吉村昭「破獄」がドラマ化!
脱獄王と闘う看守役をビートたけしさんが演じるということで話題になっています。
『監獄の守り神 vs 最強の脱獄王』
果たして勝つのはどっちだ!?…面白そうですよね!
さらに注目したいのは、実はこの「最強の脱獄王」は実在した人物がモデルになっているということです。
今回はドラマ「破獄」のあらすじ・ネタバレに加えて、実在した脱獄王のモデルや、原作小説との違いなどの点についてご紹介していきたいと思います!
Contents
ドラマ「破獄」と小説「破獄」
実は、2017年版ドラマ「破獄」は原作小説「破獄」とは全然違うモノです。
何が違うかと言われれば、そもそもビートたけしさんが演じる看守「浦田」は原作でちょこっとだけしか出てこない人物であり、物語の主な舞台である網走刑務所や札幌刑務所で看守をしてさえいません。
さらに細かいところまで言うなら、浦田は妻子を失っている設定でもなければ、「監獄の守り神」的な存在でもありません。
このことからドラマ「破獄」は原作の一部設定のみを踏襲して、大幅に再構成している作品であることがわかります。
私は原作小説の「破獄」を読んだのですが、この作品は決して「看守 vs 脱獄囚!」というエンタメ作品ではないんですね。
物語の主軸は「脱獄王・佐久間清太郎」と「戦時下と敗戦後の日本という国の歴史」の2本。
作者がこの小説で描いているのは脱獄王個人であり、刑務所(行刑)という特殊な視点から見た「時代・歴史」そのものです。
作中では戦中戦後の時代背景が詳細に描かれており…はっきりいえばかなり真面目でお堅い文章になっています。
ドラマ「破獄」はそのなかでも特に面白い「看守と佐久間のやり取り」に焦点を当て、なおかつ設定を大胆にアレンジすることで、全く新しい「手に汗握る看守対脱獄王の対決!」という物語に仕立て上げているんですね。
「破獄」のあらすじとネタバレ
日本行刑史において他に類を見ない未曽有の脱獄王・佐久間清太郎。
超人的な頭脳と肉体を持ち、看守の心理を鮮やかに見抜いてはするりと不敵に脱獄する無期懲役囚。
「破獄」の見どころはなんといっても「佐久間を絶対に逃がすまい」とあらゆる手を打つ看守たちを出し抜いて、見事に脱獄を果たして見せる佐久間の驚くべき手腕でしょう。
では、看守たちはいったい佐久間をどのように閉じ込め、佐久間はどのように脱獄を果たしたのでしょうか?
さっそく「破獄」のあらすじとも言える脱獄の顛末について見ていきましょう!
※以下、ネタバレ注意!(内容は小説「破獄」を基にしています)
昭和11年青森刑務所脱獄
準強盗致死罪により無期懲役。
仲間とともに強盗を働いた際、勢いで相手の命を奪ってしまった佐久間清太郎はまず青森刑務所に収監された。
が、すぐに脱獄。
佐久間はまず入浴時に手桶にはめられていた金属製のたがをひそかに外して房内に持ち帰り、隠した。
ついで、入浴後、房に入るときに湯でふやけた手のひらを錠の鍵穴に強く押し付け、その型を取り、さらに入浴中、臀部を洗うふりをよそおってたがを床のコンクリート面で摩擦し、合鍵を作った。
巡回する看守が廊下を遠ざかった折に、それを鍵穴に入れて錠が開くのを確かめ、交代手続きの前に必ず用を足しに行く看守の当直の夜を待ち、実行に移した。
また、佐久間は自分に対してきびしい扱いをするその看守を窮地に陥れるために、その夜を選んだのだった。
(恐ろしいほどの計画性と頭脳の冴えだ)
その後、佐久間は逮捕され宮城刑務所に収監。
後に東京の小菅刑務所へ移監されたが、開戦にともない秋田刑務所へ移監されることになった。
昭和17年秋田刑務所脱獄
秋田刑務所では佐久間の扱いに困っていた。
万が一、佐久間に脱獄でもされれば所長や看守たちは免職・減俸処分されてしまう恐れがある。
だというのに佐久間の態度は反抗的であり、気づけば手錠を外していたり、看守を脅したりする。
佐久間「私はいつでも逃げられるんですよ。そんなに厳しいことを言うと、あんたの当直の時に逃げますよ。それではあんたが処罰され、困るでしょう」
考えた末、佐久間は囚人たちが恐れる鎮静房に移されることに。
狭く頑丈で天井も高い…まさに堅牢。
しかし、佐久間はまたもやすやすと脱獄を果たし、看守たちの顔を青白くさせた。
佐久間はまず看守が視察窓を覗く時間を綿密にはかり、その間にふとんを巻いて壁に立てかけ、天井近くにある明かり窓の木製の枠が腐りかけているのを知った。
さらに窓枠にはめ込まれたガラス窓をとめている五寸釘も錆びついているのを眼にして、それを取り除くのは容易だと確信。
ふとんのなかに物を詰めて自らが寝ているように細工し、あとは超人的な身体能力でヤモリのように明かり窓から脱獄したのだった。
本来ならば囚人はふとんから顔を出して寝なければならないが、佐久間は看守たちを脅してふとんを被って寝ることを黙認させていた。
3か月後、佐久間は小菅刑務所の看守だった浦田の家(東京)に向かい自首。
動機は「看守の扱いがきびしかったから」と供述したが、その実、秋田の寒さを恐れたためであると推察された。
そして、佐久間は日本一の堅牢さを誇る北海道・網走刑務所へと送られる。
昭和19年網走刑務所脱獄
網走刑務所では佐久間の対応に全力を注いだ。
独居房に入れられた佐久間は鍵穴のない特製の手錠足錠をつけられ、しかも手錠は後ろ手につけられた。
これでは脱獄はおろか、飯を食うにも獣のように直接口で食わねばならず、仰向けに寝ることもできない。
もちろん絶え間なく監視の目も注がれている。
それでも、佐久間は脱獄を果たしてみせた。
佐久間はまず従順になったように装った。
これにより手錠は後手錠から前手錠に緩和され、足錠も外された。
さらに緩和は続き、入浴の際には手錠を外されるようになり、手錠をとめるナットの頭をつぶす工程も、手間がかかるため省かれるようになった。
すべて、佐久間の思い通りである。
佐久間は味噌汁を手錠のナットと視察窓のネジにたらし、腐食させはじめた。
・腐食が発覚してはまずいので、神経痛を理由に入浴の免除を請い、受理される。
・寒さしのぎの運動と称して手錠を壁に打ち付けナットをゆるませる。
・床板に古釘で傷をつけ、看守の目を獄房の下方にむける。
数々の下準備の末、佐久間はまたも厳しい看守が当直の日を狙って脱獄を決行。
手錠を外し、視察窓の鉄枠を取り除き、頭がちょうど抜けるほどしかないその隙間から房の外に出た。
その後、足音を忍ばせて走り、壁の天窓にたどりつき、頭で窓を突き破って獄舎の外に出た。
内塀を乗り越え、暖房用煙突の支柱を恐るべき怪力でひきぬいてかつぎ、走った。
支柱を外堀に立てかけ、刑務所の外に飛び降り、すぐに山中に入った。
すぐに看守たちや警察が包囲網をしいたが見つからず、佐久間は再び逮捕されるまで実に2年間にわたって逃亡を続けたのだった。
日本一の堅牢さを誇る網走監獄における、これが初めての失態であった。
昭和22年札幌刑務所脱獄
札幌刑務所でも佐久間の脱獄が恐れられ、特別な監視体制が敷かれた。
4人の専任看守が24時間体制で佐久間の一挙手一投足に目を光らせる。
しかし、
「逃走です。佐久間が逃走です」
佐久間はこのところ天井近くにある鉄格子のある小窓に視線を送っていたため、看守の目も頭上に注目していた。
ところが、それもすべて策のうちであり、佐久間はなんと床下から脱獄したのだった。
佐久間はまず便器のたがをはずし、釘できざみをつけてノコギリをつくった。
それを使用し、二日間で床板をひき切った。
板を引き上げてその隙間から床下にもぐり、食器で土を掘り進んで獄舎の外に脱出した。
再び大規模な佐久間包囲網が敷かれたが、やはり佐久間は発見されなかった。
府中刑務所
再逮捕された佐久間は再び札幌刑務所に収監されたが、後により近代的な刑務所である東京・府中刑務所に移されることになった。
府中刑務所の所長である鈴江はこれまでの佐久間の脱獄傾向に対策を打ち、独居房を改造。
房からすべての釘を取り除くなど、あらゆる脱獄の可能性を潰しつつ、佐久間の反感を買わぬよう、一見してそれとわからないように偽装した。
同時に、鈴江は「どんなに手を尽くしてもこの男は脱獄できる」とも感じていた。
そこで鈴江は逆転の発想として、これまでの佐久間の扱いからは考えられぬほどの温情措置をとることを決意。
手錠も特別なものは用意せず、逃走の危険性が高い炊事場での仕事も与えた。
最初はかつてない自由な扱いに戸惑っていた佐久間だったが、日に日に表情がやわらいでいく。
鈴江「なぜ、逃げんのだね。その気になれば、いつでも逃げられるだろう」
佐久間「もう疲れましたよ」
鈴江の問いに、佐久間はかすかに笑いながら答えた。
府中刑務所では佐久間を人道的に扱うし、札幌・秋田・網走のような寒さもない。
佐久間が脱獄することは二度とないだろう、と鈴江は確信していた。
その後、佐久間は鈴江と後任所長の尽力により54歳で仮出所となった。
正月には毎年、鈴江の家に挨拶に来たという。
老いて労働ができなくなってからは、府中の老人寮に収容。
最後は浅草の映画館で突然倒れ、心不全により没した。
71歳であった。
<破獄・完>
脱獄王・佐久間清太郎のモデルとは?
小説「破獄」はフィクションですが、実際には「実話をもとにした」という一文をつけてもいいくらい史実を参照して執筆されています。
中でも注目したいのは、やっぱり脱獄王・佐久間清太郎。
小説あとがきでも「実際のモデルがいる」と明かされているこの人物のモデルは、「昭和の脱獄王」として有名な「白鳥由栄(しらとり よしえ」その人です。
作中の佐久間と同じく、度重なる脱獄により白鳥由栄の名は実際に昭和の世に広まり、一部では英雄視すらされていました。
では、白鳥由栄とはどんな人物だったのか?
実のところ、その人となりは「破獄」の佐久間清太郎そのままなんです!
・手錠を引きちぎり、支柱を地面から引き抜く怪力
・自在に関節を外し、狭いところを潜り抜ける異能
・綿密な計画を立て、看守の心理を意のままに操る頭脳
実際の白鳥由栄の脱獄方法も、ほぼ「破獄」の佐久間と同じ方法でした。
特に「味噌汁で手錠を腐食させる」というエピソードは、白鳥由栄を代表する逸話ですね。
その人となりは、まさに脱獄の天才!
26年間の服役生活で4度も脱獄を繰り返しながら、その際に看守や職員を傷つけることは1度もなく…
脱獄の天才でありながら、同時に逃亡の天才でもあった白鳥由栄の累計逃亡年数は実に3年に及びました。
没年は1979年。
改めて経歴を見直してみても、尋常ならざる人物であることがわかりますね。
ドラマ「破獄」について
冒頭で述べたようにドラマ「破獄」の設定は原作小説「破獄」とは大幅に異なるものです。
とはいえ、100%違うのかといえばそうではなく、ドラマ「破獄」でビートたけしさんが演じる「浦田」は、小説に登場する数々の看守たちを1人の人物としてまとめたキャラクターなのではないかと思います。
網走刑務所で佐久間の専任看守を務めた藤原と野本。
札幌刑務所で佐久間の脱走を何としてでも阻止しようと苦心した亀岡戒護課長。
そして、晩年の佐久間に温かく接して脱獄の歴史に終止符を打った鈴江府中刑務所長。
それらの人物の集合体であるとすれば、確かに「監獄の守り神」という二つ名にも納得です。
結局、小説「破獄」における看守たちは佐久間に出しぬかれてばかりだったわけですが、ドラマ「破獄」では最強看守としての浦田がいるわけで、そのあたりの攻防がどのように描かれるかに注目ですね。
さて、ドラマ「破獄」の主な舞台は作中でもっとも見ごたえのある脱獄劇が繰り広げられた堅牢・網走刑務所!
その驚くべき脱獄が「実際に行われたこと」だと思って見れば、佐久間(白鳥)がいかに非凡な人物であったかを実感できることでしょう。
「絶対に脱獄させない」という信念と「絶対に脱獄してみせる」という執念のぶつかりあい!
実写で、しかもビートたけしさんはじめ豪華なキャスト陣で、その鬼気迫る一幕を見られるというのが今から楽しみでなりません!
まとめ
小説「破獄」がドラマ化!
今回はドラマの原作となる小説「破獄」のあらすじ・ネタバレや、脱獄王のモデルとなった人物などについてご紹介しました。
小説「破獄」を読んだ感想としては、かなり「時代を描いた作品」という趣が強く、脱獄囚や刑務所事情はそのためのフィルターとしての役割が強い印象でした。
それに対し、ドラマ「破獄」の見出しは『究極の脱獄&追跡エンターテイメント』となっており、原作以上に看守と脱獄囚による白熱の攻防が楽しめそうな予感です。
果たして、ドラマ版の最強看守・浦田進はどんな活躍を見せるのか?
実在した稀代の天才脱獄犯・佐久間はどんな風に再現されるのか?
人間技とは思えない網走刑務所からの脱獄シーンには特に期待大!
ドラマ「破獄」の放送が今から楽しみです!
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