古谷実「わにとかげぎす」がドラマ化！
主演を有田哲平さん、ヒロインを本田翼さんが務めるということで早くも話題になっています。
ちょっと変わったタイトル「わにとかげぎす」とは、グロテスクな顔面を持つ深海魚「ホウライエソ」を含む分類「ワニトカゲギス目」より。
漫画「わにとかげぎす」は、そんな深海魚のように孤独で虚しい人生を送ってきたおっさんが、突如とんでもない事件に巻き込まれたり、ちょっぴり勇気を出して幸せになろうと奮闘したりする物語です。
というわけで今回は、ドラマの原作となる漫画「わにとかげぎす」のあらすじとネタバレ！（と感想）
冴えなさすぎるおっさんが最終回で迎える結末とは！？
漫画「わにとかげぎす」のあらすじとネタバレ！
富岡ゆうじ（32）は友達ゼロ、恋人ゼロ、顔面偏差値ゼロの夜間警備員。
ある時、富岡はハッと気がついた。
自分が孤独であること、何の考えもなしにただ生きてきてしまったこと。
夜空に流れ星を見つけた富岡は、乙女のように手を組んで祈った。
（友達をください…。友達）
そんな彼に奇妙な手紙が届いた。
『警備員へ お前は一年以内に頭がおかしくなって死ぬ』
「くだらない！」と吐き捨てつつ、富岡は超ビビっていた。
手紙の主を探す富岡。
ひょんなことから「差出人を見た」という浮浪者を家に泊めることに。
ところが、そのホームレスは闇金から追われているどうしようもないギャンブル狂で、ついに借金取りに捕まってしまう。
ある日、富岡が家に帰ると、そこにはボコボコにされた浮浪者のおっさんと、借金取りの姿が。
「簡単に言いますね。あの男の命は今、220万6千280円なんです。で、ここへくれば『オレを買ってくれる人がいる』と言い張るもんだから一応来てみたんですけど…そんなのウソですよね？」
聞けば、おっさんはボスを徹底的に怒らせてしまっているらしく、このままだと本当に命はないらしい。
とはいえ、もちろん富岡にはそんな大金を出してやる義理はない。
元はと言えば、浮浪者のおっさんの自業自得なのだ。
だが、それでも富岡はこう言った。
「じゃあ…買います」
ただ見過ごせないという理由だけで、どうしようもないおっさんの命を買って、なけなしの貯金を空にする。
富岡はそういう奴だった。
隣の女
富岡は人生で一度もモテたことがない。
学校のフォークダンスでさえ女子に嫌がられ、手をつながれないままエアフォークダンスを踊ったほどだ。
だが今、そんな富岡を見てこう思っている女がいた。
（かっこいい！この男、超絶カッコいい！！目がくらむほどかっこいい！！）
その人物の正体は、富岡の隣の部屋に住む20代前半の美女・羽田。
羽田の好みのタイプは一般女性とかけ離れていて、本当に心から富岡のことをカッコいいと思っている。
羽田は先日、やはりブサイクな彼氏と別れたばかりだ。
なんとそのブサイクは4股をかけていた浮気男で、しかも盗撮魔でもあった。
羽田の部屋にも隠しカメラが仕掛けられていて、その映像はまだ逃げたクズ男が持っている。
…いや、もうすでにインターネットにバラまかれているかもしれない。
そんなこんなで「恋なんてこりごり」と思っていた羽田だったが、今ではすっかり富岡のことが好きになっていた。
顔面がタイプなのはもちろん、見ず知らずの男のために金を払った誠実さに惹かれていた。
※富岡たちが住むアパートの壁は薄く、隣の部屋の一部始終を羽田は聞いていた。ちなみに羽田と富岡は少しだけ面識がある程度の関係。
そしてついに、羽田が動く。
「前に言っていた話…友達、見つかりましたか？」
「かなりムリっぽいので…ほぼ諦めています」
「…私なんかどうですか？」
「え？」
突然のことにビビって逃げたくなる富岡だったが、羽田の押しの強さにすぐに負ける。
こうして（なし崩し的に）富岡に初めての友達ができた。
事件
あの呪いの手紙の差出人の正体が判明した。
なんてことはない。手紙の差出人は高校を卒業したばかりの小僧で、富岡の楽そうな仕事を横取りしたいがための嫌がらせだったのだという。
ホッとしたのも束の間、なんと富岡の夜間警備の職場に、新たに2人の新人が入ってくることになった。
1人目の部下は「花林」。図体はでかいが徹底的にバカ。おそらく脳みそが小さい。
そしてもう1人の小柄で神経質そうな部下は…なんと呪いの手紙の小僧だった！
本名は雨川勇。
富岡は呆れつつも、謝罪してきた雨川を許した。
聞けば雨川は、職場の屋上から見えるマンションの一室に住む女のことが好きなのだという。
…大丈夫か？新人、こんな2人で？
いきなり事態は急展開！
雨川が惚れている女はヤクザの愛人だったのだが、雨川はその女の頼みを聞いて「世に出回ってほしくない写真」が入っているという金庫を盗みだすことに！
報酬として150万円支払われると聞き、花林もそれを手伝うと言い出す。
作戦決行の日。
おどおどしつつも金庫を盗みだすことに成功した雨川と花林は、女の指示により山中で金庫を開ける。
ところが、そこに入っていたのは写真ではなく1億はあるかという大金だった！
愛人は2人を騙してヤクザの金を持ち逃げしようとしていたのだ。
「見られたくない写真が入っているから」と言って2人を金庫から遠ざける女…計画は成功したかのように思われた。
だが、そんな女の前に猟銃を持った無気力そうな若者が現れた。
「半分ちょーだい」と言い始めた男に、罵詈雑言を浴びせる女。
すると…
ドン！
男は手にした猟銃で女の頭を撃ち抜いたのだった。
花林（やばいやばいやばいやばい…超やばい！）
花林は男の指示に従って女を埋める穴を掘り、反抗的な態度を示した雨川を拘束した。
今や、2人の命は突然現れた男の手の中にある。
男は近所に住んでいる地元民で、先日、父親を猟銃で撃ち抜いたばかりの異常者。
まさに2人の命は風前の灯火なのだった。
一方、富岡は一晩経っても帰ってこない2人を心配して探しに行くことに。
ただのドライブだと勘違いして「私も行く！」と強引に乗り込んできた羽田と一緒に、富岡は事件現場へと向かった。
情報収集のために立ち寄った家から出てきたのは、なんと例の猟銃男！
銃口を向けてくる男に対し、富岡はとっさに車を発進させて男にぶつける。
ドン！
…致命傷だ。
命からがら助かった2人は、囚われている雨川と花林を救出した。
…だが、話はここで終わらない。
女の復讐のため、雨川は重傷の猟銃男の頭を斧でかち割った。
花林は1億の金を持ってその場から逃亡。
その後、雨川は少年院へ。花林はずっと逃亡を続けている。
そして、富岡は夜間警備員の仕事をクビになった。
転機
あれから3カ月半が過ぎた。
富岡の就職活動は難航している。
ある日、羽田が富岡の部屋に訪ねてきた。
「羽田さんはもう…大丈夫なの？」
「大丈夫です。もう通常運転です」
羽田は富岡から目を逸らしたまま言った。
「富岡さん、私とつきあってみませんか？」
「え？」
「私が思うに…富岡さんには友達じゃなくて…彼女が必要なんだと思います」
「ええ！？そんなの可能なの！？…だって羽田さんオレのこと好きじゃないでしょう！？」
「いいえ…ずっと前から好きです…」
混乱する富岡。
「そりゃあさぁ～、つきあえるもんなら…オレだってつきあいたいさ！」
富岡は未来も仕事もないおっさんである自分が、若く美しい羽田さんの未来を奪うのはどうなの？とまくしたてる。
「いいんじゃないですか！？」
ここぞとばかりに押しの強さを見せてくる羽田の勢いに呑まれ、富岡に（なし崩し的に）恋人ができた。
一度命の危機を経験して、富岡は「生きてるならやりたいことやらなきゃ！」という考えにたどり着いていた。
その後、富岡はまたも夜間警備員のバイトとして働くことになった。
勢いで付き合いだしたはいいものの、富岡はまだビビっていた。
なにせ富岡は32歳にもなって女性経験がない。キスすらしたことがない。それが不安。
それに「どうせいつかは羽田さんも目が覚めて自分を捨てるに違いない」という不安もある。
一方で、富岡は人生初の彼女である羽田のことを、急速に好きになり始めてもいた。
「俺なんてねぇ…これから羽田さんのこと、超好きになっちゃうよ？いいの？」
「いいですよ」
（もう戻れないぞ。前進あるのみ。この娘さんがいつかハッと我に返り、オレをその辺に捨てようとも…とんでもないリッチな若社長が朝飯前で彼女を連れ去ろうとも…それはそれで仕方ないので、オレがんばる！！）
「羽田さん…オレん家行こう」
その日、富岡は32年の人生で初めて女性を抱いた。
そのあまりの気持ちよさに、富岡はひどく感動した。
夢中
最近、なんだか急に羽田の態度がおかしくなった。
元気がないというか、落ち込んでいるというか…。
（これは、別れを切り出されるのでは？）
ビビる富岡だったが、羽田から伝えられたのはもっと意外なことだった。
『生理がまったく来ません』
「私が妊娠してたら…どうしましょう？」
「羽田さんが妊娠してたら…結婚しましょう」
「富岡さん、本気で今そんな覚悟あるんですか？」
「あるもなにも…やっぱり…そうした方がいいんじゃない？」
頼りない富岡の言葉に傷ついた羽田は、家を出ていった。
友人の家に泊まって、検査をしてくるのだという。
一方、富岡は…
（意外だ…別に…ショックじゃない。正直言って…楽しみというか、ワクワクしてるよね？）
思ったより前向きに考えていた。
そして翌日。
「どうでした？例の…検査結果は…？」
「ごめんなさい…まったく妊娠してませんでした…。今朝になってやっと生理も来ました…」
恥ずかしそうな顔の羽田に対して、富岡は緊張した表情を浮かべている。
「あ、あのさあ、羽田さん…」
「はい？」
「オレと…結婚してくれるかい？」
思い切って言ったものの羽田は「そんな急ぐ必要ないんじゃない？」と消極的な様子。
いきなり、富岡は「ああっ！」と奇声を発した。
「ダ…ダメだやっぱり…結婚できない！オレは今…100％バイトくんじゃないか！」
いてもたってもいられなくなって、富岡は羽田の前から走り去った。
（む…夢中だ。オレはもう完全に…結婚に夢中だ！そして不安だ。なぜなら結婚するにはおそらく仕事を…生き方を…すべてを変えなければならない！）
事件再び
富岡がバイトしているスポーツセンターに不良が遊びに来るようになった。
警備員として追い出すべきだが、なかなかガツンと言えない。
不良たちは車を盗んで金に換えていたが、ある日、ヤクザの車を盗んでしまう。
しかもトランクには縛られている外国の女入り！
恐ろしくなった不良たちは、車を富岡のバイト先に駐車して逃げた。
富岡はその女を見つけてビビったが、とりあえず縄をほどき服を着せる。
どうやら女はポン引きの金を持ち逃げしようとして捕まったらしい。
事情が見えてきた頃、当事者である不良が戻ってきた。
「超やべぇよ！なんかそっこーでオレが盗んだってバレてよお！今夜中に返さないと家がめちゃくちゃだ！」
不良は女を再びトランクに押し込もうとするが、反撃にあって取り逃がす。
「トミー追え！捕まえろ！」
女を追いかける富岡。だが、捕まえれば女は海にでも沈められてしまうかもしれない。
富岡は女に金を渡して逃げさせた。
それを見ていた不良が何やら怖いことを叫んでいる。
富岡もその場から逃げた。
後日、富岡はバイトを辞める連絡をした。
不良どもはよっぽどキレているのか、毎日富岡の家を見張るようになった。
もし見つかったらどうなってしまうのだろう…？
いや、それよりも今回の事で富岡は家も仕事も失ってしまった。
となれば、羽田さんとは別れるしかないんじゃないか…？
また1人に戻ることになるんじゃないか…？
富岡と羽田
別れを覚悟して羽田と会う富岡。
だが、先に口を開いたのは羽田の方だった。
「多分でっかい賞とりましたぁ！！」
「ええ！？」
羽田はずっと小説家志望で、こつこつと小説を書いていた。
それが大きな賞を受賞したことが内定したのだという。
「羽田さん、ついに小説家デビュー！？」
「あいっ！」
「やったぁ～～～！すごぉ～い！」
ひとしきり喜んだあと、羽田が尋ねる。
「で、富岡さんの話って何ですか？」
幸せにする自信がないから別れようかと考えている…そんな富岡の考えを知った羽田は…
「じゃあ…私が富岡さんを幸せにします！それでいいですか？じゃあ帰りましょう」
「あ、うん…」
富岡はすっかり尻に敷かれていた。
後日、羽田は本当に小説家デビューした。
近日中には不良たちが張っている家から引っ越し、新しく借りたマンションの一室で同棲する予定だ。
羽田はずっと「小説家としてやっていけると思ったら結婚する」と考えていたらしい。
今や『結婚』は2人の目の前にまで迫ってきている。
そのことを聞かされた時、富岡は思った。
（オレはこう見えて…今、生まれて一番うれしい）
最後の事件
幸せの絶頂にいる二人に、最後の試練が降りかかってきた。
羽田の元カレであるクズ男が、羽田が小説家デビューしたことを知り脅してきたのだ。
脅迫の材料は羽田の盗撮映像。要求は400万円。
羽田は「払わないし、待ち合わせ場所にも行かない。そんなお金ないし」と覚悟を決めたが、富岡はなんだかそわそわしてしまう。
なにか考えがあるわけでもないのに、富岡はとりあえず待ち合わせ場所に行ってみることにした。
コンビニで待ち合わせ場所を見張る富岡。手にした雑誌は上下逆さまで、挙動不審だ。
そんな富岡に近づいてきて、女が言った。
「DVD…もうこの世にないよ…私が見つけちゃって、怒って捨てた。じゃあ、もう帰るから。失礼しました」
女はクズ男の今の彼女だった。
最終回
（オレと羽田さんは一か月後に結婚をする予定。おとといからフライングで、子づくりも開始）
レンタルショップで働きながら、富岡は考える。
もう大丈夫だ。オレはもう孤独じゃない。
自分のことをこの世の誰よりもわかってくれている、特別な人ができた。
自分が生きている様を見ていてくれてる…証人だ。
いるといないじゃ、大違い。
<わにとかげぎす・完>
漫画「わにとかげぎす」の感想！
古谷実先生と言えば「稲中卓球部」
この「わにとかげぎす」も基本的には古谷節が炸裂しているコメディであり、何度も「ふふっ」と笑わせられました（やっぱり顔芸が面白い。笑）
一方で、この「わにとかげぎす」は個人的にかなり心に突き刺さってくる作品でもありました。
友達なし、恋人なし…寂しさに耐えられないけど、これといった行動も思い切って起こせない。
そんな富岡の心境には少なからず共感するところがあったからです。
だからこそ、富岡が「変わりたい」と思ったこと、ちょっとだけ勇気を出してみたこと…その一つ一つに「頑張れ！」と応援したくなるし、逆に応援されているような気分にもなる。
だからこそ、一見「もうこの人生ダメだろ…」と思われた富岡が、最終的に羽田という人生の伴侶を得て幸せになるという結末が心から嬉しかったし、なんだかちょっと勇気をもらえたような気がする。
恐れることなく自分と向き合うこと、そして卑屈さに逃げずちょっとの勇気を出すことの大切さ。
私は漫画「わにとかげぎす」からそんなことを教わったような気がします。
サスペンスとも言える怖いシーンもあるのですが、全体的には希望と平凡な幸せに満ちたハッピーな作品です。
個人的にはとても好きな漫画になりました。面白かったです！
最後にもう一つだけ。
一見「富岡が羽田に救われた」という構図に見えますが、実のところは『羽田も富岡もお互いに救われていた』のだと思います。
富岡は言うまでもないですが、羽田もまた恋人に裏切られた傷心を富岡に癒され、富岡といることで確実に幸せになっています。
作中にも少し言葉が出たように、まさに2人は「運命の出会い」を果たしたんじゃないでしょうか。
その意味で、この「わにとかげぎす」は『ボーイミーツガール』な作品だったようにも思われます。
実は最終回ではバッドエンドになりそうな描写が出てきて一瞬「ヒヤッ」とさせられたのですが、ちゃんとハッピーエンドな結末を迎えられて一安心。
「いいカップルだなぁ」と微笑ましくなるような2人を見て、私も温かな気持ちになれました。
まとめ（とドラマ化について）
古谷実「わにとかげぎす」がドラマ化！
今回は原作漫画のあらすじ・ネタバレ・感想などをお届けしました！
32歳になって初めて人生を変えようと思った冴えないおっさん・富岡。
見るからにダメなこのおっさんですが、紆余曲折を経て…本当にいろいろあって、最後には隣の部屋に住む美女・羽田とゴールインします。
最終回では結婚を目前に控えた富岡の幸せな心境が綴られ、平凡ながらもとびきりハッピーな結末を迎えました。
笑いあり、サスペンスあり、幸せあり。
漫画「わにとかげぎす」…面白かったです！
さて、そんな漫画を原作としたドラマ「わにとかげぎす」
富岡を有田哲平さんが、羽田を本田翼さんが演じられます。
個人的な印象としては「富岡＝有田さん」はなかなか合ってる感じ。
一方、本田翼さんの羽田は未知数です。
漫画のテンションを再現するとすれば、本田翼さんではちょっとキレイどころ過ぎる気もしますが…。
期待半分不安半分な感じですね。
また、脇を固めるキャストには光石研さん（ホームレス役）や賀来賢人さん（花林役）の名前も！
深夜ドラマとしては、かなり豪華なキャスト陣が揃っているように感じられます。
一方、設定を見てみるとドラマ「わにとかげぎす」では富岡の年齢が（おそらく有田さんの年齢にあわせて）「38歳」に変更されています。
この他にも、ドラマ版ではオリジナルの設定や展開がありそうな予感。
ドラマを見ながら原作漫画との違いを見つけていくのも面白いかもしれませんね。
そんなドラマ「わにとかげぎす」は2017年7月19日（水）夜11時56分より放送スタートです！
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