ラストに驚き 記事内にPRを含む場合があります

小説『invert 城塚翡翠倒叙集』あらすじネタバレ解説|相沢沙呼【インヴァート】

相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』を読みました。

こちらは2019年最大の話題作だった『medium』の続編です。

小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』ネタバレ解説と感想!傑作だけど不満も小説『medium』を読みました! ※メディウム……「霊媒」の意味を持つ英単語 このミステリーがすごい! 第1位 ...

前作のオチがオチだっただけに、今回は犯人視点の中編集という形式になっていますね。

犯人は最初からわかりきっているので、問題は「どうやってやったのか(How done it)」に絞られます。

解決編までに伏線を組み合わせて真相を導き出せたら大喝采!

今回は小説『invert 城塚翡翠倒叙集』のあらすじがよくわかるネタバレ解説をお届けします!

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

綿密な犯罪計画により実行された殺人事件。

アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。

だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。

大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが……。

ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。

すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?

ミステリランキング5冠を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、待望の続編は犯人たちの視点で描かれる、傑作倒叙ミステリ中編集!

(単行本カバーのあらすじより)


第1話 雲上の晴れ間

物語は犯人目線での殺害シーンから始まります。

狛木繁人が吉田直政を殺したのは、積年の恨みによるものでした。

子どもの頃から続いてきた主従関係。それはITベンチャー企業で働く今も変わりません。

優秀なエンジニアである狛木が開発したサービスはすべて横取りされ、吉田は天才プログラマーとして世間に認知されています。

しかも、社長である吉田は狛木の開発した新サービスを勝手に売却しようとしていて……。

我慢の限界でした。

レンチで頭部を一撃。気絶した吉田をバスルームへと運び、上半身を浴槽に突っ込ませると、そのまま水を注いで溺死させました。

何も知らない第三者から見れば、あたかも風呂で滑って転んだ事故のように見えます。

指紋などもちろん残していません。なにより狛木には鉄壁のアリバイがあります。

警察は事故死と判断。

完全犯罪がなされたと思われた、その時でした。

「吉田さんは、誰かに殺されたのかもしれません」

吉田の霊が見えるという美女・城塚翡翠の登場です。

翡翠は引っ越してきたお隣さんとして狛木に近づき、動かぬ証拠を積み上げていくのでした。

問題編

今回の【読者への挑戦状】はアリバイ崩しです。

犯行時刻は午後8時。狛木は間違いなく犯行現場である吉田の自宅にいました。

ところが、狛木はその時間、社内にいたとしか考えられないのです。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと?

突発的なバグに対応するため、狛木は午後8時~11時にかけて同僚である須郷とビデオ通話しながら修正作業に当たっていました。

この修正作業は社内のネットワークからしか行えません。

つまり、午後8時に狛木は社内にいたということになります。

ぱんだ
ぱんだ
ふむふむ

会社から吉田の自宅までは片道で1時間。犯行後に社内に移動する時間はありませんでした。

また、念を押しておくと、吉田の自宅からは社内のシステムにアクセスすることは本当に不可能です。

さて、狛木はどのようにアリバイをつくりだしたのでしょうか?

なお、狛木が実際に修正データを反映させたのは翌日の午前0時のことでした。

翡翠は言います。

「あんなもの、アリバイと呼べるほどではありません。勘のいいミステリ読みなら、冒頭を読んだだけで気づいてもらわなければ困ります」


解決編

アリバイの状況を見て真っ先に気づくのは、バグを発生させたのは狛木本人だろうということです。犯行時刻ピッタリだなんて偶然とは思えません。

ということは、ですよ?

狛木にはあらかじめバグを修正する準備があったと考えられます。

つまり、狛木は同僚とビデオ通話しながら修正コードを書いていたのではなく、実際には作業しているふりをしていたのです。

ここまで話が進めば、あとは簡単ですね。

狛木は吉田殺害後、事件現場である吉田宅で同僚とビデオ通話していました。

午後11時に通話を終了し、1時間かけて会社へ移動。

翌午前0時に用意していた修正データを社内からアップロードすれば、アリバイの完成です。この作業には数分も必要ありません。

ぱんだ
ぱんだ
なるほどね

では、ここからは翡翠の謎解きをもう少し解説していきましょう。

第一に、事故ではなく他殺だと翡翠が気づいた理由について。

狛木は殺害前にうっかり吉田から手渡されたペットボトルを素手で受け取ってしまっていました。

もちろん指紋は拭っていましたが、キャップが一度あけられた状態のペットボトルに吉田の指紋さえないのは不自然です。

誰かが指紋を消したという事実こそが、第三者が現場にいた状況証拠となり、翡翠は他殺を疑うに至りました。

ペットボトルは直近で買われたものだったため、仮に狛木が現場から持ち去っていたとしても同じ理屈で他殺を疑う要因になっていました。

事件の最後を締めくくるのは物証です。いくら状況証拠を並べたところで物証を欠けば裁判で不利になってしまいます。

詳細は割愛しますが、狛木のノートパソコン底面についているゴムに、吉田の机の上にこぼれていたオリジナルブレンドの漢方薬の液体の成分が付着していたことが最後の決め手になりました。

翡翠であれば物証をつくるため狛木のノートPCに漢方薬の成分を後付けで付着させることも可能だったでしょうが、真相は彼女にしかわかりません。


第2話 泡沫の審判

今回の犯人は小学校の先生、末崎絵里。

彼女が盗撮犯の田草明夫を殺したのは、子どもたちのためでした。

田草は元校務員としての悪用してトイレにカメラを仕掛け、その映像を売っていました。それだけではありません。女性教師を脅迫して子どもたちの個人情報まで引き出していました。

田草を生かしておけば、不幸な子どもたちが増える一方です。

夜の教室。絵里はコンクリートブロックで田草の後頭部を一撃。

遺体は三階にある理科室のベランダから落とし、転落死を装いました。

筋書きはこうです。

田草はトイレに仕掛けたカメラを回収するため三階の窓から校内に侵入したが、防犯センサーに引っかかり、慌てて逃げようとしたせいで転落……。

警察は事故死と判断。

しかし、スクールカウンセラー・白井奈々子と名乗って翡翠が赴任してきたことで状況は大きく変わっていきます。

問題編

今回の問題もアリバイ崩しです。

校内の赤外線センサーが反応した時刻は午後9時48分。

ところが、絵里は午後9時には退勤していて、その後は同僚の先生とファミレスにいました。

午後9時48分、絵里は間違いなく学校にはいなかったのです。

となると、センサーは田草に反応したことになります。

田草は元校務員ですが、センサーは彼が学校を去った後に設置されたものだったので、うっかり引っかかっても不思議はありません。

けれど、これは矛盾です。

センサー反応後に駆けつけた警備員によって田草の遺体は発見されています。

ファミレスにいた絵里には田草を殺すことができません。

一方、絵里には退勤前にアリバイのない空白の20分間(午後8時40分~9時)が存在します。

この時間に犯行に及んだのだとしたら、今度は午後9時48分のセンサー反応時間(=午後9時48分時点で田草は生きていた)という事実と矛盾してしまいます。

さて、絵里はどうやってこのアリバイをつくりだしたのでしょうか?

ヒントは「小学校の教室にあるもの」です。

※とはいえ、かなり「そんなのあり?」みたいなトリックなので深く考えず読み進めてください。


解決編

今回の状況では9時以降ずっと同僚といた絵里のアリバイはどうあっても動かせません。

なので、疑うべきは田草が殺害された時間ということになります。

田草が殺害されたタイミングを、絵里にアリバイのない午後8時40分~9時の間だと仮定してみましょう。

すると問題になるのは午後9時48分の赤外線センサー反応ですが、これが引っかけでした。

9時48分にはすでに田草は殺されているのですから、センサーに引っかかったのは田草ではなく、もちろん絵里でもありません。

ぱんだ
ぱんだ
というと?

防犯装置である赤外線センサーに引っかかったのは、教室で飼っているハムスターです。

ぱんだ
ぱんだ
えっ

このハムスターは脱走しがちで、けれど遠くまでは逃げずに元の場所に戻ってくるのだと説明されていました。

※問題編でこの情報を開示するとさすがにバレバレなのでこの記事では伏せていました。

絵里は教室とケージの戸口さえ開けておけば、そのうちハムスターが逃げ出してセンサーに引っかかるという寸法です。

9時48分という時間に意味はありません。絵里にしてみれば9時以降であればいつ警報が鳴ってもよかったのです。

ちなみに、ハムスターにセンサーが反応するのかという点に関しては、翡翠が次のように言及しています。

「赤外線感知ということは、人間だけでなく熱の変化をもたらすものすべてに反応します。小学校では、入り込んだ野良猫を誤検知してしまったり、けっこうよくあることみたいですね?」

というわけで絵里のアリバイは脆くも崩れ去りました。

ここからはそのほかの点に関する翡翠の謎解きをご紹介します。

第一に、田草が事故死ではなく他殺だと示す根拠について。

翡翠は田草の遺体が軍手をつけていたことに注目しました。時刻は夜。もし田草が校舎三階の窓から侵入したのだとすれば、当然、明かりが必要だったはずです。

けれど、田草は懐中電灯の類を所持していませんでした。となると、スマホのライトに頼ったのだと想像できます。

ところが……

※以下、小説より一部抜粋

…………

「田草のスマートフォンは、背広の内ポケットに入ったまま、ライトは点灯していませんでした」

「そんなの……。逃げるときに、消したんでしょう」

絵里は震える声で呟く。

「ええ、おっしゃる通りです。その可能性も考慮する必要があります。ところがですねぇ……」

んふふふふ、と奈々子(翡翠)は不気味な含み笑いを漏らす。

絵里は既に失策に気づいていた。

「そうなんです。田草は軍手をしていたんです。軍手をしていたら、スマートフォンのライトをオンオフできません。警報が鳴って、慌てて逃げなくてはならないというときに、軍手を脱いで、スマホを操作してそれを内ポケットにしまい、また軍手をしてベランダから配水管を伝って降りる……。これはちょっと……」

くすくすと笑って、奈々子が顔を横に振る。

「どう考えても、ありえないです」

…………

そうして、翡翠は最後に揺るがぬ物証を突きつけます。

田草の遺体を濡らしていた液体の正体。それは子どもたちが遊んだまま床にこぼしていたシャボン液でした。絵里はそれに気づかず、教室から遺体を運び出す際に付着させてしまっていたのですね。

子どもたちは絵里のシャボン玉が大好きでした。

なぜならそれは割れにくい……砂糖入りの特別なシャボン液だったからです。

※以下、小説より一部抜粋

…………

「砂糖を含んだこの成分ピッタリの組み合わせでシャボン液を作るのは、先生……あなただけなのです」

「違う……。そんなの、ここで田草が死んだ証拠にはなっても、私が殺した証拠には……」

「先生、そういうことではありません。そういうことではないんですよ?」

奈々子は緩やかにかぶりを振った。

「先生はあの日、職員室を離れていた時、ずっとこの教室にいらしたと、ご自分でおっしゃったではないですか」

「でも、でも……。そうよ。私が教室に来る前に、田草がここで誰かに殺された可能性だって」

しかし、奈々子はその言葉を待ち受けていたかのように、翠の瞳を煌(きら)めかせて言った。

「先生、お忘れですか? 田草は20時40分頃まで、商売相手とメッセージでやりとりをしていたのです。つまり、彼は少なくともその時間まで生きていた。先生が教室に戻るまでに彼が殺されていた可能性は、どこにもありません」

(中略)

「田草がこの場所で殺されて、シャボン液が衣服に付着したのは、その20時40分以降でしかなく、まさにその時間、ずっとこの教室で作業をしていたとおっしゃったのは、他ならぬ先生ご自身なのです――」

「けれど、けれど……」

必死になって、頭を巡らせる。

だが、起死回生の反撃は、なにも思いつかない。

「白井さん」

震える声で、絵里は言う。

「わかるでしょう。あの男が死んだって、誰も困らなかった。いいえ、生きていたら、もっと多くの子どもたちが犠牲になっていた。個人情報まで手を出されていたら、直接の被害に遭う子だっていたかもしれない。あなたさえ……、あなたさえ、黙っていてくれたら」

「先生、それはいけません。それ以上は、おっしゃらないで」

奈々子は目を伏せてかぶりを振る。

「どうして……! 私は正しいことをしたのよ! 私はみんなを護った! なのに!」

奈々子は眼を開ける。絵里を見据えて、激しくかぶりを振った。

「いいえ! いいえ先生! それは違います。よろしいですか。この世に正しい殺人なんてものはありません! 正しさなんて、泡のように儚くて脆いものなんです! 独善的な人殺しなんて、あっていいはずがない!」

「そんな綺麗事じゃ――」

ウェーブを描く髪が、揺れ動く。奈々子は鋭い眼差しで、祈るように叫んだ。

(中略)

「先生は胸を張って子どもたちに言えますか! 自分が正しいと思えば人を殺してよいのだと! 正しいと思ったから殺したという殺人鬼には、大切な人を殺されても仕方がないのだと、子どもたちに胸を張って教えられますか!」

息を呑んで、絵里はうなだれる。

それは無理だ、と素直に思う。

まるでシャボンが弾けるみたいに。夢から覚めるみたいに。

唐突に、思い知らされた。奈々子の言葉は正しい。

「花マル百点よ、白井さん」

絵里は笑う。

「でも、私は……、教師として、あの男を殺さずにはいられなかった……」

ただ、それだけを誰かに聞いてほしくて、言葉を零した。

<泡沫の審判・完>


第3話 信用ならない目撃者

雲野泰典は非合法な手段で荒稼ぎしている悪徳探偵。

元警視庁捜査一課の刑事としての知識・経験があるため、間違っても現場に証拠を残すようなミスは犯しません。

人呼んで「犯罪界のナポレオン」

そんな彼が自社の社員だった曽根本を殺したのは、口封じのためです。

曽根本は雲野の悪事を告発しようとしていて、もはや始末するしかありませんでした。

現場は曽根本の自宅。凶器は拳銃。

拳銃は元暴力団員である曽根本から預かっていたものであり、自殺を偽装するにはうってつけでした。

あらかじめ盗み見ていたパスワードで曽根本のパソコンのロックを解除し、遺書を雲野宛てに送信。3Dプリンタでつくっていた合鍵で施錠して、現場は密室状態。

まさに完全犯罪……、と言いたいところだったのですが、雲野にとって予想外のアクシデントがひとつだけありました。

目撃者の存在です。

当日は獅子座流星群が降る夜。遠くのビルの屋上から望遠鏡で《拳銃を持つ男の影》を目撃していた人物がいました。

名前は涼見梓(すずみあずさ)

ただし、梓が目撃したのは「窓辺に立つ男」でしかありません。

犯行の瞬間を見ていたわけでもなければ、拳銃を持つ男の顔もはっきりとは覚えていないといいます。

それもそのはず。目撃の瞬間、梓は酒を飲んで酔っていました。

彼女が目撃した光景はなにもかもあやふやです。

「あなたが見たのは自殺する前の曽根本ではなかったか?」と問われれば、「そうだったかもしれない」と答えるしかありません。

とはいえ、雲野もプロです。

後日、雲野は梓を訪ねると「曽根本は自殺だった」と思い込ませるように誘導しました。

今度こそ完全犯罪……、といかないのはみなさんもうご存じの通り。

城塚翡翠の登場です。

ただし、今回は前の2件とは状況がまったく違います。

なぜなら、雲野は城塚翡翠の存在を知っていたから!

警察の捜査に協力する霊能力者。難事件を解決した実績を持つ実力者。

今回も翡翠は雲野が犯人だと気づいていますが、雲野もまた翡翠があくまで探偵でしかないことに気づきます。

「結論として――、君の霊能力はニセモノだ」

これまでのやり方は雲野には通じません。

そして先に申し上げておきますと、今回、雲野は現場に物証を残していません。

つまり、勝負を分けるのは目撃者の証言!

翡翠と雲野はそれぞれの論理で梓を説得しようと試みます。

梓と恋人関係になりつつある雲野のほうがやや有利という気もしますが……?

梓には雲野の亡き妻の面影がありました。妻からプレゼントされた腕時計を肌身離さず身につけているほどの愛妻家である雲野は、やがて損得勘定抜きに梓に惹かれていきます。

問題編

今回は解決編が長くなりそうなので、問題編はあっさり済ませようと思います。

【問1】翡翠は犯人が曽根本に近しい人間だとすぐに察しました。それはなぜでしょう?

【問2】翡翠は今回も犯人に物証を突きつけます。しかし、雲野は現場に物証を残していません。さて、翡翠が突きつけた物証とはなんでしょう?

ヒント(伏線)はすでに提示されています。

今回の状況を読み直せば、謎はきっと解けるはずです。

ぱんだ
ぱんだ
むむむ……


解決編

まずは問題編の答えから。

  • 現場は密室
  • 個人パソコンのパスワードが突破されていた

以上の事実から、犯人が被害者の身内であることは明らかです。

仮に犯人がまったくの第三者だった場合、合鍵をつくるために曽根本の鍵を一時的に持ち出すのは困難と言わざるをえません。

それよりもすぐ近くでパスワードを見られるほど近しい間柄の人間が犯人だと考える方が自然です。

雲野は自殺を偽装するために現場を密室にしたのですが、他殺だと露見してしまえばかえって計画的な犯行だったという裏づけになり、翡翠からまっさきに疑われる結果となってしまったのでした。

ぱんだ
ぱんだ
なるほどね

次に物証について。

今回の殺害方法は銃殺でした。ドラマや小説の事件捜査ではよく「硝煙反応」という言葉を目に(耳に)しますよね。

これに近しい専門用語に「発射残渣」というものがあります。

簡単にいえば発砲した人間に細かな金属片などが付着することです。

雲野は元刑事ですから、もちろんそれらが科学捜査に用いられることを知っていました。曽根本の自殺を偽装するため、彼に発砲の痕跡が付着するよう調整したりもしています。

体や衣服についた「発射残渣」を残しておくようなミスはしません。

ところが、です。

雲野にはひとつだけ手抜かりがありました。

亡き妻からの贈り物だった腕時計です。

愛した妻の思い出とともに肌身離さずつけている腕時計には、長年の使用による細かな傷が無数に入っています。革ベルトで、水濡れは厳禁。洗うことはできません。

つまり……

翡翠「十中八九、なにかが残っていると思いますよ。発射残渣の微量な金属片、曽根本さんの血痕と、もしかすると、彼が抵抗を示したときについた指紋がまだ残っている可能性も……。特にこの細かい傷の間には期待ができそうです」

雲野はたしかに現場には物証を残していませんでした。

「あなたの敗因は、あなたが奥様を愛していたこと。それに尽きますよ」

さて、いつもならここでエンドマークが打たれるところですが、今回はちょっと様子が違うようです。

探偵の謎解きが終わり、犯人の敗北は明白。

しかし、謎解きの現場は涼見梓の自宅であり、雲野は拳銃を携行していました。

真相を知る人間さえ始末してしまえば、あとはどうにでもなる。

雲野は梓と翡翠に銃弾を撃ち込み、真相を闇に葬ったのでした。

ぱんだ
ぱんだ
えぇっ!?


大どんでん返し

静まりかえった涼見梓の家に響く笑い声。

「んふっ……。んふふふっ、ふふふっ、ふふふっ……」

それは窮地からの形勢逆転に成功した雲野が思わず漏らした失笑……ではありません。

声は心臓を撃ち抜かれたはずの涼見梓の口から漏れ出ていました。

「んふっ、ふふふっ、ふふふふっ……」

雲野は反射的に銃を構えて、再度、引き金を引きます。

けれど、なにも起こりません。

「ふふふっ……、弾なら、ここですよ……、ふふっ」

ゆらりと立ちあがる梓。胸から流れた血が服を朱に染めているのに、なおも彼女はおかしそうに笑っています。

雲野の知る梓とは思えない異様な雰囲気。翠色の瞳が妖しく煌めいていて……。

「社長さん(雲野)ってば……。もしかしてですけど、ご自身が名探偵に相対する最強の敵だなんて、そんな思い違いをしていたんじゃないです?」

雲野にはまだ理解が追いつかずとも、読者に対する壮大な叙述トリックの種明かしとしてはもうこれだけで十分でしょう。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと?

つまり、これまで読者(と雲野)が涼見梓だと思い込んでいた人物こそが、城塚翡翠だったのです。

そして雲野と相対していた探偵、読者が城塚翡翠その人だと信じ込んでいた人物の正体は、城塚翡翠の相棒・千和崎真でした。

順を追って説明しましょう。

翡翠は犯行現場の状況から目撃者の存在に気づき、雲野に先んじて本物の涼見梓に接触。雲野に先んじて彼女に成り代わっていました。

雲野が最初に梓を訪ねたとき、応対した梓はすでに翡翠だったのです。

ぱんだ
ぱんだ
でも、なんでそんなことを?

今回、現場には物証が残されていませんでした。

雲野の腕時計から決定的な証拠が出るかどうかは賭けであり、実のところ確実な物証としては頼りないと言わざるを得ません。

そこで翡翠は一計を案じました。

詳細は割愛するとして、計画の最終段階は涼見梓の自宅での【謎解き】です。

翡翠の狙い通り、追いつめられた雲野は拳銃で梓(本当は翡翠)と翡翠(本当は真)を撃ちました。

いえ、正確には銃弾はあらかじめて抜いていたので、血のりと演技で撃たれたふりをしただけだったのですか。

ともかくこれでもう雲野は言い逃れできません。

犯人は待機していた警察に連行され、事件を幕を下ろしました。

本物の梓はサイパン旅行に行かせていました。翡翠演じる梓に雲野の亡妻の面影があったのは、もちろん偶然ではありません。

ぱんだ
ぱんだ
いいねしてね!

 


まとめと感想

今回は相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』のあらすじネタバレ解説をお届けしました!

全体的には「初心者から玄人まで推理をお楽しみいただけます」といったコンセプトが感じられました。

それぞれの中編に

  1. 簡単な謎解き
  2. ちょっと難しい謎解き
  3. 難しい謎解き

みたいに難度の違う謎がうまく盛り込まれていて、幅広い読者層が楽しめるような工夫が見られます。

今回、記事中で紹介できなかった謎解きもあるので、自分で謎を解きたいタイプのミステリファンはぜひ挑戦してみてください。

 

また、最後の中編『信用ならない目撃者』では全編を通じて読者を騙すという大掛かりな叙述トリックが仕掛けられていました。

やっぱり『medium』といえばラストの特大どんでん返しというイメージがあるので、続編として前作を踏襲したような構造になっていたのは好印象でしたね。

ぱんだ
ぱんだ
そうだね

最後に、城塚翡翠について。

前作ラストでは

  • 本当のところは本物の霊能力者なのでは?
  • 演技と思われていたふわふわキャラも地なのでは?

といった匂わせがありましたが、今回も翡翠の真実についてははっきりしないままでした。

今後シリーズ化していけば翡翠の過去なりが語られる回もあるのでしょうか?

少なくとも「はわわわ~!」とか甘すぎて胃もたれしそうな言葉遣いはキャラだと信じたいところですが……。

※絵里が「なんだよ、はわわわって。そんな声を上げる女がいるものか」と心の中で毒づいていましたが、完全同意でした。作中でいちばん登場人物に共感した場面です(笑)

すべてをひっくり返すラストで話題をさらった『medium』

読者への挑戦状を掲げて本格推理の要素を強めた続編『invert』

はたして次はどんな事件が城塚翡翠を待ち受けているのでしょうか?

続編にも期待したいと思います。

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    とてもおもしろかった

  2. 匿名 より:

    invertを発売直後に読んで内容を完全に忘れていましたが、こちらの要約はとても上手くまとまっていて分かりやすかったです。ありがとうございました。

COMMENT

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