今回は東野圭吾「祈りの幕が下りる時」のあらすじ・ネタバレ解説(と感想)などをお届けします!
事件の裏に隠された予想外の人間ドラマとは?
Contents
「新参者シリーズ」と「加賀恭一郎シリーズ」とは?
本題に入る前に、まずは小説「祈りの幕が下りる時」の立ち位置について説明しておきましょう。
小説「祈りの幕が下りる時」は東野圭吾「加賀恭一郎シリーズ」の最終巻(10作目)です。
阿部寛さん主演のドラマ「新参者」の原作はシリーズの8作目(連作短編集)であり、この巻から加賀は捜査一課から日本橋署へと異動しています(だから【新参者】なんですね)
そして9作目(日本橋での第2の事件)にあたる「麒麟の翼」は2012年に映画化。
「新参者シリーズ」共通の謎として
- 加賀が日本橋に来た本当の理由は?
- 蒸発した加賀の母親について
という点が提示されたまま、バトンは完結編である「祈りの幕が下りる時」に渡されました。
というわけで小説「祈りの幕が下りる時」では本筋の事件が解き明かされていくのと並行して、上記2点の「シリーズ共通の謎」も解明されていきます。
「祈りの幕が下りる時」あらすじネタバレ
プロローグ
加賀の母親・田島百合子は家を出た後、仙台へと向かった。
当てなどなかったが、最終的には宮本康代という人物に雇われてスナックで働くことになる。
百合子はスナックに長く勤め、そのうちに「綿部(ワタベ)」という恋人らしき男もできた。
しかし、百合子は常に心を閉ざしているようであり、どこか辛そうな表情を浮かべていた。
綿部が長らく町を離れて仕事に出ていたせいかもしれない。
そして、そんな綿部不在のある日、百合子は自宅でひっそりと息を引き取った。
心不全だった。
康代は綿部から教えられた住所に連絡して、一人息子である加賀恭一郎に遺品をすべて託したのだった。
…だが、百合子は息子の住所など知らなかったはずだ。
綿部はどうやって加賀の住所を突き止めたのだろうか…?
本編
東京で殺人事件が発生した。
被害者は滋賀県在住の押谷道子。
現場は越川睦夫という男のアパート。
部屋の主である越川は、行方不明。
この事件の担当となった捜査一課の松宮は、近くの現場で起こったもう一つの事件との関連を疑う。
新小岩でホームレスが小屋ごと焼かれた事件。
場所的にも近いし、例のホームレスの首には何者かに絞められた痕跡があった。押谷道子の死因と重なる。
だが、今のところ2つの事件に客観的な関連性はない…。
どうやら道子は、かつての友人である浅居博美に会うために上京してきたようだ。
浅居博美は舞台女優として一世を風靡し、今は演出家として活動している。
ちょうど今、明治座で公演中の「異聞・曽根崎心中」も博美が演出した舞台だ。
道子の要件は博美の母親について。
端的に言えば「母親が問題を起こしているのでどうにかして欲しい」というものであった。
博美の母親・厚子は若い頃に夫と娘を捨てて、そればかりか財産をすべて奪ったあげくに借金まで残して消えた。
借金を苦にした博美の父親・忠雄は身を投げて他界。
最低の妻であり母親だった厚子は現在、わがままの限りを尽くし、とある老人ホームの一室に居座っているのだという。
当然ながら、博美はそんな母親のことを憎んでおり、体よく道子を追い払った。
「異聞・曾根崎心中」公演初日前日のことだ。
そして、その翌日に、道子は越川の部屋で首を絞められてこの世を去った。
日本橋の12の橋
松宮は事件について従兄弟である加賀恭一郎に相談。
加賀の指摘により、一気に事件は進展することとなる。
1.小岩で焼かれたホームレスの遺体は、実は小屋の主ではなく別人のものだった。
2.越川の部屋には意図的にホームレス(小屋の主)の所持品が配置されており、DNA鑑定に使われるように仕向けられていた。
改めてDND鑑定を行ったところ、小岩の遺体こそが越川睦夫であったことが判明する。
2つの事件がつながった!
しかし、それにより新たな謎も浮かび上がってくる。
・越川睦夫とは何者なのか?越川の部屋からは経歴や出自を示すものが何も見つからない。
・越川と道子はどのような関係だったのか?今のところ2人に接点は見つからない。そもそも道子にとっては久々の上京だったのだ。
唯一、手がかりになりそうなのは越川の部屋にあったカレンダーだ。
各月ごとに「浅草橋」「江戸橋」など日本橋を囲む12の橋の名前がメモされている。
一見、法則性がないように見える月と橋との組み合わせ。
だが、それの話を聞いた加賀は愕然とした。
その月と橋との組み合わせは、加賀の母親・百合子の遺品にあったメモの内容と一致するのだ。
おそらく遺品のメモを書いた人物は「綿部」だろう。
調査したところ、遺品のメモとカレンダーのメモの筆跡が一致する。
これはいったいどういうことだ?
加賀は正式に捜査に加わることになった。
加賀と両親
警察官だった父はあまり家に帰らず、元ホステスということで親戚から攻撃されていた母親を放置していた。
その上、母は祖母の介護や育児までしなければならなかった。
加賀はずっと、母親が家を出て行ったのは父親のせいだと思っていた。
だから、加賀は父が息を引き取るその時にも、父のそばにいなかった。
父とそういう約束を交わしたからだ。
父にとって、それは母への詫びであり、男の意地だったのだろう。
だが、康代によれば母は家庭崩壊について「自分が悪い」と繰り返していたらしい。
今思えば、母は精神的負担から「うつ病」を患っていたのではないか。
…とはいえ、母がなぜ家を出たのか、何を思っていたのか、実際のところはわからない。
実は加賀には本庁から「捜査一課に復帰しないか」という誘いが何度も来ている。
しかし、加賀はそのすべてを断っていた。
なぜ加賀は日本橋に固執しているのか?
その理由は、母が残した例のメモにあった。
日本橋を囲む12の橋。
その謎を解き、母の真意に近づくため、加賀は日本橋にこだわっていたのだった。
深まる謎
松宮と加賀は、捜査のため仙台へ。
そこで明らかになったのは綿部俊一と越川睦夫が同一人物であるという事実だった。
さらに綿部が使っていた時刻表の指紋を確認したところ、綿部が原発作業員だった可能性が高いことが判明する。
東京に帰ってきた加賀は、改めて月と12の橋の謎について考えることに。
『7月・日本橋』
そういえば毎年7月には日本橋で「橋洗い」という行事が催される。
橋洗いの様子を写した写真を徹底的に洗った加賀は、その中の一枚に浅居博美が写っていることに気がつく。
12の橋のメモと博美には、何か関係があるのだろうか?
それにしても…、と加賀は考える。
今回の事件は、加賀個人に関係しすぎている。
被害者(綿部)はかつて母の恋人だった男だ。
また、今のところ容疑者である博美と加賀とは数年前からの顔見知りでもある。
日本橋署の剣道教室に博美が子役を連れてきたのがきっかけで、2人は知り合いになっていたのだ。
これは偶然だろうか?そうとは考えにくい。
ならば、これは必然…?
だが、それが何を意味しているのかまでは、まだわからない。
新たな手がかり
捜査線上に新たな人物が浮かんできた。
苗村誠三。
道子と博美の中学生時代の担任教師だった苗村は、現在行方不明になっているのだという。
もしや、苗村もまた綿部(=越川)と同一人物なのではないだろうか?
博美の回想
実は、苗村と博美は教師という間柄でありながら恋人同士だった。
父親を失い養護施設に入った博美を、苗村は何かと気にかけてくれた。それがきっかけだ。
やがて、博美は女優を志して上京。
苗村は既婚者だったが、離婚・退職したうえで博美を追って東京に居を移した。
全てを失ってでも博美と一緒になろうとした苗村とは裏腹に、博美は苗村の愛の重さに困惑し始めていた…。
加賀の発見
一方、加賀も新たな情報をつかんでいた。
・博美が加賀と出会ったのは偶然ではない。
博美はあらかじめ加賀のことを知っていたにも関わらず、偶然を装って接触して来ていたのだ。
やはり、今回の事件と加賀との間には何かの因縁があるようだ。
真相へ
康代に確認したところ、苗村と綿部(=越川)は別人であることが判明した。
その代わり、捜査線上には新たな人物の名前が浮かび上がる。
「横山一俊」という原発作業員だ。名前も「綿部俊一」に近い。
この人物こそが綿部なのだろうか?
捜査を進めていくと、横山はかつて「ワタベ」という会社から仕事を請け負っていたことが発覚。
「綿部俊一(=越川)」が横山の偽名であったことが明らかになった。
一方その頃、加賀は博美の話に嘘が混じっていることに気がつく。
そこから加賀は、今回の事件の真相を導き出した。
今回の事件は、博美の少女時代から始まっていたのだ。
加賀の推理と真実の回想(1)
加賀の推理
博美の父・忠雄は借金を苦に近くのビルから身を投げてこの世を去った…これは嘘だ。
当時、そんなことがあれば同級生たちの記憶に残っているはず。
だが、彼らの記憶にそんな事件は残っていない。ついでに言えば博美が転校した記憶も曖昧だという。
ならば、忠雄は博美を連れて夜逃げしたのではないか?
そして忠雄は逃亡先で何者かの死に遭遇し、その第三者の存在を利用して自らの存在を消した。
つまり、忠雄は別人として今も生きている。
その後、借金から逃げた忠雄は、身分を偽って原発作業員となった。
『綿部俊一の正体は浅居忠雄』
これが加賀の導き出した結論だった。
博美の回想
果たして加賀の推理は的を射ていた。
当時、忠雄は博美を連れて石川県へと夜逃げ。
そこで人生を終わらせようとしていた。
だが、現地で起こった事件が、2人の人生を大きく変えることになる。
まだ14歳だった博美に男が暴行しようとしたのだ。
博美はとっさに反撃したが、当たり所が悪く男の命を奪ってしまった。
それを知った忠雄は一計を案じる。
(この男には浅居忠雄になってもらおう。そして自分はこの男になり替わればいい)
そうして忠雄は男…「横山一俊」となった。
博美は警察に対して「(横山の)遺体は父で間違いない」と証言。養護施設に入ることになった。
加賀の推理と真実の回想(2)
博美の回想
東京で舞台女優になってからも、博美は忠雄と会い続けていた。
だが、博美の人気が上昇していくにつれ、忠雄は危機感を抱くようになっていく。
(自分が父親であることが世に知れては、娘の邪魔になってしまう…)
そこで忠雄はもっと慎重に博美と会うことに決めた。
日本橋にある12の橋。月ごとに橋を割り当て、会う時はその橋の近くで、川を挟んで携帯電話で話すことにしたのだ。
加賀の推理
浅居父娘の絆は本物だ。
おそらく忠雄は博美に黙って明治座の「異聞・曾根崎心中」初日公演を観に行ったのだろう。
だが、そこで同じく観劇していた道子に見つかってしまった。
忠雄は口封じのために仕方なく道子を自分のアパートに連れ込み、そこで首を絞めた。
つまり、道子の事件の犯人は浅居忠雄だ。
では、誰がその忠雄(=越川)を小岩のホームレス小屋で亡き者にしたのか?
その犯人はきっと、博美だろう。
『異聞・曾根崎心中』
そのクライマックスで、徳兵衛は愛するお初の命を奪い、自らもすぐに自決する。
どうせなら愛する人に終わらせてほしい。
どうせなら、愛する人の人生の幕をこの手で下ろしてやりたい。
きっと、忠雄と博美の関係は、徳兵衛とお初のそれと同じだったのではないか。
加賀はそう推理した。
最後の回想
綿部(=忠雄)が加賀の住所を知っていたのは、博美がツテを使って調べたからだ。
そして、博美が加賀恭一郎に興味を持ったのは、父の恋人(百合子)の息子だったから。
一度会ってみたいという興味が、まさかこんな結末につながるとは…。
博美の回想
果たして加賀の推理は的を射ていた。
道子の手にかけた犯人は浅居忠雄。
最後に橋で会ったとき、父の様子は明らかにおかしかった。
心配になった博美が後をつけると、忠雄は小岩のホームレス小屋に入り、灯油を被ろうとしてた。
慌てて止めに入った博美に、忠雄は告白する。
道子を手にかけたこと。そして、ストーカー化しかけていた苗村を手にかけたこと。
忠雄はもう疲れ切っており、すべてを終わりにしたがっていた。
どのみち、道子の遺体が発見されれば、すべてが終わりになってしまう。
「いずれ押谷さんの遺体が見つかる。警察は、越川睦夫という男を捜すやろ。もうこの歳や、逃げきれるわけがない」
「そんなの、わかれへんやないの。私が隠したげる。絶対に見つからない場所を探してあげる」
「無理や。…もう勘弁してくれ」
「勘弁て…」
「もう疲れたんや。何十年も逃げ回って、身を潜めて生きてきた。もう、逃げたり隠れたりする生活には疲れた。楽になりたい。楽にさせてくれ。この通りや」
「お父ちゃん…」
忠雄が顔を上げた。目の下が濡れて光っていた。それを見た途端、博美も耐えきれなくなった。涙が溢れだした。
「誤解するなよ。辛いこともあったけど、今日までの人生を後悔はしてない。楽しい思いもたくさんできた。何もかも博美のおかげや。博美、ありがとうな」
言い終わると、忠雄は頭から灯油を被った。
「行け。早よ行ってくれ。火をつけるぞ。火傷したいのか」
博美は答えず、ゆっくりと両手を前に伸ばした。博美の手が忠雄の首にかかる。
「博美、おまえ…。おまえが楽にさせてくれるのか」
うん、と博美は頷く。
「そうかあ」
忠雄は目を細めて笑い、そのまま瞼を閉じた。
「ありがとう。博美、ありがとう」
博美の手に力がこもる。どれぐらいそうしていたのか、不意に、がくんと忠雄の力が抜けた。
呼びかけてみても、何の反応もない。
博美はろうそくに火を灯し、時間差で火事になるようにしてその場を去った。
結末
浅居博美の逮捕によって事件は解決した。
日本橋の謎が解けた加賀は、近く本庁の捜査一課に異動することになっている。
松宮は金森に「恭さんに渡してほしい」とある手紙を託す。
博美が加賀に届けたかった「浅居忠雄から加賀恭一郎への手紙」
そこには、加賀がずっと知りたかったことが綴られていた。
加賀恭一郎への手紙
手紙には一緒に長い時間を過ごした忠雄が知りうる限りの、百合子のことが綴られていた。
百合子はうつ病を発症していた。自分を無能者だと思い込み、夫に迷惑をかけていると自分を責め続けていた。
それでも息子のために踏みとどまっていた百合子だったが、ある夜、無意識のうちに包丁を握っていたことにゾッとする。
もしも、息子を道連れにしていたら…。
悩んだ末、百合子は家を出て仙台へとたどり着く。
結果的に百合子は自らの命を捨てることなく、第二の人生をスタートさせた。
うつ病の症状が軽くなってきたころ、忠雄は「旦那さんや息子さんのところに戻ろうとは思わないのか。二人に会いたくはないのか」と尋ねた。
すると彼女は「自分にはそんな資格はない」と首を振る。
せめてもと忠雄が加賀が取り上げられた剣道雑誌を入手して百合子に渡すと、彼女は「よかった」と言って涙と流した。
恭一郎が警察官になっているということは、自分のせいで同じく警察官だった父親を憎んではいないはずだ…そのことが何より嬉しかったのだという。
これでようやく心のつかえがとれた、といって百合子は晴れ晴れとした笑顔を見せた。
忠雄が百合子の心からの笑顔を見たのは、それが最初で最後だった。
『その時の百合子さんの目は、息子さんへの期待と愛情で光り輝いておりました。以上が、私が貴方様にお伝えしたいことの全てです。最後につけたしますと、百合子さんは彼女なりに精一杯生きたと思います。私が最後に彼女に会ったとき、何か欲しいものはないか、と尋ねてみたところ、何もない、と彼女は答えました。今のままで満足、何もいらない、と笑顔でいったのです。あの言葉に、嘘はなかったように思います』
エピローグ
加賀から誘われて、今日は一緒に食事に行く。
金森登紀子は懐に例の手紙を忍ばせて、加賀のもとに向かった。
この手紙を読んだら、加賀はどんな反応を見せるのだろうか?
その答えが知りたくて、登紀子は加賀に向かって歩き出した。
<祈りの幕が下りる時・完>
解説と感想
「祈りの幕が下りる時」の解説
今作における謎は、大きく分けて5つ。
- 誰が押谷道子を手にかけたのか?
- 誰が越谷睦夫(=綿部俊一)を手にかけたのか?
- 綿部の正体は何者なのか?
- 月ごとに割り振られた日本橋の12の橋にはどんな意味があるのか?
- なぜ今回の事件は加賀個人と関わりがあるのか?
それらすべてを結びつける真実は、以下の通りです。
1.綿部の真の正体は浅居忠雄。博美の父親。
2.綿部は加賀の母・田島百合子の後の恋人だった。だから浅居親子と加賀個人に繋がりができた。
3.忠雄は夜逃げの果てに、別人になり替わって生きることを選んだ。舞台の世界で成功している娘のために、自分の正体が公になることだけは避けなければならなかった。
4.月ごとに割り振られた12の橋は、密かに博美と忠雄が合うときの場所を示していた。
5.道子に正体を見破られてしまった忠雄は、口封じのために道子を手にかけた(道子の件の犯人は忠雄)
6.その後、忠雄は自決を図ったが、最後には娘の博美が自ら首を絞めた(綿部の件の犯人は博美)
7.愛しているからこそ、自分の手で。愛している人の手で自分の人生を終わらせてもらいたい。親子の愛は、博美が演出した舞台「異聞・曾根崎心中」のクライマックスによく似ていた。
また、今作ではシリーズ共通の謎も解明されました。
1.加賀が日本橋にこだわる理由 → 母の遺品のメモ(月ごとの12の橋)の謎を解き明かすため
2.加賀の母が蒸発した理由と真意 → 加賀の母はうつ病を発症しており、自責の念から家を出た。決して夫に不満があったわけではなく、息子のことを心から愛していた。
加賀にとって、これはずっと知りたかったことです。
まさに感動の大団円ですね。
感想
東野圭吾らしい緻密な伏線と回収が楽しめるミステリー部分も面白かったのですが、それよりも結末に近づくにつれて明かされていく人間ドラマの方に心打たれた、というのが素直な感想です。
個人的には、今作のテーマは「親子の絆」だったのではないかと思います。
浅居博美と浅居忠雄との鋼の絆
父親は娘のためだけを想って別人として数十年を過ごし、そのために2人も手にかけました。
娘もまたそんな父親への感謝を忘れず、家庭に生きることを捨てて、仕事と父親のためだけに生きてきました。
すべての元凶は最低な妻であり母親だった厚子であり、この2人は本来一切悪くないはずなのに、どうしてそんな人生を歩まなければならなかったのでしょうか…。
物語の結末、父親を楽にさせるために博美が忠雄の首を絞めるシーン。
愛ゆえに首を絞める。父親はそれに対して「ありがとう」と感謝する。
「異聞・曾根崎心中」のクライマックスにも似た壮絶な親子愛には、感じ入るものがありました。
加賀恭一郎と実母・田島百合子との絆
「祈りの幕が下りる時」は浅居親子の物語であると同時に、加賀と母親の物語でもあります。
加賀の中にはずっと「母親はどうして家を出て行ったのか?」という疑問がくすぶっており、そのために彼は日本橋署にこだわって個人的な捜査を続けていました。
その答えが、今回の事件を通してやっと得られたのです。
母親は夫や息子に愛想をつかして出て行ったわけではなかった。
むしろ母親は夫や息子を愛していたからこそ、自分が家庭を壊してしまわないように身を引いた…というのが忠雄の手紙に綴られていた百合子の真意でした。
愛しているからこそ離れる…その決断は、どこか浅居親子のケースにも似ているような気がします。
ともあれ、加賀はこれでようやく過去に一つの区切りをつけ、新たに前へ進むことができることでしょう。
母親がそうであってほしいと望んだように。
ラストの手紙の場面は、悲しくも温かい気持ちが詰まった素敵なシーンだと思いました。
余談
「祈りの幕が下りる時」は加賀が忠雄からの手紙を読む直前で結末を迎えるわけですが、その後はどうなったのでしょうね?
加賀は捜査一課に復帰することが決定しているので、きっとこれまで以上にバリバリ仕事をこなしていくのではないでしょうか。
そして、その隣には、もしかしたら金森登紀子が寄り添っていたり…?
加賀には登紀子と一緒になって、なんなら幸せな家庭を作ってほしいなぁ、と個人的には思ったりしています。
まとめ
今回は東野圭吾「祈りの幕が下りる時」のあらすじ・ネタバレ・解説・感想などをお届けしました!
途中で「誰が誰なの!?」とこんがらがるようなトリックも面白かったですし、ラストに待つ感動の人間ドラマも「さすが東野圭吾!」と喝采したくなるほど素晴らしいものでしたね。
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