小説「サクラダリセット」が映画化&アニメ化!
というわけで、原作である小説シリーズ全7巻を読んでみました!
1巻1巻のストーリーが面白いのはもちろん、物語全体を貫く本編の謎が徐々に進行していく構成がおもしろい!
最終巻に近づくにつれて、前半に配置された伏線がこれでもかとキレイに回収されていく様子も最高でした。
今回はそんな「サクラダリセット」の謎や結末についてネタバレ解説していきたいと思います!
Contents
はじめに
サクラダリセットの世界設定
・咲良田(サクラダ)…とある地方都市。住民の約半数が特殊な能力を保有している。能力者が咲良田を出ると、能力の記憶は消えてしまう超能力者の町。
・管理局…咲良田の能力を管理する組織。強力な権力を持ち、能力によるトラブルに対応し、町の平和を保っている。
・奉仕クラブ…強力な能力持つ学生は半強制的に奉仕クラブに所属することになる。管理局からの依頼があれば問題に対処する。
「リセット」について
物語のヒロイン・春埼美空(はるきみそら)の能力は「リセット」
最大で3日間の時間を「なかったこと」にして、世界を過去の状態に再構成することができる。
ただし、いくつか制限もある。
・リセットは「セーブ」した瞬間にしか戻れない
・セーブは72時間で効力を失う
・リセットから24時間はセーブすることができない
リセット後、人々は「なかったこと」になった時間の記憶を失う。使用者の春埼も例外ではない。
基本的に過去が繰り返されるだけなので、リセットしても未来は変わらない。
…主人公・浅井ケイの能力がなければ。
ケイの能力
ケイの能力は「記憶保持」
簡単に言えばすべてを「忘れない」ことがケイの能力。
そのため、ケイだけはリセットしても「なかったことになった時間」の記憶を維持できる。
※能力同士で矛盾が生じる場合は、より強度の強い能力が優先される
ケイと春埼の2人がそろえば、リセットによって「すでに起こった過去」を変えることができる。
あらすじネタバレ(前半)
ケイと春埼が出会ったのは2年前、2人が中学2年生のころだった。
2人を引き合わせたのは、どこか不思議な雰囲気を持つ少女・相麻菫(そうますみれ)
その夏、3人は中学校の屋上で同じ時間を過ごし、ケイと春埼はお互いに惹かれていった。
そして、事故により相麻菫が亡くなった。
ちょうど、ケイが春埼にリセットを指示してから24時間以内のことだったので、過去を改変することは不可能。
ケイは相麻菫を生き返らせるために仲間を集め、管理局に対しクーデターを起こしたが、結局は失敗に終わった。
そして、高校1年生の今。
ケイと春埼は奉仕クラブに所属し、二人一組で管理局からの依頼をこなしていく日々を送っている。
例えば、触れたものを「消す」能力を持つ同級生・村瀬陽香による管理局へのクーデターを止めること。
強力な力を持つ村瀬を相手にケイは一度命を落としたが、事前に計画していた通りリセットにより復活して村瀬を無力化する。
次に、ケイと春埼は3人の能力者に関わることになる。
・相手の能力を封じることができるケイの後輩…岡絵理(おかえり)
・管理局のシステムの一部となった名もない未来視の老婦人…魔女
・10分間だけ写真の中の過去を再現することができる老人…佐々野
ケイは余命の少ない魔女を管理局の監視下から脱出させ、恋人である佐々野のもとに届けようとする。
一方、ケイと敵対する岡絵理は春埼のリセット能力を封じる。
しかし、ケイは機転によって春埼の能力を取り戻し、魔女と佐々野を咲良田から逃がすことに成功した。
そして、ケイは未来視の魔女から重大な事実を告げられる。
『相麻菫は、魔女と同じ未来視の能力者だ』
未来視の能力者が、事故で命を落とすわけがない。
(…なんてことだ。きっと、彼女はすべて予定していた)
ケイの手元には、佐々野から受け取った2年前の相麻菫が映った写真がある。
この写真の中に入り、ケイの身近にいる適切な能力者を組み合わせれば、写真の中の相麻菫は中2の状態で「生き返る」
ケイの周りに適切な能力者を集めたこと、これまでの騒動、そして自らの復活。
すべては、2年前に命を落とした相麻菫が計画した通りに進行していた。
…相麻菫の目的はわからない。
ケイたちは、佐々野の能力により写真の中に入る。
村瀬の「消す」能力による「リセットの影響を打ち消す」状態を、「能力をコピーする能力者」坂上央介が相麻菫にコピーする。
その状態でケイが春埼にリセットを命じて…
少し過去になった現実世界に、本物とも偽物とも言えない中学2年生の相麻菫が完全復活した。
相麻菫「すべては、あなた(ケイ)を主人公にするため。あなたは咲良田の能力全てを支配する」
それ以上、相麻菫が事情を説明することはなかった。
前半のネタバレ解説
物語前半、ケイの目的は「相麻菫を生き返らせること」でした。
だから、かつて反逆した管理局の手伝いをしつつ適切な「能力者探し」をしていたんですね。
ところが、物語が進むにつれて「相麻菫は未来視の能力者で、一度亡くなって生き返ることまでが彼女の計画だった」ことが判明するわけです。
これまでケイが選択してきたことも全て「相麻菫の予定通り」
ここで大きく話が変わってくるわけです。
ちなみに、第3巻は2年前の出会いと別れを描いた「過去編」
ここでは過去の3人の関係性が描かれています。
・相麻菫は浅井ケイが好き
・春埼美空も浅井ケイが好き
・浅井ケイは春埼美空が好き
「ここまで相麻菫を生き返らせるを目的としていたケイが好きなのは、やっぱり菫なんだろうな」と思いきや、わりと一目ぼれで本命は春埼だったということにビックリ!
しかし、ケイと春埼を引き合わせたのは相麻菫なのですから、ちょっと意図が分からなくなります。
菫は未来視の能力を持っているので、ケイが春埼を好きになることはわかっていたはず。
でも、その菫が好きなのはケイなのです。
そんなこんなも含めて「相麻菫の目的は?」という謎を残したまま、物語は後半へと突入していきます。
あらすじネタバレ(後半)
管理局対策室室長・浦地正宗。
彼の個人的な目的は「咲良田から能力を消し去ること」
魔女がいなくなり、管理局には「未来視によって支えられていた危機対応能力」がなくなった。
このままでは能力によるトラブルを管理局が処理し続けることは難しい。
「能力が存在することにより、人々は不幸になるだろう」
咲良田に能力が存在した40年間を消し去り、現実を再構成する…「サクラダリセット(聖なる再生)」
浦地の計画は、今まさに実行段階に入ろうとしていた。
【始まりの1年間】
咲良田に能力が生まれたのは40年前。
そこには管理局の創始者となる3人の能力者がいた。
1人目は魔女。彼女は自分がこの先数十年間「未来視のシステム」として管理局の犠牲になることを知っていた。
2人目は浦地の父親。彼の能力は情報の消去。彼の能力によって全世界の能力者は「能力に関する記憶を失う」
3人目は浦地の母親。彼女の能力は「指定したものを失わないこと」。彼女の能力によって咲良田のみ例外的に「能力の対象外」にできる。
つまり、咲良田を能力者の町にしている境界線をつくっているのは浦地の両親なのだ。
浦地の両親は管理局の人間・加賀谷の「ロックと解除」の能力により時を止められている。
これにより、境界線システムが能力者の寿命によって喪失することはなくなった。
そして現在、咲良田で能力の連続暴発事件が発生する。
黒幕は浦地だ。
能力の存在が決定的に危険視されれば、管理局は境界線の範囲を変えて「全世界から能力を消す」という決断を下さざるを得ない。
相麻菫によって浦地の計画を知ったケイは思う。
「能力をなくさせるわけにはいかない。僕は能力が好きだ」
能力とは奇跡だ。それはきっと誰かにとっての救いになるはずだ。
ケイは浦地の計画を阻止することを決意する。
しかし…
浦地「2代目の魔女。私の計画は、成功するのか?」
相麻菫「あなたの計画は成功する。私はその未来を見ている」
浦地「君は、私の計画を阻止するか?」
相麻菫「いえ、私は何もしない。この街から早く能力が消えればいいと願っているわ」
浦地の隣には、嘘を見抜く能力者「索引さん」がいる。
索引さん「嘘ではありません」
未来視の能力者の言葉は絶対だ。浦地は計画の成功を確信する。
浦地は優秀であり、浅井ケイを警戒していた。
浦地は計画通り、決定的な能力暴発事故を演出する。
もう管理局が最終決定を下すことは止められない。
頼みの綱である「リセット」も、春埼が隔離されて使えない。
浅井ケイにはどうすることもできず、咲良田から能力に関する記憶が消え去った。
強度の記憶保持能力を持つ浅井ケイ以外の人間は、能力を使えなくなった。
これでゲームオーバーだ。
『相麻菫』の計画通りに。
サクラダリセットの直前、ケイは相麻菫と会話していた。
ケイ「君が死んだのは、相麻菫ではなくなるためだね?」
信じられないが、それしかない。
相麻菫「正解よ、ケイ」
写真の中から再生した彼女のアイデンティティは、オリジナルの相麻菫とは違う。
だから相麻菫は浦地に「君」という言葉を使わせるように仕向けた。
浦地「君は、私の計画を阻止するか?」
ニセモノの相麻菫が「阻止しない」といった言葉に嘘はない。
浦地の計画を阻止するのは、2年前に亡くなった「本物の相麻菫」だ。
未来視能力者である相麻菫は、2年前にすべての指示を「声を届ける能力者」を使って2年後のケイに送っていた。
浦地の計画を阻止するために…だけではない。
「相麻。ありがとう、君は僕の幸せを守ってくれた」
浦地の計画を阻止するだけなら、他に方法がいくらでもある。
彼女の努力も、苦痛も、命も全部…浅井ケイを守るためだけに。
相麻菫「馬鹿みたいでしょう?私の好きな人が、別の女の子に好きだと伝えるのを待つために、私は長い間、何も話さなかった」
ケイと春埼の幸せを守り、なおかつ浦地の計画を阻止する…これが相麻菫の計画の目的だった。
能力の消えた世界で、ケイは行動を開始する。
相麻菫が残した佐々野の写真を使い「能力の記憶がある咲良田」を再現し、そこで春埼のリセットを使う。
これで世界は、ケイと春埼の想いが通じ合った直後、3日前の状態に再構成される。
相麻菫の計画はここまで。ここからは浅井ケイが物語を紡ぐ。
ケイと浦地による対話の席が用意された。
場所はカラオケルームの一室。
浦地は加賀谷と索引さんを連れて万全の態勢だ。
ケイ「僕はこの街に能力を残そうと思っています。この、綺麗な祈りのような力を捨てるのは、惜しい」
浦地「私は能力がすべて、この世界から消えてなくなるべきだと思っているよ。この、希望に見せかけて悲劇ばかりを生む力は、悪魔のようなものだ」
話し合いは平行線をたどる。そして、平行線でいる限り不利なのはケイの方だ。
ケイは自分が能力を完全に管理するから、浦地には監視役として協力してほしいと申しでる。
浦地「いいよ」
浦地はケイと握手した後、加賀谷とも握手するように求める。
加賀谷の手に触れれば時間が止まってケイの敗北、手を取らなくても交渉決裂でケイの敗北。
浦地の思惑通りだった。しかし…
「よろしくお願いします、加賀谷さん」
ケイは加賀谷と握手するが、その時間は止まらない。
加賀谷「能力の使い方を、思い出せません」
村瀬の能力で壁に穴をあけ、坂上がコピー能力を使って岡絵理の「記憶操作」能力をケイにコピーする。
これが加賀谷の能力を封じたカラクリだった。
続いて「世界を変化させる能力」宇川沙々音がカラオケボックスのビルを変化させてケイと浦川を車の中に誘導。
同時に、配置されていた多くの管理局員をカラオケボックスのビルの中に閉じ込めた。
浦川の誘拐が完了し、車が走り出す。
ここからが、ケイによる説得の本番だった。
車の中で、ケイは管理局の犠牲になっている両親の役割を猫に移し替えることが可能だと語る。
それにより、浦地の両親の時間を止めた加賀谷の罪悪感も消えるとも。
しかし、浦地はケイの正しさを認めつつも、能力は消すべきだという考えは変わらないと話す。
「ごめんなさい、浦地さん。実は、僕が説得していたのは、あなたではないんです」
車の助手席には「声を届ける能力者」中野智樹がいた。
そして、ケイの説得の言葉は智樹を通じて加賀谷に届けられていた。
実のところ、カギとなる人物は浦地よりも加賀谷だったからだ。
最終的に加賀谷が能力を使わなければ、咲良田から能力を消すことはできない。
「今回の件に関しては、あなたを支持します」
加賀谷からの電話は、簡潔だった。
これで、サクラダリセットは起こらない。
浦地はケイの協力者となり、一連の事件の幕は閉じた。
最後に残ったのは、相麻菫との決着。
ニセモノの相麻菫は、サクラダリセットを阻止できた段階でその役目を終えていた。
昏睡状態にある相麻菫は、このまま目覚めないかもしれない。
しかし、ケイは相麻菫を救いたいと願う。
「僕は世界で2番目に、相麻菫の幸せを願っています」
「あなたはスミレを助けに行くのね」
「ええ」
「スミレを一番にしにいくの?」
「2番で納得してもらいに行くんです」
「あなたは、とってもひどい人ね」
「はい。僕はひどくて、我儘なんです」
能力者に協力してもらい、ケイは夢の中で相麻菫と対面する。
「僕は君がしてきたこと全部で救われた。君のなにもかもに感謝している。間違いないよ。君の言葉のすべてが、君の努力のすべてが、僕の確かな幸せを作った」
「だから、お願いだよ。これからも僕を助けてほしい」
「これからも僕は、君のおかげで、幸せでいるんだ」
我儘で、エゴイスティックな浅井ケイの願い。
でも、きっとはじめから答えは決まっていた。
相麻菫は目を覚ます。
これからは、ケイの仕事上のパートナーとして彼を支えていくために。
咲良田の能力全てを管理していく仕事は、大変だ。
全てが終わり、最後に残ったのはケイと春埼。
春埼「これから髪を伸ばそうと思います。先ほど思い出したのです。貴方は昔、私の長い髪が綺麗だと言いました。覚えていますか?」
ケイ「もちろん。僕は記憶力が良いのが自慢なんだ」
ケイに触れる少女の小さな手の温度や重みまで、一つ残らず忘れたくはないと、ケイは願った。
<サクラダリセット・完>
後半のネタバレ解説
咲良田の能力を消し去りたい浦地 vs 咲良田の能力を守りたいケイ
これが後半の主なストーリーです。
あらすじ・ネタバレでは大幅に省略していますが、浦地が徹底的にケイを追い込む場面や、相麻菫が本当の目的を明かした場面、そしてケイが浦地に逆転する場面などは、これまでの伏線が見事に生かされていて読みごたえ抜群!
「ここにつながるのか!」とゾクゾクする感覚を味わえます。
最終的には、途中まで「勝利条件がない」という理由で不利だったはずのケイが加賀谷を説得してゲームセットという展開になりました。
とはいえ「サクラダリセット」は本質的に「咲良田の能力をめぐる物語」というよりは「少年と2人の少女の物語」といっていいでしょう。
心情描写を書き始めるとキリがないのでこちらもネタバレでは大幅カットしていますが、ケイ・春埼・相麻の会話は必見!
「そんな気持ちで、そんなことを言うのか!」
と思わず心震える展開は、ぜひ原作小説の方でチェックしていただきたいと思います。
ちなみに、最終的なまとめだけ書き出すとこんな感じ。
・相麻菫の目的は「ケイの幸せ」だった(自分の命まで捨てて、ケイが春埼と幸せになれる未来を選んだ)
・ケイが最後に選んだのはもちろん春埼
・ケイは今後、浦地や相麻たちと組んで管理局を発展させ、咲良田の能力を管理していく予定
まとめ
今回は小説「サクラダリセット」のあらすじ&ネタバレ解説をお届けしました!
特に最高だったのは最終巻!
「これまでの6巻は全部この1冊のためにあったんだ!」といいたくなるくらい伏線が綺麗に回収されていて感動しました。
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