『罪人の《今》 許すのか、裁くのか』
一目見ただけで「うわっ、重そう!」と感じるテーマですが、実際に読んでみるとやっぱり重い!(笑)
探偵の主人公はひょんなことから犯罪加害者の《今》を追跡調査することになるんですが、実は主人公もまた心無い犯罪で姉を亡くした被害者遺族。
やがて物語は彼自身の復讐へ……という感じの内容ですね。
果たして結末に待ち受けているのは希望か絶望か!?
というわけで今回は薬丸岳「悪党」のあらすじと感想をお届けします!
※結末までのネタバレを含みます。ご注意ください。
Contents
簡単なあらすじ
佐伯修一の姉は三人の男たちに陵辱され殺された。
今から15年前のことだ。
当時、修一はまだ中学生で、姉のゆかりは高校生だった。
犯人の男たちはまだ未成年だったため、顔も氏名も公表されず、大人に比べて刑も軽かった。
もうとっくに社会復帰しているはずだが、彼らが佐伯家に来たことは一度もない。
きっと自分の罪を忘れて、新しい人生を謳歌しているのだろう。
理不尽だ、と佐伯は思う。
事件以降、佐伯家からは笑顔が消えた。
被害者側であるにも関わらず、世間から好奇の目を向けられて苦しんだ。
なのに、加害者はたった数年の償いで許されるというのか?
いいや、そんなはずはない。
佐伯の心の中には、今でも憎しみの焔(ほのお)が燃えている。
絶対に許さない。
姉の仇は必ず見つけ出す。
そして、この手で……
登場人物
【佐伯修一】
主人公。30歳。探偵。元警察官。
【小暮正人】
「ホープ探偵事務所」の所長。佐伯の過去を知っている。
【佐伯ゆかり】
修一の姉。故人。享年17歳。
【榎木和也】
15年前の事件の主犯格。判決は懲役10年。
【田所健二】
15年前の事件の犯人のひとり。判決は懲役3年~5年の不定期刑。
【寺田正志】
15年前の事件の犯人のひとり。判決は懲役3年~5年の不定期刑。
【伊藤冬美】
佐伯の恋人。過去に秘密あり。店での源氏名は「はるか」
結末までのあらすじ・ネタバレ
探偵としての仕事をこなすかたわら、佐伯はずっと【姉の仇】を探し続けていた。
榎木和也・田所健二・寺田正志。
何の罪もない姉から理不尽に未来を奪った男たち。
1人目
最初のひとりはすぐに見つかった。
田所健二。今は人気ラーメン屋の店主。
田所はずいぶんと儲かっているようで、はためからも羽振りのよさが見てとれる。
いわゆる成功者、というやつだ。
しかも飲食店チェーンを展開する企業の令嬢と婚約中。
まさに順風満帆の人生である。
田所を尾行しながら、佐伯は考えた。
(俺は奴をどうしたいんだ? 復讐か。それとも、奴を許すための材料を探しているのだろうか?)
田所の生活は、それは贅沢なものだった。
夜になると決まってキャバクラへ足を運び、金にものを言わせて女を連れ出している。
少なくても、佐伯には田所を許すべき材料など見つからなかった。
2人目
田所の監視を続ける日々。
尾行のため潜入したキャバクラで出会った「はるか」に惚れられた佐伯は、はるかを利用して田所の情報を集めるようになっていた。
そんな中、ある変化が起こる。
浮浪者のように汚い格好をした男が、どうやら田所を脅しているようだ。
調べてみると、男の正体は寺田正志だった。
寺田は15年前の事件をネタに田所を脅迫し、金を引き出していく。
「いいのか? 俺に逆らえば例のDVDが世に出回るぞ」
はるかに仕掛けさせた盗聴器で2人の会話を聞いていた佐伯は、15年前の事件を記録したDVDがあることを知る。
ゆかりの尊厳が無惨にも汚されていく様子を、録画していたというのか。
佐伯の心は激しい憎悪によって塗りつぶされた。
はるかの過去
はるかが重傷を負って病院に運び込まれた。
独断で寺田の家からDVDを盗みだしたのがバレて、手酷く殴られたということだった。
(俺のせいだ。俺が、はるかにDVDのことを話したりしたから……)
自責の念にかられる佐伯に、はるかは「どうしても許せなかったの」という。
実は、はるかには義父から性的虐待を受け続けていたという過去があった。
はるかが家を出ると、義父はそのときの写真をネットに流した。
記録として残ることで、被害者は何度も、何度でも汚され続ける。
はるかはそれまでの人間関係を断ち、整形して夜の世界に入った。
そういう過去があったからこそ、はるかはゆかりのDVDをどうしても取り戻したかったのだという。
しかし、取り戻したDVDはコピーされたうちの一枚にすぎない。
ゆかりの魂を救うには、寺田が持つ原本を取り戻さなければならない。
自滅
めった刺しにされた寺田正志の遺体が発見された。
盗聴器で会話を聞いていた佐伯は驚かない。
寺田ははるかに暴行した事件から逃げるため、田所に多額の金を要求していた。
寺田を刺した犯人は、田所健二に違いない。
近いうちに田所は逮捕されるだろう。
ラーメン店での成功も、令嬢との婚約も水の泡。
佐伯が手を下すまでもなく、ゆかりの仇は自滅したということになる。
(……いや、まだだ。もうひとりいる)
主犯格の榎木和也。
佐伯にとって最も憎むべき仇が、まだ残っている。
失踪
『修ちゃんのこと大好きだった。今までありがとう』
一通のメールを最後に、はるかが消えた。
これまでのことを反省し、やっとこれから【冬美】とちゃんと向き合おうと、佐伯が思っていた矢先だった。
ネットに流出した写真のせいでいつも恋人と長続きしない、と冬美は言っていた。
いつ整形がバレて「あのネットの写真の女じゃないか」と気づかれる恐怖が今も消えないと言っていた。
その恐怖に、もっと寄り添ってやっていれば……。
一抹の寂しさを感じている自分を誤魔化すように、佐伯はひとりつぶやいた。
元の孤独に戻っただけだ、と。
因縁
事務所をやめて冬美を探そうと思った。
そのことを所長の木暮に伝えると「じゃあ、最後に一仕事してくれ」というので、佐伯はしかたなく了承する。
木暮から渡された調査依頼書に目を通すと、そこには思いもよらない人物の名前が記されていた。
依頼人:木暮正人
調査対象者:榎木和也
「どういうことですか!」
声を荒げる佐伯に、木暮は告げる。
「探偵を辞める手土産として、自分が最も知りたいことを調べさせてあげようというだけだよ。退職金みたいなものかな」
見透かしたような木暮の目に、佐伯は動揺する。
榎木のことを考えないようにしても、自分はきっといつかまた榎木のことを調べ出す。
そんな内心を読まれているようだった。
「あなたはプロの探偵としてこの依頼を受けるべきだよ。この仕事を受けないと、あなた後悔しちゃうよ」
……後悔?
木暮は榎木について何か知っているのだろうか?
だが、そんなことを質問できる空気ではなかった。
「わかりました」
そう返事をすると、佐伯は依頼料の百万円を上着のポケットに突っ込み、事務所を出た。
3人目
榎木和也は愛知県内の病院に入院していた。
顔に血の気はなく、体は骸骨のようにやせ細っている。
末期がんで余命わずか、ということだった。
(所長が後悔すると言ったのはこういうことだったのか……)
しかし、哀れな榎木の姿を見ても、佐伯の憎悪は揺るがなかった。
佐伯は個室で眠る榎木の胸に果物ナイフを思いっきり振り下ろす。
そして、すんでのところで止めた。
(こんな終わりじゃ、あまりにも榎木が楽すぎる)
姉と同じ苦痛と絶望を味わわせなければ、意味がない。
◆
その夜、佐伯は寺田が持っていたDVDを見た。
そこに映っているのは無惨な姉の最期と、下卑た男たちの欲望。
激しい憎しみの焔が燃える。
同情の余地はない。
佐伯は改めて復讐の決意を固めた。
◆
「これを見ながら、もうすぐお前がいく場所を想像してみるがいい」
榎木にDVDを見せつける。
しかし、思っていたような恐怖を引き出すことはできなかった。
端的にいえば、榎木は開き直っているのだ。
ゆかりの命を奪ったことについては反省の気持ちも謝罪の気持ちもない、と榎木は言う。
それならば……
悪党
姉を殺した仇であっても、その命を奪うことは許されない。
そんなことをすれば被害者遺族はたちまち加害者に変わり、加害者の身内が新たな被害者遺族になってしまう。
そうやって憎しみの連鎖が続いてしまう。
正しい、とても立派な考えだ。
しかし、そんなものはキレイごとにすぎない。
大切な人を理不尽に奪われたことがないから言えることだ。
この15年間、佐伯は姉の無念を忘れたことはない。
この15年間、佐伯は心の底から笑ったことがない。
刑務所から出た加害者がのうのうと生きている一方で、被害者遺族は永遠に苦しみ続ける。
永遠に悲しみ続ける。
永遠に憎しみ続ける。
それでもなお、復讐は許されざることだという。
ならば、と佐伯は思う。
俺は悪党でいい。
榎木に復讐するためなら、奴と同じ悪党にだって墜ちてやる。
かつて誰かが「悪党は自分が奪った分だけ大切な何かを失ってしまう」と言った。
それでもいい。
ゆかりへの復讐以外に大切なものなど、この俺にあるものか。
失って後悔するものなど、今の俺には……
結末
「ご臨終です」
医師が榎木の命の終わりを告げる。
その声を聞いた瞬間、佐伯の憎しみは燃え尽き、心の中に真っ白な灰が舞った。
(虚しい……)
榎木の危篤に駆けつけた佐伯は、最後まで榎木への復讐を果たそうとしていた。
用意したボイスレコーダーを榎木の耳元で再生し、絶望に叩きこむつもりだった。
「あんなケダモノっ……」
録音されているのは榎木の母の声だ。
幼いころ母親が大好きだったという榎木の心を折るには、この方法しかないと思った。
けれど最後まで、佐伯は再生ボタンにかけた指を押し込むことができなかった。
そして、そうこうしているうちに榎木は旅立ってしまった。
(なぜだ? なぜ押せなかった?)
先日会ったばかりの父の言葉がよみがえる。
「いつでも笑っていいんだぞ。いや、笑えるようにならなきゃいけないんだぞ。おれたちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」
別れを切り出そうとしたときの冬美の姿がよみがえる。
「ひとりにならないで! ひとりになっちゃだめ……私がそばにいるから……辛いときはひとりにならないで……」
(あったのか、俺にも。失いたくない大切なものが……)
エピローグ
あえて時間をかけて冬美の足跡をたどった。
どんなところで生まれたのか。
どんな子どもだったのか。
どんな人生を歩んできたのか。
探偵としての日々のなかでも、これほど人のことが知りたいと渇望したことはない。
君のことを知れば知るほど、どうしようもなく愛しさが増してくる。
(君をひとりにしたくない。いや、俺がそばにいてほしい……)
冬美は大きなショッピングセンターの雑貨屋で働いていた。
店内に足を踏み入れ、レジに近づいていくと、客と楽しそうに話している彼女を見つけた。
顔にはまだうっすらと傷跡が残っている。
彼女がこちらを向いた。
目が合った。
その瞬間、うっすらと残っていた彼女の傷跡が微笑に変わった。
<完>
感想
薬丸岳さんの本を読んだのは「友罪」に続いて二冊目です。
「悪党」も同じく『罪』という重いテーマを扱った作品でしたが、「友罪」よりはエンタメ成分の濃い作品だったように思います。
前半は連作短編集のようなつくりで飽きませんでしたし、後半は一気に本筋が盛り上がっていくので休憩するタイミングがありませんでした(笑)
解説にもありましたが、薬丸岳さんの本を初めて読む方への入門書としていいのではないかと思います。
結末もハッピーエンドでしたしね。
罪と罰
『罪を犯した人間は永遠に許されないのか?』
『刑務所で償いを終えたら罪は消えるのか?』
ふだんちっとも考えもしないテーマについて、どっぷりと考えさせられました。
もちろん簡単に結論を出せる問題ではありません。
というか、きっと永遠に答えなんて出ないんだと思います。
でも、だからといって考えるのを放棄していい問題でもない。
小説を通じて薬丸岳さんに「たまには自分がまだ身を置いてない世界について考えてみたまえよ」と言われていたような気がします。
※こんな口調の人か知りませんが
前に読んだ『友罪』では「前科者がいかに生きにくい世の中か」ということについて考えさせられましたが、『悪党』で描かれていたのは逆の立場から見た【罪と罰】
被害者遺族の立場に立ってみると「どうしたって加害者のことを許せない」という気持ちに共感しました。
もし私の大切な人が榎木たちのような人間に命を奪われたら、と想像するだけでゾッとします。
きっと私も佐伯と同じように笑えなくなります。
そして、加害者がどんなに泣いて謝っても、その罪を許す気にはなれないでしょう。
だというのに、もし、刑務所から出てきた加害者がけろっとした顔でちっとも反省してなかったとしたら……。
でも、それって法律的には何の問題もないんですよね。
加害者に一生みじめな生活を送らせるような強制力はどこにもありません。
もちろんそれは当然のことなんですが、当事者にとっては「しかたないか」で済む話じゃないんですよねえ……。
むむむ……難しい……。
考えすぎて「ああ!もうわからん!」と頭がパンクしてしまいました。
でもきっと、こうして考えることそのものが大事なんですよね。
一番危ないのは、視野が狭くなって「あれは正しい、これは間違ってる」という思い込み(偏見)に囚われてしまうことなんだと思います。
そうならないためにも、薬丸岳さんが突きつける『問題』には今後も取り組み続けようと思いました。
ちょっと不満も
エンタメ路線に寄ったぶん、ちょっと「ご都合主義的かな」と思うことがありました。
たとえば作中では伊藤冬美が佐伯の心を癒すキーパーソンとして登場しますが、どうして冬美が佐伯に惚れたのかがさっぱりわかりません。
いや、もちろん「同じ心の闇を抱える佐伯に惹かれた」みたいな説明はできるんですが、それにしたって気づけば冬美は(自分から)佐伯に抱かれていましたし、ちょっと尻軽すぎやしませんか、と言いたい。
「あなた男性との性交渉でトラウマあるんでしょう?」と言いたい。
前半でめちゃくちゃ佐伯に利用されているのに、冬美がずっと献身的なのも謎。
「うわあ、都合のいい女だぁ……」と思わざるを得ませんでした。
そのせいで感動的なラストも、あまり響かず。
「あんた決意して修一のもとを離れたんでしょう? なに笑とんねん」と斜に構えて見てしまいました。
いや、いいんですよ? フィクションだし。面白かったし。
でも、本編のテーマが重厚なものだっただけに、なんだか「たいやきのしっぽにあんこが入っていなかった」ような気分になりました。
※長くなるとアレなので詳しくは書きませんが、ラストで佐伯がボタンを押さなかった理由についても、ちょっと腑に落ちないところがありました。
総評
ひとつ前の項では言いたい放題でしたけど、全体としては面白かったです!
なにがいいって、やっぱり主人公が探偵ってのがいいですよねえ。
登場人物もみんなキャラが立っていて、ドラマ化に向いている作品だなと思いました。
※実際にWOWOWドラマ化が決まっています。
「悪党」は全7章にプロローグとエピローグをくっつけた構成になっているのですが、このうち第1章~第5章は本筋と並行しつつ「依頼人からの調査依頼で、犯罪加害者の足取りを追跡する」という内容になっています。
これがまるで連作短編のようで、各章にしっかりとオチがついているのですが、どれもかなり面白かったです。
中にはイヤミスっぽいラストもあったりして、私好みでした。
1章あたり約40ぺージ程度ということもあり、読みやすい一冊でした。
おまけ
今回の「あらすじ・ネタバレ」では前半の短編っぽいエピソードは全カットしています。
でも、そちらの方も面白かったので『おまけ』としていくつか紹介していきますね。
第1章 悪党
依頼人:細谷博文
調査対象者:坂上洋一
依頼内容:息子の命を奪った男を許すべきかどうか見極めてほしい
◆
かつて細谷の息子をカツアゲの末に殺した坂上は、現在、振り込み詐欺グループの取りまとめ役になっていた。
詐欺グループに潜入し、実際に言葉を交わしてみる。
坂上は気さくで、とても極悪非道な人間とは思えない。
出会う形さえ違っていれば友人になれたかもしれない、佐伯は思った。
しかし、人ひとりの命を奪った人間を、佐伯が許せるはずがない。
「私なら許せません」
依頼人にはそう報告した。
◆
後日、細谷博文は坂上洋一を路上で刺して逮捕された。
命に別状はなかったものの、坂上は半身不随に。
坂上のために涙を流す恋人を見ながら、佐伯は思う。
はたして悪党は誰だったのだろうか?
第2章 復讐
依頼人:早見剛(19)
調査対象者:前畑紀子
依頼内容:16年前、弟の命を奪った女の居場所を調べてほしい
◆
かつて前畑紀子は1歳と3歳の子どもを家に閉じ込め、2か月間も放置した。
兄の剛は生米を喰い生き延びたものの、弟の翼は絶命。
紀子は逮捕され、刑務所に数年間服役した。
たった数年。
弟が腐っていく様子を間近で見ていた剛志にいわせれば、それはあまりに軽すぎる罰だ。
剛は紀子のことを激しく憎悪していた。
◆
紀子は再婚し、新しい家庭を築いていた。
そのお腹には新たな命が宿っている。
紀子は過去を隠して幸せを掴み、あろうことか再び子どもを産もうとしている。
憎むなという方がどうかしている。
しかし意外なことに、剛はたった一言、紀子に声をかけただけですべてを終わらせた。
「生まれてくる子どもが男の子なら、間違いなく翼の、弟の生まれ変わりだろう」
その言葉を聞き、剛の正体を悟った紀子は、一瞬で顔面蒼白になった。
◆
紀子は赤ん坊を見るたびに、己の罪を思い出すだろう。
紀子にとって長い長い償いの日々が、これから始まるのだ。
「翼のことをあの女に忘れさせない。これが僕の復讐です」
第4章 盲目
依頼人:町村幸雄
調査対象者:沢村祐二
依頼内容:妹を騙した男の居所を突き止めてほしい
◆
町村の妹・優子は4年前、職場の信用金庫の金を横領して逮捕された。
親は優子を勘当し、持ち家を売却して返済に充てた。
しかし、そもそも優子が金を横領したのは、恋人だった沢村祐二に騙されていたからだ。
優子は刑務所から出た今でも、沢村の帰りを待ち続けているという。
「よく言うでしょう。恋は盲目だって」
町村は兄として妹の目を覚まさせてやりたいと佐伯に訴えた。
◆
沢村は人の心をつかむ天才だった。
決して自分から「金が欲しい」とは言わない。
沢村はただ「実は金に困っている」と口にしただけだ。
それだけで女たちは大金を貢いでいたという。
◆
沢村は再婚し、大阪で雑貨店を営んでいた。
その姿を見た瞬間、佐伯は凍りつく。
町村幸雄だ。
店の店主は、依頼人として事務所に来た人物に他ならなかった。
「どういうことなんですか」
沢村が語った事情はこうだ。
・きっかけは本物の町村幸雄と出会ったことだった。
・優子が今でも自分のことを待ち続けていると知った沢村は、優子のことが哀れになった。
・だから町村幸雄として探偵に依頼し、優子の目を覚まさせようとした。
「罪滅ぼしのつもりですか」
「そんなんじゃないよ。ただ、今の私は盲目なだけだ」
沢村はすべてを知ったとしても優子が警察に行かないことを知っている。
「あなたはズルい人間だ」
沢村に吐き捨てた言葉が、佐伯自身の胸にも突き刺さる。
そのとき、佐伯は「はるか」を自分の目的のために利用していたのだから。
まとめ
今回は薬丸岳「悪党」のあらすじ・ネタバレ・感想をお届けしました!
最後に要点をまとめると……
- 佐伯は復讐を決意するも、最後まで手を汚さなかった
- 孤独だった佐伯を救ったのは冬美の存在だった
- 結末はハッピーエンド
こんな感じでしょうか。
ただのお題目として「復讐はダメだよ」なんて言ってみても、説得力は宿りません。
その点「一度は心から姉の仇を討つため悪党に成り下がろうとした佐伯が、最後の最後で復讐に踏み切れなかった」という物語からは真に迫る説得力を感じました。
重めのテーマを扱った作品ではありますが、全体としてはエンタメ感があって読みやすく、結末も希望のあるハッピーエンドでした。
ドラマ情報
「悪党」がWOWOWドラマ化!
主要キャストはこんな感じになっています。
- 佐伯修一……東出昌大
- 木暮正人……松重豊
- はるか(冬美)……新川優愛
作品のカラーどおり、派手すぎない、渋い演技の光るキャスト陣で好印象。
主演の東出昌大さんなんかはピッタリだと思います。
そんな中、個人的に注目したいのは、木暮正人役の松重豊さん!
「孤独のグルメ」でファンになったという理由もあるのですが、「ふだんは金にがめついダメ所長、でもラストではめちゃくちゃカッコいい」という木暮の魅力をあますところなく見せてくれるはずだと期待しています。
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