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『バスカヴィル家の犬』あらすじネタバレ解説!犯人や結末は?【シャーロック・ホームズ】

コナン・ドイル『バスカヴィル家の犬』を読みました!

こちらは意外にも4つしかないシャーロックホームズ長編小説のひとつで、ファン人気の高い作品でもあります。

バスカヴィル家の当主が亡くなったのは、一族を呪う《魔犬》のせいなのか?

謎が謎を呼ぶ展開の結末には、意外な真相が待っていました。

というわけで今回は名作『バスカヴィル家の犬』のあらすじがまるっとわかるネタバレ解説をお届けします!

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

イギリス南西部の旧家バスカヴィル一族。

その当主が遺体で発見された。

死因は心臓発作。

しかし不思議なことに、遺体発見現場にはとてつもなく巨大な猟犬の足跡が。

実は、呪われた魔犬伝説により一族ではこれまで不可解な最期を遂げた者が多いのだった……。

呪われた一族の謎をめぐる、シリーズ史上最も得体の知れない難事件にシャーロック・ホームズが挑む!

(文庫裏表紙のあらすじより)

魔犬伝説

バスカヴィル家は魔犬に呪われていて、一族の人間はろくな最期を迎えられないと伝えられています。

実際、亡くなった前当主のチャールズ・バスカヴィルは地域に貢献した善良な人物で、誰かから恨みを買っていたとは思われません。

遺体に外傷がなかったことから他殺とは考えにくく、やはり死因は心臓発作のようです。

※チャールズ老人はもともと心臓病を患っていました

ただし、一方で不可解な点もあります。

1つ。魔犬伝説を恐がっていた老人が、どうして夜中に館の外に出たのか?

2つ。事件の夜に老人の悲鳴を聞いたという証言。

3つ。現場に残っていた獣の足跡。

「実はホームズさん、巨大な猟犬の足跡だったんですよ!」

もし本当にバスカヴィル家が魔犬に呪われているなら、新しく当主となる若者ヘンリー・バスカヴィルの身も危ないということになります。

ホームズとワトソンは魔犬(あるいは犯人)の正体を突き止めるべく、捜査に乗り出しました。

登場人物

『バスカヴィル家の犬』の登場人物はかなり少数です。

具体的には以下の通り。

名前備考
モーティマー医師依頼人
ヘンリー・バスカヴィル莫大な遺産を継いだ若者
バリモア夫妻バスカヴィル館の使用人
ジャック・ステイプルトン博物学者
ベリル・ステイプルトンジャックの妹 美人

お約束として言うまでもないことですが、この中に犯人がいます。

犯人は魔犬伝説を利用してチャールズを殺害し、どうやら今度はヘンリーをも亡き者にしようとしているようです。

犯人の動機は不明。

仮にヘンリーが亡くなったとしても、得をするような人物はいないはずですが……?

物語の舞台

物語の舞台はロンドンから離れた田舎町で、あたり一面には広大な湿原が広がっています。

土地の人間は誰もがバスカヴィル家の魔犬伝説を知っていて、しかも、それだけじゃなくて実際に魔犬を目撃したと複数人が証言しています。

ホームズから別行動を指示されて先に現地に乗り込んだワトソンも、荒野に響き渡る不気味な犬の遠吠えを耳にしました。

こんな土地ですから、前当主のチャールズが魔犬の伝説を信じ、怯えるようになったのも無理のない話です。

底なし沼なんかもある湿原は、夜になるといっそう不気味さを増すようでした。


ネタバレ

最初に怪しい動きを見せたのは、使用人のバリモア夫妻でした。

夫のジョンは深夜にこそこそと動き回り、館の外の《誰か》に合図を送っている。

一方、妻のイライザは夜ごとにすすり泣いている。

理由を尋ねてみてもとぼけるばかりで、夫妻はますます怪しく感じられました。

夫妻はチャールズの遺言により、それぞれ500ポンド(※)ずつ手に入れています。

※当時のレートで夫婦合わせてざっくり1000万円くらい

また、館付きの使用人である夫妻にとって、館の主人がいない状況は「楽に生活できる」という点では犯行動機になるかもしれません。

バリモア夫妻の秘密

バリモア夫妻の秘密は脱獄した凶悪犯をかくまっていることでした。

ぱんだ
ぱんだ
えぇ!?

はい。実に驚くべき秘密です。

脱獄囚の名前はセルデンといって、残酷な殺人犯として恐れられている悪人です。

セルデンは近隣の監獄から首尾よく逃げ出しましたが、すぐに追手がかかり、むやみに移動することができませんでした。

幸いにも湿地には石で組まれた古代民の住居跡などがあり、潜伏する場所には困りません。

しかし、問題は食料です。

バリモアは深夜になると湿地が一望できる部屋に足を運び、ランプの光でセルデンに合図しては、彼に食料を持っていっていました。

これがバリモアの不審な行動の理由です。

ぱんだ
ぱんだ
でも、なんで?

セルデンはバリモア夫人の実の弟でした。

夫人にとってセルデンは凶悪な殺人犯である前に、幼い頃から世話してきた可愛い弟のままだったんですね。

監獄に戻れば、セルデンは極刑を待つだけの身です。

バリモア夫人が毎夜泣いていたのは弟を哀れんでいたためであり、バリモアはそんな妻をみかねてセルデンの面倒を見ていたというわけです。

実に驚くべき秘密ではありましたが、結局のところ、当面の問題である魔犬伝説やバスカヴィル一族への殺人計画とは無関係でした。

ワトソンはヘンリーと一緒にセルデンを捕まえに行きましたが、逃げられてしまいました。


奇妙なステイプルトン兄妹

ステイプルトン兄妹は数年前に移住してきたばかりで、兄の方が昆虫博士であり、湿原の生態系を研究しているとのことでした。

ヘンリーが妹のベリルに一目惚れしたことから、ワトソンは彼ら兄妹と頻繁に会うことになります。

さて、善良そうな彼ら兄妹ですが、少し気にかかることもあります。

1つ目は、兄の態度です。

  • 経済力
  • 社会的な立場
  • 容姿
  • 性格

ヘンリーはあらゆる面でベリルにとって理想的な結婚相手であるはずなのに、なぜかステイプルトンは激怒して二人の交際に猛反対しました。

ステイプルトンはすぐに冷静になって謝罪していましたが、なぜヘンリーと妹の交際に反対したのか、その理由が気になるところです。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

一方、妹ベリルの態度にも謎があります。

ベリルはヘンリーに「早くロンドンに帰ったほうがいい」と何度も警告していました。

魔犬伝説によって身を滅ぼされるのを心配しているのか、それとも……?

さらに不思議なことに、ベリルはそうした警告の数々を兄に知られないようにしているようでした。

※学者である兄に迷信を根拠にした警告をしていると知られたくなかったから?

ワトソンは兄妹に初めて会った時「あまり似ていないな」という印象を抱いていました。

探偵の到着

『湿地にはセルデンの他にもう一人、謎の男が潜伏している』

これ↑が物語中盤における最大の謎だったのですが、その正体はなんと我らがシャーロック・ホームズでした。

敵をだますには、まず味方から。

ロンドンで別の仕事をしているというのは嘘で、ホームズはずっとワトソンとは別の角度から事件を捜査していました。

そしてなんと、ホームズにはすでに犯人がわかっていました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「きみにとっておきの秘密を教えてあげよう。実はね、ミス・ステイプルトンで通っている夫人は、ステイプルトンの妹ではなく妻なんだ

「ええっ、まさか! ホームズ、本気で言っているのかい?」

「きみも知ってのとおり、ステイプルトンはサー・ヘンリーが彼女に言い寄れないよう油断なく目を光らせているだろう? 請け合うよ、あの婦人はステイプルトンの妻であって、妹なんかじゃない」

「しかし、なぜそんな念の入った芝居を?」

「彼女を未婚の女性だと思わせておくほうが、いろいろと都合がよさそうだと踏んだからだろう」

「ということは、敵はステイプルトンなのか?」

「僕はそう見ている」

(中略)

「ホームズ、ひとつだけ訊きたいことがある。ステイプルトンはなんのためにこんな手の込んだことをやっているのか、教えてほしいんだ。あの男のねらいがさっぱりつかめないよ」

ホームズの声は重々しかった。

「殺人だよ、ワトスンーーこれは緻密に仕組まれた冷血な殺人計画だ」


新たな犠牲者

現地におけるワトソンの役目は、常にヘンリーと一緒に行動して犯人を牽制することでもありました。

しかし、ワトソンが謎の男(正体はホームズ)を探していた時間、ヘンリーはもちろん一人きりだったわけで……。

ぱんだ
ぱんだ
あっ

はい。というわけでヘンリーが殺されてしまいます。

これには探偵も助手も絶句し、呆然と立ち尽くすしかありませんでした。

………。

……。

…。

最悪の状況に二人が沈黙したのは、しかし幸いにもほんの短い時間だけでした。

なぜなら、新たな犠牲者はヘンリーの服を着たセルデンだったからです。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと!?

ヘンリーはバリモアに自分の服を与えていたのですが、それがそのままセルデンに流れていたんですね。

逆にいえば、セルデンはヘンリーの服を着ていたからこそ、間違われて命を奪われたということになります。

これが何を意味するのか?

そういえばヘンリーはロンドン滞在中に二度も靴の片方だけを盗まれるという奇妙な事件の被害に遭っていました。

最初に盗まれた新品の靴の片側がどこからか見つかったのに対して、二度目に盗まれた使い古しの靴の片側は結局見つかりませんでした。

セルデンは崖から落ちて亡くなっていました。

直前まで《何か》から無我夢中で逃げていたらしく、ワトソンたちも彼の悲鳴を耳にしています。

状況としてはチャールズのケースに似ていますね。

真相

事件の謎を解く最後のピースは、意外にもバスカヴィル館に飾られた肖像画の中にありました。

魔犬に呪われた張本人である粗暴で邪悪な先祖ヒューゴー・バスカヴィル。

その肖像画を眺めながら、ホームズは尋ねました。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「誰かに似ていると思わないか?」

「うん、なんとなく顎のあたりがサー・ヘンリーに」

「そうかもしれない。じゃあ、こうしたらどうかな?」

ホームズは椅子の上に立ち、左手で蠟燭の火を掲げると、曲げた右腕をあてがって帽子と巻き毛が隠れるようにした。

「まさか!」私はびっくりして声を張り上げた。

カンバスに浮かび上がったのは、ほかならぬステイプルトンの顔だったのだ。

 

「どうだい、よくわかったろう? 僕の目は、余分な飾りに惑わされず、顔そのものを見るように訓練されているんだ。犯罪捜査に関わる者にとって、変装を見破る能力は必要不可欠だからね」

「しかし、驚いたな。あの男の肖像画と言ってもいいくらいだ」

「ああ、まったく。先祖返りが肉体と精神の両方に現れた、きわめて興味深い例といえよう。とにかく、あいつはバスカヴィル家の血を引いている。このとおり一目瞭然だ」

「ここの当主におさまろうという魂胆か」

「そのとおり。ようし、ワトスン。いよいよ対決の時が来た」


魔犬の正体

ステイプルトンとの最終決戦。

ホームズはヘンリーを囮にして、犯行の一部始終を見届けることにしました。

すると、どうでしょう。

ステイプルトンはナイフでも銃でもなく伝説の《魔犬》をヘンリーにけしかけたではありませんか!

真っ黒で、巨大で、目と口から炎を吐く化け物の犬。

その迫力たるやホームズをもってしても予想外のものでした。

しかしながら、あわや牙がヘンリーの喉を食いちぎる寸前、かの魔獣はホームズの銃弾に貫かれて絶命します。

いかにバケモノじみているとはいえ、銃弾が有効だった以上はオカルトの存在ではありえません。

実際のところ、それは小型の雌ライオンほどの大きさの、巨大で獰猛な犬でした。

顔から炎が噴き出しているように見えたのは、発光塗料によるものです。

 

補足解説

ステイプルトンはこの危険な犬を飼いならしていました。

  • 魔犬の目撃証言
  • 湿原に響く遠吠え

魔犬の存在証明のように思われたこれらの事象も、ふたを開けてみれば実在する犬の痕跡だったというわけです。

犬にヘンリーを襲わせるにあたって、ステイプルトンには手に入れなければならないアイテムがありました。

それはヘンリーの匂いが染みついた物品です。

ロンドン滞在中のヘンリーから「靴の片側だけ」を盗んだのはステイプルトンでした。

一度目に盗んだ新品の靴には匂いがついていなかったため、ステイプルトンは二度も「靴の片側だけ」を盗まなければなりませんでした。

セルデンが魔犬に襲われた理由も、ヘンリーの匂いがついた服を着ていたからに他なりません。


結末

ヘンリーを《魔犬》から救出しているあいだに、ステイプルトンはどこかへと逃げ去っていました。

念のためステイプルトンの家を捜索してみると、そこには縛られたベリル・ステイプルトンだけが残されていました。

「最初から利用されていたのです。彼にとってわたしは、ただの道具にすぎなかったんですわ」

ベリルはステイプルトンの協力者ではなく、恐怖によって支配されていただけでした。

ヘンリーを亡き者にするにあたって色仕掛けをするよう命じられ、しかし、それを拒んだために縛られ、二階の部屋に放置されていたのです。

ベリルによれば、ステイプルトンの逃亡先は底なし沼に囲まれた小島だろうとのことでした。

そこは地元の人間でもめったに近づかない危険な場所で、例の《魔犬》もそこで飼っていたのだといいます。

さっそくホームズたちは底なし沼へ捜索に出かけました。

しかし、ステイプルトンは見つかりません。

その夜は霧が濃く、ステイプルトンが底なし沼を渡るための目印にしていた棒もよく見えない状況でした。

ステイプルトンは目測を誤って底なし沼に沈んだのだろう、とホームズは判断しました。

事件の全貌

ここで事件をイチから振り返ってみましょう。

ステイプルトンと名乗っていた男の正体は、バスカヴィル家の血を引くロジャー・バスカヴィルという人間でした。

※便宜上、以後もステイプルトンと表記します

他の地方で悪事を働き湿原広がるこの地方に逃げてきたステイプルトンは、チャールズを亡き者にして、彼が一代で築き上げた莫大な財産を手に入れようと目論みます。

チャールズ老人は心臓を患っていて、しかも極端に魔犬伝説を恐れていたため、例の《魔犬》を使った犯行はすぐに思いつきました。

しかし、万が一にも自分に疑いが向くようなことになってはいけないと、ステイプルトンはさらに一計を案じます。

チャールズが援助していたローラ・ライオンズという女性に(結婚をちらつけせて)近づき、チャールズと深夜に密会する約束を取り付けさせたのです。

その後は深夜に外出したチャールズに《魔犬》をけしかけるだけで、老人は心臓発作によって亡くなりました。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

ステイプルトンが莫大な財産を手にするためには、もう一人、ヘンリーを始末する必要がありました。

そのためにステイプルトンは妻を利用してヘンリーと親しくなる一方で、盗んだヘンリーの私物の匂いを《魔犬》に覚え込ませていました。

あとはご存じのとおり。

ステイプルトンの計画はホームズに阻止され、邪悪な真犯人は哀れ底なし沼へと沈んでいったという次第です。

<おわり>

ぱんだ
ぱんだ
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まとめ

今回はコナン・ドイル『バスカヴィル家の犬』のあらすじネタバレをお届けしました!

物語の中の年代は19世紀末。

海外の名作ミステリを読んでいると年代や舞台、雰囲気なんかが国内(現代)ミステリとは違っていて、新鮮なおもしろさがありますね。

ファン人気の高い作品というだけあって、ホームズならでは魅力も存分に味わえたように思います。

今回の記事中では省略した伏線などもあるので、気になった方はお手に取って読んでみてください。

↓今回わたしが読んだのは角川文庫から出版されている駒月雅子さんの訳版でした。

 

映画情報

2019年秋に放送された月9ドラマ「シャーロック」が映画化!

原作となる事件はもちろん『バスカヴィル家の犬』で、日本での映像化は初ということです。

あらすじ

物語の始まりは、若宮のもとに寄せられた、日本有数の資産家からの依頼。

娘の誘拐未遂事件の犯人を捜索してほしいとの内容だったが、その直後、資産家は莫大な遺産を遺して謎の変死を遂げる。

資産家の死と誘拐事件の真相を探るべく、瀬戸内海のある島に降り立つ獅子雄と若宮。

ふたりを待ち受けていたのは、一癖も二癖もある華麗なる一族の面々と、怪しき関係者たち……。

やがて次々と事件が発生し、島の伝説である人を襲う不気味な魔犬の存在が浮かび上がってくる。

原作からどうアレンジされているのかも楽しみですね。

キャスト

  • ディーン・フジオカ
  • 岩田剛典

ほか

公開日

2022年6月17日公開

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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