今回の注目作は貫井徳郎「乱反射」!
妻夫木聡さんが主演するスペシャルドラマの原作小説であり、少し前には乃木坂46・齋藤飛鳥さんが好きな本としても話題になりました。
あらすじが気になったので私も読んでみたのですが…これ、めちゃくちゃ面白いです!
誰もが身に覚えのある「ちょっとしたルール違反」
「車がいないときに赤信号を渡った」程度の小さなルール違反が、もし誰かの命を奪っていたとしたら?
いきなり加害者にされてしまった一般市民と、いきなり被害者遺族になってしまった主人公、果たしてどちらの言い分が正しいのか?
社会に絶望した主人公に突き付けられたのは、あまりにも衝撃的な事実でした…!
というわけで、今回は小説「乱反射」のネタバレ解説と感想!
鳥肌ものの結末とは!?
Contents
小説「乱反射」のあらすじとネタバレ解説!
★あらすじ
2歳の幼児が事故で亡くなった。
強風にあおられた街路樹が、不運にも幼児を下敷きにしたのだ。
幼児は救急車で病院に運ばれたが、助からなかった。
事故の噂を耳にした近所の人間は、口を揃えて言う。
「不幸な事故だった」と。
しかし、それは本当にただの事故だったのだろうか?
・なぜ、街路樹は倒れたのか?
・なぜ、救急車が病院に到着するまでに時間がかかったのか?
幼児の父親である加山聡は徹底的に『犯人』を追い求める。
そうして、ついに加山は結論を得た。
「事故ではない。これは殺人だったのだ」と。
ネタバレ解説1.犯人は誰だったのか?
結論からいえば、登場人物のほとんどが犯人ということになります。
とはいえ「オリエント急行殺人事件」のように、容疑者たちが結託して犯行を行ったという意味ではありません。
まったく無関係な人々の「ちょっとしたルール違反」が、まるでピタゴラスイッチのように連鎖していき、最終的に幼児の命を奪ってしまったのです。
もちろん『犯人』たちには、幼児の命を奪うつもりも、幼児の命を奪ったという自覚もありません。
また、彼ら『犯人』を法律上の罪に問うことはできません。
なぜなら、それは「飼い犬のフンを持ち帰らなかった」という程度の行為であり、モラルには反しているものの、その行為自体に「幼児の命を奪った責任」を求めるのは無理があるからです。
しかし、それでも、被害者遺族にとっては彼らこそが『犯人』
事実として、彼らのうち誰かひとりでも道徳心を発揮していれば、幼児の命は助かっていたのです。
では、いったい誰の、どんな行為が「不幸な事故」を引き起こしたのでしょうか?
もっと詳しく見ていきましょう。
ネタバレ解説2.主な登場人物とそれぞれの事情
以下の登場人物は、主人公である加山聡が『犯人』だと見なした人々です。
彼らのちょっとしたルール違反や「自分さえよければいい」という考えが、悲劇を生むことになります。
1.田丸ハナ(50代の主婦)
道路拡幅にともなう街路樹伐採に反対する運動を起こす。動機は娘から尊敬されるため。また、持て余した暇を有効利用して人から褒められることをしたかったため。
2.三隅幸造(定年後の老人)
定年後の生きがいとして子犬を飼い始める。酷い腰痛のためフンを拾えず、仕方なくいつも放置している。
3.久米川治昭(30代の医者)
責任を極力負いたくないという考えから、正式に病院には所属せず、アルバイト医として救急病院の夜間診療を担当している。内科医。
4.安西寛(病弱な大学生)
虚弱体質。日中の待合室の混雑を避けるため、救急病院の夜間診療を利用し始める。
5.小林麟太郎(25歳の市役所職員)
道路管理課に所属。争いが苦手な性格だが、プライドが高い一面もある。
6.榎田克子(大学生)
車の運転を苦手としている。特に、道路に面した自宅の車庫入れは苦手。社交的で美人な妹にコンプレックスを抱いている。
7.足達道洋(34歳の造園業者)
ひょんなことから極度の潔癖症になってしまう。素手で自分の赤ん坊に触れないほどの重症。街路樹のメンテナンスを担当していた。
この時点では、まだ事件の全貌は見えてきませんよね。
いったい、彼らはどのように事件に関与したのか?
その答えはこのあとすぐ!
ネタバレ解説3.事件の全貌
加山健太くん(2歳)が亡くなってしまった理由は、大きく分けて2つ。
1.街路樹が倒れたから
2.救急車が病院に到着するのが遅かったから
前者には4人、後者には3人の『犯人』が関わっています。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
★街路樹はなぜ倒れたのか?
街路樹が倒れたのは、強風にあおられたからです。
しかし、当然のことながら、ちょっと強い風に吹かれたくらいで街路樹が倒れることはありません。
それは等間隔で植えられていた街路樹のうち、その1本だけが倒れていたことからもわかります。
では、なぜその1本だけが倒れたのでしょうか?
それは、その街路樹が根腐れを起こしていたから。
つまり、樹の病気にかかっていたんですね。
さて、ここで1人目の犯人が登場します。
足達道洋は事故の数日前、仕事でその街路樹の健康状態をチェックするはずでした。
しかし、実際にはその1本だけは診断していなかったんです。
もし足達がきちんと街路樹をチェックしていれば、樹の病気が発覚し、事故は未然に防がれていたでしょう。
では、なぜ足達は街路樹の診断をしなかったのでしょうか?
その理由は、街路樹の根元に犬のフンがあったから。
極度の潔癖症である足達にとって、犬のフンは凶器も同然。
とても近づくことなどできませんでした。
であれば、せめて同僚に担当を交代してもらえばよかったのですが、足達は潔癖症(病気)のことを会社に隠していたので「犬のフンがあるから、この樹は見れない」とは言い出せなかったんですね。
もうお察しのように、2人目の犯人は犬のフンを放置した三隅幸造。
三隅は確かにひどい腰痛で屈むことに辛さを感じていましたが、だからといってフンを放置していい理由にはなりません。
しかも、三隅は一度、高校生からマナー違反を注意されたとき、屈辱感から「だから何だ」と開き直ったことがありました。
せめてそのときに素直に反省していれば、幼い命は助かっていたでしょう。
3人目の犯人は、市役所職員の小林麟太郎。
事故の数日前、市民からの苦情を受けて、小林は例の街路樹のフンを片付けるよう指示されていました。
しかし、小林はフンの片づけを途中で放り出してしまったのです。
理由は、通りがかりの子供に「犬のフンを片付けるような仕事はしたくない」と馬鹿にされたから。
プライドが傷ついた小林は「犬のフンを片付けるために公務員試験に受かったわけじゃない」と片づけを放棄して、市庁舎へ帰ってしまいました。
4人目の犯人は、街路樹伐採への反対運動をしていた田丸ハナ。
田丸たちの団体は、反対運動の一環として、何度も足達たちのメンテナンス業者を実力行使で追い返していました。
実際には足達たちは伐採とは何の関係もないのに、です。
もし足達が別の日に街路樹を見ていれば、その日は犬のフンがなく、きちんと樹の健康状態をチェックできていたかもしれません。
田丸が自尊心と暇つぶしのために始めた反対運動が、結果としては幼児の命を奪ってしまったのです。
付け加えておくと、道路の拡幅は利便性の面から多くの市民に望まれていたことであり、それに反対する田丸の運動はあまり共感を集められるものではありませんでした。
★救急車が病院に到着するのが遅くなったのは何故か?
健太くんを乗せた救急車は、最も近い救急病院に受け入れを申し込みました。
しかし、救急病院側は診療を拒否。
結果として、救急車は遠くの病院へと向かわねばならなくなり、処置が遅れることになりました。
健太くんの受け入れを拒否する判断を下したのは、夜間診療を担当していた久米川治昭。
・内科医である自分では手術できないこと
・夜間診療が混雑していたこと
以上が、受け入れ拒否の理由です。
とはいえ、外科の医師を呼び出すという選択もあったはずだし、なにより夜間診療に訪れていたのは風邪など軽い症状の患者ばかりでした。
それなのに久米川が受け入れを拒否したのは、自分の責任問題になることを回避するため。
万が一、患者が亡くなってしまった際に、遺族から訴えられることを恐れての判断でした。
もともと「できるだけ責任を負いたくないから」とアルバイト医をしていた久米川の生き様が如実に表れた選択だったともいえます。
もし久米川が保身よりも人命を優先して判断を下していたなら、健太くんは助かっていたかもしれません。
2人目の犯人は、虚弱体質の安西寛。
事故の夜、病院に軽度の患者が多かったのは、彼の「夜間診療なら待ち時間が少ない」という発想が広まったから。
安西はその『裏技』を自慢げに片思いの女子に教えていたのですが、その女子が友達に伝え、その友達がまた広めて…という具合に『裏技』はどんどん広まっていきました。
結果、本来なら緊急性の高い患者のための夜間診療が、症状の軽い若者たちでいっぱいになってしまっていたのです。
もし安西がちゃんと日中の診療を利用していれば、久米川は言い訳を見つけられず、健太くんを受け入れていたかもしれません。
事故の夜、いつになく道路は渋滞していました。
強風のせいもありましたが、最大の原因は車の乗り捨て。
片側一車線の道路を反対車線までふさいでいた乗り捨て車両のせいで、その道路は15分も通行できない状態に陥っていました。
救急車はその渋滞に巻き込まれたせいで、足止めを余儀なくされていたのです。
では、なぜそんな迷惑な乗り捨てが起こったのでしょうか?
車を乗り捨てた犯人は、榎田克子。
車は榎田家が購入したばかりのSUV(大型車)で、車が乗り捨てられていたのは榎田家に面する道路。
そう、克子が車を乗り捨てたのは、車庫入れがうまくできなかったからでした。
もともと車庫入れを苦手としていた克子が、買い替え前の車より大型なSUVを上手に車庫入れ出来るはずがありません。
何度も切り返していくうちに、待っている車からクラクションが鳴り始めました。
克子はついにプレッシャーに耐えきれなくなり、車を放置して家の中に逃げ込んでしまったのです。
克子がそんな非常識な行動をしなければ、救急車はもっと早く病院に到着していたことでしょう。
ただし、付け加えておくと、克子は家族に「大型車の運転はできない」ときっぱり主張していました。
榎田夫妻は克子の意見より、可愛く甘え上手な妹の麗美の要望を優先し、SUVを購入していたのです。
麗美はまだ高校生で運転免許を持たないのに、榎田家のドライバーである克子の意見は無視されてしまっていたのです。
そして、事故の夜、克子が車を運転していたのは、榎田家の母がやや強引に「迎えに来てほしい」と克子にお願いしていたからでした。
★まとめ
・街路樹が倒れたのは、足達が街路樹の健康状態をチェックをしなかったから
・足達が街路樹のチェックを飛ばしたのは、そこに三隅が放置した犬のフンがあったから
・小林は犬のフンを拾う機会があったのに、プライドを守るために最後までフンを拾わなかった
・田丸が反対運動で街路樹のメンテナンス業者を追い返していなければ、足達は街路樹の健康状態をちゃんと調べられたかもしれない
・久米川は責任を負いたくないがために、急患(健太くん)の受け入れを拒否した
・安西のせいで、夜間診療は緊急度の低い患者たちで混雑していた
・榎田克子が乗り捨てた車のせいで、救急車は渋滞に巻き込まれた
ネタバレ解説4.事件後の顛末
事故を受けて「自分のせいだ」と認識したのは、街路樹のチェックをするはずだった足達ただ1人。
足達は警察に自首し、最終的には業務上過失致死の疑いで逮捕されました。
足達は自らの罪を深く反省。
妻が子供を連れて出ていったことで家庭も崩壊し、罪に値する罰を正式に受けた唯一の『犯人』となりました。
一方、残りの『犯人』たちは、加山聡から糾弾されることで初めて自分の『罪』を知ります。
そんな彼らが口を揃えて加山に言ったセリフは…
「私のせいじゃない!」
「僕は悪くない!」
みんな『自分が命を奪ったわけじゃない』と主張するばかりで、加山に一言でも謝った人は誰もいませんでした。
彼らの中には後ろめたさを感じた人もいましたが「謝ってしまえば、自分の責任になってしまう」という恐怖から、開き直ったり逆ギレしたりするしかなかったのです。
保身。責任逃れ。
加山はそんな『犯人』たちと接していくうちに、どんどん社会全体に失望していきました。
加山「みんな少しずつ身勝手で、だから少しずつしか責任がなくて、それで自分は悪くないと言い張るんだよ。おれは誰を責めればいいのかわからなくなってきた。世界中の人全部が敵で、全員が責任逃れをしている気がする。おれたちの悲しみや苦しみをわかってくれる人は、世の中にいないのかもしれない」
結局、ほとんどの『犯人』たちは法律上の罪に問われることはありませんでした。
とはいえ、彼らは別の形で『罰』を受けることになります。
・間接的にとはいえ、自分のちょっとしたルール違反のせいで幼児が命を落としたという罪悪感
・自分の罪を被害者遺族に詫びることができなかったという後ろめたさ
誰に裁かれるまでもなく、自分の罪の意識そのものが、彼らにとっての『罰』
きちんと裁かれていないことで、むしろそれは一生消えない十字架として彼らの心に残り続けることになるのです。
また、彼らの中には心の底から「自分は悪くない」と自己正当化する人もいましたが、そのような場合は、非道徳的な彼らの態度を見かねた周囲の人々が彼らに『罰』を与えました。
例えば…
・田丸ハナは尊敬されたかった娘から「ママってひどいんだね。ホント、サイテー」と軽蔑された
・三隅幸造はいつも従順だった妻から「晩節を汚しましたね」と突き放された
・久米川治昭は母のように慕っていた看護師の羽鳥から軽蔑され、心のよりどころを失った
まさに因果応報といったところでしょうか。
被害者遺族はもちろんのこと、加害者に連なる人々まで、事故に関わった人はみんな不幸になりました。
ネタバレ解説5.衝撃の結末
事故の原因を知るため、『犯人』たちを訪ねて回った加山。
しかし、その結果わかったことは「誰も自分のせいだとは思っていない」ということでした。
加山は「ちょっとしたルール違反でも人の命を奪うことがある」と広く世に知らしめたいと思いましたが、新聞社からは許可が出ず、しかたなく自作のホームページで事故の全貌を公開することに。
ホームページの閲覧数は徐々に増えていき、加山のもとにはたくさんのメールが届くようになりました。
その半分は同情と応援のメッセージ。
そして、もう半分は「彼らに責任を求めるのは無理がある」というメッセージ。
社会の総意から自分の無念を否定されたようで、加山は「小さなルール違反くらい誰だってするだろう」と認める社会全体にいよいよ絶望しました。
「なんて自分勝手なんだろうか」
「自分さえよければそれでいいのか」
「悪いことを悪いと言って何が悪いのか」
そんなときでした。
加山はふと『あること』を思い出します。
それは、まだ健太が生きていた頃の記憶。
家族旅行の行き道で寄った高速道路のサービスエリアで、加山聡がやったこと。
『家庭ごみを、サービスエリアのごみ箱に捨てた』
家庭ごみを捨ててはいけないと注意書きがあったのに、小さいゴミ箱に無理やりゴミ袋を押し込んだ。
「誰でもやっていることなのだから、1回くらいはかまわないだろう」と言い訳をして。
その記憶を思い出したとたん、加山の背中にすっと寒気が走り、体ががくがくと震え始めました。
そう、加山は気づいてしまったのです。
自分もまた『犯人』たちと同種の人間だったのだ、と。
己のちょっとした都合を押し通し、それが巻き起こした波紋の責任をとろうとしない人たち。
自分だけがよければいいと考え、些細なモラル違反を犯した人たち。
自覚がないという点まで含めて、加山は彼らにそっくりでした。
『犯人』たちがしたことと、加山の行為に、本質的な差異はありません。
「……おれだったのか。おれが健太を殺したのか」
後悔の念に堪え切れず、加山は力尽きるまで絶叫し続けました。
ネタバレ解説6.エピローグ
小説「乱反射」のクライマックスは間違いなく加山が自分の罪を思い出すシーンでしたが、物語はもう少しだけ続きます。
エピローグで描かれていたのは、加山夫妻によるあてのない沖縄旅行。
夕暮れ。美しい景色を前にして、加山はぽつりとつぶやきます。
「健太は、もういないんだな」
隣の光恵も、小さく頷きます。
このラストシーンで、小説「乱反射」はおわり。
「ようやく気持ちに整理がついた」とか「これからは現実と向き合えるようになっていく」とか、そんな心情を感じさせるシーンのようでもあり、ただ純粋に息子を失った夫婦の寂しさを描いているシーンのようでもありました。
小説「乱反射」の感想!
小説「乱反射」には2つの側面があると思います。
1.考えさせられる社会的なテーマを含んだ作品
2.エンターテイメント(読み物)として面白い作品
今回はそれぞれの視点に立った感想を、2つに分けて書いていきたいと思います。
「乱反射」の登場人物は悪人か一般人か
果たして加山が訪ねてまわった『犯人』たちは、極端な悪人だったのでしょうか?
加山に感情移入して小説を読んでいるときは身勝手な極悪人のように感じたのものですが、冷静に考えてみれば「とはいえ、確かに誰でもやってることだしなあ」とも思われます。
それに、加山がそうであったように、自分の身を振り返れば思い当たる「ちょっとしたルール違反」くらい、誰でも1つや2つはあるものです。
それさえ否定するということは「世の中全員が聖人君子であるべきだ」という主張と変わらないわけで、やっぱり現実的には登場人物たちは悪人ではなくどこにでもいる普通の人たちだったと結論せざるを得ません。
……とはいえ、そこで話を終えてしまっては、なんだかもやもやが残ります。
全人類に聖人君子たれと願うことが無茶だとしても、だからといって「じゃあ、少しくらいならルール違反してもいい」ということにはならないからです。
『人間は誰でも時には身勝手な振る舞いをするものだ』
という事実は認めましょう。
しかし、セットとして
『だからこそ、できるだけ迷惑な振る舞いをしないよう気をつけるべきだ』
という考え方を併せ持つべきではないでしょうか。
例として、ルール違反を犯してしまった後の態度について考えてみましょう。
魔が差して突発的に起こした犯罪よりも、計画的な犯罪の方が罪が重いように、「いけないことをしてしまった」と反省する態度と、「みんなやっていることだから、自分は悪くない」と開き直る態度とでは天と地ほどの差があるように思われます。
つまり、ルール違反という行為そのものはもちろんのこと、それをどうとらえるかという姿勢(考え方)もまた重要だということです。
その点、自首した足達や、加山から事故の経緯を聞かせれて激しく後悔し、運転免許証を破り捨てた克子には良心を見出すことができます。
私には、はっきりと彼らは悪人ではないと思われました。
一方で、残りの『犯人』たちはどうでしょうか。
彼らは後悔よりも「私は悪くない」という自己正当化を優先しました。
その反応もまた「普通の人(多数派)」のものではあるのでしょうが、少なくとも見苦しさを感じることは確かです。
それらの反応が心の健康を保つための自己防衛であることは理解できます。
究極的にいえば、何よりも優先すべきは自分の心身の健康であるという考え方に則れば、自己正当化反応は正しいものだったといえるでしょう。
それは生物としては正しく、一概に否定されるべき考え方であるともいえません。
しかし、それでも私は『犯人』たちに、他者の痛みに共感し、自らの過ちを反省するという態度を見せてほしかった。
だって「普通の人」である彼らの醜さは、つまるところ私たち人間(社会)の醜さでもあるんです。
人間や社会が基本的に醜いものであるとは、思いたくないじゃないですか。
人の振り見て我が振り直せ。
つまるところ、私がこの本から得た教訓はコレでした。
ルールは破るためではなく、守るためにあるものです。
『犯人』たちの醜さと哀れな結末を胸に刻み、自分に恥ずかしくない行動を心がけていきたいと思います。
そして、もしそれでもルール違反をしてしまったときは、素直に反省するようにしたいですね。
エンタメ小説としての「乱反射」の面白さ
なんといっても衝撃的だったのは、あの結末!
冒頭でちゃんと説明されていた「ゴミ出し」の伏線をすっかり忘れていた私は、加山が高速道路のサービスエリアに家庭ごみを捨てたことを思い出すシーンで背筋がぞわっとするのを感じました。
思わず「エグッ!」と声が出てしまったほど、あのシーンは強烈でしたね。
それまで「まあまあ面白いかな」くらいだった評価が「なにこれめっちゃ面白い!」に一瞬で変わりました。
未見の方に説明すると、小説「乱反射」は「-44章」から始まって「0章」まで進んでいき、その後は「37章」まで続いていきます。
健太くんの事故が発生するのは「0章」でのことであり、実はその時点で読者は「なぜ(誰のどんな行為でのせいで)事故が起きたか?」についてすっかり理解できているんですね。
「1章」から後は加山が「どうして事故が起きたのか?」を探る場面なのですが、読者から見れば「答え合わせ」をしているような気分であり、考えさせられることはあるにせよ、さして驚きのない展開が続きます。
だから、途中まで私はこれが『ミステリー』に分類される作品だとは思っていませんでした。
結末に向けて謎解きや驚きをまったく期待していなかったんです。
そんな油断した心構えだったからこそ、結末に突如として現れた最大級の『謎解き』には心底驚かされました。
それまでの500ページがすべて前置きで、作品の面白さのすべてが予想外の一撃ともいえる結末に凝縮しているとさえ思いました。
大げさに思われるかもしれませんが、本当にそれだけの衝撃を受けたんです。
作品のインパクトという観点でいえば、これまで読んだ小説の中でも間違いなく上位に食い込んでくるほど強烈でした。
というわけで、エンターテイメント小説、あるいは変則的なミステリーとしての「乱反射」は文句なしに100点!
記憶を消してもう一度読みたい小説ですね。
まとめ
貫井徳郎「乱反射」がドラマ化!
今回は原作小説のあらすじ・ネタバレ・感想などをお届けしました!
『この手も、人を殺めていたのか?』
これは単行本の帯に書いていったキャッチフレーズですが、結末まで読むとその意味の深さがわかりますね。
わかりやすく犯人がいて、動機があって、謎があって……という一般的なミステリーとは一線を画した、複雑で読み応えのある一冊でした。
乃木坂の齋藤飛鳥さん推薦の一冊でもあるということで、今度は別の推薦本も読んでみようかなと思います。
さて、そんな「乱反射」がスペシャルドラマになるわけですが、注目はやっぱり主演の妻夫木聡さんですよね。
妻夫木聡さん演じる加山聡にとっては絶望的な結末が待ち受けているわけですが、そこが作品の一番の見どころでもあるので、どんな出来上がりになっているのか楽しみです。
ドラマ「乱反射」は9月22日放送。お見逃しなく!
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