島本理生「ナラタージュ」を読みました!
実は島本理生さんの本は初めて読んだのですが、胸にグッと迫ってくるような切ない物語に引き込まれてしまって一気読み!
今回は映画化もされた小説「ナラタージュ」のあらすじ・結末をネタバレをお届けします!
切なすぎるラストシーンとは?
あらすじネタバレ
主人公・工藤泉が大学2年生だった春、1本の電話がかかってきた。
「演劇部の後輩の公演に参加してくれないか?」
久しぶりに聞く葉山先生(32)の声に、泉はときめく。
そして、卒業式の日のキスを思い出す。
こうして泉は卒業生として、高校演劇部の芝居に参加することになった。
演劇のキャストは全部で7人。
卒業生からは泉、泉の親友の山田志緒、志緒の彼氏でもある黒川博文。
現役メンバーは全員高校3年生で塚本柚子、新堂慶、金田伊織。
あと1人は卒業生ではないが、黒川の友人である小野玲二が務めることになった。
そして、演出・舞台監督は顧問の葉山先生。
夏休み明けの本番に向けて、メンバーは毎週土曜日に集まって練習することになった。
練習が終わった後、卒業生組と小野君は4人で集まって遊ぶようになった。
飲みに行ったり、小野君の家に遊びにいったり、小野君の実家を訪ねて長野に行ったり。
小野君は演劇もうまく、普段も隙がない何でもできる好青年だった。
しかし、泉は小野君よりも葉山先生のことが気になって仕方がない。
ある日、柚子ちゃんが行方不明になった。
もちろん、その日の練習は中止。
夜、泉が心配していると、葉山先生から電話がかかってきた。
内容は「元気ですか?」というものだったが、泉は葉山先生の異変に気付く。
「すぐに行きます。あなたは今、どこにいるんですか?」
案の定、葉山先生は柚子ちゃんを探し回ってボロボロになっていた。
この人はそういう人なのだ。
高校時代、泉がいじめられていたときも葉山先生が寄り添ってくれた。
その時から、葉山先生は泉にとって特別な人になったのだ。
心配になって「葉山先生の家に泊まる」と泉は言ったが、葉山先生は「ありがとう」と言って1人で家に戻った。
葉山先生は泉にだけは本音をさらけ出してくれるが、決して泉の望むものを与えてはくれない。
結局、柚子ちゃんは何事もなかったかのように帰ってきた。
小野君に誘われて2人で演劇を見に行った。
帰りに小野君の家に寄った泉は、突然抱きしめられて小野君から告白される。
「俺さ、工藤さんのこと好きだよ」
「ごめんなさい」
泉は高校生の頃から葉山先生だけを見てきた。誰かと付き合うなんて考えられない。
そうして、泉は卒業式間近に葉山先生と話したことを思い出す。
あの日、葉山先生は自分の過去を話してくれた。
付き合っていた女性と結婚したこと。
彼女の反対を押し切って、母親との同居を選んだこと。
2人がぶつかっても、どちらか一方に肩入れはしなかったこと。
そして、ついに耐えられなくなった妻が自宅に放火しようとして捕まったこと。
奥さんは北海道の実家が引き取り、もうすでに別れたと葉山先生は言った。
泉は葉山先生に何と言われても、この人のためにできることをすべてしたいと思った。
葉山先生の嘘
ある日、葉山先生が体調不良で欠席して、練習がお流れになった。
泉は葉山先生の自宅を訪ねたが留守のようだ。
何かの予感がして、泉はあちこちを探し回った。
そして、ヘトヘトになった頃、ついに葉山先生を見つける。
葉山先生は義父に会っていたと言い、酔っているようだった。
「僕は3年間、あの事件のことだけを考えていた。でも、今でもどうすればいいかわからないんだ」
「ごめん、こんな話をして」
泉は葉山先生に寄り添い、自宅までついていった。
泉はついに自分を抑えきれなくなって葉山先生にキスをする。
「もう今の距離に耐えられない」
葉山先生は何も言ってはくれなかった。
泉が葉山先生の寝室に入ると、かすかな違和感を覚える。
部屋のあちこちに女性の影を感じたのだ。
「妻のなんだよ」
「けど、別れたのにどうしてまだ奥さんの物がこんなに」
葉山先生は諦めたような顔をしてつぶやく。
「本当は別れていないんだ」
混乱する泉。
(ずっと、嘘をつかれていた…?)
葉山先生は泉を失いたくなかったから言えなかったと言う。
「ずるいです。そんなのずるいですよ」
泉の体が震え、涙があふれ、怒りがこみあげてくる。
「ふざけないで!私は葉山先生がどうしようもなく好きだったから力になりたかった!あなたの苦しみを共有できていると思ってた!バカみたい!そんなことを言われて、どうやってこれからあなたを信じればいいのかわからない」
その日は結局、葉山先生の家でバラバラに寝た。
次の日、泉と葉山先生は一緒に出掛けることにした。
美術館に行って、アイスを一緒に食べる。
泉は、生きるのをやめてしまおうと思った日、そして同時に葉山先生に救われた日のことを思い出していた。
「葉山先生。昨夜からずっと考えていました」
「あなたを追うのはやめようって。もう、こういうふうに会うのも最後にします」
「僕も同じことを考えていた。僕には君を幸せにできないから。今までありがとう。楽しかった」
「私もです」
泉はふらふらと家に帰り、ビールを一気飲みして寝た。体調が悪かった。
志緒や黒川には、葉山先生との関係が終わったことがすぐにバレてしまった。
泉と小野君
夏休みが終わり、ついに演劇の本番が終わった。
これでもうこのメンバーが揃うこともない。
打ち上げに行かないことにした泉は、同じく打ち上げ不参加の小野君と帰ることに。
すると、小野君が急に言った。
「今からまた長野に遊びに来ない?意味なんて持たなくていいから」
泉は今1人になりたくなくて、小野君の実家に行くことにした。
それから数日、泉は小野君と一緒に過ごした。
2人で線路を歩いたり、温泉に行ったり。
小野君は相変わらずさわやかで、泉はつい「小野君と付き合ったら幸せだろうな」なんて言ってしまうほどだった。
そして、長野から東京に戻る日。
小野君は何の前触れもなく唐突に言った。
「俺と付き合ってください」
「あなたが俺のこと特別に好きじゃないことはわかってる。それでもかまわないし、前に好きだった相手を忘れてなくてもいいんだ。一緒に過ごして楽しかったから。だから、俺と付き合ってほしいんだよ」
泉は答える。
「わかった。私、小野君と付き合う」
晩夏、こうして泉と小野君は恋人同士になった。
小野君は「工藤さん」から「泉」と呼ぶようになった。
しかし、小野君は理系で教職もとっているため忙しく、あまり会えない日が続く。
それでも予定をあわせて一緒に出掛けたりもしたし、秋ごろには体も重ねあった。
一緒に過ごす時間が増え、泉は少しずつ小野君のことを好きになっていく。
一方、小野君は反対に少しずつ不安な気持ちを募らせていく。
泉はまだ恋人のことを「小野君」と呼んでいた。
そして、事件は起こった。
泉が小野君の家で寝ていたときに、葉山先生から電話がかかってきたのだ。
電話の内容は大したことではなかったが、この日から小野君は嫉妬で精神状態が不安定になってしまう。
泉を束縛しようとしたり、そうかと思えば急に不安になって泉に謝ってみたり。
ついには泉が嫌がっているのに、無理やり犯してきたりもした。
「小野君、つけてない!」
「たまには大丈夫だよ」
一方的な行為に泉は考えることをやめ、ただ体が振動するのを感じていた。
そして、またしても事件が起こった。
泉が夜道で知らない男につけられている。
怖くなった泉は小野君に電話したが、小野君は来てくれなった。
それどころか、小野君は電話でも嫉妬の言葉ばかりを泉にぶつけてくる。
いつのまにか泉は、葉山先生の家に向かって歩いていた。
「君、いったいどうして」
「ごめんなさい。来たらいけないってわかってたのに、ごめんなさい」
ボロボロ泣きながら話す泉を、葉山先生は部屋に招き入れる。
「僕に連絡をくれればすぐに迎えに行ったのに」
「小野君が来ないからって、あなたに来てくれだなんて…」
「言えばいい。僕はいつでも飛んでいく」
「何で今さらそんなことを言うの?」
「今さらじゃない。僕はいつでもそう思ってる」
「だって私が別れを告げた時も、小野君と付き合ってるって言った時もあなたは平気そうにしていて」
「平気なわけないだろうっ!」
葉山先生の大声に泉は驚く。
「僕は、小野君といた方が幸せになれると思った。君が幸せなら僕の独占欲なんてどうでもいい」
「そんなこと言わないで。もう遅いよ、葉山先生」
「仕方ないんだ、僕は君の求めるものを何一つ与えることが――」
今度は泉の頭に血が上った。
「あなたは結局、自分が一番かわいいだけじゃないですか!まだ奥さんを愛しているんでしょう?あなたが私を苦しめるんです」
泉は家から出て、それから手帳に挟んでいた葉山先生への手紙と、葉山先生と一緒に写った写真を破いた。
泉と葉山先生
小野君の部屋で寝ていると、真夜中に電話が鳴った。
葉山先生からだったので切ろうと思ったが、素早く要件を切り出されてタイミングを失った。
「柚子が歩道橋から飛び降りた」
すぐに病院に駆け付けると、葉山先生たちが病室の前にいた。
思ったより柚子の状態は悪いらしい。
「どうしてこんなことに…」
原因は一年前に起こった暴行事件だった。
柚子は性的に暴行されていたのだ。
そして、それを1人で抱え込んでしまっていた。
葉山先生も気にかけていたが、泉のときとは違って柚子を救うことはできなかった。
真夜中の病院を出る時に見えた葉山先生の後ろ姿が、泉にはとても淋しそうに見えた。
タクシーで小野君の家に戻った。
家へと歩いている途中、泉は立ち止まって小野君に言う。
「小野君、ごめんなさい。私、戻りたい」
それを聞いて小野君は脱力したように言う。
「病院に戻るのは構わないけど、そうじゃないんだろう?」
「私、葉山先生のところに戻る。本当にごめんなさい」
泉は小野君に別れを切り出した。
「私はもう、小野君とは一緒にいられない」
小野君は泉を罵ったり、土下座させたり、涙を流して引き留めようとしたりした。
「なにもいらないんだよ。ただ泉が一緒にいてくれればいいんだ」
「一緒なんだよ。小野君がそう言ってくれるのと同じ気持ちで、私は葉山先生を見てる」
小野君の全身から力が抜けた。泉は葉山先生のもとへと向かう。
合流すると、葉山先生は土下座で汚れてケガもしている泉の姿に驚いた。
泉が「転んだんです」と言うと、次の質問が飛んでくる。
「そういえば君、小野君は?」
「別れたいって言ったんです。あなたに呼ばれている気がして」
葉山先生は少しの沈黙の後、言った。
「本当は君にそばにいてほしかった」
柚子を救えなかったことを後悔して、葉山先生は車のなかで泣いた。
泉は葉山先生の手を握った。
飛び降りから3日後、柚子は亡くなった。
そして葬式を終えてから1週間後、今度は葉山先生が倒れた。
知らせを聞き駆け付けると、葉山先生がベットに横たわっている。
「過敏性大腸炎ですか」
少し入院が必要になるが、命に別状はないらしい。
ホッとする泉。見ると呼ばれたのは泉だけのようだった。
ベットの上で葉山先生が言う。
「君以外に思いつかなかったんだ。すまない」
頼りにされて泉は嬉しかった。
それから泉は着替えの手配など、葉山先生の世話をすることに。
大学が終わってから、葉山先生の病室に顔を出す。
それは、とても穏やかな日々だった。
葉山先生は退院後、高校を異動し、奥さんとやり直すことになる。
泉は、これが葉山先生との最後の時間になると予感していた。
退院も近くなったある日、葉山先生は泉に尋ねた。
「何かお礼がしたいんだ。どこかへ行きたいとか、欲しいものがあるとか、なにかないかな」
泉の口から「それなら」と言葉がこぼれる。
「それなら退院した日に葉山先生の家に泊めてもらえたら、そうしたら今度こそ本当にお別れを…」
葉山先生がゆっくりとこちらを見た。
「嘘です。忘れてください」
葉山先生はベットから身を乗り出し、泉を抱き寄せる。
「僕は君が好きだ」
「私もです。どうしようもないほど、あなたが好きです」
「本当は、ずっと君のそばにいてあげたかった」
「それが聞けただけでも十分です」
結末
退院した日の午後、2人で葉山先生の家に向かった。
家に入ると、葉山先生は泉と唇を重ねる。
それから葉山先生は服を脱ぎ、泉が望んだようにはじめて体を重ねた。
事が終わって、葉山先生は急に泣き出しそうな顔になって言う。
「これしかなかったのか、僕が君にあげられるものは。ほかになにもないのか」
「あなたはひどい人です。これなら二度と立てないくらい壊されたほうがマシです。お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れて行って見捨てて、あなたにはそうする義務がある」
「無理だ。僕にはできない」
「それならもう2度と私の前に姿を見せないでください」
その日は一日中2人で寝ていた。
翌朝、クリスマスの日。
葉山先生は父親が残したというアンティークの懐中時計を、泉は渡しそびれていた海外土産の万年筆をお互いにプレゼントした。
泉が家に帰るというと、葉山先生は駅のホームまで見送りについてきた。
ホームに電車が来る。
泉は握手のために手を差し出し「色々とありがとうございました」と呟いたが、葉山先生は微動だにしなかった。
そして電車が走り出す。
電車が隣の駅に着いたとき、泉は抑えきれない寂しさを感じて反対側の電車に乗り込んだ。
もとの駅に戻ると、驚くべきことに、ホームにはまだ葉山先生の姿があった。
2人は手を振りあったが、そのうち葉山先生はゆっくりと階段に向かって歩き出す。
彼の姿が完全に消えた。
それが、泉が葉山先生に会った、本当に最後のときだった。
ラストシーン
その後、泉は大学を卒業して就職した。
そして職場の同僚と付き合いはじめ、今度結婚することになった。
結婚を直前に控えたある日、泉は偶然にも葉山先生の親友のカメラマンと食事の場で出会う。
「ああ、あなたが」
彼は葉山先生と会った時の話をしてくれた。
「奥さんには絶対内緒だって言って、彼、定期入れからあなたと一緒に写った写真を取り出しましてね。彼はあなたのことが好きだったみたいですよ」
激しい痛みと幸福感に揺さぶられて、泉は落ちる涙をぬぐうこともできず空中を見つめた。
<完>
おまけ
冒頭のシーン
泉が、もうすぐ夫となる男性と歩いている。
「君は今でも俺と一緒にいる時に、あの人のことを思い出してるのか」
「そんなふうに見える?」
「見えるよ。君に彼の話を聞いた夜から、俺は君を見ていてずっと思ってた」
「それならどうして私と結婚しようと思ったの」
「きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。だったら、君といるのが自分でもいいと思ったんだ」
今でも、呼吸をするように思い出す。
彼に触れた夜を昨日のことのように感じる。
だけど2人がまた顔を合わせることは一生ないだろう。
私と彼の人生は完全に分かれ、再び交差する可能性はゼロに近い。
<完>
※この冒頭のシーンから回想する形で、「ナラタージュ」では話が展開していきます。
追記:今回の記事でお伝えできなかった解説・感想・補足などをまとめました!
追記:映画「ナラタージュ」観てきました!
関連記事:映画「ナラタージュ」の感想!感動作品だけど賛否両論?
まとめ
以上、実写映画化される小説「ナラタージュ」のあらすじ・ネタバレでした!
物語としての結末は実は冒頭のシーンで、そこから回想(ナラタージュ)していくという構成が素敵ですね。
今回は展開のみをかいつまんでネタバレしましたが、映画を楽しみにしている方はぜひ原作も読んでみてください。
そうすれば、ラストシーンの泉の涙に、心を締め付けられるような切なさにきっと感動できますよ!
ちなみに、あらすじ・ネタバレをご覧になった方はもうご存知の通り映画「ナラタージュ」では…
ベッドシーン、あります。
映画『ナラタージュ』の配信は?
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※配信情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
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