有川浩さんの恋愛小説「植物図鑑」
ヒロインが恋する謎のイケメン同居人は「植物オタク」で、休日になると2人は近場で野草や山菜を採って料理したりしつつ距離を縮めていきます。
ただ、穏やかな日々はいつまでも続くわけじゃなくて……?
今回は小説「植物図鑑」のネタバレをお届けします!
あらすじ
主人公・河野さやかは20代後半のOL。
ある日、呑み会帰りのさやかは自宅マンションの前で行き倒れている男と遭遇する。
(あ、けっこうイケメンだ)
男は運悪く金も尽き体力も尽き、限界状態だという。
「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか。咬みません。躾のできたよい子です」
酔っていたさやかは、その言い方がツボに入って自宅に泊めてあげることに決めた。
妙齢の女子としては無防備すぎるような気がしたが、これこそ「魔が差した」というやつだろう。
翌朝。さやかが目を覚ますと男はもう起きていて、ありもので朝食をつくっていた。
――おいしい。
コンビニ弁当ばかりの生活を送っていたさやかにとって、久しぶりのまともな食事だった。
だからだろうか。
お礼を言って出ていこうとした男に「ここにいない?」なんて提案してしまったのは。
男は困惑していたが、結局さやかに押し切られて「料理人兼ハウスキーパー」として居座ることに。
さやかが名前を聞くと、男は笑いながら言った「樹(イツキ)。名字はキライだから言わない」
こうして、料理上手でどこか秘密のありそうなイケメン・樹との共同生活が始まった。
ネタバレ
散歩デート
樹の家事能力は完璧で、深夜にコンビニバイトとして働きつつ朝・夜の食事に加えて弁当までさやかに持たせるほど。
しかも「若い男女が同居」しているにも関わらず、樹は常に紳士的で(たまに意地悪だけど)、さやかを異性として見ていないかのようだった。
しかし、それがさやかには少し不満でもある。
正直に白状すれば、さやかの方は早い段階から樹を意識するようになっていたからだ。
しかも、樹の方はナチュラルに「かわいい」とか「肌白い」とか言ってくるものだから憎たらしい。
ある休日、樹はさやかを散歩に誘った。
「疲れる~」と渋るさやかに、樹は「ちょっと楽しくてお得なことがあるかもしれない」と巧みに誘惑する。
惚れた弱みか、そう言われると弱い。
この日から、さやかと樹は休日のたびに「散歩デート」をするようになる。
山菜採りと山菜料理
散歩での収穫物は「山菜」だった。
樹はビックリするぐらいに植物についての知識を持っていて、趣味だと言うカメラで草花の姿を写真に撮りつつ、さやかを目的のポイントに案内した。
早春の河川敷で2人が最初に収穫した山菜はフキノトウ、フキ、そしてツクシ。
自然に生えている野草に最初はちょっと抵抗したさやかだったが、結局はなんだかんだ夢中になって山菜取りに熱中した。
その日の夜。
樹が採ってきた山菜で作ったメニューは、フキノトウとツクシの天ぷら、フキの混ぜご飯、フキノトウの味噌漬け、ばっけ味噌、ツクシの佃煮、フキの煮物とみそ汁と多彩だった。
どれも素材の味を活かした薄味で、どれを食べてもさやかは「おいしい!」と唸る。
ただ、さやかがリクエストしたフキノトウの天ぷらだけは苦すぎて口に合わない。
事前に「1人1個はノルマ」と樹に言われていたさやかは、嫌なものはすぐに片づける性分だ。
水を用意してフキノトウの天ぷらを一気食いしたさやかを見て、樹は目を丸くする。
「いや、半分まで食べたらギブアップしていいよって言おうと思ってたんだけど…」
「早く言ってよーー!」
それからしばらく、さやかのお弁当には作りおきした山菜料理が詰められるようになる。
もどかしい関係
それから2人は春先から初夏にかけて、山菜取りに出かけるようになった。
ノビル、タンポポ、ワラビ、イタドリ、ユキノシタ、クレソン、ノイチゴ、アップルミント、ヨモギ、etc…。
樹は毎回旬の山菜についてさやかにレクチャーし、収穫した山菜を料理した。
どの山菜も家で樹が料理すると、そこらへんで自生していたとは思えないほどおいしいメニューに変身したからビックリ!
いつのまにか、さやかの味覚は樹が教えてくれた薄味のおいしさに慣れていった。
「雑草と言う名の草はない。すべての草には名前がある」という昭和天皇の言葉は、2人がうっかり「雑草」と口走ってしまったときに上げ足をとる決まり文句になっていた。
樹の趣味に合わせるように、さやかは隠れて植物図鑑を購入。
寝る前に読むのが習慣になっていた。
しかし植物には詳しくなっても、さやかは樹の素性についてはまだ全然知らないままだ。
キライだという苗字も、どうしてそんなに植物に詳しいのかも、どうして行き倒れるような貧乏旅行をしているのかも、さやかのことをどう思っているのかも…何も知らないまま。
でも、聞いてしまうと今の関係が壊れてしまうかもしれない。
もどかしい関係だった。
ケンカ
転機は突然訪れた。
川辺の山菜を採ろうとしたさやかが足を川に落としてしまい、樹がハンカチを差し出した時。
ちょっと前に樹は「ハンカチを持っていない」と言っていた。差し出されたハンカチは倹約家の樹らしからぬブランドものだ。
「…ハンカチ、買ったの?」
樹は嘘はつかない性格だ。
「バイト先で貧乏だと哀れまれてもらった」
(…男の子に?女の子に?)
恋人同士ではないけれど、さやかの胸がちくりと痛んだ。
そして、さやかは出来心から樹のバイト先を見に行ってしまう。
派手な女子大生風の店員がバイト仲間に話しかける声が聞こえる。
「クサカベくんさー、ハンカチちゃんと使ってくれてるー?」
その時、樹がさやかの存在に気付く。
「帰る」と口の形だけで言って店を飛び出したさやかを、樹が追ってきた。
さやかは嫉妬から「女の子にもらってよかったね!」と言い、樹は「女の子が深夜に外に出るなんて!」と言う。
「そんな話ならしてる暇ない。10分しかもらってないんだ」
樹はさやかに強引に自転車を渡し、コンビニに戻っていく。
「何よぅ…イツキのバカ――…!」
翌朝、樹が戻ってくるより先にさやかは仕事に出かけた。仲直りはしていないままだ。
変わる関係
樹と顔を合わせづらいさやかは、久しぶりに職場の飲み会に参加することにした。
久しぶりに訪れた馴染みの居酒屋の料理は、味が濃すぎてさやかには合わなくなっていた。
(樹の料理が食べたい…)
一次会が終わり、さやかが家に戻ろうとすると、同僚の竹沢が「送るよ!」とついてくる。
携帯に「竹沢は酔うと送り狼になるから気を付けて!」というメールが届く。
(遅いよ…)
何度断っても竹沢を強引についてきて、ついにさやかの最寄駅に到着した。
「何やってんの、さやか」
帰る時間は知らせてなかったのに、樹がそこにいた。
「…河野さんの知り合いです。彼女は俺が家まで送りますから」
長身の樹がすごむと、気圧されたように竹沢は帰って行った。
帰り道、樹の機嫌は悪かった。
また口論になり、さやかはつい口を滑らせる。
「あたしには嫉妬する筋合いがあるよ! イツキのこと好きだもん」
まくしたてたさやかは、我に返って言う。
「酔ってるから明日にになったら忘れて。でも、分かんない。イツキはただの同居人なのになんでそんなに怒るの?」
「あのなあ!」
樹が怒鳴った。
「好きになった子に手ぇ出さない条件で同居って、男の俺には生殺しだって言ってんの!」
――「…手、出してよ」
「引き金。もう止まんないぞ」
足早にさやかの腕を引っ張って家に帰った樹は、さやかをベッドに押し倒した。
イツキの扱いは前の男よりずっとやさしくて、ずっと巧かった。
この日を境に樹とさやかの関係は変わる。
樹はスキを見ては触れてきたり、キスしてきたりするようになった。
突然の別れ
ラブラブの生活が続き、夏にはさやかの誕生日を2人で祝った。
しかし、別れはやっぱり突然訪れる。
ある秋の日、さやかが家に帰ると樹の気配が消えていた。
机には一筆箋で一言。
「ごめん。またいつか」
さやかには樹の未練がわかる。
いつまでも一緒にいたかったのに…そんなことを思いながらさやかはただただ号泣した…。
巡る季節
イツキと過ごした半年のことを、さやかは何度も思い出す。
あれから樹のいない冬が来て、春が来て、夏が来て…。
春先から夏にかけては、さやか一人で山菜取りに出かけた。
樹との思い出を胸に収穫した山菜を、樹が残してくれたレシピをもとに料理する。
まだまだ上手にはつくれない…イツキのようには。
ある日、書留が届いた。
筆跡は樹のもの。
中には合鍵と一筆箋。
「ごめん。待たなくていいです」
樹は嘘が上手くない。
さんざん泣いた後、さやかは開き直って待ち続けることに決めた。
(ホントは待っていてほしいんでしょう?)
また秋が来て、冬が来て、年が明けた。
ちょうどイツキと出会った時のような寒い夜、さやかは樹から送られてきた植物図鑑にイツキへの手がかりを見つける。
――掴まった!
植物図鑑が入っていたポストの前でそう確信したさやかは、早足で部屋に戻る。
すると。
「もう新しい犬、拾っちゃった?」
玄関のドアの前に。
「拾うわけないでしょ、バカッ!」
イツキがいた。
結末
何度も謝った後、イツキはこれまでのことを説明してくれた。
自分は日下部樹で、有名な生け花の家の長男であること。
後継ぎが嫌で、逃げ出して旅をしていたこと。
実家の相続権を全て捨てて帰ってきたこと。
近所の大学で働くことになったこと。
誕生日が近いこと。
さやかが「プレゼントは何が良い?」と聞くと、樹が応える。
「金はかかんないけど、すごく大それたものが欲しい」
「一緒に生きていきたい。」
さやかは思う。
暮らしが楽でなくてもいい。一生一緒にいたいと思って泣いたあの夜を思えば。
「書類一枚で済むなんて安いプレゼントだね」
エピローグ
入籍してからも、さやかは時折不安になってイツキにメールや電話をしてしまう。
「お願い。いなくならないで」
そんなとき、樹はいつも優しい声で応えてくれる。
…将来、子どもが出来て3人で山菜を採りに行ったりするのかな。
そんな日はくるかもしれないし、こないかもしれない。
どちらにしても、きっと幸せに暮らしていける。
台所から、樹が料理する音が聞こえてきた。
<完>
まとめ
有川浩さんの恋愛小説「植物図鑑」のネタバレをお届けしました!
映画のキャッチコピー「甘くて、苦くて、もう一度甘い。」
2人の関係にハラハラさせられたものの、ラストはハッピーエンドでよかったです。
映画『植物図鑑』の配信は?
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※配信情報は2020年6月時点のものです。最新の配信状況は各サイトにてご確認ください。
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