ラストに驚き

中村文則「銃」あらすじとネタバレ感想!衝撃の結末とは?

小説「銃」は中村文則さんのデビュー作!

とにかく主人公の内面に関する描写が秀逸で「こんなにも複雑な心情を言語化できるものなのか…」と脱帽しました。

そして、衝撃的だったのはあの結末!

今回は映画化もされた小説「銃」のあらすじネタバレ(と感想)をお届けします!

あらすじネタバレ

昨夜は、激しい雨が降っていた。

目的もなくふらふらと歩いていた大学生の西川は、河原で男の亡骸を発見する。

男の近くには拳銃が落ちていた。

一瞬で『それ』に魅了された西川は、衝動的に銃を拾い上げ、その場から持ち去る。

その黒い鉄の塊を見て、西川は心底「美しい」と思った。

 

その日から、西川の生活は変わった。

部屋に帰れば、拳銃がある。

日常に退屈しきっていた西川にとって、その事実はひどく刺激的だった。

自然と、機嫌も良くなるというものだ。

とはいえ、もちろん西川は拳銃を撃つつもりはなかった。

そこに拳銃がある。それだけで十分なのだ。

 

数日後、荒川の遺体のことがニュースになった。

警察が捜査を開始したという。

もちろん凶器の銃についても追っているそうだ。

そのニュースは西川の顔色を一気に青くした。

銃で撃たれた遺体があるのに、凶器たる銃がない。

その事実はきっと警察に「他殺」を連想させたことだろう。

西川の見立てでは、男は自分で自分の頭を撃ち抜いたようだったが、それならその場に銃がないのは不自然だ。

見つかれば犯人扱いは免れないだろう。

だが、バレなければ問題はないはずだ。

銃を持ち去った夜、西川は誰にも目撃されないよう十分に気を配っていた。

だから、問題はないはずだ…。

 

家に帰って、銃の中の弾丸を確認する。

弾が四発入っている。

そうでなくては。

銃を撃って何かを破壊することができる。

そうすることができるという可能性こそが大事なのだから。

 

拳銃を手に入れてから、西川は以前より能動的になった。

大学にもよく行くようになったし、面倒な人間関係にも付き合うようになった。

今や拳銃は西川の全てだ。

拳銃があるからこそ、西川は生きていくことができる。

 

拳銃のおかげで機嫌のいい西川は、ヨシカワユウコという女と、時間をかけて親しくなっていこうと思い立った。

それはいい考えのように思われて、西川はいっそう機嫌を良くした。

 

 

侵食

西川はさらなる刺激を求めて、拳銃を持ち歩くようになった。

ジャケットの中の拳銃を手で確かめると、この上なく良い気分になる。

この頃、西川は「自分はいつかこの銃を撃つだろう」という確信に近い予感を覚えるようになっていた。

 

ふと思い立って、今さらながら事件のことを調べてみた。

荒川に倒れていた男の名は荻原啓一郎。51歳。風俗店店長。暴力団との金銭的トラブルが事件の原因か──。

新聞にはそう書かれていた。

 

拳銃を撃つ場所を考え、山の中に決めた。

そんな折、両親から電話がかかってくる。

西川の『本当の父親』が危篤状態にあるのだという。

今の両親は施設から6歳だった西川を引き取った養父母だ。

本当の母は父から逃げた。本当の父はひどく荒れていたため、西川は施設に入ることになったそうだ。

その危篤状態の父が自分に会いたがっているのだという。

西川は何といえば両親にとって都合がいいのかと考え、不承不承行くことにする、という体裁をとった。

 

日に日に拳銃への欲望が肥大化していくのを感じる。

もはや自分でも押さえつけることができない。

このまま欲望が大きくなっていったら…最後にはどうなってしまうのだろうか?

 

その日もふらふらと目的もなく歩いていた西川は、夜の公園で黒猫を見つけた。

車にでもはねられたのか、猫は大けがを負っており、もう長くはなさそうだ。

黒猫と目が合う。その目は「早く楽になりたい」と西川に訴えかけているようだった。

…どうも頭がぼんやりとしている。

西川は無意識に懐から銃を取り出していた。

銃口を猫に向ける。

撃鉄を下ろす。

引き金を引く。

命中した。

銃を撃った時の衝撃。立ち上る火薬のにおい。

西川はこの上ない快感を感じていた。

もう一発。猫に向けて撃つ。

 

…ふと、正気に戻る。

西川は走ってその場から逃げ去った。

口元には自然と笑みが浮かんでいる。

走りながら、西川は幸福を感じていた。

 

危篤だという父に会いに行った。

衰え切った父はひどく汚らしいモノのように思われた。

嫌悪感。

「自分は息子ではない」と言い残し、西川はその場から去った。

 

 

分水嶺

何の前触れもなく、警察が家に訪ねてきた。

やはり猫を撃ったのはまずかった。

あの夜、走って現場から離れる西川を目撃した人間がいたのだ。

猫に撃ち込まれた弾丸は、荒川の遺体に撃ち込まれた弾丸と同じもの。

つまり、西川は重大な犯罪者として目をつけられているわけだ。

動揺を隠しつつ、西川は努めて冷静に刑事に対処する。

だが、刑事もしつこく、最後には近くの喫茶店にまで連れ出されてしまった。

 

刑事は西川が簡単にボロを出さないと悟ると、今度は正直に手の内を晒してきた。

実は猫から弾丸は見つかっていない。猫と銃を結び付けて話したのは刑事のカマかけだった。

また、荒川の事件の方でも、すでに何人かの関係者を拘束しているらしい。

刑事は続けて自らの推理を話し出す。

おそらく荒川の遺体は自分で自分の頭を撃ったに違いない。

そして、無関係の何者かがその場の拳銃を持ち去った…。

刑事はその人物こそ西川であると確信しているようだった。

「でも、証拠がないでしょう?」

「証拠ならあります」

「じゃあ、それを言ってみてください」

「あなたの態度ですよ。間違いありません。あなたは拳銃を持っていますよ。私はもう、確信しましたよ」

推測の域からは出ないものの、刑事は実に的確に西川が拳銃を所持している理由について言い当てていく。

「猫を撃ったということは、次は人間です。あなたがボロを出したときは、それは人間が撃たれたときです。そうなっては、もう遅い。その前に、なんとかしなくてはならない。そうでしょう?あなたは次に、人間を撃ちたいと思っているはずだ」

「何がですか?」

「だから、次は人間を撃ちたいと思っているんでしょう?」

刑事は「これはあなたのためだ」と前置きし、「銃を渡すのがイヤならどこかに捨ててしまいなさい」と西川に忠告した。

人間を撃てば、必ず逮捕される。

そう言い残して。刑事は去っていった。

 

 

計画

数日間考えて、西川は「銃を撃っても自分は逮捕されないだろう」と結論づけた。

それは少し楽観的な発想であるように思われたが、深くは考えないようにした。

次は人間を撃つ。

その考えは、あたかも決定事項であるかのように西川の頭にこびりついて離れなかった。

 

ターゲットは隣の部屋に住む女に決めた。

隣の部屋の女はまだ若く、毎晩のように子供を叱りつける声が響いてくる。

きっと子供を虐待しているのだ。

西川は女の行動パターンを調べ、銃を撃つ計画を練る。

女は定期的に県境のスーパーへと買い物に出かける。

実行するならそのあたりがいい。

西川はレストランの跡地に目をつけ、ここがいいだろうと考えた。

ところが、工事の日程を示す看板に目を向けると、どうやら工事は5日後から始まってしまうらしい。

女の行動パターンを考えると、決行日は4日後の火曜日しかない。

やるしかない。

あの女がいなくなれば、子供の人生も少しは良くなるだろう…。

 

この頃、西川はすでに平静を失ってしまっていた。

目に見えて痩せこけており、言動も普段の様子からは程遠い。

ヨシカワユウコに会ったが、どうもイライラして話にならない。

もう自分は狂っているのかもしれない、と西川は考えた。

その場から去った後、ヨシカワユウコから電話がかかってきたので、西川は携帯電話を捨てた。

 

そして、火曜日になった。

「要するに、あの女を撃てばそれでいいんだ」

予定していたレストラン跡地に潜み、女が通りがかるのを待つ。

頭がぼんやりとする。

考えが上手くまとまらない。

 

 

ついに女が現れた。

心臓の音がやけにうるさい。

信号が青に変わり、女が横断歩道を渡ってこちらへと歩いてくる。

撃鉄を下げる。

手の震えが止まらない。

女との距離がどんどん近くなっていく…三メートル…二メートル…もう十分に射程範囲内だ。

何を思ったのか、女は渡ってきた横断歩道を戻ろうとしているようだ。

信号は赤に変わっている。女はこちらに背を向けて、すぐそこで立ち止まっている。

やるなら今しかない。

撃ってしまいたいという衝動と、その後どうするのだという絶望。

西川の中で激しく感情がせめぎあっている。

 

ふと、思った。

(私は拳銃を使っているのではないのだ。私が拳銃に使われているのであって、私は、拳銃を作動させるシステムの一部に過ぎないのだ)

西川は悲しくなり、自分が始終拳銃に影響され続けてきたことを思った。

激しい葛藤はなおも続く。

気がつくと、いつのまにか拳銃が少し遠くの地面に落ちていた。

西川はきっと自分が放り投げたのだ、と思った。

自分から、拳銃を手放した。

そのことに気づくと、西川の身体から一切の力が抜けた。

放心。

西川は「自分はもう、拳銃とともにいることはできないのだ」と思った。

そのことは西川を悲しくさせたが、同時に、西川に深い安堵をももたらしていた。

いつの間にか女の姿は消えている。

西川はしばらくその場で泣き続けた。

西川は「私が何故か執着し、撃とうとしたあの若い女は、いつかのように、私を置いてどこかに逃げていったのだろう」と思った。

 

 

結末

その後、西川にはおおむね良い変化が見られた。

生の実感。

以前のように、何事も退屈だと思うことはなくなった。

簡単に言えば、西川はふっきれたのだろう。

拳銃から、そして自分の過去や出生から。

 

一抹の悲しみを感じつつ、西川は拳銃を捨てることにした。

せめて少しでも長く一緒にいたいという思惑から、西川は少し遠くの山の中の池か川の中に銃を捨てることにした。

電車に乗り、目的地へと向かう。

途中、西川の隣に態度の悪い中年の男が座った。

しばらく西川は我慢したが、いつもの衝動で、つい男の携帯電話をつかみとり、放り投げてしまう。

激昂する男を見ているうちに、西川の頭に一つの考えが浮かんだ。

拳銃を取り出す。

男の髪を掴み、口の中に拳銃をねじ込む。

乗客が多少の悲鳴を上げる。

男は「本物じゃねえだろう」と言った。

そこからの西川の行動は、素早かった。

撃鉄を下げる。

「試してやるよ」

自分の身体が動くに任せて、西川は引き金を引いた。

激しい音と衝撃。

大量の赤い飛沫が飛んだ。

男の首からは抵抗がなくなり、ぐにゃりと倒れた。

乗客が悲鳴を上げて逃げていくのを見て、西川はようやく自分が拳銃を発射させたことを知った。

「これは違う」

「これはなしだ」

西川は繰り返しつぶやく。

どう考えてみても、拳銃を撃つ必要などなかった。

だが、起こってしまったことは変えられない。

西川は早くこの状況を終わらせたいと切望し、そのためには自分の頭を撃つしかないと思った。

最後の一発は、お守りがわりにとっておくつもりだったので、今は拳銃の中にはない。

西川は震える指で弾を取り出すと、拳銃に弾を込めようとする。

だが、なかなかうまくいかない。

遠くから怯えた乗客たちがこちらを見ている。

彼らに対し、どういうわけか西川は顔に笑みをつくろうと努めた。

弾はまだ入らない。

「もう少しなんだけどな」

「おかしいな」

「おかしいな」

震える手で小さな弾丸をつまみながら、西川はまるで誰かに言うように、繰り返しそうつぶやいた。

<銃・完>

 

 

感想

とにかくビックリしたのは結末部分!

自分を捨てた母親にどこか姿を重ねていた【若い女】を結局撃たなかった、という時点でこの物語は終わったものと思っていたのに、まさかあんな衝撃が最後に待ち構えていたとは…!

もともと西川は突飛な行動を想像したり、時には行動に移したりする性格の持ち主でしたが、最後のあの行動は西川がもともと持っていた性質ゆえなのか、それとも拳銃に影響された結果なのか…。

おそらくはその両方なのだと思いますが「では、西川はどのくらい拳銃から影響を受けたのか?」と考えると、今度は容易にはわかりません。

拳銃は西川の性質を少しだけ後押ししただけのようにも思えるし、反対に拳銃は西川という人間をほぼ根底から変えてしまったような気もします。

そのあたりについて考察しながら2周目を読んでみるのも面白そうだな、と思いました。

 

今回のあらすじではあまり伝わらないと思うのですが、小説「銃」の醍醐味はなんといっても西川の精神状態が刻々と変化していく過程が詳細かつ生々しく描かれている点だと思います。

拳銃は最初こそ西川を幸福な気持ちにさせるアイテムでした。

日々に退屈しきっていた西川にとって拳銃は【刺激】であり【非日常】そのもの。

生い立ちのせいなのか【何を考えているかわからない人間】で【何かが足りない人間】だった西川は一瞬で拳銃に魅了され、すぐに拳銃は西川の生活の中心になっていきました。

この頃、西川は拳銃を撃つつもりなど毛頭なかった、という点は重要なポイントですね。

ところが、時間が経つにつれて、西川の様子は少しずつおかしくなっていきます。

まるでだんだんと拳銃に憑りつかれていくかのように欲望は肥大化していき、ついには衝動的に猫に向けて発砲するまでに至りました。

この頃になると、もはや西川は自分の精神や行動を理性のもとに制御することができなくなっています。

私はこのあたりの西川の様子を見て「まるで薬物依存のようだな」と思いました。

渇望と言えるほど『ソレ』を求めてしまうが、『ソレ』がもたらすのは身の破滅。

それを頭のどこかで理解していたとしても、なお求めずにはいられない。

しかも、回を重ねるにつれて耐性がつくので、より大きな刺激を求めずにはいられなくなる…。

うん、やっぱり西川にとっての『拳銃』は、『クスリ』に近いものだったのではないでしょうか。

そう考えると、あの結末にも少し納得がいきます。

途中で冷静になって距離を置こうと決意しても、時すでに遅し、ということだったのでしょう。

 

 

『たまたま拳銃を拾ったただの大学生が、どのように拳銃に支配されていくか』

小説「銃」はある意味、そのような思考実験のようでもあります。

特長的なのは描写の秀逸さであり、途中「これは実際にあった事件なのではないか?」と疑いたくなるほどでした。

そんなリアリティのある筆致だからこそ、読み手側はつい「銃」の世界に没入してしまうのでしょうね。

私も途中からは続きが気になって、ページをめくる手を止められませんでした。

感想を総括すると『中村文則ワールドの原点、読んでおいて損はなし!』という感じでしょうか。

170ページほどの一気読みできるボリュームなので、未読の方はぜひチェックしてみてください!

 

まとめ

今回は中村文則「銃」のあらすじネタバレや感想などをお届けしました!

「銃」というシンプルなタイトルが示すように、この作品で重要なのは主人公・西川と拳銃の関係性。

少しずつ拳銃への欲望を抑えきれなくなっていく西川の姿がとても印象的でした。

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