ラストに驚き

東野圭吾『沈黙のパレード』あらすじネタバレ解説|意外な真犯人と結末【映画原作小説】

東野圭吾『沈黙のパレード』を読みました!

先に感想だけお伝えすると、とびっきりおもしろかったです!

二転三転どころか、五転も六転もする怒涛のラストには本当に驚かされました。

というわけで、今回は小説『沈黙のパレード』のあらすじがよくわかるネタバレ解説をお届けします!

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

静岡のゴミ屋敷の焼け跡から、3年前に東京で失踪した若い女性の遺体が見つかった。

逮捕されたのは、23年前の少女殺害事件で草薙が逮捕し、無罪となった男。

だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。

町のパレード当日、その男が殺された。

容疑者は、女性を愛した普通の人々。

彼らの《沈黙》に、天才物理学者・湯川が挑む!

(文庫裏表紙のあらすじより)

物語中盤まで

もう一度、あらすじをふりかえってみましょう。

静岡のゴミ屋敷の焼け跡から、3年前に東京で失踪した若い女性の遺体が見つかった。

遺体で発見された女性の名前は並木佐織(享年19歳)

定食屋『なみきや』の看板娘で、誰からも愛される明るい子でした。

逮捕されたのは、23年前の少女殺害事件で草薙が逮捕し、無罪となった男。

佐織を殺した犯人として逮捕された男の名は蓮沼寛一。

100人中100人が嫌いになるであろう人間のクズです。

佐織の遺体が発見されたゴミ屋敷は蓮沼の実家であり、しかも、蓮沼の自宅からは佐織の血がついた服が発見されました。

ほかにも状況証拠は山のようにみつかっていて、どう考えても犯人は蓮沼としか考えられません。

しかし……

だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。

蓮沼は起訴(裁判)すらされず、釈放されました。

なぜなら、殺害を決定的に裏付ける物的証拠が欠けていたからです。

とはいえ、状況証拠は真っ黒。

それだけの材料が揃っている以上、ふつうなら犯行を認めざるをえません。

しかし、蓮沼は一貫して犯行を否認し、取り調べにおいては沈黙を貫きました。

鋼のような精神力で、自白を我慢したのです。

23年前の事件でもそうでした。

自分勝手に少女の命を奪っておきながら、蓮沼は一切の自供をせず、ついには証拠不十分で無罪を勝ち取ってしまいました。

その前例があるため、佐織の事件では検察も弱気になって起訴に踏み切れなかったんですね。

町のパレード当日、その男が殺された。

殺された男というのは、もちろん蓮沼のことです。

遺体の発見場所は蓮沼が居候していた家の自室で、外傷はなし。

解剖の結果、窒息死と判断されたものの、首を絞められたわけではないようです。

『どうやって蓮沼を殺したのか?』の謎にガリレオこと湯川が挑戦します。

容疑者は、女性を愛した普通の人々。

具体的には佐織の

  • 父親(並木祐太郎)
  • 恋人(高垣智也)
  • 恩師(新倉直紀)

ほかにもまだまだ共犯者はいます。

彼らは少しずつ役割を分担して、蓮沼を不可解な死に至らしめました。

佐織の仇討ちに参加した人々には大小のアリバイがあり、ふつうに考えれば殺人事件に関与することなど不可能であるように思われます。

特に佐織の父親・並木祐太郎のアリバイは鉄壁です。

彼らはどうやって蓮沼を殺したのか?

誰がどんな役割を担っていたのか?

先に少しだけ種明かしをすると、蓮沼を殺したトリックはパレード当日でなければ実行できないものでした。

その理由とは……?

<すぐ下のネタバレにつづく>

ネタバレ

あっさりネタバレすると、蓮沼殺害の凶器は【液体窒素】です。

ぱんだ
ぱんだ
液体窒素?

はい。犯人は蓮沼が眠っている部屋に液体窒素を流し込んだんです。

液体窒素はすぐに気化して窒素になります。

部屋の中はだんだん窒素で満たされていき、反対に空気中の酸素はどんどん室外へと押し出されていく……。

そう、蓮沼は酸欠で命を落としたのです。

ぱんだ
ぱんだ
そんなことできるの?

蓮沼の部屋はもともと物置でした。

部屋が狭かったため窒素で満たしやすく、しかも外側から鍵をかけられる構造になっていたんです。

ちょっと想像してみましょう。

部屋の異常に反応して、蓮沼が目を覚まします。

みるみる室内に流れ込んでくる謎の白煙と冷気。

目をやると、扉の取っ手部分が外されていて、その「穴」から不気味な靄(もや)が流れ込んできています。

外側から施錠されているのでしょう。体当たりしようが扉は開きません。

そのうちに蓮沼は頭痛や吐き気に苦しみだします。

もちろん室内の酸素濃度が低下しているためです。

気分はどんどん悪化していきます。

扉の外側にいる犯人に怒鳴ったのか、それとも命乞いしたのか。

極限の恐怖に狂ってしまう寸前、蓮沼の意識は途絶えます。

この時点では気絶ですが、最終的には酸欠によって心臓が止まり……。

ぱんだ
ぱんだ
怖っ!

犯人たちは蓮沼に強い怒りと憎しみを抱いていました。

であれば、蓮沼を楽に死なせてやる義理はありません。

わざわざ液体窒素という大がかりな方法を選んだのは、蓮沼に最大限の恐怖を与えるためだったのでしょう。

また、ガス室を連想させる殺害方法は(正しく与えられるべきだった)死刑執行のようでもあります。

警察は当初、凶器が「ヘリウムガス」であると誤認していました。

パレード会場からボンベが盗まれていたり、犯行現場の近くから空のボンベが発見されたり……犯人たちの偽装工作に騙されていたんですね。

湯川が真相を見抜いたことで一部の人々のアリバイが崩れ、物語は加速していきます。

最大の謎

液体窒素を用意したのは、戸島修作という男です。

戸島は並木祐太郎(被害者の父親)の親友であり、食品加工会社の社長でもあります。

本来なら冷凍食品の加工に使われるはずの液体窒素を、犯行に流用したというわけです。

実際、休業日であるパレード当日、戸島が会社から液体窒素を運び出す様子がカメラに記録されていました。

ぱんだ
ぱんだ
そして蓮沼の家に行った?

いいえ。戸島は犯行現場には行っていません。

戸島は液体窒素をパレードのスタート地点まで運んだだけです。

その後、戸島はすぐに会社に戻っていますし、犯行時刻のアリバイもあります。

ぱんだ
ぱんだ
……どゆこと?

『液体窒素をどうやって蓮沼の居場所まで運んだのか?』

この謎が解けない限り、警察は誰ひとりとして逮捕できません。

犯人たちが最も工夫を凝らしたのが、この運搬方法の謎です。

液体窒素の容器は大荷物であり、数キロ離れた蓮沼の居候先まで運ぶには、基本的には車を使うことになるでしょう。

しかし、Nシステムに記録されていた車両はすべてハズレ。

ならば徒歩や自転車で運んだのかといえば、そんな目立つ大荷物を携えた人影はどの防犯カメラにも映っていませんでした。

パレードのスタート地点で忽然と消えた液体窒素の容器は、いったいどのようにして蓮沼のもとへと運搬されたのでしょうか?

沈黙のパレード

では、答え合わせです。

もうお気づきかもしれませんが、液体窒素はパレードの行進そのものによって運ばれていました。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと?

順を追って説明しましょう。

菊野市(架空の町)で行われる「キクノ・ストーリー・パレード」では物語をテーマにした仮装行進です。

その規模は大きく、全国から応募者が殺到し、動画での一次予選が行われるほど。

毎年、開催地である菊野からも町内会を中心とした地元チームが参加しています。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

今年の菊野チームのテーマは『宝島』

古い木造船を模した山車、大きな宝の地図、金銀財宝の詰まった宝箱。

大小の道具を、海賊の衣装に身を包んだ地元メンバーが運んでいきます。

結論からいえば、液体窒素は彼らが運ぶ宝箱のひとつに隠されていました。

ぱんだ
ぱんだ
なるほど!

とはいえ、菊野のパレードチーム全員が共犯だったというわけではありません。

チームの中で宝箱の中身が入れ替わっていると知っていたのは、リーダーである宮沢麻耶だけです。

さらにいえば、その宮沢にしてもソレが液体窒素であるとは知らされていませんでしたし、それがどのように使われるのかも知らされていませんでした。

ぱんだ
ぱんだ
???

計画の全体図を描いたのは並木祐太郎と戸島修作です。

彼らは完全犯罪のために町の人々の協力を求めましたが、万が一のことを考えて、協力者には最低限の情報しか伝えていませんでした。

その方が、事件が発覚した際に協力者の罪状が軽くなりますからね。

なかにはそれが「蓮沼を殺すため」だと知らずに協力した人もいるはずです。

ぱんだ
ぱんだ
なるほどなー

液体窒素がどのようにして運ばれたのか、具体的な流れは以下の通りです。

【1】戸島の会社からパレードのスタート地点まで=戸島修作

【2】スタート地点で液体窒素を宝箱の中の「重し」と入れ替える=新倉直紀(佐織の恩師)

【3】パレードによってゴール地点まで運ばれる

【4】ゴール地点から蓮沼の居候先までの運搬=高垣智也(佐織の恋人)

当初、警察は「液体窒素がスタート地点まで運ばれた」段階までしか把握できていませんでした。

防犯カメラでの捜査もスタート地点周辺に絞って行われていたため(本当はゴール地点から運ばれていた)液体窒素の行方をつかめなかったんですね。

真犯人

さて、ここで問題です。

液体窒素をつかって蓮沼に裁きを下した実行犯は誰だったのでしょうか?

そもそもこれは並木佐織の復讐であり、ふつうに考えれば被害者遺族である並木祐太郎こそ幕引きの担い手にふさわしい人物だといえるでしょう。

しかし、並木には完璧なアリバイがあります。

パレード当日。並木は昼間から『なみきや』で働いていました。

その後は営業終了間際に腹痛を訴える客がいたので、その客を病院に連れて行き、診察が終わるまでそのまま待機していました。

要するに、犯行時刻に並木は病院にいたんです。

多くの病院関係者が証言しているので間違いありません。

さて、並木はいったいどうやって蓮沼を殺したのでしょうか?

ぱんだ
ぱんだ
むむむ……

あっさりネタバレしますが、病院にいながら遠く離れた蓮沼の部屋に液体窒素を流し込むことなど不可能です。

言いかえれば、並木祐太郎は(実行犯という意味での)真犯人ではありません。

ぱんだ
ぱんだ
えっ!

パレード当日に限ってたまたま腹痛を訴える客があらわれるなんて、いかにもアリバイ工作のようですよね。

しかし、そのヤマダという客は本当に並木たちの協力者なんかじゃなかったんです。

突発的なアクシデントによって、並木たちの計画は大きく狂わされました。

ぱんだ
ぱんだ
というと?

当初の計画において、蓮沼の部屋に液体窒素を流し込むのは並木の役割でした。

そして並木の目的はもちろん蓮沼の殺害……ではなく《娘の死の真相》を確かめることでした。

『なぜ、佐織は殺されたのか?』

並木は蓮沼を追いつめてその理由を問い質そうとしていたのであり、そのまま蓮沼の命まで奪ってしまうかどうかは「その時になってみないとわからない」と考えていました。

ところが、です。

前述の通り並木は腹痛の客の対応に追われて、役割を果たすことができませんでした。

並木は戸島に事情を説明し、戸島は計画の中止(延期)を決断します。

だから、蓮沼が殺害されたという第一報は、並木や戸島にとっても予想外の事態でした。

ぱんだ
ぱんだ
じゃあ、誰がやったの?

問題はそこです。

並木にも戸島にも智也にも宮沢にも、犯行時刻のアリバイがあります。

となると、残る主要メンバーは一人しかいません。

真犯人の名前は、湯川の口から並木家の人々に伝えられました。

湯川「新倉直紀氏が自供したそうです。蓮沼寛一を死亡させたのは自分だと」

ぱんだ
ぱんだ
……誰だっけ?

犯行動機

新倉直紀は佐織にとってプロデューサーのような存在でした。

ぱんだ
ぱんだ
プロデューサー?

はい。佐織には歌の才能が有り、その才能を磨いていたのが新倉直紀です。

新倉は若い頃から音楽活動を続けてきたのですが、ある年齢を境にプレーヤーとしては引退。

以降は後進の育成に私財を投じ、何人ものアーティストを業界に送り込んできました。

そんな新倉がついに見つけた《世界レベルの才能》こそ並木佐織です。

とんでもないダイヤの原石を発見した新倉は、佐織のためにあらゆる労力を惜しみませんでした。

新倉にとって佐織は生きがいだった、といっても過言ではないでしょう。

佐織が殺害されたのは、もうすぐデビューできるという、あと一歩で輝かしい栄光をつかめるという、そんなタイミングでした。

新倉がどれだけ絶望し、犯人を恨んだか……その心中の憎悪は被害者遺族にも引けを取らないものだったに違いありません。

子どものいない新倉夫妻にとって、佐織は我が子同然の存在だったのですから。

ぱんだ
ぱんだ
そっか……

あらためて確認しておくと、蓮沼を殺した真犯人は新倉直紀です。

計画において新倉は「戸島がパレードのスタート地点まで運んだ液体窒素を、宝箱のなかに入れる」という役割を担っていました。

しかし、そんな簡単な作業だけで新倉の恨みが収まるはずもありません。

新倉は戸島に相談し、蓮沼の家に向かう並木に同行させてもらうことにしました。

なにも並木にとって代わって蓮沼を殺そうと思っていたわけではありません。

せめて蓮沼の苦しむ様子を目の当たりにしないと気が済まない、そんなふうに考えていただけです。

ところが、例の腹痛の客によって事件は大きくねじ曲がります。

並木と戸島が計画の中止を決定。とはいえ、周到に準備されたパレード当日を逃せば、もう蓮沼を追いつめるチャンスなんて巡ってこないかもしれません。

それならば自分一人ででも計画を完遂しよう、と新倉はとっさに決断しました。

佐織に人生をかけていた自分であれば、並木に代わって蓮沼にとどめを刺す権利もあるだろう、と考えました。

新倉は液体窒素を流し込み《佐織を殺した理由》を問います。

すると……

『なみきや』の娘のことは、いつか襲ってやろうと思ってた、と蓮沼はいいました。

押し倒したはずみでうっかり死なせてしまった、と蓮沼は語りました。

その言葉に逆上した新倉は我を忘れて蓮沼を罵り続け……液体窒素を注ぎ続けている部屋から物音がしなくなっていると気づいた時にはもう手遅れでした。

以上が取り調べで新倉が自供した事件の全貌です。

新倉が自白したのは、身体の弱い妻・留美のためでした。

※以下、小説より一部抜粋(新倉の供述)

…………

彼女は本当に何も知らないのですが、夫が事件に関与しているのではないかとずっと疑っている様子でした。

(事情聴取のため)警察に連れてこられたことで不安が限界に達しているに違いありません。

すると案の定、聴取の際に留美が倒れたと知らされました。

(中略)

病室で留美は薬で眠らされていました。

ベッドの脇に座り、彼女の手を握りました。

安らかに眠る妻の顔を眺めているうち、もうこんな辛い状況からは解放してあげなければ、と思いました。

反転

これで事件はぜんぶ解決? ……いいえ、むしろここからが本番です。

新倉の逮捕後、湯川は《ある人物》を訪ねて次のように指摘しました。

『なぜ蓮沼は佐織の血が付着した服を保管していたのか?』

ぱんだ
ぱんだ
あっ

蓮沼が犯人なら、そんな物的証拠なんてすぐに捨ててしまったほうがいいに決まっています。

蓮沼はクズですが、ずる賢い人間です。

そんな初歩的なミスを犯すとは思えません。

となると、蓮沼はわざと逮捕につながるような品を手元に置いていたということになります。

ぱんだ
ぱんだ
でも、どうして?

もちろん、蓮沼の利益になるからです。

順を追って説明しましょう。

そもそも、この物語の始まりは3年前に失踪した佐織の遺体が、ゴミ屋敷の火災によって発見されたことでしたね。

では、なぜゴミ屋敷は燃えたのでしょうか?

答えは蓮沼が放火したからです。

ぱんだ
ぱんだ
は?

はい、意味不明ですね。先ほどの物証といい、まるで蓮沼はわざと逮捕されようとしていたみたいではありませんか。

というか、蓮沼の目的ってまさにソレだったんですけど。

ぱんだ
ぱんだ
は??

もうお気づきかもしれませんが、蓮沼寛一は並木沙織を殺害した犯人ではありません。

真実はこうです。

3年前、蓮沼は《真犯人》が佐織を殺害する現場をたまたま目撃していました。

蓮沼は一瞬の閃きに従って、佐織を(無人の)実家であるゴミ屋敷に隠します。

※佐織の血はこのとき蓮沼の服に付着した

その後、死体遺棄の時効である3年が経過するのを待って、蓮沼はゴミ屋敷に火をつけました。

状況証拠は真っ黒なので、当然、蓮沼は逮捕されます。

するとどうなるでしょう。

真犯人は今度こそ自分の罪が暴かれるのではないかと、心から恐怖したはずです。

ところが、蓮沼は沈黙を守り続けました。

蓮沼の目的は真犯人を脅迫して金を引き出すことだったからです。

どうせ蓮沼は犯人ではないので、もし裁判になったとしても怖くありません。

いざとなれば真相を暴露すればいいだけですからね。

釈放後、蓮沼は《真犯人》にコンタクトをとりました。

要求は一度につき百万円。

《真犯人》の経済状況なら簡単に支払える金額だと、蓮沼にはわかっていました。

さて、いよいよ《真犯人》の登場です。

真相

《真犯人》の正体は新倉留美です。

留美は新倉直紀の妻であり「佐織を世界的な歌姫にしたい」という彼の夢を応援していました。

そんな留美が夫の夢を潰すような真似をしたのには、もちろん理由があります。

それは……

佐織「あたし……歌手を目指すのやめます。赤ちゃんを産んで、素敵な家庭を作りたいです」

佐織は妊娠していました。

そして、よりにもよってデビューを目前に控えたタイミングで歌手にはならないと言い出したんです。

※以下、小説より一部抜粋(留美と佐織の会話)

…………

「そんなこと……そんなこと、許されるわけないでしょっ。あなたのために、私たちがどれだけがんばってきたか、わかってるの? 何もかも、あなたを一流の歌手にするための努力だったのよ。うちの人だって、すべてを犠牲にしてきたっていうのに……。そんなに簡単に夢を諦めるなんて、認められるとでも思ってるの? 私たちの今までの苦労をどう思ってるのっ」

留美の剣幕にさすがにまずいと思ったか、ごめんなさい、と佐織は謝った。

「お二人には感謝しています。ありがとうございました。この経験を、これからの人生に生かせたらいいなと思っています」

「あなたのことなんてどうでもいいっ。私たちの夢はどうなるのと訊いてるのよっ。あなたに賭けてきたのに……」

留美の言葉を聞き、佐織は眉をひそめた。

首を捻り、「それって、おかしくないですか」といった。

「おかしい? 何が?」

「どうしてあたしが新倉先生たちの夢を叶えてあげなきゃいけないんですか。よく新倉先生は、留美ではできなかったことが君ならやれるとおっしゃるんですけど、あたしはお二人の雪辱戦に参加する気なんかなかったです。もっと自由に歌いたかったし、ほかに夢ができたなら、進路変更したって構わないと思ってました」

留美は佐織の顔を睨みつけた。

「よくもそんな恩知らずなことを……」

(中略)

「あたし、仕方なく諦めるわけじゃないですから。喜んで違う道に進むだけですから。留美さんたちの夢を押しつけないで。そういうの、重たいし、気持ち悪い」

「気持ち悪い?」留美は目を見開いた。「何てことを……」

「だって、そうだもの。まるでストーカーに見張られてるみたいで息が詰まっちゃう」

この一言で留美の理性が消し飛んだ。

夫婦で命がけで取り組んできたことを、あろうことかストーカーとは。

「馬鹿にしないでっ」

全身の力を込め、突き飛ばしていた。

(かかと)が何かに引っ掛かったのだろうか、佐織の身体は真っすぐ後ろに倒れた。

鈍い音が耳に残った。

留美は殺意をもって佐織を突き飛ばしたわけではありません。

佐織が亡くなったのは、ほとんど事故のようなものでした。

再解釈

ここまでの内容をかんたんに整理しておきましょう。

佐織を殺害した真犯人は留美。

佐織の遺体を隠し、留美を脅迫していたのが蓮沼。

これらの事実を踏まえて、もう一度パレード当日の『蓮沼殺害事件』をふり返ってみましょう。

ぱんだ
ぱんだ
おー!

最重要ポイントは、計画の直前になって、留美が夫にすべてを打ち明けていたということです。

新倉は留美を責めませんでした。

留美は夫のためを思って激昂してくれたわけですし、そもそも佐織に夢を見すぎていた新倉にも責任があったはずです。

なにより、新倉は妻を心から愛しています。

だから、妻からすべてを打ち明けられたとき、新倉が真っ先に考えたのは蓮沼の口封じでした。

パレード当日の計画が実行されれば、蓮沼はきっと「本当の犯人は留美だ」と口を割るに違いありません。

そうなれば一巻の終わりです。

留美は逮捕されるでしょうし、並木たちからどんな目で見られるか考えただけでもゾッとします。

新倉は計画から並木を排除し、自分だけの手で蓮沼を亡き者にすることにしました。

ぱんだ
ぱんだ
もしかして……

はい。例の腹痛の客は新倉が用意した役者です。

予定通り並木を病院に釘付けにしたのち、新倉は蓮沼を液体窒素で葬りました。

警察に話していた最初の供述はほとんど嘘っぱちです。

実際には新倉は、蓮沼を眠りから覚まさせることなく(=苦痛を与えずに)計画を完遂していました。

蓮沼は金銭の要求だけでなく、留美の身体を弄んでもいました。

新倉は蓮沼を殺すのに躊躇しなかったでしょうし、真犯人じゃなかったとしても蓮沼には同情の余地なんてまったくありません。

結末

新倉夫妻はあらためて真相を自白し、逮捕されました。

湯川が真相を見抜いてしまったから……というのもありますが、それだけではありません。

実は、最後にまだもうひとつ「どんでん返し」があったからです。

ぱんだ
ぱんだ
なになに?

留美が突き飛ばしたとき、佐織はまだ死んでいなかったのです。

つまり、ただの気絶。

もしも佐織が転倒による頭部打撲で亡くなっていたのなら、現場には相応の血だまりができていたはずです。

しかし、とっさに逃げ出してしまった留美が現場に戻ったとき、佐織の遺体だけではなく、その血痕すらも残っていせんでした。

現場から回収した佐織の髪飾りに血が付着していないのが、なによりの証拠です。

『留美は佐織の命を奪っていなかった』

であれば、佐織を殺した《本当の真犯人》は誰だったのでしょうか?

これは簡単に想像できますね。

そう、蓮沼寛一です。

蓮沼は留美を脅迫するために佐織を拉致したものの、途中で佐織が息を吹き返したため、あらためてその息の根を止めていたのです。

留美は自分こそが犯人だと思い込んでいます。

《本当の真犯人》が蓮沼であっても、佐織さえ亡き者にしてしまえば同じことだと考えたのでしょう。

以上のような真相を、湯川は留美に伝えました。そして……

※以下、小説より一部抜粋(湯川と草薙の会話)

…………

「さっきおまえがいった、新倉夫妻も知らない真実というのは、それか」

そうだ、と湯川は頷いた。

「自分たちのやったことを告白するかどうか、それは彼等自身が決めればいい。だけど本当の真実を知らないままでは意味がない。だから教えにいったんだ」

「新倉留美は、夫と二人で話し合おうと考えたわけだな。それで今朝、面会に……」

「留美さんは悩んでいたよ。今のままなら御主人の罪は傷害致死に留まる。真相を話せば殺人罪だ。留美さん自身も罪に問われる。だけど黙ったままでは、蓮沼のやったことは永久に闇の中だ。何より、自分たちも正当に罪を償わねばという思いもあるようだった」

「最後の最後で、二人は沈黙を破ったわけか」

<おわり>

結局、佐織を殺した犯人は蓮沼でした。

そして経緯はどうあれ、蓮沼は裁きを受け、その罪状も明るみに出ました。

並木家の人々や智也もこれからは前を向いて歩いて行ける……物語の最後はそんな希望のあるシーンで締めくくられていました。

感想

『沈黙のパレード』のあらすじを読んたときの第一印象は、

「町の人がみんな共犯なの? 『オリエント急行殺人事件』みたいでおもしろそう!」

でした。

※作中にもチラっと『オリエント急行殺人事件』が登場していましたね

東野圭吾さんだし、しかもガリレオシリーズだし、と期待のハードルは読み始める前からうなぎのぼりです。

で、実際に読んでみたら期待のハードルなんて軽々と飛び越えてくるおもしろさ!!

  • 液体窒素のトリック
  • パレードによって凶器を運ぶトリック
  • ラストのどんでん返し祭り

正直、最初は「ガリレオシリーズ全部読んでないけど大丈夫かな?」という一抹の不安もあったのですが、読み終わる頃にはお腹いっぱい大満足でした。

わたしはラストに二転三転する展開が大好物なので、特にラスト50ページくらいからは「え、そうなの!?」と大興奮の連続でしたね。

しかも、ミステリとして優れているだけではなく、湯川を中心とした人間関係(ドラマ)もまた良いのなんの!

  • 湯川と草薙
  • 湯川と『なみきや』の人々

それぞれに対する湯川の真摯な思いやりにはグッときました。

『沈黙のパレード』はガリレオシリーズの第九作目。

直近では「シリーズ最大の謎が明かされる」らしい十作目も発売されていますし、この機にガリレオシリーズを読みまくりたいなあと思うばかりです。

せっかくだから最新刊『透明な螺旋』を次に読みたいのですが、先に過去シリーズで伏線回収しておいたほうがいいような気も……悩みどころですね。

 

ガリレオを読むと自然と「湯川=福山雅治」で脳内再生されてしまいます。

「実におもしろい」という台詞でテンションが上がったのはわたしだけではないはず……。

ぱんだ
ぱんだ
いいねしてね!

 

まとめ

今回は東野圭吾『沈黙のパレード』のあらすじネタバレ解説をお届けしました!

物語はひとつ謎が解けたと思ったら新しい謎が出てきて、の繰り返し。

最初から最後まで飽きる暇のないすさまじい完成度の作品でした。

今回のネタバレでは省略したエピソードもありますし、なにより雰囲気のいい小説なので、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。

 

映画情報

キャスト

  • 福山雅治(湯川)
  • 柴咲コウ(内海)
  • 北村一輝(草薙)

公開日

2022年公開

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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