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薬丸岳「友罪」のネタバレ感想と考察!モデルになった事件とは?

前回は原作小説のあらすじや結末のネタバレについてお伝えしました。

薬丸岳「友罪」あらすじとネタバレ!小説の結末は?【映画原作小説】「友人が過去に重大犯罪を犯していても、あなたは友達でいられるか」 これは小説「友罪」の帯に書かれていたキャッチコピーです。 ...

ただ、正直なところ、この作品の真価は「物語の結末がどうだったか?」ではなく「何が問われているのか?」という点にこそあると思うんですね。

というわけで、今回は小説「友罪」の感想や考察、さらにモデルとなった事件などについてもお伝えしていきたいと思います!

作品のテーマ

小説「友罪」は、ある1つのテーマを問うためだけに書かれた物語であると言っても過言ではありません。

『あなたの大切な人が過去に凶悪犯罪を犯していたら?その事実を知っても、あなたはまだ友人や恋人でいられるのか?』

この問いに対して安易な答えを出すことは簡単です。

例えば「過去は過去。反省しているなら問題ない」とか「一度罪を犯してしまったのなら、一生罪人。付き合うのは無理」とかですね。

でもそんな『浅い答え』は「友罪」の放つ真摯な『問い』に対する『回答』としては不適格でしょう。

まっとうに更生していたとしても、彼らは社会から「蔑むべき罪人」として迫害され続け、一生安息を得られないかもしれない。

その想像を絶する苦しみの一端を知れば、安易に「凶悪犯罪者のことを友人だと思っていたなんて最悪だ!」なんて言えないはずです。

かといって、安易に「罪を憎んで人を憎まず」で済ませるわけにもいきません。

自分の気持ちや理屈とは関係なく湧き上がる、生理的にどうしようもない「生々しい嫌悪感」を『その人物』に抱いてしまうからです。

※これは後述する「モデルとなった事件」と関連して想像してもらえれば、わかってもらえる感覚だと思います。

要するに、葛藤することなしに「友罪」の問いに答えることはできないのです。

また、当然のことながら、この問いに対する『(客観的な)正解』は存在しません。

読み手の回答はあくまで『主観的な結論』であり、その内容は十人十色であるはずです。

なので、私の感想にしても、あくまで「個人的な考え」にすぎません。

重要なのは「あなたがどう思うか?」なのです。

 


 

あらすじの振り返り

鈴木秀人(本名:青柳健太郎)は中学2年生の時に子供2人の命を残虐に奪った凶悪犯罪者。

今は医療少年院を退院し、素性を隠しながら生活している。

新しく入った会社で鈴木は親友(益田)や恋人(美代子)や笑いあえる同僚たちに恵まれた。

しかし、やがて鈴木の正体が周囲の人間にバレてしまう。

鈴木はそれでも大切な人々と関係を続けたいと願うが…。

 

素直な感想

この物語を読み終えた時、最初は「かなりシビアな結末だな」と思いました。

うまくやっていたはずの同僚たちは手のひらを返して鈴木のことを「汚らわしい犯罪者」扱い。

あれだけ真摯に鈴木に想いを寄せていた美代子でさえ「この先、一緒には生きていけない」という答えを出しています。

唯一、益田だけは「また会いたい。ずっと友達でいよう」と鈴木にメッセージを送ったものの、時すでに遅し。

誰からも受け入れられないと悟った鈴木は、すでに姿を消してしまっていました。

率直に「あまりにも救われない」と思いましたね。

作中では鈴木がいかに過去に苦しみ、後悔し、罪を償おうとしているのかが描かれています。

彼は確かに凶悪犯罪者ではありますが、今は法的にも自由の身ですし、優しさや正義感だって持ち合わせているように思われました。

「過去に一度罪を犯したら、もう一生許されないのだろうか?」

「今の鈴木はそこらの人間よりもよっぽどまともな好青年に思われる。なのに、ここまで迫害されなくてはならないのか?」

素直に「友罪」を読めば、多くの人が同じように思うのではないでしょうか。

※「手のひらを返して鈴木を罵るようになった人々の態度こそ悪だ」ととれるような表現もありますし。

「友罪」の結末では「その後、鈴木がどうなったか?」は描かれていません。

この本を閉じた時、私は「益田と鈴木の友情が実を結ぶといいな」と思いました。

 


 

素直じゃない考察

益田が鈴木を受け入れようと決意したのは、過去の個人的な体験があったからです。

益田は過去に友人である学のSOSを保身のために(勇気を出せずに)見捨てたことがあります。

その結果、学は自ら手首を切り、帰らぬ人になってしまいました。

それは益田にとって「自分が背負うべき罪」

あれから10年以上たった今でも、益田はそのことに苦しみ続けていました。

そんな益田だからこそ「自分の素直な気持ちを伝えられなかったせいで友人が自殺してしまう」というのは最も阻止しなければいけない出来事なわけです。

だから、益田は鈴木と向き合うことを決意できた。

…ならば、もしも益田の過去に「罪」がなかったならば、益田はどうしたのでしょうか?

同じように鈴木を受け入れようと思ったでしょうか?

私はそうは思いません。

益田は「罪」を自覚していたからこそ、あの結論に達することができたのです。

鈴木と向き合うと決意した後、益田が「もう二度と」とか「今度こそ」といった言い回しをしていることからもそれがわかります。

つまり、益田は自らもまた罪人であった(と自覚している)からこそ、多くの人が忌避した鈴木を受け入れようと思えたわけですよ。

 

一方、鈴木の近くにいたもう一人の人物である美代子もまた「男に騙されてAVに出演した」という消えない過去を背負っていました。

どこにいっても男たちから下卑た好奇の目を向けられる…美代子にとってその過去は「罪」であり、自分は「罪人」であると自覚していました。

…ここでも、やはり「罪」です。

益田、美代子、山内(※)…作中で鈴木を蔑ろにしなかった人間たちは、いずれも過去に何かあった「罪人」(だと自覚している人々)なのです。

※あらすじではカットしましたが鈴木を受け入れると益田に話した同僚

罪人だから、凶悪犯罪者である鈴木のことを思いやれる。

これは見ようによっては「罪人でもなければ鈴木を思いやる気持ちになどなれない」ともとれます。

会社の人々がそうであったように、多くの人間は自らの「罪」を見つめながら日々を生きていたりはしません。

大多数の人間は自らを「罪人」だと思ったりしていないでしょう。

ならば当然、鈴木のような人間は「大多数の人間」から理解されないわけです。

正体が知れれば「今」ではなく「過去=罪」で判断され、迫害される…だからこそ鈴木は素性を隠して生活せざるを得なかったわけですよね。

そう考えると「友罪」の新しい一面が見えてくるような気がします。

一見すると鈴木に同情的な立場で描いているようですが、その実は「鈴木のような人間はどうあっても一般的な人間には受け入れられない」と言っているようなものです。

少々穿ちすぎているのかもしれませんが、私はここに厳罰派である著者の思いが現れているような気がしました。

 


 

テーマへの回答

「あなたの大切な人が凶悪犯罪者だったら?」

読者である以上、私もこの問いへの答えを出さなければならないでしょう。

先述した通り、読後の率直な気持ちは「許す。受け入れる」というものでした。

しかし、今は違います。

ぐるぐると「もし自分だったら?」と考え続けた結果、「近くにいることはできない」という結論に至りました。

きっと私は、その人への「恐れ」や「軽蔑」を消すことができません。

うわべだけ繕って友人のような関係でい続けることはできるでしょうが、そんな関係はお互いにとって益にならないでしょう。

きっとお互いにストレスをためるだけの関係になってしまうのではないかと思います。

作中の登場人物でいえば、私の「答え」は美代子のそれに近いのでしょう。

その人との思い出は大事なものだし、その人のことを大切に想うけれど、だからといって全てを受け入れて関係を続けられるわけじゃない。

これが私なりの「友罪」への答えです。

「結局は受け入れられないなんて冷たいじゃないか」と思われるでしょうか?

でも、私は「友罪」のモデルになった「実際の事件」と照らし合わせて考えた時、どうしても犯人を受け入れられないと感じたんです。

 


 

モデルとなった事件とは?

「友罪」のモデルとなったのは、1997年の「神戸連続児童殺傷事件」

『酒鬼薔薇聖斗事件』と言った方がわかりやすいでしょうか。

当時14歳の中学生が犯人だったということで全国的に大騒ぎになった事件です。

後年、犯人が手記『絶歌』を出版したことでも話題になりましたね。

犯行当時14歳、医療少年院で更生、素性を変えてどこかで生活している…などなど犯人の経歴には「鈴木」と共通する点が多々見受けられます。

この事件の顛末に関してはWikiなどに詳しく記載されているので省略しますが、とにかく凄惨で恐ろしい事件でした。

『自分が親友だと思ってた人間が実はこの犯人だったら?』

そう考えてみた時、私は即座に「無理だ」と思いました。

あまりに生々しすぎる。あまりに恐ろしすぎる。

すべてが想像で出来ていた「もしも(仮定)」とは全然違います。

モデルとなった事件とあわせて想像する「実感を伴う仮定(リアリティのある仮定)」では、生理的な拒否反応が心に現れました。

しかし、これでもまだ想像の範囲内での拒否反応なのです。

実際に目の前にその人物がいたとしたら、いったいどれだけの嫌悪感を抱いてしまうのか、見当もつきません。

だから、私は「友罪」の問いに「受け入れられない」と答えるしかありませんでした。

なお、著者によれば小説「友罪」は実際の人物や事件をモデルにしたわけではないそうです。

『酒鬼薔薇聖斗事件』から着想を得た、くらいの関連性だということですね。

ちなみに「友罪」は手記「絶歌」の出版よりも先に発表されています。

まとめ

今回は小説「友罪」を読んだ感想や考察などについてお届けしました!

「あなたの大切な人が過去に凶悪犯罪を犯していたら?」

非常に考えさせられるテーマですね。

少年犯罪や少年法について考えるきっかけにもなる一冊だと思いました。

今回は私個人の感想や考察をお伝えしましたが、この本を読んで感じるものは本当に人それぞれだと思います。

映画『友罪』の配信は?

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※配信情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。

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