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夕木春央『十戒』あらすじネタバレ解説|感想|結末が二重にズルすぎる

夕木春央『十戒』を読みました。

「週刊文春ミステリーベスト10」受賞などで話題になった『方舟』著者の最新作です。

今作の舞台は逃げ場のない孤島。

電波は通じているものの《十戒》により救援を呼べない状況下、犯人から指定された三日間を過ごすうちに連続殺人が……という本格ミステリらしい物語となっています。

どんでん返しのその先、ラスト1ページの衝撃までお見逃しなく。

今回は小説『十戒』のあらすじがよくわかるネタバレ解説(と感想)をお届けします。

ぱんだ
ぱんだ
いってみよう!

あらすじ

浪人中の里英は、父と共に、伯父が所有していた枝内島を訪れた。

島内にリゾート施設を開業するため集まった9人の関係者たち。

島の視察を終えた翌朝、不動産会社の社員が殺され、そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちていた。

“この島にいる間、殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる”。

犯人が下す神罰を恐れながら、「十戒」に従う3日間が始まったーー。

(単行本帯のあらすじより)

プロローグが秀逸だったので、続けて紹介します。※一部省略しています

プロローグ

島には、十一月の風が吹きつけていた。

小さな島だ。形は正円に近く、直径は三百メートルに満たない。

わたしたち八人が立っているのは、東の崖際だった。

身を乗り出すと、眼下に死体が見える。うつ伏せで、背中にクロスボウの矢が刺さっている。崖は峻険で、降りることはできない。

だから顔は分からないが、身元は明らかである。昨日までは九人だったから、欠けた一人があの死体なのだ。

もちろん、これは殺人事件だった。

犯人はこの中にいる。なのに、誰も警察に通報しようとはしない。

電波が届かないのではない。ここは離島だけれども、通信状況は良好で、不自由はない。それでも、通報はしない。

島を去ろうともしない。

天気は良い。風が強すぎることもない。電波が届くのだから、スマホで電話を掛けて迎えの船を呼べば良いものを、事件のあった島に留まろうとしている。

通報することも、島を去ることも、許されてはいないのだ。

禁を破れば、全員が死ぬことになる。

いつまでこの島にいればいいのか? 三日後の夜明けまでだという。

そして、何より重要なことがあった。

この島にいる間、決して殺人犯を見つけてはならない。

それが、わたしたちに課された戒律だった。


十戒

第一の殺人が発覚したのは、枝内島の南西にある別荘に一行が宿泊した翌朝のことでした。

殺されていたのは不動産会社の小山内。

崖下に落ちている死体を一行が発見できたのは、犯人からの指示書である【十戒】のためでした。

『この書状を見つけたものは、島の東北東に向かい、崖の下に小山内氏の死体を捜さなければならない。確認し次第、島内の全員を集め、以下の事柄を守るよう合意を得なければならない』

指示の全文は(ちょっと長いので)のちほど紹介するとして、要約すると次の通りです。

「私らは、これから三日間、この島に留まらないといけない。そして、その間、絶対に犯人を見つけないようにしないといけない。もし見つけてしまったら、犯人は島を爆破する。こういうことですよね?」

ぱんだ
ぱんだ
爆破!?

一行は前日、枝内島に大量の爆弾が設置されていることを確認しています。

誰が、いつ、なんのために用意していた爆弾かはわかりません。ただ、犯人はいつでもそれを起爆させることができるようです。

もちろん、その場合は犯人も助からないでしょう。自爆ですね。

【十戒】によれば、なにごともなく島ですごしていれば三日後には解放されるのだといいます。

大人しく指示に従うべきか、それとも……?

以下、十戒の全文を紹介します。読み飛ばしても問題ありません。

【十戒】

一 島内にいるものは、今日これから三日の間、決して島の外に出てはならない。

二 島外に、殺人の発生や、それに限らず島の状況を伝えてはならない。当然、警察に通報してはならない。

三 迎えの船は三日後の夜明け以降に延期し、各人は、身内や関係者に、帰宅が三日間遅れることを連絡しなければならない。その際には島で何が起こったかは伝えず、しかし怪しまれることのないよう努めなければならない。

四 各人は通信機器を所持してはならない。スマートフォンは全て回収し、容器に納め封印し、必要が生じた場合にのみ、全員の合意の下で使用しなければならない。

五 島外との連絡は、互いの監視の下で行われなければならない。メールやSNS等のやりとりは文面を全員で確認し、通話は全員に内容が聞こえるように配慮しなければならない。連絡は、島に留まることを、島外のものに怪しまれないために必要な内容に限らなければならない。

六 島内では、複数人でが三十分以上同座し続けてはならない。三十分が経過するごとに、最低五分は席を離れ、一人で過ごさなければならない。

七 カメラ、レコーダー等を使って、島内で発生したことを記録してはならない。

八 各人は、それぞれ寝室に一人のみ起居し、他者の部屋を訪ねる際はノックを欠かしてはならない。

九 脱出、もしくは指示の無効化を試みてはならない。

十 殺人犯が誰かを知ろうとしてはならない。その正体を明かそうとしてはならない。殺人犯の告発をしてはならない。

 

以上の事項が守られなかった場合、作業小屋の爆弾の起爆装置が作動する。その際は、全員の命が失われることを覚悟しなければならない。

この書状は、内容を書き写した上で焼却処分すること。


探偵と容疑者たち

いまさらですが、この物語の主人公は19歳の大室里英(おおむろりえ)です。

読者は彼女の心の声を読むことができますし、彼女の視点で島での出来事を目撃することになります。

里英はいたってふつうの女の子です。突然の殺人事件に心から怯えきっている様子がうかがえます。

そんな里英にとって幸いだったのは、綾川がずっとそばにいてくれたことでしょう。

ぱんだ
ぱんだ
誰?

綾川は観光開発会社の研修社員で、若い女性です。

同社の代表はリゾート開発を企画した沢村という男性であり、綾川は実質、里英への配慮として用意された人材でした。

40代、50代の同行者のなかでは里英が退屈するだろうと気を遣ってくれたわけですね。

里英は彼女にだけは心を許しているようでした。年の近い女性だから……という理由もありますが、それだけではありません。

一泊目の夜、里英は綾川と同室でした。そして、里英はなかなか寝付けず、朝まで起きていました。

つまり、小山内が殺された一泊目の夜に関して、里英は綾川のアリバイを確認しているということになります。

誰が殺人犯かわからない状況下、これほど信頼できる相手もいないでしょう。

加えて、綾川は事件を解決しようとしているようでした。

いってしまえば、この物語の探偵役は綾川です。

そんなわけで、里英はホームズのそばに控えるワトソンのように綾川を信頼し、ともに行動するようになるのでした。

以下、登場人物紹介。ほとんど全員、名字のみでの登場になっています。本格ミステリらしいですね。

【登場人物】

【日陽観光開発】沢村・綾川

【草下工務店】草下・野村

【羽瀬蔵不動産】藤原・小山内(第一の被害者)

【大室家】里英・父

【伯父の友人】矢野口


謎だらけ

一行が島に上陸した日を0日目、小山内の死体が発見された日を1日目とすると、助けを呼べるのは4日目の朝ということになります。

十戒に逆らいさえしなければ全員そろって島を脱出できる……はずだったのですが、もちろんそうはいきません。

2日目の朝、そして3日目の朝にも、里英は新たな犠牲者を目撃することになります。

殺されていたのは亡き伯父の友人だったという矢野口と、小山内と同じ不動産会社の人間だった藤原です。

犯人は【十戒】を提示したときと同じ要領で一行に死体を確認させ、さらには証拠隠滅なども指示してきました。

それらの指示書によれば、矢野口・藤原が殺された理由は犯人を見つけようとしたり、島から脱出しようとしたり、つまり十戒に逆らったためということでした。

十戒に逆らった時点で島ごと爆破されてもおかしくなかったことを踏まえると、妙な話ですが、犯人が反逆者を葬ったことで、その他全員の命が救われたとも受け取ることができます。……やっぱり変な話ですが。

ともあれ、枝内島での殺人はこの三件ですべてです。

少なくとも、犯人の目的は皆殺しではなかったようですが……それにしてもわかりません。

なにがわからないのかといえば、なにもかもです。

島にあった爆弾はなんなのか?

犯人はなぜ三人を殺したのか?

島から脱出したあとはどうするつもりなのか? 警察に逮捕されるのでは?

なかでも最大の謎は、やはり犯行動機でしょう。

九人は今回の視察のためにたまたま集まった集団です。面識があったのは同じ会社の人間や、里英の場合は父親だけで、それ以外はほとんどが初対面という状況でした。

誰が犯人だったとしても、小山内・矢野口・藤原の三人に恨みを抱いていたとも、あるいは三人を手にかけることで利益があったとも考えにくい状況です。

犯人はいったいなぜ連続殺人を起こしたのでしょうか?

被害者の共通点

連続殺人の捜査といえば、被害者の共通点を探るのが定番ですよね。

その点、われらが探偵である綾川は抜け目がありません。

彼女は亡くなった矢野口のスマホをこっそり持ち出すことで、重要な手がかりを入手していました。

ぱんだ
ぱんだ
手がかり?

はい。矢野口のスマホには小山内と連絡していた履歴が残っていました。

初対面だったはずの二人は、実は島にくる前からの知り合いだったのです。

それだけではありません。

やりとりのメールはあいまいな文章ではありましたが、ふたりが島の爆弾にかかわっているらしいことを示唆していました。

この情報を踏まえて視察の経緯をふり返ると、小山内たち羽瀬蔵不動産と矢野口は「同行させてほしい」と向こうから頼んできていました。怪しさ満点です。

三日目に同じ羽瀬蔵不動産の藤原が殺されていることを考慮すると、彼もまた爆弾犯の一味だったのだろうと考えられます。

つまり、島で殺された三人には爆弾犯という共通点があったのです。

彼らが爆弾で何をしようとしていたのか? テロリストだったのか? はっきりとしたことはわかりません。

ただ、殺された三人が悪人だったとわかったことで、里英の気持ちは少しだけ軽くなったのでした。


三日目の夜

そうこうしているうちに三日目の夜がやってきました。

夜が明ければついに島からの脱出が許されます。

三日目、犯人は一行を別荘に閉じこめると、これまでの犯行の証拠隠滅を図りました。小山内の遺体を燃やし、矢野口と藤原の遺体を海に沈め、島から去る準備は完璧です。

ひょっとすると、警察が入念に捜査しても、犯人は特定されないかもしれません。

里英の視点からすると、アリバイのある綾川、そして父親を容疑者から外すのなら、犯人は沢村・草下・野村のうちの誰かということになりますが……ここまできて犯人探しをすることもないでしょう。

【十戒】に背き、島ごと爆破されたのではたまりません。

だというのに、探偵は言います。

「私は今から、この事件の真犯人を指摘しようと思います」

ぱんだ
ぱんだ
え!?

※以下、小説より一部抜粋

…………

「え? 何?」

沢村さんは唖然とした。

みんな、顔面を蒼白にして、綾川さんを見た。何人かは、敵襲に怯えるように自分の頭を覆った。

それは、決して口にしてはならないはずのことだった。犯人を見つけようとした時、島は爆破される。それが神託である。

誰も彼も、冷静にしか見えない綾川さんの正気を疑っていた。

ことによっては、彼女を縛りつけ、口を塞ぐべきなのか? あるいはもう手遅れなのか?

瞬時の逡巡が、父や草下さん、沢村さんの顔に浮かんだ。

みんなが、何も決断しないうちに、綾川さんは言葉を継ぐ。

 

「私がやけを起こして、みんなを道連れにして死のうと思ったとか、そういう訳ではないので安心して下さい。これは、無事に島から帰るための話です。私が犯人を指摘して、その先どうするかは、全員で考えないといけないと思います。何が最善かは、私にも分からないですから。」

ただ、一つだけ、確信を持っていることがあります。

私がここで指名したとしても、犯人が、それを理由に起爆装置を作動させることは絶対にありません。話を聞けば、納得してもらえると思います」

 

犯人だとしても、絶対に起爆装置を作動させない人物? それは?

わたしは不穏な想像に震えた。綾川さんは誰を名指しするつもりなのか?

「綾川さん、その話は、絶対に今した方がいいってことなんだね? とりあえず日の出を待って、脱出してから、とかではなく?」

「はい。話すこと自体はほとんどノーリスクです。問題は、その後に何をするか、なので」

「そんなに、自信があるんだね?」

「今話すべき、ということは間違いないです」

「分かった。聞く」

沢村さんは、重大な仕事を新人部下に任せることに納得した。

他のみんなは無言のまま、綾川さんの話が進むのを待っている。

ディストピアの住人は、思っていたよりも早く、革命の時が来たことに戸惑っていた。

それでも、彼女の邪魔をするものはいなかった。『十戒』に従い、口にこそしなかったが、もちろん彼らは、犯人の正体を知りたくてたまらなかったのだ。

<すぐ下のネタバレに続く>


ネタバレ

生き残った六人のなかに「起爆装置を作動させられない犯人」がいるというのなら、それは里英の父のことであるように思われます。

なぜなら、爆破に娘を巻き込むわけにはいかないからです。

これまで味方として認識していた父が実は犯人だった。それはそれで意外性があっておもしろい真相になる気がしますが……犯人は父ではありません。

綾川は言います。

「この島で起こった、あまりにも異常な事件の犯人は、藤原さんです」

ぱんだ
ぱんだ
なんと!

藤原は第三の殺人の被害者だったはずの人物ですね。

当然、いま、生き残りの六人の中にはいません。その遺体は三日目に証拠隠滅され、海に捨てられたものと思われていましたが……。

「あの藤原君は、死んでなかったのか」

つまりはそういうことです。藤原が生きているのだとすると、いくつもの疑問が氷解します。

たとえば、「犯人は島から脱出したあとどうするつもりなのか?」という疑問。

藤原は死んだことになっているので警察から疑われることがありません。警察は生き残った六人のうちに殺人犯がいるという前提に囚われ、永遠に真相にたどり着けないという寸法です。

ぱんだ
ぱんだ
その手があったか

一応補足しておくと、藤原の手口は巧妙でした。

三日目の朝、藤原の遺体発見時。一行は【指示書】によって遺体の検分を禁じられていた一方で、少し離れた場所から遺体がバラバラに切断されていることを確認しています。

脚が胴から切り離されている遺体を見て、まさか生きているとは思いません。

しかし、彼らが見た「切断された脚」は、実のところ第二の殺人の被害者である矢野口のものだったのです。

二日目。犯人は一行に矢野口の遺体をブルーシートで包んで縛るよう指示していたのですが、その際、わざわざ解きやすい縛り方にするよう注文を付けていました。

作中ではその不可解さが「小さな謎」になっていたのですが、なんのこともありません。藤原が自身のバラバラ遺体を演出するための道具として再利用するための手順だったというわけです。

ぱんだ
ぱんだ
なるほどね

では、藤原はなぜ二人を殺したのでしょうか?

綾川の推理によれば、藤原は小山内・矢野口と同じ爆弾犯の一味だったはずです。そんな彼が仲間を殺した理由とは……?

藤原の立場になって事件をふり返ってみましょう。

彼らは枝内島で密かに爆弾を製造していました。しかし、島の所有者である伯父の死亡により急きょリゾート開発計画が立ち上がり、視察が行われることになりました。

島の爆弾が露見しては非常にマズいことになります。彼らはどうにか爆弾を隠ぺいしようと画策し、視察に同行することにしました。しかし、もろもろあって隠ぺいは失敗。視察団は爆弾を発見してしまいます。

爆弾犯たちにとって幸いだったのは、一行が即座に通報しなかったことです。亡き伯父が爆弾に関わっていたとなれば厄介なことになる、という父の思惑が絡んだ結果でしたが、ともかく好機でした。

今度こそ通報されるであろう翌日を待たず、藤原・矢野口・小山内の三人は夜のうちに島から逃げ出すことにしました。

いざというときの隠れ場所については小山内が確保していたようです。その事実は矢野口と小山内のメールのやり取りから読み取ることができます。

だから、そう、0日目の夜、爆弾犯たちの身に起きた真実はこういうことだったはずです。

「おそらく、小山内さんの死は事故だったんでしょう」

※以下、小説より一部抜粋

…………

「は?」

何を言い出すのだろう? 思わず声を上げてしまった。

綾川さんはそれきりわたしが絶句しているのを確かめてから、先を続けた。

「この島は周囲が崖ばっかりで、非常に危険です。(中略)三日前の夜、私たちが寝静まるのを待って、島を逃げようとした三人は、作業小屋からゴムボートを持ち出して、桟橋に向かったでしょう。

その時は、島の外周の道を通らないといけないですよね。北側は、雑草が茂って通れなくなってましたから。月明りだけで暗いですし、なるべく目立たないように、と考えると、スマホの明かりを点けるのも避けたんじゃないかと思います。

だとすると、小山内さんが、うっかり足を踏み外して、崖の下に落ちてしまうってことも、十分考えられますよね」

「――なるほど」

沢村さんが呟く。

みんなは静かに、綾川さんが語ったことの蓋然性を吟味する。

「そうだとしたら、その後の藤原さんの行動に説明がつきます。

三人は、もう手配されることは避けられないと考えて、その前にどこかへ隠れようとしていた訳ですけど、スマホに残ったやりとりを見る限り、隠れ場所は、小山内さんが手配していたらしいですよね。

だから、小山内さんが死んでしまって、藤原さんと矢野口さんは途方に暮れたはずです。逃げたところで、どこへ行けばいいのか分からなくなってしまいましたから。

そして藤原さんは、この窮地から脱する方法を考え出します。それは、矢野口さんを犠牲にして、自分一人だけが助かる方法でした」

次第に、綾川さんの話の道筋が見えてきた。

「――藤原さんは、矢野口さんに、指示書きを使って私たちを脅し、島に閉じこめることを提案します。

どうすればいいか分からない状況ですから、とりあえず時間を稼ぐため、ということですね。矢野口さんも納得したでしょう。藤原さんの提案ではなく、二人で相談した上で思いついたことかもしれませんね。

そして、崖の上から、小山内さんの死体をクロスボウで射ることにします。

私たちを足止めするには、殺人事件が必要です。殺人犯なら、バレた時何をするかわからないと思われる分、脅しが利きますからね。だから、死体をあえて他殺に見える状態にしたんですね。

ちなみに私、さっきから小山内さんの死を事故扱いしてますけど、それが一番自然だろうと思ってるだけで、証拠はないです。揉めごとが起こって、藤原さんか矢野口さんのどっちかが殺してしまったっていう可能性もあります。そんな大事な時に、喧嘩なんかしない気もするんですけど。とにかく、はっきり殺人だって分かるようにはしておきたかったんでしょう。

二人は、脩造さん(伯父)の部屋からこっそり持ち出してきたクロスボウで死体を狙撃します。そして、玄関ポーチに『十戒』を残して、朝が来て、誰かがそれを見つけるのを待っていた訳です。

矢野口さんは、そうやって私たちの行動を制限しておいて、その間にどこに逃げるか考えよう、というつもりでいたんでしょう。

でも、藤原さんは全く違うことを考えていました。矢野口さんを殺害し、さらには自分も殺されたように見せかけてしまおう、という計画を立てていたんですね」


最後の選択

綾川が名指しした犯人は死んだはずの藤原でした。

当然、藤原はいまこの場にいません。一行が十戒に逆らって犯人を推理したところで、藤原には伝わらず、だから島も爆破されないということになります。

そのうえで、綾川は問います。

いますぐ島を脱出するべきか? それとも夜明けを待って助けを呼ぶべきか?

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと?

もっともわかりやすい選択は、最後まで十戒を順守して4日目の朝に島を脱出することです。

十戒を信じるのなら、これが最も安全な方法ということになります。

しかし、犯人は本当に十戒の約束を守ってくれるのでしょうか?

綾川は言います。

「藤原さんが気まぐれを起こして起爆装置を作動させる可能性は、ゼロではありません」

起爆装置のスマホはいまだ犯人の手の中にあります。

藤原はとっくに島から離れているはずで、だとすれば一行が刻限を待たずに島から脱出したところで犯人には気づかれないはずです。

0%ではない爆破のリスクを考えるのなら、一行は一刻も早く迎えの船を呼ぶべきでしょう。

ただし、この理屈には落とし穴があります。

もしも、藤原がまだ島に残っていたとしたら?

綾川は言います。

「藤原さんの立場からすると、出来ることなら、暗くなってから島を脱出したいと考えた可能性もあります。それなら、私たちが寝静まるのを待っているかもしれません。夜が更けてから、こっそりと島を出ていこうとしているのかもしれません」

藤原がいまだ島に潜伏しているのだとすれば、いま助けを呼ぶのは最大の悪手です。

たった数時間の差で十戒を破り、島ごと爆破されたのでは、後悔してもしきれません。

いますぐ島を脱出するべきか? それとも夜明けを待って助けを呼ぶべきか?

六人が選択したのは後者でした。


結末

翌朝、六人は無事に島から脱出します。

これにて物語は幕引き……になるはずもありません。

むしろここからがこの物語の真骨頂。どんでん返しのはじまりです。

枝内島から遠ざかっていく船の甲板の上。他の生存者たちから離れて、綾川と里英の二人が話をしています。

…………

「里英ちゃん、お疲れ様。大変だったよね」

「――綾川さんほどじゃないですけど」

「うん。まあね」

犯人は笑った。

…………

ぱんだ
ぱんだ
犯人!?

そう、事件の真犯人は綾川です。

綾川は小山内・矢野口・藤原の三人を殺害しました。そして偽装工作と巧みな論理によって罪を藤原になすりつけました。

生き残った面々は綾川の立てた筋道にあっさりと納得してしまいました。だから、綾川が犯人だと知っているのは里英だけです。

ぱんだ
ぱんだ
なんで?

里英は最初から犯人が綾川だと知っていました。

“崖の下の小山内さんの死体を見た瞬間に犯人が分かったわたしは、一体どうすれば良かったのか?”

なぜ里英は真犯人がわかったのか?

答えは簡単です。

そもそも、綾川にはアリバイがあったはずですね。一泊目の夜、同室だった里英が無実を保証していました。

それが嘘、というか正反対だったのです。

一泊目の夜、綾川がこっそり寝室から出ていったことに里英は気づいていました。そして、綾川がクロスボウを持って歩いている姿も窓から目撃していました。

だから、

“彼女と同じ部屋で過ごしたわたしだけはずっと、綾川さんが小山内さんを殺したと分かっていた”

この事実を踏まえて物語をふり返ると、印象がガラリと変わります。

三日間、綾川と里英は行動をともにしていました。

綾川は里英を支えていたようで、その実は「真犯人に気づいているのか?」「気づいていたとして告発するつもりがあるのか?」と探っていた、あるいは妙な真似をしないよう監視・脅迫していたわけです。

一方、里英がずっと怯えていた理由は……。

ぱんだ
ぱんだ
(ゾッ)

里英は綾川のアリバイを主張し、真犯人を庇う選択をしました。十戒を順守しました。

「だって――、そうするしかないじゃないですか。犯人を明らかにしたら、みんな爆弾で殺すっていうんだから――」

ひとりで秘密を抱え続ける日々はどれだけ辛かったことでしょう。船の甲板の上、里英は涙をこぼします。

綾川はそんな里英を優しく抱きしめて、言いました。

「私も、すごく迷ったんだよね。事情をどこまで話していいか分からなかった。里英ちゃんが、私が犯人だってことを全部分かった上でかばってくれてるのか、確信はなかったし。それにさ、事情を話すにしたって、あの小山内さんを殺した後で、『まだこれから二人殺す予定だけど、里英ちゃんは大人しく見ててね』っていう風には言えなかったんだよね。里英ちゃんがパニックを起こしちゃっても困るから」

――事情。残された謎はそこです。結局、綾川はなぜ三人を殺したのでしょうか?

私怨のためでも、利益のためでもありません。

彼女の犯行は、限りなく正当防衛に近いものでした。

ぱんだ
ぱんだ
どゆこと?

第一に、三人は本当に爆弾犯でした。

そして、一泊目の夜中に彼らがこっそり島から脱出しようとしていたことも、また事実です。

ただし、爆弾犯たちは脱出後に島を爆破しようとしていました。

「じゃあ、あの三人は、わたしたちを――?」「うん。ボートで安全なところまで漕ぎ出して、私たちごと証拠を隠滅しようとしてたんだ」

綾川が彼らの企みに気づいたのは偶然です。

状況は差し迫っていました。別荘を出ていく三人を怪しんで後をつけた綾川が、彼らの計画を耳にしたのは島の中央に位置する作業小屋付近でのことです。

綾川は言います。

…………

「出ていって止めようとしても、相手は三人だし、別荘に戻って助けを呼ぶ時間があるかは分かんなかったし。それにさ、向こうは爆弾がある訳だから、それを使って脅されたら、こっちは何にも出来なくなっちゃうんだよね。

せっかく気づかれてないんだから、不意打ちをして、起爆装置を奪うのが一番いいと思った。そしたら、藤原さんと矢野口さんが、桟橋にゴムボートを運んでいったんだ。

起爆装置をセットするのは、小山内さんが一人でやることにしたみたいだった。小山内さんから起爆装置と鍵を奪うチャンスが出来たんだ」

…………

そうして、綾川は護身用に持ち出してきていたクロスボウで小山内を殺します。

起爆装置のスマホはもちろん、爆弾が保管されている作業小屋やバンガローの鍵を奪われた以上、残された爆弾犯たちは脱出計画を中止せざるを得ませんでした。

そもそも、物理的に脱出不可能になったという事情もあります。

「――矢野口さんと藤原さんの二人は、桟橋でゴムボートに空気を入れて、逃げる準備をしてたんだ。でも、小山内さんが全然来ないから、探しに来てさ。私、その間に急いでゴムボートを桟橋の近くのバンガローに隠して、鍵を掛けちゃった」

こうして藤原・矢野口の両名は仕方なく別荘に戻り――翌朝、《十戒》によって小山内の死を知ることになったのでした。

※夜のうちは崖下に落とされた小山内の死体に気づけなかったため

ぱんだ
ぱんだ
そうだったんだ

三人の後をつける際にクロスボウを準備していた慎重さといい、小山内を撃った勇気といい、ゴムボートを隠した機転といい、綾川の尋常ならざる有能さには舌を巻くばかりです。

そんな綾川だからこそ、自分が置かれた状況も冷静に見極めることができました。

法的には正当防衛が成立しないであろう、という最悪の現実が彼女にはしっかりと見えていたのです。

「正当防衛、っていうのあるでしょ? あれってさ、自分が攻撃されてからじゃないと認められないんだって。(中略)あの三人に、私たちを殺す意思があったかどうかも証明出来るか分かんないし。やっぱ私、殺人犯ってことになっちゃうよね」

綾川は罪を逃れるため、偽の真相をでっちあげることにしました。

十戒も、殺人事件も、すべてはそのためです。

視察団を島に閉じ込め、爆弾犯全員を殺し、その罪を藤原に着せる――そんな綱渡りの殺人をする他、彼女には選択肢がありませんでした。

第二の事件、第三の事件――真犯人はそのときどきの思惑を里英に語って聞かせます。

そうして明らかになったすべての真相は、しかし、決して世に出ることはありません。

“わたしはこの事件の真相を、生涯、誰にも話すことはないだろう。(中略)わたしの人生は、この秘密と併走していく。(中略)わたしは綾川さんが好きだった”

綾川が無防備に真相を語ってみせたのは、もちろん里英が秘密を守るだろうと判断していたからです。

一生を懸けて守る約束――戒律はしっかりと里英の心に刻まれています。

「里英ちゃんはきっと秘密にしてくれるだろうって。ね?」

嗚咽を堪えて里英が頷くと、綾川はにっこりと笑いました。

そして……、

※以下、小説より一部抜粋

…………

綾川さんは、ポケットからスマホを取り出した。

彼女のものではなかった。起爆装置だった。

おもむろに、綾川さんは切り出した。

「里英ちゃんさ、もし私が島を爆破しちゃったら怒る? 多分大丈夫だと思うんだけど、念を入れておきたいんだよね。もしかして、地下室に私の髪の毛が落っこちてたりとかするかもしれないし」

返事を予期した質問だった。

嫌とは言えない。わたしの心境は、もはや共犯者に近い。もしかしたら、伯父が爆弾に関わっていたかもしれない、とも言われている。彼女と同じように、わたしも一切の事件の痕跡が消失してしまうことを願っていた。

「――大丈夫です」

「そっか。ありがとう」

綾川さんは、スマートロックの管理アプリを開き、躊躇なく、解錠のボタンをタップした。

あまりにも当然至極の手際だったので、一瞬、その意味を理解するのが遅れた。

慌てて、船尾の方を振り返った、その時。

すでにはるか小さくなっていた島影から、相次ぐ爆音と共に、島よりはるかに大きい黒煙が立ち上った。

海が割れた。

モーセの逸話を思い出さずにはいられなかった。爆発によって生じた波は船まで伝わり、大きく揺れた。

その揺れに乗じて、綾川さんが起爆装置を海に投げ捨てるのを、わたしは見逃さなかった。

もはや、真犯人を示す物的証拠は、何もない。

 

足音がした。

爆音に驚いたみんなが、船室から甲板に駆けてきたのだ。

「うわっ! 藤原、本当にやったのか!」

草下さんが叫ぶ。

「助かった! 助かりましたよ、本当に! 危なかった!」

沢村さんは海上に大声を轟かせ、そして笑い続けていた。自分たちが無事なのがおかしくて仕方がない、とでもいうようだった。

父は、綾川さんと、涙の跡の明らかなわたしに目を向ける。

「あ――、また娘の面倒を見てもらってたみたいで。申し訳ないです」

綾川さんは笑顔をつくる。

「いえ、全然。里英ちゃん、ずっと犯人が分からないままで本当に怖かったと思うんですけど、やっと島から離れて、我慢してた涙が出たみたいで――」

嘘だ! 全部嘘だ!

心の中でそう叫んだ。


衝撃のラスト

小説も残すところ1ページ。

最後に綾川さんについての(ちょっと不穏な)情報が明らかになるのですか、一見するとただのエピローグであるように思われます。

しかし、読む人が読むと、このエピローグにはとんでもない事実が含まれていることがわかる仕掛けになっていて……。

百聞は一見に如かず。それでは爆弾級のラストページをご覧ください。

※以下、小説より一部抜粋

…………

船が港に着くまでの間、綾川さんの身の上話を聞いた。

意外だったのは、書類上の彼女が結婚していることだった。綾川というのは旧姓で、新しく始めた観光開発会社の仕事では、そちらを名乗ることにしているのだという。

夫は行方不明らしい。不穏な話だけれども、彼女はまるで気にかけていないようだった。

「言ったっけ? 私、勝手に人を好きになって、期待して、それでがっかりすることが多いんだよね。でもね、里英ちゃんには本当に会えて良かったな」

過去に好きになって、期待して、がっかりした人というのが誰なのだか、その人がどうなったのか、彼女は言わなかった。

 

事情聴取だとかの厄介ごとが済んで、新幹線でようやく東京に戻った。

道中、わたしが綾川さんと連絡先を交換するのを見て、父は娘に友達が増えたのを素直に喜んでいた。

彼女とお別れしたのは、品川駅である。

雑踏の中。綾川さんは立ち止まると、わたしの眼を見つめた。

「――じゃあ、さよなら」

それは言い慣れた様子の、あまりにそっけない挨拶だった。

<おわり>

 

解説

結論からいえば、綾川の正体は前作『方舟』の登場人物である麻衣です。

『方舟』での名前は絲山麻衣でしたが、「綾川」は旧姓だということで矛盾しません。

彼女の夫である隆平は『方舟』で亡くなっています。

また、彼女が好きになって、期待して、がっかりした人というのは『方舟』の主人公である柊一のことですね。

なにより『方舟』のラストで読者の背筋を凍らせたあの一言。

――じゃあ、さよなら

間違いありません。綾川は麻衣です。そう考えると、綾川がいやに冷静に事態に対処できていた理由にも説明がつきます。

彼女には修羅場をくぐり抜けた実績があります。その経験が彼女にクロスボウを持たせ、複雑な計画を完遂せしめたのでしょう。

この事実を踏まえて『十戒』を振り返ると、登場人物の名前が名字のみだった理由にも納得がいきます。本格ミステリらしさの演出を装いつつ、その実は「綾川=麻衣」の事実を隠すための仕掛けだったわけですね。

綾川は麻衣だった。『方舟』の顛末を知っていると、死角から特大の衝撃を受ける。そんなラスト1ページでした。

方舟
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ぱんだ
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感想

正直に言います。わたしは綾川の正体に戦慄させられた最後のページを読むまで、この物語にもの足りなさを感じていました。

「十戒という特殊な状況設定は新鮮で、論理構築も目を瞠るほど素晴らしいのに、なぜこんなに心がときめかなかったのだろう?」わたしは自問自答しました。

以下、わたしが『十戒』に抱いた五つの不満点を並べます。

 

1.綾川は最初から怪しかった

あやしいと思っていた人物が真犯人だった。ミステリにおいて、これほどがっかりすることはありません。

そもそも、若い女性という以上になんの肩書きもないはずの綾川が、優秀な探偵役として振るまっていること自体が不自然です。

「里英がアリバイを保証している」という理屈で守られてはいましたが、それでもなお綾川は疑わしい登場人物という印象でした。

 

2.里英が情報を隠していた

個人的な好みの話になりますが、わたしは探偵が犯人だったパターンはわりと好きです。

一方で、主人公が読者に情報を隠していた、という展開はいただけません。

読者は主人公が得たすべての情報をもとに推理を進めるものだと思っています。その前提をひっくり返された今回のどんでん返しには、感嘆するというより先にフェアではないという不満が浮かんできました。

※もちろんそれすらも推理してみせろ、という話なのでしょうが……

 

3.どんでん返しが透けすぎている

探偵がみんなを集めて真相を語る場面。これこそミステリの華です。そして、そこで語られた真相がもっともらしいほど、最後のどんでん返しが輝くというものです。

その点、『十戒』で語られた表面上の真相、すなわち藤原犯人説はどうでしょう。証拠もなければ、推論の積み重ねの上に成り立っていて、つまり説得力に欠けていました。

「~だと考えられる」「~のはずだ」そんな言葉で語られる真相が、本当の真相であるわけがありません。

いかにも「前座としての真相」然としていて、しらけてしまいました。

 

4.犯行動機

結局のところ、真犯人である綾川の犯行動機は保身(≒正当防衛)でした。

わたしは探偵の推理と同じくらい、犯行動機もまた物語の大きな魅力だと思っています。

その点、本当に個人的な好みの問題なのですが、身を守るための殺人という動機には惹かれませんでした。

 

5.で、爆弾はなんなの?

爆弾犯たちは爆弾でなにをしようとしていたのでしょうか? 伯父は爆弾犯の協力者だったのでしょうか?

爆弾まわりの謎が謎のまま終わってしまって、もやもやしました。

 

以上が、わたしが『十戒』にもの足りなさを感じた理由です。

こうも不満を並べたのでは未読の方に「つまらなかったのか」と誤解されてしまいそうですが、そうではありません。

以上はあくまで「綾川=麻衣」を知る前の感想です。

最後のピースがはまることによって、物語は大きくその姿を変えます。

たとえば、爆弾犯たちは『方舟』の地下建築を改造した新興宗教の一派ではないだろうか、と想像できたりします。『方舟』での麻衣のふるまいを踏まえると、自分が助かるため、という犯行動機にもゾッとしました。

だから、総合的には『十戒』に満足しています。

ただし、同時に「ズルいなあ」とも思っています。

真相が語られ、どんでん返しが終わり、さらに特大の驚きがあるというポジティブな意味での「ズルい」がひとつ。

一方で、前作ありきのおもしろさというのはどうなの? というネガティブな意味での「ズルい」もひとつ。

……と、ここまで書いておいてなんですが、『十戒』にこんなにもやもやしてるのってわたしだけでしょうか?

もしあなたが『十戒』をすでに読んでいるのなら、ぜひ感想を教えてください。「おもしろかった」だけでもいいです。記事の下の方にコメントであきるところがあるので、そこに書き込んでくださるとうれしいです。

ぱんだ
ぱんだ
コメント待ってるよ!


まとめ

今回は夕木春央『十戒』のあらすじネタバレ(と感想)をお届けしました。

島、館、連続殺人。本格ミステリのド定番を土台としながら、《十戒》というスパイスを効かせた本作は、旧さと新しさが融合した新境地のミステリだったように思います。

前作とのつながりが発覚する衝撃のラストもさることながら、この作品の魅力として強調しておきたいのはロジックの巧みさです。

記事中では冗長になるのを避けるため第二、第三の事件の詳細についてはまるっと割愛しているのですが、ミステリ好きのあなたには叶うことならぜひ読んでいただきたい!

たとえば第三の事件で犯人は日中に堂々と証拠隠滅をしています。

このとき犯人は他の生存者たちに館の自室に閉じこもるよう指示していたのですが、ただ「部屋から出るな」と命じたところで信用はできませんよね。

そこで犯人は生存者たちが絶対に部屋から出られないような状況をつくりだし、同時に自分もまた館にいた一人だと偽装できる手順を生存者たちに踏ませたのですが……いやぁ、惚れ惚れするほど見事なやり方でした。

《十戒》という特殊な制約が十二分に活かされていて、「なるほど、そうきたか!」と思わせてくれる一冊でした。

 

ぱんだ
ぱんだ
またね!


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