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「十二人の死にたい子どもたち」のあらすじとネタバレ!結末や真犯人は?

      2018/10/27

こんにちは、若竹です。

今回の注目作は冲方丁「十二人の死にたい子どもたち」!

堤幸彦監督が映画化するということで原作小説を読んでみました。

結論からいうと、この小説、めっちゃくちゃ面白いです!

タイトルから「重くて暗い作品かなあ……」と予想していたのですが、なんと中身はバリバリのエンタメ&ミステリ小説!

12人の中で、いったい誰が『犯人』なのか?

どんどんパズルのピースがそろっていく展開にはワクワクさせられましたし、なんといっても結末が秀逸でした。

映画が公開された暁には、私と同じように「そうだったのか!」と膝を打つ人が続出することでしょう。

というわけで今回は、そんな「十二人の死にたい子どもたち」のあらすじとネタバレをお届けします!


「十二人の死にたい子どもたち」のあらすじとネタバレ!

★登場人物

1.サトシ……『集い』を主催した少年。事務的な進行役。14歳。

2.ケンイチ……陰のある少年。16歳。

3.ミツエ……ピンクのゴスロリ服を着た少女。

4.リョウコ……マスクと帽子で顔を隠している少女。

5.シンジロウ……ハンチング帽の少年。論理思考に優れていて、性格は柔和で穏やか。物語の探偵役。17歳。

6.メイコ……主体性のない少女。最初は意思決定を『7番』に預ける。

7.アンリ……長身の少女。自信に満ちていて、堂々としてる。『5番』と並ぶ場の主導者。

8.タカヒロ……ぼんやりしている少年。起きながら眠っているような印象。吃音。

9.ノブオ……小柄な少年。眼鏡をかけていて坊主頭。穏やかな性格。

10.セイゴ……がっしりした体格の少年。荒っぽい言動が目立つ。15歳。

11.マイ……ギャルの少女。黒い肌と脱色した髪。話の流れに理解が追いつかず、ときおりズレた発言をする。17歳。

12.ユキ……存在感のない少女。

13.???

 

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第1章 集い

主催者であるサトシの呼びかけに応じ、12人の子どもたちが『集い』に参加した。

少年少女たちの目的は『死ぬこと』

練炭から発生する一酸化炭素は、睡眠剤で眠っている彼らに苦痛のない『最期』をもたらす。

人数が揃い、全員の意思を確認した後、計画は速やかに実行に移される……はずだった。

 

昼の12時。廃病院の地下階にある多目的ホール。

予定通りの時間、予定通りの場所に、予定通り12人の子供たちが集まった。

イレギュラーな出来事は1つだけ。

すでに少年が『1番のベッド』で冷たくなっている。

人間の遺体。

普通なら大騒ぎするべき状況かもしれないが、残りの11人は「主催者の1番が一足先に『実行』したのだろう」とそれほど問題視しなかった。

だからこそ、部屋に入ってきた13人目の少年が発した言葉に、その場にいる全員が息を呑んだ。

1番のサトシです。遅くなってごめんなさい」

例外なく全員が混乱した。

話を聞く限り、最後に部屋に入ってきた少年は「本物の1番(主催者)」だ。

では、1番のベッドに横たわっている少年はいったい誰なのか?

少年少女たちは謎の13人目を指さして、主催者に説明を求める。

すると、サトシはあまり感情の読めない表情で言った。

「あの方は、どなたですか?」

沈黙の時間が流れる。

その問いに答えられる人物は、1人もいなかった。

 

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1-2.集いのルール

『集い』にはサトシが定めた絶対のルールがある。

その中でも特に重要なのは、計画実行前の意思確認だ。

『全会一致の賛成』がないと、計画は実行されない。

もし一人でも反対者がいた場合は、その場で話し合いの時間が設けられる。

その後、一定時間後にもう一度「意思確認」が行われ、『全会一致で賛成』になるまでこれを繰り返す。

……ただし、これはあくまで「疑問を解消するための措置」であり、反対者の存在により『集い』が中止になることはない。

参加者はいつでも自由意思でその場から去る(不参加に切り替える)ことができる。

 

集いのルールに則り、挙手による投票が行われた。

「今すぐに計画を実行するべき」に10票。

「話し合うべき」に1票。

集計者のサトシを除いて、2番のケンイチだけが全員の考えに反対した。

「それでは、30分間の話し合いの時間をもうけます」

事務的な口調でサトシが宣言した。

 

「余計なことをするな」という参加者たちからの恨めし気な視線に戸惑いながら、ケンイチは言った。

「だって、おかしいでしょ!?知らない人が紛れ込んでるんだよ!」

この不自然な状況を解決しないと「すっきりとした最期」を迎えられない、というのがケンイチの主張だった。

 

議論を重ねるまでもなく、1つの結論が導き出された。

謎の少年(仮に『ゼロ番』とする)は、参加者の中の誰かが連れてきたとしか考えられない。

ゼロ番を連れてきた人物には何かしらの事情があった。

そして、その人物は「自分こそがゼロ番を連れてきた」と正体を明かす気はないらしい。

……以上。

これからこの世を去ろうという『集い』において、そんなことは大した問題じゃない。

これがケンイチを除くその場の総意だった。

 

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不毛な話し合いはムキになって「この状況はおかしい!」と主張し続けているケンイチを排除することで収束するかのように思われた。

ところが、シンジロウの『指摘』により風向きが変わり始める。

「ところで、あの車イスはなんですか?」

シンジロウの指摘通り、部屋の中には折りたたまれた車イスがある。

この場に用意された12のベッドも、部屋の中央に置かれた長机も、練炭も睡眠薬も、すべては主催者のサトシが用意したものだ。

にもかかわらず、サトシは車イスの存在に驚いた。

つまり、車イスはサトシ以外の誰かによって持ち込まれたものだということになる。

 

……ゼロ番の存在に、謎の車イス。

不穏な気配が場に流れ始める。

そんな中、シンジロウは立ち上がると、1番のベッドに近づき、少年の体を入念に調べ始めた。

「………」

席に戻ると、シンジロウはじっと何かを考え始める。

 

12時30分。

2度目の意思確認が行われる。

結果、反対に手を挙げたのは2人……ケンイチと、シンジロウ。

もはやムキになって反対しているだけのケンイチはともかく、なぜシンジロウが反対したのか?

一同の視線を受け止めながら、シンジロウはゆったりと口を開いた。

「あそこにいる彼の状態、あれは殺人だと思う

 

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第2章 投票

シンジロウはなぜ「ゼロ番」の状態を殺人だと思ったのか?

その理由を説明するために、シンジロウはまず情報の整理から始めた。

1.車イスは病院の備品ではなく、個人が所有するタイプのものである

2.本来、閉ざされているはずの正面入り口の自動ドアが作動していた。これは病院内に車イスに乗ったゼロ番を運び込むために必要な措置だったと思われる。

3.ゼロ番ははだしであり、部屋の中に靴はない。仮にゼロ番が足に障害を持っていたとしても、靴は履くはずだ。

4.近くにある薬の包装から、ゼロ番の死因は睡眠薬の過剰摂取であるように見える。しかし、その薬は大量摂取すると副作用で筋肉が解け、24時間は激痛に襲われるはずだ。つまり、空になった薬の包装は偽装であり、ゼロ番はそれを飲んではいない。

これらの情報から導き出される答えは1つ。

『ゼロ番』は遺体の状態で運びこまれた。

自然に考えれば、ゼロ番を運んできた人物こそが犯人だということになる。

そう考えれば、ゼロ番を連れてきた『何者か』が名乗り出ないことにも説明がつく。

シンジロウの推理は論理的であり、ほとんどの参加者はその説明に納得した。

 

『この中に、殺人者がいる』

……しかし、それが何だというのだろう?

これから自らの命を絶とうとしている少年少女たちも、ある意味では同罪だ。

もうすぐ何も考えなくなる彼らにとって、そんなことは些細な問題に過ぎなかった。

 

13時00分。

3度目の投票の時間だ。

とはいえ、このままではケンイチやシンジロウが反対し、再び話し合いになるのは目に見えている。

そこでシンジロウは「自分とケンイチを抜いた10人で無記名投票してほしい」と提案。

そのまま実行された。

結果は賛成9票に対し、反対1票。

またも話し合いが延長されることになった。

 

反対に1票を投じたのは10番のセイゴだった。

彼は実の母親とその恋人から多額の生命保険をかけられている。

1年が経過すれば、彼は始末され、憎むべき敵に大金を残すことになる。

だから、セイゴは『集い』に参加した。

1年以内に自ら命を絶った場合、生命保険金は支払われない。

……だが、もし何かの手違いでセイゴが「誰かに命を奪われた」と判断されてしまったら?

その場合、生命保険金は支払われてしまう。

だから、セイゴは反対に1票を投じた。

参加者の中に殺人者が紛れていたのでは、警察が状況をどう判断するかわからない。

真相を明らかにしないことには、彼は安心して眠りにつくことができなかった。

……すべては復讐のために。

 

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2-2.検証と収集

集いの参加者たちは、それぞれ真っすぐ集合場所に来たわけではなかった。

1.廃病院の敷地に入る

2.裏口から建物内に入る

3.参加者の証である【番号】を金庫からとる

4.地下の多目的ホールに集合する

この過程の中で、寄り道をしたメンバーは多い。

ならば、それぞれが寄り道で得た情報をすり合わせれば、ゼロ番についても何かわかるかもしれない。

シンジロウの提案により、一行はゼロ番の手がかりを求めて病院内を巡ってみることになった。

 

・裏口の近くに捨てられていた黒い帽子とマスク

・1階女子トイレに落ちていたゼロ番のスニーカー(左側)

・3基あるエレベーターのうちの1基の中に落ちていたもう片側のスニーカー

手がかりがどんどん集まっていく。

同時に、車イスによる検証を行い、シンジロウは「車イスの人間が一人で建物内に入ることは不可能だった」ことを確認した。

間違いない。

この中の誰かが、ゼロ番を運んできたのだ。

 

病院内を巡った一行は、最後に4階から屋上へ。

……と、その時、それまでゾンビのようにぼんやりしてたタカヒロが急に大声をあげた。

「ノブオくん!き、君が、あの子を殺したの?」

 

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第3章 テスト

集合場所に集まる前、4階にいたタカヒロは階下から上ってきたノブオ・セイゴと合流している。

その時、確かにノブオはこう言ったのだ。

「屋上いいよね、けっこう広いし」

下から来たノブオが、なぜ屋上の様子を知っているのか?

もちろん、以前に入ったことがあるのかもしれない。

それでもこの状況では疑うに値する発言だった。

 

タカヒロの疑問に対して、ノブオは穏やかな笑みを浮かべながら答えた。

「うん。僕がやったんだ」

あまりに突然な展開。

衝撃を受けた表情をしている者もいれば、「だからそれがどうした」とつまらなそうにしている者もいる。

結局、その場はいったん解散し、自由時間の後、14時に再び多目的ホールに集合することになった。

 

参加者たちがそれぞれ散っていく中、ノブオは4階のトイレへ。

(僕がここに来た理由はね、人を殺したからなんだ)

心の中でつぶやくと、ノブオはトイレから出て階段へと向かう。

そうして右足を踏み出そうとした瞬間、ノブオは背後に人の気配を感じた。

振りむこうとしたが、間に合わない。

『何者か』から突き落とされたノブオは、派手に階段を転げ落ちていった。

 

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3-2.協力者

14時00分。

集合時間には、ノブオだけが現れなかった。

サトシが見回りに行っても見つからなかったことから、一部の参加者は「自由時間に逃げたのだろう」と判断した。

 

14時15分。

4度目の投票。

今度は5人の参加者が反対し、話し合いの続行が決定された。

 

「ゼロ番の存在を知っていた人間は、少なくても2人いるんじゃないかと思うんだ」

シンジロウの考えはこうだ。

状況証拠から、ノブオがゼロ番に関わっていた可能性は高い。

おそらくノブオはサトシよりも早く廃病院に来ていて、サトシが地下の多目的ホールを解錠して院内を見回っている隙に、ゼロ番を多目的ホールに運び入れた。

……ここまで考えたとき、ある疑問が浮かぶ。

どうしてノブオは誰にも見つからずにゼロ番を移動させることができたのか?

もしゼロ番を運んでいる姿を参加者に目撃されるようなことがあれば、その時点ですべてが崩壊してしまう。

聡明なノブオならば、その程度のリスクを考えないはずがない。

ならば、もう1人協力者がいたと考える方が自然だ。

屋上に参加者の到着を監視する人間がいれば、ノブオは誰にも見つからずに事を運ぶことができる。

この場合、当然ながら『屋上にいた協力者』はサトシよりも早く廃病院に来ていた人間ということになる。

 

「それなら1人、確かなやつがいるぜ」

ニヤリと笑いながら発言したのはセイゴ。

彼はずっと「外のベンチ近くに落ちていたタバコの吸い殻」にこだわっていた。

サトシが来た時にはもう存在していたタバコの吸い殻の主は、すなわちサトシよりも早く廃病院に到着していた人物に他ならない。

先ほどの自由時間に、セイゴは怪しいと思っていた人物を尾行し、ついに決定的な証拠をつかんでいた。

メンソールのアメリカンスピリット。

そのタバコの持ち主は……4番のリョウコだった。

 

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3-3.リョウコとミツエの理由

リョウコはタバコの持ち主であることをすんなり認めたが、ゼロ番のことは知らないと説明した。

確かにリョウコはサトシよりも早く来たが、開始時間までは誰にも会わないように隠れていたのだという。

リョウコが身を潜めていたのは2階のトイレ。

そこでリョウコは『人が倒れるような物音』を聞いたと証言した。

同時刻に2階の窓の前にいたケンイチも、確かに物音を聞いたと同意。

これによってリョウコの発言の信ぴょう性が高まった。

なお、2人とも『物音』の正体は見当たらなかったという。

……『物音』の正体は、ゼロ番の体が落ちた音だった?

 

リョウコは協力者ではないと一応の説明はついたが、参加者たちの疑念はいまいち晴れなかった。

やましいところがないというのなら、なぜ帽子とマスクで顔を隠しているのか?

セイゴが指摘すると、リョウコは凛と通る声で言った。

「顔を隠すことが習慣だっただけです。みなさんには見せてもいいと思っていました」

そういうとリョウコはマスクに手をかけた。

その下から現れた素顔は……

「リコちゃん? テレビとか映画とかに出ているあの――」

「リョウコです。リコなんて人はここにはいません。それは私が仕事をしているときの、つくられた存在です。この集いにみなさんと参加しているのが本当の私です。私は私でいようとしたからこそ、ここにいるんです」

 

リョウコの正体は「リコ」として有名な芸能人だった。

そんな人物がなぜこの『集い』に参加しているのか?

リョウコは幼いころから母親の言いなりで、ずっと芸能界に身を置いてきた。

そこに自由意思は存在せず、毎日毎日、ただただ「リコ」として振る舞い、消耗し続けてきた。

そんな日々の中、リョウコはふと思ったのだ。

「わたしって何だろう?」

すっかり疲れ切ってしまったリョウコは、せめて最後だけはリコではなくリョウコとして終えるために、この集会に参加したのだった。

 

いきなりの「リコ」の登場に、多くの参加者たちが面食らった。

中でも特にショックを受けていたのは、3番のミツエだ。

「絶対に駄目!あなたは生きてなきゃいけないの!」

ミツエの口からほとばしった金切り声に、全員がビクッとなった。

……今度はいったいなんだ?

ミツエはポシェットから写真の束を引っぱりだすと、テーブルに並べていく。

自殺と報道された若いタレントの生写真。

それはミツエが持てる限りの時間と金銭と精力をつぎ込んだ相手の姿だった。

「あたしみたいな人をこれ以上増やさないで! 沢山の人があなたの後を追っちゃう!」

ミツエが『集い』に参加した理由が明らかになり、みなが黙った。

リョウコは驚きから立ち直ると、みるみる顔を険しくして吐き捨てた。

「馬鹿じゃないの」

 

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3‐4.テストの正体

リョウコとミツエの口論が始まり、場の収集がつかなくなる。

これではノブオの協力者を探すどころか、当初の目的だった『計画』にも支障がでかねない。

どんどん脱線していく『話し合い』にイライラを募らせた9番のアンリは、鶴の一声でその場を収めた。

「落ち着きなさい!私たちは全員『テスト』に合格しています。ここにいる全員に、自由意思で人生を終わらせる資格があるはずですわ」

 

『集い』の参加者はサトシがつくったサイトを通じて集まった。

参加申し込みには膨大な量の「心理テスト」に回答しなければならず、それに合格した人間だけがこうして集められた。

……というのが全員の共通認識だった。

しかし……

「あー、けっこう大変だったよねー、あのテスト。答えとかクリックするだけで2時間ぐらいかかっちゃったもんね」

能天気なマイの発言に、サトシを除く全員が凍り付いた。

……2時間?

シンジロウでさえ丸一日かけて回答したテストを、たった2時間で終わらせた?

全員から驚愕の視線を向けられたマイは、意味もなく笑いながら言った。

あさしさー、全部1にチェック入れたんだよねー。ネットで映画とか観ながらさー。あはは。だって、あれ、適当に答えとけばいいやつでしょ?あれ、違うの?」

 

衝撃と混乱。

テストに合格したことで「自分には資格がある」と思っていた、その根拠が崩壊する。

同時に、他の参加者たちもみな自分と同じくらい追い詰められている仲間なのだ、という認識も崩壊する。

あのテストに意味がなかった?

ならば、これはいったいどういう集まりなのか?

 

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第4章 告白

「どういうことなんだ!?」

説明を求めて、全員の視線がサトシに集中する。

注目の的になったサトシは、しかし表情一つ動かすことなく淡々と事情を説明した。

結論からいえば、マイの発言からわかるようにテストには何の意味もなかった。

サトシはただ「すべての設問に回答したかどうか」を見ていただけで、回答の内容は一切選別に関係なかったのだという。

とはいえ、考えてみればサトシは精神分析の専門家ではないし、膨大な量の心理テストにすべて回答するという行為そのものが意志を試すためのテストになっているともいえる。

参加者たちは一応納得したものの、この『集い』に感じていた絶対的な信頼はそれぞれのなかで揺らぎ始めていた。

 

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4‐2.理由

15時30分。

あらためて確認すると、現在の目的は『ノブオの協力者』を探すことだ。

そのために重要なのは『順番』

協力者はノブオのように、サトシよりも早く病院に来ていたはずだ。

その人物はリョウコかと思われたが、その疑いは晴れた。

ならば、いったい誰が?

シンジロウがそれぞれの供述から「敷地に入ってから多目的ホールの扉をくぐるまでの行動」をホワイトボードにまとめたが、怪しい人物はいない。

つまり、誰かが嘘をついている。

……そこまでははっきりしているが、嘘をついている協力者を特定するためには、まだ情報が足りない。

そこで、セイゴの提案により『それぞれが集いに参加した理由』を順番に話していくことになった。

 

【12人の死にたい理由】

1.サトシ……『死』にとり憑かれているから。この廃病院の院長だった父親が自殺。医大に落ちた兄を母が刺した。そうした家庭環境のなかで、サトシは『死』に魅了された。

2.ケンイチ……学校でいじめられているから。良くも悪くも空気を読まないタカヒロは、集団生活の中では排除対象になりやすい。

3.ミツエ……追いかけていた若いタレントの後を追うため。

4.リョウコ……芸能人としての生活に疲れ切ったため。

5.シンジロウ……末期の病気に侵されているため。病気の影響で、シンジロウの頭には毛髪が一本もない。

6.メイコ……父親への復讐。自分を家から追い出そうとしている父親に生命保険金を残すことで、「亡き娘の生命保険金で生きている」という屈辱を与えようとしている。

7.アンリ……社会を変えるため。誰もが自らの生命に対して『大きな選択』をすることができる社会にすべきだと主張。

8.タカヒロ……穏やかに眠りたいから。タカヒロは母親から不必要な薬剤を飲まされ続けてきた。そのせいで日中は思考が鈍り、夜は安眠できない。そんな生活を終わらせたい。

9.ノブオ……???(※後述)

10.セイゴ……母親とその恋人からかけられた生命保険金を無効にするため。

11.マイ……援助交際のような行為で「二度と治らない病気」を移されたため。

12.ユキ……交通事故の後遺症で片腕の握力を失ったため。

 

それぞれが集いに来た理由を話した。

本来、それは「ノブオの協力者」をあぶりだすための作戦だったのだが、話の途中でシンジロウが使い物にならなくなったため、状況はむしろ悪化した。

(シンジロウはマイの理由が「ヘルペスにかかったこと」だと知り、放心してしまった)

 

「嘘をついている人間を見つけて、真実を明らかにすべきだ!」

「いいから早く計画を実行しましょう!」

紛糾する『話し合い』の風向きを変えたのは、「げーっぷ」という『おくび』の音だった。

なぜそんなささいな異音が一行の度肝を抜いたのかというと、その音を発したのが『ゼロ番』だったからだ。

「!?!?」

ますます混乱する多目的ホールの中、シンジロウだけが冷静に行動した。

「可能性はあると思ってたんだ」

そうつぶやくと、立ち上がり、少年の脈をとる。

かすかだが、脈があった。

注意して観察してみると、わずかに息もしている。

つまり、ゼロ番は生きている。

 

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4‐3.最後のピース

こうなると、もはや訳が分からない。

「僕がやった」というノブオの発言はなんだったのか?

ゼロ番のことを考えれば、『集い』は中止にするべきか?

いろいろな前提が崩れたことで、誰もが混乱に陥っている。

ただ一つ確かなことは、とても穏やかな気持ちで命の終わりを迎えられる状況ではない、ということだった。

 

そんな中、6番のメイコが声をあげた。

「すっきりしたいなら、この場にふさわしくない人たちをここから出してしまえばいいんですよ。そうしてから、計画を実行するんです」

「おいおい、誰の話をしてるんだ?」

セイゴの疑問にメイコが答える。

ゼロ番と、アンリさんですよ。私、アンリさんのことをずっと怪しいと思ってたんです」

 

アンリやシンジロウから見れば、メイコの企みはなんとも浅はかだった。

メイコはとりあえず誰かを怪しい人間に仕立て上げて追い出すことで、一秒でも早く計画を実行段階に移そうとしているのだ。

思えば、メイコはずっと『一秒でも早く計画を実行すること』にこだわり続けてきた。

ついさっき受付で電話が鳴ったときも、これ幸いと「誰か来てはいけないから早く計画を実行しましょう」と声高に主張していた。

彼女にとって重要なのは自らの目的が達せられることであり、そのためなら他の参加者がどうなろうと知ったことではなかった。

マイの発言でシンジロウが気落ちしている今、アンリさえいなくなれば「話し合い」の主導者はいなくなる。

リーダーを失った集団をたきつけて『集い』の当初の目的を果たすことがメイコの狙いだった。

 

メイコは「あの行動が怪しかった」「あの発言が怪しかった」とアンリを怪しいと印象付けるための言葉を重ねたが、残念ながらアンリとは格が違う。

次第にメイコの発言は誰が見ても支離滅裂なものになっていき、最終的にはアンリに返り討ちされる形で沈黙した。

……とはいえ、メイコの見苦しい行動は実のところ無駄ではなかった。

彼女の意図していないところで、メイコはアンリから『ヒント』を引き出していたのだ。

それによって、長らく沈黙していた頼れる探偵が復活する。

「やっとわかったんだ。今の会話でね。みんなが来た本当の順番が、これではっきりした」

シンジロウの目には、強い自信がみなぎっていた。

探偵による謎解きが、始まる。

 

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4‐4.帰還

そもそもの疑問は『ゼロ番は何者で、誰が連れてきたのか?』ということだった。

情報が揃うにつれて、参加者からゼロ番を隠し、気づかれずに集合場所に運んだ人物は少なくても2人組だったことが判明した。

ノブオと、もう一人。

残りの11人の中に潜む『協力者』は、サトシよりも早く廃病院に来ていた人物だ。

一度は納得したものの、状況証拠的にはやはりリョウコが怪しいと言わざるをえない。

シンジロウは1つ1つの状況証拠をとりあげ、次の瞬間には「嘘をついているのはリョウコだ」と断言しそうなほどにその怪しさを追求した。

そして、ついに核心に触れる。

「あなたもそう思ったんじゃないかな、アンリさん? なんて旨い具合に、リョウコさんが隠れ蓑になってくれんだろうって」

リョウコがぽかんとなってアンリを振り返った。

いや、リョウコだけじゃない。

全員の視線がアンリに集中する。

それでも余裕の姿勢を崩さないアンリに、探偵はなおも言った。

「あなたが一番早く、ここに到着したんだ。リョウコさんよりも前に。ノブオくんがやってくるのを屋上から眺めていられるくらい余裕がある時間に到着していた。sれが本当の順番だ。そうじゃないかな、アンリさん?」

名指しされたアンリは、うんともすんとも言わず、じっと考え込んでいる。

 

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「あはっ!」

喜びに満ちた声が、メイコの口から飛び出した。

「ほらぁ!やっぱりそうだったじゃないですか!ね、私の言った通りですよ? この人とゼロ番をここから出しちゃえば、問題は全部解決するじゃないですか? ねえ、そうでしょう?」

「僕はそうは思わないな」

だしぬけに誰かが言った。

少年の声だが、シンジロウではない。

部屋の唯一の出入り口である、開けっ放しのドア。

そこから、少年がふらりと入ってきたのだった。

ケンイチが真っ先に振り返り、ぎょっとなって腰を浮かした。

「ノブオくん!?」

全身ケガだらけのノブオが、そこに立っていた。

 

見回りに出たとき、実はサトシはノブオを見つけていた。

そのことを黙っていたのは、ノブオがそう頼んだから。

脱落した振りをして、ノブオは隠れて真相を探っていたのだ。

ポケットから携帯電話を取り出すと、ノブオは人差し指を口に当て、「静かに」のポーズをとる。

びーっ、びーっ。

聞こえてきたのは、着信を告げる携帯電話の振動音。

音の発信源は、驚愕に顔を歪ませているメイコの上着の中だった。

ノブオが切ボタンを押すと、メイコの服の中の音も止まる。

「さっき病院に電話がかかってきたでしょ。受付の電話に着信履歴が残ってたよ。それで履歴の番号にかけてみたんだ」

ノブオは携帯電話をズボンのポケットに戻すと、にこやかに微笑んで言った。

「なんとなく君じゃないかと思ってたんだけど、やっぱりそうだった。ありがとう、メイコさん、僕を階段から突き落としてくれて

 

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第5章 最後の時間

ノブオを階段から突き落としたのも、受付に電話をかけたのも、メイコの仕業だった。

理由はやはり「いち早く計画を実行させたいから」

犯人だと告白したノブオを排除し、「誰か来るかもしれない」と脅すことで、メイコは願いを叶えようとしていた。

……だが、ノブオにすべてを暴かれたことで、その企みは失敗に終わる。

 

一方、ノブオは自分を突き落としたメイコのことを恨んではいなかった。

先ほどメイコに言った「ありがとう」という言葉は、皮肉ではなく偽らざるノブオの本心だった。

なぜかといえば、それが彼が集いに来た理由に関わることだったからだ。

ノブオはかつてイジメの対象になっていた。

だが、ケンイチと違って彼は報復することを選んだ。

慎重に計画を練り、ノブオはイジメのリーダー格だった少年を階段から突き落とした。

その結果、少年は死亡。

ノブオが犯人だとはバレず、いじめは自然になくなったが、だからこそノブオは「誰にも言えない秘密」を抱える苦しみを味わい続けていた。

それが、ノブオが『集い』に参加した理由。

「階段から突き落とされる」という行為はノブオにとって当然の報いであり、メイコを恨む理由にはならない。

 

ノブオが促したことで、状況は再びシンジロウの手に戻った。

探偵の謎解きが再開される。

 

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5-2.真相へ

これまでに集まった情報からシンジロウが導き出した結論は次の通り。

1.屋上で参加者の到着を監視し、司令塔として機能していたのがアンリ

2.アンリの指示に従い、誰にも見つからないようゼロ番を移動させ続けていた実行役がノブオ

 

アンリは病院の中に入る前のメイコに声をかけているが、これはうろうろと不審な動きをしていたメイコ(とベンチに座っていたマイ)が集いの参加者かどうか確かめるため。

部外者に裏口から出るところを見られては怪しまれるため、アンリは正面入り口の自動ドアから外に出た。

シンジロウは病院内で「何者かが自動販売機を使った音」を聞いていたが、これは自動ドアの近くからシンジロウを移動させるために、ノブオがやったこと。

ノブオが買ったミネラルウォーターは、ゼロ番が服薬したように見せかける偽装として、空になった薬の包装の近くに置かれている。

 

スニーカーが病院内に散らばっていたのは、ノブオがゼロ番を移動させ続けていたから。

ケンイチとリョウコが聞いた2階の物音の正体は、ノブオがゼロ番の体を落としてしまったときの音だった。

 

……ここまで話を進めると、シンジロウは改めて一つの疑問を提示した。

では、外に捨ててあった黒い帽子とマスクは、いったいどういうことなのか?

院内でも目撃されていたマスクと帽子が外に捨ててあったということは、捨てた人物が「もうこれ以上誰も来ない」と知っていたということだ。

ところが、実際には12人目のマイが、入ってくるときにそれを目撃している。

つまり、マスクと帽子を捨てた人物(この場合、ノブオとアンリ)はゼロ番を12人のうちの1人としてカウントしていたということだ。

ゼロ番を連れてきた人間が、ゼロ番を12人のうちの1人にカウントするわけがない。

つまり、ノブオとアンリはゼロ番を隠したり運んだりした人物ではあっても、ゼロ番を連れてきた人物ではないということになる。

 

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ノブオとアンリを除く10人の中に「ゼロ番を連れてきた人物」がいる。

その人物は裏口から車イスを運び入れることができないと知り、正面入り口の自動ドアを開けるため、ゼロ番を置いて一度その場を離れた。

ところが、自動ドアを開けて戻ってくると、ゼロ番のそばに先着していたアンリとノブオがいるではないか。

「何者か」は予定外のメンバーを連れてきたことで集いが中止になってはいけないと、慌てて隠れた。

一方、車イスを押す人物を見て屋上から降りてきたアンリは、『押し手』がいないことに困惑した。

逃げてしまったのか?

あるいは、自分が参加するふりをして誰かを殺してここに置いたのか?

いずれにせよ、アンリとノブオにとって重要なのは『集いが中止にならないこと』だった。

だから、アンリは『ゼロ番』を「誰よりも早く来て先に『実行』した正規のメンバー」であるかのように偽装することにした。

「誰かが置き去りにした息のない少年」は不安材料になるが、「先に実行した正規メンバー」なら受け入れられるだろうと考えて。

ゼロ番を連れてきた何者かはアンリの計画を盗み聞き、あとは任せて問題ないと判断して隠れ続けることを選んだ。

そうして、黒いマスクと帽子を外して何食わぬ顔で12人の中に紛れ込んだ。

(マスクと帽子はノブオが回収して外に捨てた)

 

「結論として、僕の推測を、ここに書かせてもらうね」

シンジロウはホワイトボードの前に立つと、ペンをさらりと走らせた。

【到着順】

1.アンリ

2.ノブオ

3.ユキ/ゼロ番

4.リョウコ

5.サトシ

6.ケンイチ

7.タカヒロ

8.セイゴ

9.ミツエ

10.シンジロウ

11.マイ(屋上からの死角にいた)

12.メイコ

 

ゼロ番を連れてきた人物は、12番のユキ。

 

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5‐3.ユキの本当の理由

シンジロウの謎解きに対して、ノブオは隠すことなく「その通りだ」と認めている。

一方、この期に及んでもアンリは「それは推測にすぎません」と強硬に主張している。

そして、ユキはいまにも泣き出しそうな顔でうつむいている。

「彼は、ユキさんのご家族なのかな?」

優しく尋ねたシンジロウの言葉で、ついにユキの目から涙があふれだした。

「はい……」

 

ゼロ番の名前は「ユウキ」

植物状態で意識のない、ユキの兄。

ユキとユウキは仲のいい兄妹だったが、ある日、二人一緒に交通事故に遭ってしまった。

その結果、ユキは片腕の握力を失い、ユウキは植物状態に。

事故のきっかけは、ユキがちょっとしたイタズラを兄に仕掛けたことだった。

そのことを悔やみ、ユキは『集い』へと参加した。

当初の目論見では、ユキは誰よりも早く到着して兄と一緒のベッドで眠りにつき、最後のときを迎えるはずだった。

それが、まさかこんなことになってしまうとは……

 

アンリとノブオに偽装を任せることにしたユキは、3番目に到着していたにも関わらず、ずっと息をひそめて隠れていた。

そうして最後に12番の番号を取り、ギリギリにやってきた風を装って集合場所に現れた。

これが長く議論されてきた『ゼロ番』にまつわる顛末のすべて。

 

こうして『集い』における最大の謎が解決された。

 

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5‐4.アンリの本当の理由

謎解きが終わった。

この話し合いは、もともと「ゼロ番の正体を明らかにすべきだ」というケンイチの主張に端を発している。

その疑問が解消された今、次の段階はいよいよ『計画』の実行。

本来ならば『意思確認』の投票を行い、全員の賛成を確認してから、一酸化炭素で密室内を満たす……という段階だ。

しかし……

「その前に、僕から1つ提案がある。それについて決を採ってもらいたい。どうかな?」

サトシを見つめながら発言したのはシンジロウだ。

「どんな提案でしょう?」

すっかり答えを予想しながら、サトシは事務的に尋ねる。

「この集いを中止にすること」

シンジロウの提案は、果たしてサトシの予想通りのものだった。

 

反対よ!全員一致がこの集いの原則だわ。こうして1人が反対しているのよ。決を採る必要もないわ」

立ち上がって声をあげたのはアンリ。

それにより、今度は全員の注目がアンリに集まる。

そもそも、アンリは「社会を変えるために」この集いに参加したと言った。

それがどういう意味なのか、さっぱりわからない。

自然と、場は『アンリのいう社会変革とは?』という議題に移っていった。

 

結論からいえば、アンリは1つの社会制度の確立を目標に据えていた。

『不妊報酬制度』

海外では実施例もあるというその制度は、文字通りいくらかの金銭と引き換えに不妊治療を受けさせるというものだ。

もともとは貧困層を対象にした国の施策であり、その目的は貧困層で蔓延する病気を次世代へと受け継がせないこと。

報酬は数日分の賃金相当で、決して多い金額ではない。

名目上は個人の自由意思で手術を受けるかどうかを決定できる制度だが、選択肢のない貧困層にとっては事実上強制に近い制度だという指摘もある。

この『不妊報酬制度』を国内に導入させることがアンリの目的。

計画実行後に公開される遺書には、命をもって制度導入を訴える旨の文章が綴られているのだという。

 

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ぽかんとしている参加者たちに、アンリはなおも弁舌をふるって説得を試みる。

『不妊報酬制度』は望まれて生まれてこなかった子供、不幸な子供を根絶するために必要な制度なのだ、と。

タカヒロ、セイゴ、リョウコは母親のせいで苦しみ、自ら命を終わらせるためにこの場にいる。

メイコの場合は父親に人生を歪ませられた。

アンリは訴える。

憎むべきは無責任な大人たちである、と。

「生まれてこなければよかった」と絶望する子供たちを、これ以上、誕生させてはいけない、と。

「この劣悪な社会をどうにかすべきなのよ。そしてその最も効果的な解決方法は、生まれた私たち自身が、生まれてきたことに抗議することなの。私たちのこの生には何の意味もないと……」

 

「いい加減にしてもらえませんか」

熱を帯びるアンリの演説をさえぎったのは、リョウコだった。

「私がここに来たのは、そんな主張をするためではありません。私は本来の私自身でいるために来ました」

リョウコだけではない。

一緒にするな、という声が次々に飛びかう。

セイゴ「確かに俺を金に替えようっていう母親がいるがよ。俺みたいなやつを生んだことが間違いだとか言う気はねえな。クズみたいな人間だろうとなんだろうと、生まれたもん勝ちだ。俺のいる世界じゃ、そういう考え方をするんだ。つーか、俺もそう考えてたってことを、しっかり思い出させられたぜ」

タカヒロ「ぼ、僕はただ眠りたかっただけだし。でも、それは生まれてきたからそう思えるんだし、最初から生まれたくなかったっていう風には思えないよ」

メイコ「父親が私を追い出せたとしても、私がいたことを忘れさせないために、私はここにいるんですよ? 生まれなければよかったなんて、父親を喜ばせるだけじゃないですか? 頭おかしいんじゃないですか?」

ケンイチも、マイも、ユキも、死にたいとは思っても、生まれてこなければよかっただなんて思っていない。

アンリに共感する者は誰もいない。

まさに孤立無援。

それでもアンリは一方的に持論を展開したが、やがて場はしらけた空気へと変わっていった。

「どうして……どうして、わからないの?」

心底わからないという風につぶやくアンリに、シンジロウがとどめを刺す。

「僕は、生まれてきたことに抗議したりはしない。僕の親に、なぜ僕を産んだのかと怒りをぶつけたりはしない。そんな遺書があるなら、一緒にここで眠りたいとは思わない。むしろ今の話を聞いたおかげで、僕は死ぬまで生きていたくなったよ、アンリさん」

余命短いシンジロウの断固とした言葉によって、勝敗は決した。

勝ち負けがあるとするならば、アンリの完全敗北である。

 

「あなたに何がわかるの?」

それでも、アンリは叫び声を上げる。

「私は母親のせいで生まれる前から梅毒に冒され、薬物中毒の体で生まれたわ。無節操で薬漬けだった母親のせいでね。梅毒がどんな病気かわかる? 物心がつく前から離脱症状に襲われ続けるってどんなものかわかるっていうの?」

半狂乱の叫び声に、シンジロウは穏やかに答えた。

「そっちの理解を広める方がいいと感じるだけだね。子供がどんな気持ちかってことの方を。親になる人たちへ」

ひとつ息を吐いて、シンジロウは締めくくる。

「君が持ち出した制度が、そもそも要らなくなるように」

アンリは何か言いかけたが、そこで初めてシンジロウやみなの表情を見てとった。

そして、何かを諦めたようにため息をつきながら腰を下ろした。

「結局、そうなのよ。まだまだ、一般的ではない考え方なの。そういうことなのよ」

 

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5‐5.決議

シンジロウがみなを見まわし、そして言った。

「他に反対意見がなければ、さっきの僕の提案について決を採ってもらえればと思う。とはいえ、あくまで提案だから、反対する人がいても中止にしてやろうとは思わない。あくまで実行するというなら、僕は止めない。単にここを出ていくだけだ。ただその前に、何人かに提案をしたいと思ってるんだ」

シンジロウの両親は警視庁の人間だ。

犯罪性のあるケース(ケンイチ、セイゴ、ノブオ、タカヒロ)については力になれると提案する。

すでにノブオが「計画には参加せずに自首することにした」と考えを改めたように、多くの参加メンバーはこの『集い』を通じて「少なくても今すぐにこの世を去る必要はない」と考え直していた。

『それ』はいつでも、1人でもできることなのだから。

ユキもユウキを連れて帰ることにすると告げた。

 

最後の決議。

『集いを中止にするべきかどうか』

中止に賛成する手が続々と掲げられる。

シンジロウ、ケンイチ、ミツエ、リョウコ、メイコ、ノブオ、タカヒロ、セイゴ、マイ、ユキ……そしてアンリ。

「全員が賛成しましたので、この集いは中止にしたいと思います」

進行役のサトシが告げる。

ほとんどの者が笑顔で手を下ろす一方で、アンリが目を見開き、まじまじとサトシを見つめていた。

(あ、しまった)

サトシは内心で焦ったが、癖になっている無表情のおかげで表面上は冷静を保ち続けた。

 

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5‐6.結末

わいわいと賑やかに、参加者たちが部屋から出ていく。

少年少女たちの顔は晴れやかで、ほとんどのメンバーが笑っている。

そうして、最後まで部屋に残ったのは後片付けをするという管理者のサトシと、そのサトシをじっと見つめるアンリ。

賑やかな声が十分に遠ざかったことを確認すると、アンリは口を開いた。

「今度はいつやるのかしら?」

「今度というと?」

「ごまかしても駄目よ。あなた、もう何度もこういうことをしているのよ。やっと気づいたわ。あなたは一度も決議に参加していない。投票も挙手もしなかった。最後の一票を常に伏せて、とっておいたんでしょうね。自分は手も挙げずに中止だなんて、最初からそのつもりだったと言ってるようなものよ」

サトシは黙ってアンリを見つめた。極端な考えに凝り固まった人物であるとはいえ、やはり人を見抜く能力に長けている。

「……やっぱり、ばれてしまいましたか」

「何度目なの?」

「三度目ですね。今回は、かなり予想外のことばかりでしたが」

「死にたい人たちを集めて、生かして帰すってわけね。それがあなたのしていることだった。最後の最後まで見抜けなかったわ」

「別に生かそうとはしていないんです。ただ、ほんの少しのきっかけで変わることはわかっています。まあ、たいていはテストのことで多くの方が考えを変えますね」

・テストの真実を知り、動揺が広がる

・互いの動機を話し、やがて言い合いになる

サトシにとっては慣れた『パターン』

イレギュラーが紛れ込んだにせよ、今回も前2回と同じ結末に至った。

「もし、誰も考えを変えなかったら?」

「そのときは、僕も一緒に眠るだけですね」

「止めないの?」

「はい」

ひとつ頷くと、サトシは『集い』を主催している理由を明かす。

「みなさんの前で話した通り、僕は死にとりつかれているんですよ。死にたい人たちの話を聞いていると、なぜか落ち着くんです。ただ、死を否定する気持ちに惹かれてもいますね。こうして中止が決まって誰もいなくなると、なんといいますか、とても気分がよくなるんです。シンジロウさんがおっしゃっていたように、いつか死ぬまで生きていてもいい、という気になるんですよ」

 

「どうせ次の準備もしているんでしょう?」

「ええ、まあ」

「私も参加するわ」

挑戦的な笑みを浮かべてアンリが言った。

「集いを成功させようとする参加者がいてもいいでしょう? 中止に期待する管理者がいるんだから。もちろん、以前にも参加したことがあるなんて、誰にも言わないわよ。それとも、テストで私だけ不合格にする?」

「いえ、歓迎しますよ」

そういいつつ、サトシはひとつだけ付け加えた。

「できれば僕より遅く来てくださいね。予想外のことばかり起こると、話し合いが長引いてしまいますから」

サトシの言葉に、アンリがほほ笑む。

「もちろんよ。それじゃ、また会いましょう、サトシさん」

「はい。お待ちしています」

アンリは楽し気に部屋を出ていった。

 

サトシは数字を集めると、あとはそのままにして部屋から出た。

ドアを施錠し、階段を上る。

受付カウンターに設置してある小さな金庫の中に、回収した数字を1つずつ置く。

時計の配置と同じになるよう、円を描いて数字を並べ終えると、そっと蓋を閉めた。

〈十二人の死にたい子どもたち・完〉

 

※今回省略した伏線回収や時系列順の出来事などをまとめました!あわせてどうぞ!

次の記事:「十二人の死にたい子どもたち」のネタバレ解説!

 

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編集後記

冲方丁「十二人の死にたい子どもたち」が映画化!

今回は原作小説のあらすじとネタバレをお届けしました!

ちょっと長くなってしまいましたが、実はこれでもかなり伏線回収やエピソードを削っています。

文庫版で500ページというボリュームもさることながら、とにかく伏線の配置と回収が多いこと多いこと!

津波のように押し寄せてくる『謎』と『手がかり』には、本当にいっぱいいっぱいになってしまいました。

(これ、謎解き前に真相までたどり着ける人いるのでしょうか……?)

それでいて各章の終わりには「これでもか!」と言わんばかりの気になる展開が差し込まれるし、ラストには「お見事!」と拍手を送りたくなるほど鮮やかな回答が待ち受けているし、文句なしに『今、誰かに教えたいミステリ本ランキング1位』ですね!

小説は直木賞候補作ということですが、なぜこれが受賞しなかったのか不思議です。

(ちなみに、この年の直木賞は恩田陸『蜜蜂と遠雷』)

 

さて、そんな「十二人の死にたい子どもたち」が映画化するわけですが、堤幸彦監督が手掛けるとあっては期待せずにはいられません!

もともとかなり映像向きな小説だと思いますし、ノンストップで進んでいく物語がどのように映像化されるのか本当に楽しみです。

おそらく『2周目も楽しめる』タイプの映画になると思うので、ネタバレをご覧になった方は真相を意識しながら伏線を探していくと、より楽しめそうですね。

映画「十二人の死にたい子どもたち」は2019年1月公開!

私は公開初日に観に行こうと思っています!

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 - 小説, 映画

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