「いったい誰が犯人なのか?」だけに留まらない、人間(の主に負の面)を深く丁寧に描く作風は吉田修一さんの真骨頂!
今回は映画化もされた小説「怒り」のネタバレをお届けします!
並行して進む3人の容疑者の物語…犯人は果たして誰なのか?
そして、それぞれが迎える結末とは!?
あらすじ
物語の始まりは1年前に発生し、いまだ未解決状態の尾木夫妻惨殺事件。
犯人は「山神一也」という人物だと判明していますが、整形して逃亡中です。
小説「怒り」では、「もしかして山神では?」と疑わしい人物が3名登場します。
- 前歴不明の男「田代哲也」
- 無人島にこもる男「田中信吾」
- 住所不定の男「大西直人」
この3人は別々の場所にいて、それぞれ人間関係を築いていきます。
しかし明らかに怪しい素性ゆえに、周囲の人間は「信じられるのか?」と葛藤していくことに…。
果たして「山神」の正体は誰なのか?
信じたい人から疑惑の目を向けられてしまった人物が迎える結末とは?
原作小説では「田中」「田代」「直人」、そして事件を追う刑事「北見」の物語が並行して進んでいきます。
初めは3人ともそれぞれの場所で比較的平和に過ごしていますが、「警察がテレビで山神事件の公開捜査をする」などの要因によって状況はどんどん悪い方へ…。
ネタバレの前にネタバレしてしまうと、結末はハッピーエンドではありません。
むしろ真逆です。
それでは、いよいよ原作小説のネタバレに移っていきたいと思います。
ネタバレ
田代①
舞台は千葉県外房の港町。
漁師の槇洋平は町にふらりと現れた前歴不明の男「田代」の仕事を世話してやることに。
やがて田代は、洋平の娘・愛子と恋に落ちた。
父親である洋平は田代と愛子の交際を危惧する。
そんな中、警察が山神事件の公開捜査をテレビで行った。
洋平・愛子は「田代の正体が山神なのでは?」と疑念を抱き、ついには告発しようとしたが田代はすでに姿を消していた。
直人①
舞台は東京都内。
広告代理店に勤める藤田優馬は、サウナで住所不定の男「直人」に出会う。
ゲイであることを公言している優馬は直人に興味を持ち、家に住まわせることにした。
ゲイとしての人生を楽しんでいた優馬だったが、心のどこかではパートナーを渇望してやまない気持ちもある。
優馬は同じくゲイだった直人と愛を育んでいくが、直人はふっと優馬の前から姿を消した。
警察が山神事件の公開捜査をしている。
「直人は山神だったのでは?」
「自分は直人を愛していたが、直人は自分を利用していただけだったのでは?」
優馬は喪失感とともに疑念を抱く。
田中①
舞台は沖縄の離島。
母親の奔放な男性遍歴のせいで引っ越してきた小宮山泉は、無人島で暮らす謎の男「田中」と出会う。
夜逃げのように越してきた泉だったが、田中や民宿の息子・辰哉との出会いで少しずつ元気を取り戻していく。
しかし、そんな泉が米兵に暴行されかけるという事件が起きる。
何者かの叫び声によって暴行は未遂で済んだが、泉は心に深い傷を負う。
辰哉はそんな泉を守ろうと決意。
泉を助けた叫び声の主だと告げた田中は、辰哉の民宿でバイトすることになった。
※注意!ここからはいよいよ、事件の犯人が発覚!それぞれの物語もさらに動いていきます!ネタバレの覚悟はいいですか?
田中②
泉を救った田中を信頼している辰哉は、ある時田中の落書きを発見する。
そこには泉の暴行事件に関する下衆な言葉が並び書かれていた。
実は田中はあの夜叫び声をあげた救世主ではなく、ただただ暴行の様子を楽しんで見ていただけの傍観者だったのだ。
信頼を裏切られた辰哉は、田中を刺した。
一方、警察は山神の正体が田中であることを突き止める。
しかし、田中はすでに命を落としていた。
泉は辰哉の犯行動機に気づき、北見に告げるが、辰也は「関係ない」と一蹴する。
直人②
山神が刺された事件は全国に伝えられた。
直人を疑ってしまった優馬は、信じきれなかった自分の気持ちを深く後悔する。
いなくなった直人を探す優馬だったが、直人はすでに病気で他界していた。
住所不定の男・直人の正体は心臓に持病を抱える孤独な施設出身者。
命の散り際の中で、直人は本当に優馬を愛していたのだ。
そして、その愛ゆえに姿を消した。
取り返しのつかない後悔にさいなまれる優馬には、ただただ直人に謝罪することしかできない。
田代②
洋平と愛子もまた田代を疑ってしまったことを後悔していた。
前歴不明の男・田代の正体は、借金から逃げる男。
田代は父親が残した多額の負債を背負い、債権者から逃げ続ける生活をおくっていたのだった。
洋平は田代を支援することを決意し、愛子と田代の交際も許可する。
こうして田代は愛子のもとに帰ってきた。
結末
泉は辰哉のために暴行事件の被害者であることを打ち明けた。
周囲からの視線を避けるために再び引っ越すことになった泉だったが、それでも辰哉への罪悪感はぬぐえず手紙を送り続ける。
辰哉からの返信が泉のもとに届く。
「自分が田中を刺したのは裏切りが許せなかったから。泉のことは本当に関係ない」
それは、辰也の率直な気持ちであった。
<完>
感想と解説
物語の主軸である「山神」の正体は田中でした。
しかし事件の犯人というよりも、「怒り」という作品のテーマは「人を信じる」ということにあったと思われます。
たとえ愛する人に対しても人間は「信じられない」という気持ちを抱いてしまう。
一方で、厚く信頼していた人間から絶望的な裏切りを突きつけられることもある。
しかも、愛子・優馬・泉のように「心に陰やトラウマのある人物」にとっては「信じる」という行為はさらに複雑さを増してしまいます。
もちろん「何が正解」というものはありませんが、小説「怒り」の登場人物たちのような深い後悔はできればしたくないものです。
今回は物語の展開・結末を簡潔にネタバレしましたが、吉田修一さんの小説「怒り」では上下巻の大ボリュームで「信じるという行為にまつわる人の心の機微」が見事に描かれています。
映画版と合わせて、原作小説の方もおススメです。
※今回のネタバレでは省略しましたが、刑事・北見の物語や、山神という狂った人物の背景なども描かれています。
まとめ
小説「怒り」のネタバレをお届けしました。
序盤は「うわ、みんな山神っぽい…」とミステリー的展開が気になる「怒り」ですが、作品全体を通してのテーマは「信じる」という行為について。
吉田修一さんだからこそ描ける、信じられず後悔する人間の不器用さ、裏切られた人間の絶望感はとてもリアルな何かを読者に教えてくれます。
映画『怒り』の配信は?
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