではなかったようです。めぐると言葉を交わしたことで、日南小夜は正気に戻ります。

「私、めぐるんにとんでもない迷惑かけてるんだ。知らない男の言うことなんて、聞くんじゃなかった」

場所は出版社の外階段。日南小夜はなにもかも諦めたような表情で小さく笑うと、ふわりと空中に倒れ込んでいきました。

そのまま落下すれば、最初にめぐるが亡くなった事件と同じ結末になるであろう高さです。

めぐるはとっさに手を伸ばし……

(後悔するのは、死んでも嫌だから!)

見事な一本背負いで、日南小夜を階段の内側に投げ戻しました。こんなこともあろうかと特訓していた成果です。

一方、地上では額に傷のある黒幕の男が、その様子を未来に見せていました。未来は短期間にタイムリープを繰り返した代償で体が動かなくなり、車椅子に乗っています。黒幕の男がすぐ隣にいるというのに、なにをすることもできません。

本来、黒幕の男は日南小夜やめぐるが落下する様子を目の当たりにさせるつもりだったのでしょう。一本背負いの直前、男はこのように言っていました。

「襷未来、これがお前が招いた未来だ。思い出したか? 15年前に自分が何をしたのか。結局……こうやって目の前で見せるのが一番良い。どんな拷問よりも『見てるしかない』って状況は、暴力的で、残酷で、無慈悲で、惨めで、脳みそに焼き付いて離れねぇ」

一本背負いが決まると、男は束の間呆然とした表情を浮かべ、無言のままその場を去っていきました。

またもや犯人を逃がしてしまったわけですが、いたちごっこはもう終わりです。

警察からの電話。通話先の刑事が言います。

「実は、15年前の件をこちらで調べていたのですが、襷さんにお話ししたいことがありまして――」

捜査一課の刑事からもたらされた情報により、未来はついに事件の真相にたどり着きます。

「わかったかもしれない……犯人が……。とにかく……社員全員を集めよう」

物語はいよいよクライマックス。事件の全貌はもうすぐそこまで迫っています。

<すぐ下のネタバレに続く>


ネタバレ

警察からもたらされた情報は、次のようなものでした。

1.15年前に未来が助けた男(鈴村和樹)は家庭内でのトラブルが原因で何度も警察の世話になっていた。

2.鈴村とその妻は既に死亡している。

3.鈴村家には長男と長女がいた。

行方不明になっている長男は生きていれば現在29歳。額に傷のある男だと見て間違いないでしょう。

一方、長女は両親の死後、児童養護施設に入所した後、里子になっているとのことでした。年齢は現在25歳。

社内に潜む【もう一人の犯人】の正体が鈴村家の長女だとすれば、性別と年齢の条件をクリアする人物はただ一人だけです。

その人物とは……

「あなたに言ってるんですよ、鈴村さん。いや違う…・・今の姓は確か阿頼耶(あらや)でしたね」

阿頼耶清美。化粧っ気のない地味な外見で、内気ながらも気遣いのできる小動物系の後輩。

社内で最も無害そうな彼女こそ、額に傷のある男の妹にして、復讐のためめぐるを何度も殺してきた犯人の一人です。

そうとわかって振り返ってみれば、彼女がそれとなく未来を誘導してきたことがわかります。

出版社の会議室。未来は社員全員の前で清美を【犯人】だと名指ししました。

四季村や干支ゆりかには事前に協力を頼んでいます。狭い会議室から清美を逃がしはしません。

とはいえ、今のところ清美には罪がありません。めぐるはまだ生きていますし、これまでの襲撃の実行犯は兄のほうです。

法で裁けない以上、残された手段は【説得】だけ。未来は清美をまっすぐ見つめて言います。

「俺が15年前にあなたの父親を助けたことが原因なら謝ります。だからお願いです。警察に全て話してください。あなたが犯人でないならお兄さんを止めるために動いてほしい」

「家族なら……助けましょうよ」未来が口にしたその一言で、清美は豹変しました。

本性を現した、というべきでしょうか。清美は堪えきれないといった様子で笑い出したかと思うと、どす黒い感情を隠そうともしない昏い瞳で見つめてきます。

「襷未来がバカすぎて、ごめんなさい笑っちゃいました。でも、そういうところですよ? 自覚がないからそういうこと言うんでしょうけど……『家族なら』とか関係ない……いるんですよ? 救う価値のない人間って」

清美は鈴村家の過去を語り始めます。

15年前、未来が過去を変えて男の命を救った裏側の物語。ありていにいえば、兄妹の父親である鈴村和樹は最低な人間でした。家庭内を理不尽な暴力で支配する絶対君主。

それはDVという言葉では生ぬるいほどの地獄でした。妻を、息子を、娘を。筆舌に尽くしがたい仕打ちで、鈴村和樹は壊していました。

兄の額の傷も、父親から振るわれた暴力の痕です。

しかし、そんな地獄から解放される日が来ました。子どもたちを守ろうと、母親が夫の殺害を決意したのです。

「私が……あの人を殺すから」

母親は酔いつぶれた鈴村を担ぐと、一人で屋上まで運んでいきました。そんな母親の姿を後ろから見守っていた兄妹は、ようやく自由が手に入る、今よりも明るい未来が待っていると胸に希望を抱いていました。

しかし……

ぱんだ
ぱんだ
あ……

彼ら家族にとって希望そのものだった殺人は、当時中学生だった未来によって防がれてしまいました。

その後、母親は自殺。父親もあっけなく病死。

両親を喪った兄妹に待っていたのは解放でも自由でもありませんでした。手遅れだったのです。長年の虐待でズタズタになった心では、もはやふつうに生きていくことさえできません。

「お母さんに会いにいく」と清美は言います。清美にはもう【生きる理由】がありませんでした。だから、兄……鈴村まことは妹に生きる理由を与えることにしました。

「これからやることは1つだ。襷未来。覚えてるだろお前も。俺たちの……復讐はまだ何も終わってない。自分がしたことを後悔するように、なるべく長い時間をかけて何度も地獄を見せる。嫁ができれば嫁を殺すし、子どもができれば子どもを殺す。楽な死に方は許さねぇ」

兄妹は復讐に生きる意味を見出しました。

兄の判断はある意味、正しかったのかもしれません。事実、清美はなんら罪を負うことなく、これまでまっとうに生きてこれたのですから。

「清美、これだけは約束してくれ。お前はこの先まともな世界を普通に生きろ。汚れ役は2人もいらねぇ。お前は見てるだけでいい。楽しむだけで良い。それが俺の、生きがいになる」

「俺の分までまともに生きろよ」兄、鈴村まことはかつてそう清美に言い含めました。

そして、その志はいまも生きています。

鳴り響く警報音。清美を追いつめるための会議室に、刑事たちの返り血を浴びた男が乱入してきました。手にはべっとりと血のついたナイフ。会議室を一瞥すると、男は怒号を放ちます。

「おい、やめろ!!」

兄の叫びはしかし、妹を制止できませんでした。誰もが乱入者に目を奪われているなか、未来の背後には包丁を振りかぶった清美の姿がありました。

ドッ!!

刃は未来の首を裂き、そして……

「ごめんね、お兄ちゃん。約束……守れなかった」


結末、そして……

薄れゆく意識のなか、未来は痛感していました。過去に戻る病は、決して万能の能力ではないのだと。

これまで未来は過去を変えて何度もめぐるを救ってきました。しかし、そのたびにまた別の方法でめぐるが殺される結果になってしまいました。

諦めずに過去を変え続けたところで、同じことの繰り返しなのかもしれません。いいえ、むしろさらに悪い方向へと転がっていく危険性すらあります。

未来の父親は、未来の母親を交通事故から庇って亡くなりました。未来と同じ【過去に戻る病】があったのに、です。そこが彼にとっての【落としどころ】だったのでしょう。

【幸せな未来】を求め続ければキリがありません。未来は思います。

(もうやめよう。めぐるさんの命は救えた……最悪の結果は回避できたんだ……)

未来が父親と同じ結末をたどろうとした、その時でした。

「お願い……未来くん……死なないで……こんな最後……あんまりだよ」

ボロボロと涙をこぼすめぐるの顔を見て、未来は思い出します。夫に先立たれた母親が、どれだけ悲しみ、どれだけ孤独な人生を送ってきたのかを。

愛するめぐるを同じ目に遭わせるわけにはいきません。

とはいえ、数日前からやり直したところで結果は変わらないでしょう。

いつにもどるべきか、未来にはもうわかっていました。

「めぐさんに会えて……幸せだった。ありがとう……」

泣き笑いの表情で最愛の妻に感謝の言葉を伝えると、未来は過去へと旅立ちました。

月日をさかのぼること、15年

未来が目を覚ますと、そこは実家の自室。狙い通り、中学生時代の身体に戻っていました。

ぱんだ
ぱんだ
15年!?


めぐる未来

屋上から鈴村和樹が落とされる様子を、未来は路上から見届けます。

それは二度目の光景。かつて未来は過去を改変して男を救いましたが、今度は違います。

鈴村家の兄妹を救うため、彼らとの因縁をなかったことにするため。未来はただ黙って男の死を見過ごしました。

ある意味、本来あるべき運命に戻ったといってもいいでしょう。

あとはめぐると再び結ばれれば今度こそハッピーエンドですが、現実は甘くありません。

感情を抑えるため他人と距離を取って生きてきた未来が、めぐると結婚できたことからして、そもそも奇跡のようなものだったのです。

過去が変われば、未来も変わります。ループ前のような運命的な出会いは、今度の世界では期待できないでしょう。

もちろん未来もそのことは承知していました。やり直した世界ではめぐると結ばれないかもしれない。そのリスクを覚悟して、過去に戻ってきました。

とはいえ、まさかめぐるの実家が火事になるなどとは、未来も思っていませんでした。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと!?

そのままの事実です。未来が男を救わなかった世界では、めぐるの実家は全焼してしまっていました。一家は無事だったそうですが、すでに引っ越してしまったあとで、居場所は不明。

今度の人生では未来がめぐるを追いかけなくてはならないのに、これではどうしようもありません。

未来は思います。

(この世界は全員が綺麗に救われるほど都合よくできてない。火事を止めるために過去に戻ればまた未来が歪む。幸い……めぐるさんも両親も怪我もなく無事だ。大丈夫。あとはもうこの選択が一番「最善」だったと証明していくしかない。この先に続く――未来で)

10年後。

ぱんだ
ぱんだ
10年後!?

24歳になった未来は、少しずつ自分を変えていこうとしていました。

デザイナーとしての仕事の傍ら、近所のカフェでアルバイトしているのもその一環です。

ある日のこと、未来はドリンクを倒し、お客様の服を汚してしまいます。

未来は固まってしまって身じろぎもできませんでした。

盛大なミスをしてしまってどうすればいいのかわからなくなってしまったから……ではありません。

「めぐさん……?」

未来が気づかないほど雰囲気が変わってしまっていましたが、その女性は確かに永代めぐるでした。

無表情。無感情。無気力。

明るく、無邪気で、いつも笑っていためぐると同一人物だとはにわかに信じられません。

人を遠ざけようとするかのような彼女の雰囲気は、むしろめぐると出会う前の未来にそっくりです。

思えば、めぐるとの出会いも喫茶店でした。

同じように飲み物を服にかけられて、大丈夫だといっているのにお詫びがしたいとしつこくて……気づけば好きになっていました。

今度は未来の番です。

役を入れ替えた芝居を演じるように、未来はめぐるとの出会いをやり直します。

ちょっと強引に食事に誘って、これきり二度と会いたくないと口にするめぐるを「最後だから」と説得して海に連れて行って。

「あの……なんで私をここに連れてきたんですか?」困惑するめぐるに未来は言います。

「だって海ですよ。楽しいじゃないですか……!!」

このセリフもかつてめぐるが言ったものです。

当時の未来がそうであったように、めぐるも観念したかのように思われました。

以下、めぐるモノローグです。

(今思えば、私は間違いなくこの時間を楽しんでいたと思う。この人と一緒に過ごす時間だけはいつもと違って、景色が違って見えて、世界は何一つ変わってないのに幸せだと思えて――)

ぱんだ
ぱんだ
おお!

(彼と一緒に過ごす時間が増えるほど――怖くなった。同じことの繰り返しだと思えて。だから私は結局、彼の前からいなくなった)

ぱんだ
ぱんだ
なんで!?


最終回

めぐるは暗い海の底を漂うような人生を歩んできていました。

自分のせいで家が火事になったこと。そのために夢をあきらめなければならず、大学も辞めねばならなかったこと。こんなはずじゃなかったと後悔するばかりの毎日は、めぐるをゆるやかに絶望させていきました。

未来の前から消えたのは、そんな苦しい過去をどうしても思い出してしまうから。

だというのに、今めぐるの前には未来が立っています。よほど探し回ったに違いありません。

未来はめぐるの身の上話を黙って聞くと、ひと言「大丈夫」だと伝えます。

「ふざけないで! そんな言葉で片づけようとしないでよ! バカにしないで! 他人の人生なんて背負う気もないくせに!!」

我を忘れて取り乱すめぐるに、未来は……

(無責任に他人の人生は背負えない。誰かの人生を変える権利もない。結局、俺に今できることは、自分の想いを言葉にして伝えることくらいだ――)

「俺は……永代さんのことが好きです」

「私、本気で怒ってるのに何ですか急に……!?」

「怒ったり照れたりする永代さんが好きです」

「バカにしてる! やっぱり襷さんは私のことをバカにしてる!」

「バカにしてたら告白なんてしませんよ」

深刻だった雰囲気はいつしかゆるんでいて、最後には未来もめぐるも堪えきれないというように笑みをこぼしていました。

それから、数年後――

未来とめぐるは再び夫婦になっていました。めぐるは伸ばしっぱなしだった髪をばっさりと切り、夢だった出版社への就職を果たしています。

まるで物語冒頭のやり直しです。めぐるが未来に出版社の仕事を頼む場面も、未来が営業部の扉を開けて社員たちに挨拶する場面も。

「はじめまして。襷未来です」

ただし、室内に阿頼耶清美の姿はありません。彼女は兄とともに刑務所の前で母親の帰りを出迎えていました。

感極まって母のもとへと走り出した妹の背を見ながら、額に傷のある兄はぼやきます。

「……たくよぉ、待ちくたびれたぜ」

こうして、めぐるを巻き込んだ悲劇は終わりを迎えました。

もう夫婦を脅かす影はありません。

彼らはこれから、生まれてきた赤ちゃんの世話にかかりきりになるでしょう。

ふたりの子どもには【過去に戻る病】が遺伝しているに違いありません。それでも生むと二人で決めました。

 

「……未来くん。私、生きててよかった」

「うん……俺もだよ、めぐさん」

<おわり>

ぱんだ
ぱんだ
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まとめ

今回は辻やもり『めぐる未来』のあらすじネタバレ解説をお届けしました。

やり直すほどに状況が好転していく一般的なループものとは一味違う、シビアなサスペンス展開がおもしろかったですね。

個人的には幕引きの流れが好きで、鈴村兄妹を打倒する結末ではなく、「運命に介入しない」選択をして自分の行動によって未来を掴むという終わり方も素敵だなと思いました。

特に好きだった場面は最終巻の、未来がめぐるとの出会いをやり直す一連の流れですね。

めぐるのおかげで他人とかかわる大切さを学んだ未来が、今度は過去に囚われてしまっているめぐるの人生に一生懸命かかわろうとする。そこには第一巻からは想像もつかないほど表情豊かな未来がいて、胸が熱くなりました。

全五巻と読みやすいので、次はぜひ漫画の絵とあわせて物語をお楽しみください。

ドラマ情報

動画

https://youtu.be/J5DNl5WBLvw?si=o0t8lOy_t7VLqjtL

キャスト

  • 萩原利久(未来)
  • 早見あかり(めぐる)

放送日

2024年1月18日スタート 毎週木曜日23:59~24:54

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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