今回は小説「ユリゴコロ」の内容を整理しつつ、ネタバレ解説していきたいと思います!
ネタバレ解説
そもそも「ユリゴコロ」って何?
主人公・亮介が父親の書斎で見つけた4冊のノート。
そのタイトルは「ユリゴコロ」
ノートには手記が綴られているのですが、その内容はあまりにも異常なものでした。
というのも、筆者は他人の命を平然と奪うことのできる危険人物だったのです。
しかも、筆者はそのことに快感すら覚えている。
曰く「誰かの命が消えていくときに生じる、言葉では言い表せない現象」
筆者が渇望するその「現象」は筆者にとって『心の拠りどころ』
「ユリゴコロ」とは幼かった頃の筆者が「拠りどころ」を聞き間違えて覚えた言葉なのでした。
※ただし、筆者は「ユリゴコロ=拠りどころ」とは思っておらず、自分だけの特別な感覚として「ユリゴコロ」という言葉を使用しています。
では、その「筆者」とは誰なのか?
物語が進んでいく中で、筆者の正体が亮介の母親であることが発覚します。
ただし、亮介は「自分が子供だった頃のある時期から、母親が(別人と)入れ替わっているのではないか?」と感じており、ノートの筆者が「以前の母親」か「先だって亡くなった今の母親」かは判然としない…。
その疑問を父親にぶつけることで、亮介はさらなる真実、そして結末へと辿りつくことになります。
過去編
入れ替わり問題はひとまず置いておくとして、亮介の母でありノートの筆者である異常者の名前は「美紗子」
美紗子は子供のころから、クラスで人気者の女の子、公園にいた幼い女の子、親しくしていた友人など、多くの人間の命を「ユリゴコロ(≒満足感)」のために奪いながら成長していきました。
大人になった美沙子は一度は就職するものの、社会に適合できず1年で無職に。
身体を売りながら生活費を稼ぐようになります。
そんな中、美紗子が出会ったのが亮平の父親(ノート内での表記は「アナタ」)
2人は惹かれあい、美紗子の妊娠(誰とも知れない「客」の子供)をきっかけに結婚します。
そうして生まれてきた子供こそが主人公の亮平。
新しい命を授かったことで、しばらくは幸福な日々が続きます。
…しかし、平穏な日々は長くはもちませんでした。
きっかけは刑事が家に訪ねてきたこと。
他人の命を奪いながら生きてきた美紗子には色濃く「罪の影」が落ちています。
幸い警察に美紗子の罪が見抜かれることはありませんでしたが、美紗子は「愛する夫に嘘をついている」という罪悪感に苦しむようになりました。
そして、ついには「子供(亮介)を手にかけて、アナタに命を絶ってもらおうか」と考えるようになったのです。
悩んだ末に、美紗子はあることを実行しました。
美紗子は「子供を手にかけてしまう前に、自らの命を絶とう」と決意。
手首を切って川に身を沈めました。
異変に気付いた父親らによって美紗子は助け出されましたが、同時に「ユリゴコロ」のノートが露見。
父親や美紗子の家族は、初めて美紗子が重罪人であることに気がつきます。
本来なら自首させるべきところですが、閉所恐怖症の美紗子を刑務所に送るのも忍びない…。
家族は最終的に「自分たちの手で美紗子の命を絶つ」ことを決意しました。
美紗子に睡眠薬を飲ませ、石に括りつけ、ダムの底に沈めたのは美紗子の両親。
作中に登場する「遺髪」はその時の美紗子のものでした。
美紗子がダムの底に沈んだのは亮介がまだ幼かった頃。
つまり、亮介が感じていた「母親が入れ替わった」という感覚は正しく、ある時期を境に別人が「美紗子」として母親になっていたことになります。
では「先だって亡くなった今の母」は誰だったのか?
その正体は美紗子の妹である英実子。
英実子もまた父親に好意を抱いており、罪悪感を抱きつつも亡き美紗子の立場を受け継いだのでした。
…これで終わりかと思いきや、物語にはまだ続きがあります。
『実は、美紗子は生きていた』
あの日、美紗子の両親は最後の最後で美紗子の命を助け、逃がしていたのです。
美紗子は戸籍も住民票も失い、苦労しながら生きていくことになりました。
そして、その日から10年以上経ったある日、美紗子は「アナタ」の前に姿を現します。
それから父親と美紗子は1年に1度、定期的に会うようになりました。
父親「母さん(英実子)には悪いが、俺にとっても特別な女は美紗子だけだった。最後に会ったのは数カ月前。そのときから俺は、最後はこうなるような気がしていたよ。つまり、美紗子が迎えに来てくれて、一緒に旅行にでも出かけるんじゃないかってな。亮介、美紗子はもうそこに来ている。会うか会わないかは、お前次第だ。さあ亮介、どうする」
父親はかつて自分のせいで女の子の命を損ねてしまったと思い込み、性的不能者になるほど罪悪感に苛まれていた。
しかし、実はその女の子の命を事実上損ねたのは美紗子。
父親と美紗子は少年少女時代に一度会っており、父親は美紗子が「ユリゴコロ」を満たすため行為の片棒を知らぬ間に担がされていただけ。
そんな2人がやがて再会し、結婚することになったのは奇妙な運命だった。
現在編
今、亮介にとって一番の心配事は『婚約者・千絵の失踪』
- なぜ失踪したのか?
- 今、どこにいるのか?
失踪に関する一切が不明。
本来なら見つかるまで徹底的に探したいところですが、自身が経営する喫茶店を放置するわけにもいきません。
しかも、千絵が失踪したことで経営は傾いてきている…八方ふさがりな状況。
店は古い女性スタッフである細谷さんのおかげで辛うじて回っているような状態でした。
動けない亮介に代わり、細谷さんが自身の休日を利用して千絵の行方を捜してくれることに。
そして、ある日。
ついに細谷さんは店に千絵を連れ帰ってきました。
久しぶりに会う千絵は痩せこけてボロボロ。
金のため、ある男に無理やり働かされていた結果でした。
真相はこうです。
- 実は千絵は既婚者だった。
- 夫の塩見はたちの悪い男で、ギャンブルにのめり込み、千絵に暴力を振るっていた。
- 夫から逃げ出した千絵がたどり着いたのが亮介の喫茶店。
- 千絵の亮介への好意は本物だった。
- 失踪したのは、塩見に連れ戻されたため。
- 塩見はヤクザから借金しており、返済のための金を作るため、いかがわしい写真で千絵を脅して無理やり働かせていた。
千絵を連れ戻すことには成功したものの、根本的な問題は解決していません。
塩見は千絵を追ってくるでしょうし、その手の中には脅迫材料である「写真」がいまだに握られています。
そして案の定、塩見から亮介たちに「100万円と引き換えにネガを渡す」という電話がかかってきました。
(千絵をこんな風にした男を許すわけにはいかない)
亮介は取引に応じるふりをして、塩見を亡き者にすることを決意します。
…ところが、いざ取り引きの場に出向いてみると、そこに塩見の姿はありません。
その代わりに車中に残されていたのは血痕。
(自分が手を下す前にヤクザに始末されてしまったのだろうか?)
どうやら、塩見はもうこの世にいないらしい。
この日を境に、亮介に平穏な日々が戻ってきました。
愛する千絵も、大恩人である細谷さんも傍にいてくれている。
戻ってきた幸福な日々の中、亮介はちらりと考えます。
(それにしても、塩見や写真はどうなってしまったのだろうか?)
結末
父親の言葉通り、美紗子が家を訪ねてきました。
妹の英実子と入れ替わる前の、本当の母親。
どんな顔だったかも覚えていないはずなのに、けれども亮介はその人物のことをよく知っていました。
「店長、お父様をお迎えに来ました」
そう言って軽く頭を下げたのは…細谷さん。
そう、細谷さんこそが美紗子だったのです。
細谷さん(=母親)は店を辞めて余命わずかな父親と一緒に旅に出るという。
きっと父親は戻ってこない。手荷物すら持っていないのだから。
最後に細谷さんは亮介の耳元で囁きました。
「千絵ちゃんのネガのことは心配しないで。私が全部奪い返して処分しましたから」
あの日、塩見を始末したのはヤクザではなく細谷さん(=美紗子)だったのです。
細谷さんは父親と車に乗り込み、去っていきました。
「さて、どこへ行く」
「どこへでも。アナタの行きたいところへ」
「そうだなあ、それじゃあ――」
楽しそうに言葉を交わす両親は、ノートの中の「私とアナタ」に戻っているようでした。
<ユリゴコロ・完>
感想と補足
「ユリゴコロ」最大のトリックは結末で明かされる「美紗子=細谷さん」という事実!
映画でいえば吉高由里子さん(美紗子)と木村多江さん(細谷)が同一人物を演じている、ということになりますね。
※改めて映画のビジュアルを見てみると美紗子と細谷の外見がかなり似ていることに気がつきます。
その事実が明らかになることによって小説「ユリゴコロ」は一気にサスペンスから「愛の物語」へと姿を変えました。
- 別人として息子を見守り、手を汚してまでその婚約者を救い出した(母親としての)美紗子の愛
- 「アナタ」と一緒に最後の時を過ごす旅に出かける(妻としての)美紗子の愛
過去編と現在編がクロスするあの結末には、本当に「やられた!」と思わされました。
「ユリゴコロ」は美紗子という異常者を中心に据えた作品であり、前半の印象は完全に「不気味なサスペンス」なのですが、その本質はやはり「愛の物語」
この「サスペンスが愛の物語に変わる」という体験こそが「ユリゴコロ」最大の魅力なのだと思います。
私は小説「ユリゴコロ」を読んで一気に沼田まほかるさんのファンになりました!
まとめ
今回は小説「ユリゴコロ」の内容を整理し、ネタバレ解説としてお届けしました!
個人的には「今年最も衝撃を受けた小説TOP3」に入る作品です。
ちなみに映画のキャストはこんな感じ。
美紗子…吉高由里子
亮介…松坂桃李
洋介(過去編の父親)…松山ケンイチ
千絵…清野菜名
細谷…木村多江
ネタバレを知らずに映画を観た人は、きっと結末で同じような衝撃を受けるはず!
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