中山七里『連続殺人鬼カエル男』を読みました!
感想は
ラストのどんでん返しがすごすぎる!
のひと言に尽きます!
「こいつが犯人でしょ?」と思っていたやつの裏には真犯人がいて、さらにその真犯人も実は……!
という結末の怒涛の展開には「え! あっ、そっか!?」と驚かされっぱなしでした。
今回は『連続殺人鬼カエル男』のネタバレをお届けします!
衝撃的すぎるラスト1行とは!?
あらすじ
『カエル男 連続猟奇殺人事件』
最初に見つかったのは、フックに吊られた女の死体だった。
さびれたマンションの13階外階段。
風に揺れる『それ』のそばには、1枚の紙きれが落ちていた。
きょう、かえるをつかまえたよ。
はこのなかにいれていろいろあそんだけど、だんだんあきてきた。
おもいついた。
みのむしのかっこうにしてみよう。
くちからはりをつけてたかいたかいところにつるしてみよう。
子どもが書いたような稚拙な犯行声明文。
遺体をカエルに見立てて遊んでいるかのような犯人に、マスコミは『カエル男』という名前をつけた。
ネタバレ
『カエル男の正体は誰なのか?』
警察の捜査が進むにつれて、だんだんその人物像が明らかになっていきます。
- 身長150~160cm
- 成人女性を持ち上げてフックに吊るせるほどの体力がある
- 精神的な病に罹患している
埼玉県警は犯人逮捕のため『前歴のある精神障碍者』をマークすることに。
主人公で刑事の古手川和也は『当真勝雄』という少年を担当することになります。
勝雄は過去に幼女を殺害したものの、知的障害が認められて医療少年院に入り、今は社会復帰して歯医者で雑用働きをしている、という人物。
古手川から見た勝雄は『不器用だけど一生懸命』という印象で、「カエル男とは無関係だろう」と判断します。
ところが、読者目線的にはこの当真勝雄……めちゃくちゃ怪しいんです!
というのも、小説にはときどき『ナツオ』という少年の回想が挟まれるんですが、
- 実の父親が最低のクズ野郎で、あらゆる虐待を受けていた。
- そのせいでナツオの人格は分裂し、虫や小動物の命を奪って喜ぶ残虐な人格が生まれた。
- やがてナツオは自分になついていた女児の命を奪う。
- 医療少年院に送られたナツオは『改名して』社会に復帰した。
という内容なんですね。
どう考えても
『ナツオ=勝雄=カエル男』
だとしか考えられません。
極めつけは、現在の勝雄を描いたシーン。
勝雄の机には古い日記帳が入っているのですが、そこに書かれていた内容は……
きょう、かえるをつかまえたよ。(以下略)
カエル男がいつも残している犯行声明文とまったく一緒!
そして、まだまだこれだけではありません。
被害者の共通点
カエル男によって命を奪われた犠牲者は4人。
- 荒戸玲子(20代OL)……吊られる
- 指宿仙吉(年金暮らしの老人)……潰される
- 有働真人(小学生)……解剖される
- 衛藤和義(入院中の弁護士)……燃やされる
一見バラバラに見える被害者たちには、2つの共通点がありました。
- 全員が勝雄が働く沢井歯科の患者である。
- 名前が50音順になっている。
あらお、いぶすき、うどう、えとう。
ア、イ、ウ、エ。
カエル男は沢井歯科のカルテを見て、50音順になるようにターゲットを選んでいたんです。
そんなことが可能なのは沢井歯科の関係者だけ。
その中でもアリバイがとれていないのは、寮の部屋にいつも引きこもっているという勝雄だけ。
勝雄は漢字を読むことはできませんが、カナがふってあるカルテなら『指宿(いぶすき)』を読むことができます。
また、勝雄は超記憶力を持っているので、カルテで見たターゲットの住所を覚えておくことも簡単です。
カエル男の正体
「当真勝雄。お前を飯能市連続殺人事件の犯人として逮捕する」
古手川は死闘の末、なんとか勝雄を捕まえます。
- 勝雄の部屋からは凶器や被害者の持ち物が出てきた。
- 凶器からは被害者のDNAが検出された。
- 勝雄のスニーカーが犯行現場に残されていた足跡と一致した。
「これでもか!」というほどの物的証拠。
さらに、勝雄自身も自分がカエル男であると認めます。
これで事件は一件落着……
第4の被害者である衛藤は『カエル男』の指の肉を噛みちぎっていました。
ところが、勝雄の指には怪我がありません。
これはいったい……?
違和感を覚えた古手川は、意外な人物の指に真新しい噛み傷があることに気がつきます。
その人物の名前は『有働さゆり』
当真勝雄の保護司であり、3人目の被害者である有働真人の母親でもある人物です。
さゆりはピアニストであり、音楽療法で勝雄の『治療』を担当していた人物でもありました。
シングルマザーではありましたが、いつも優しくて、不遇な少年時代を送った古手川は理想の母親の姿をさゆりに重ねていました。
しかし、実はそれは世を欺く仮の姿。
有働さゆりこそが、真の『カエル男』だったのです。
犯行動機と叙述トリック
有働さゆりの目的は、ズバリ『金』
真人が亡くなれば、さゆりはこども保険と犯罪被害給付金制度による金を手にすることができます。
あわせて5千万円にも満たない金のために、さゆりは実の息子の命を奪ったのです。
真人以外の3人を手にかけた理由について、さゆりはこう語っています。
「わたしは真人さえいなくなればよかったけど、真人だけ死んだら当然わたしも容疑者に加えられる。でも他に3人も無関係な奴が殺されれば容疑者から外される。飯能市の中から無作為に、50音順に殺されていく……その異常性に本来の動機は見えなくなる」
木を隠すなら森の中。
『真人を葬る』という主目的を隠すためだけに、さゆりは他の3人を手にかけたのでした。
実際、警察は犠牲者の共通点を探すことに時間をとられてしまい、さゆりを容疑者だとは1ミリも考えていませんでした。
◆
では、さゆりがなんでそんなに金を欲しがったのかといえば、用途は『家のローン返済』のため。
さゆりはピアニストとして数々の賞をとっていましたが、コンサート・ピアニストにはなれませんでした。
そんなさゆりにとって、大金をかけて改装した完全防音のピアノ部屋だけが、自分の居場所でした。
「この部屋がそんなに大事なのか。たった1人の子供よりも」
「比べ物にならないね。もともと、可愛いとは思わなかった。出ていった男にそっくりで憎たらしいったらありゃしない」
裏表がひっくり返ったように豹変したさゆりですが、まったく兆候がないわけではありませんでした。
- 真人の体には青痣(あおあざ)があった。いじめによるものだと思われたそれは、実はさゆりからの虐待でできた痣だった。
- 真人が亡くなった後、さゆりは半狂乱になって悲しんだが、涙だけは見せなかった。
- さゆりももともとは医療少年院出身で、過去には勝雄と同じ精神科医からケアを受けていた。
なんのことはありません。
警察の『犯人は精神的な病に罹患している』という見立てそのものは間違っていなかったのです。
『明るく穏やかな有働さゆり』は狡猾なさゆりが被ったただの仮面。
その本性はかつて自分になついていた幼女の命を奪った子供時代から何1つ変わっていなかったのです。
もうお気づきでしょうか。
実は『ナツオ』の正体は勝雄ではなくさゆりだったのです。
小説にはいわゆる「叙述トリック」が使われていて、少年だと思われたナツオは実は『夏緒』という少女でした。
『ナツオ』は改名して当真勝雄になったのではなく、有働さゆり(旧姓は島津)になっていたんですね。
ちょっとややこしいので、ここでいったん整理しておきましょう。
- 本物のカエル男。
- ナツオの回想はさゆりの過去。
- 幼女の命を奪った。
- 精神分裂系の精神病患者。
- 当真勝雄を支配し、ダミーのカエル男に仕立て上げた。
- 偽物のカエル男。
- カエルの日記は勝雄のもの。
- 過去に(さゆりとは別の)幼女の命を奪った。
- 知的発達系の精神病患者。
- さゆりによって『自分こそがカエル男だ』と思い込まされた。
どちらも『幼女を手にかけた過去』を持っていたりと、ネタバレのあとでは多くのミスリードが見えてきます。
※「ナツオ」と「カツオ」で音を似せたのもたぶんミスリードの1つ
さゆりは勝雄の保護司であり、その精神を十分に支配できるだけの立場と能力を持っていました。
勝雄はさゆりからの刷り込みで『自分こそがカエル男なのだ』と思い込まされていたんですね。
雑用働きの毎日に不満をためていた勝雄は、自分こそが世間をにぎわせているカエル男だという『現実』に満足していました。
冴えない毎日を送る自分が『人々から恐怖されている存在』であることに昏い喜びを感じていたんですね。
ちなみに『力のある男』という犯人像もさゆりがつくりあげた罠でした。
- 1人目の被害者をフックに吊るせたのは、1つ上の階から吊り下げていたから。
- 重い遺体を持ち運びできていたのは、楽器用のベースキャリーを使っていたから。
真犯人
古手川は命がけの戦いの末、さゆりを逮捕します。
これで今度こそ事件は幕を閉じ……
なんと、事件にはまだ裏があります。
さゆりが勝雄を操って犯人に仕立てあげたように、さゆりを操って事件を起こさせた『黒幕』がいたのです。
黒幕の名前は『御前崎宗孝』
犯罪心理学の権威にして、医療少年院でさゆりや勝雄の治療を担当した精神科医でもある人物です。
一度は回復して社会復帰したさゆりが残虐な精神に逆戻りしてしまったのは御前崎のせい。
御前崎はさゆりのトラウマを刺激してその精神を破壊すると、ローン返済の手段として『カエル男事件』の構想を吹き込みました。
実際に事件を起こし、被害者の命を奪った実行犯はさゆりです。
ただ、その裏には御前崎教授という真犯人がいました。
『カエル男事件』は三重構造になっていたというわけですね。
◆
では、御前崎はどうして『カエル男事件』をさゆりに起こさせたのでしょうか?
その答えは『復讐』
実は御前崎のターゲットは4人目の被害者である『衛藤和也』ただ1人だったんです。
さゆりのときと同じですね。
御前崎にとって他の3人の犠牲者は、復讐という『本当の目的』を隠すためのカモフラージュにすぎません。
無関係な人間を巻き込み、一度は安定したさゆりの精神を壊してまで、御前崎は衛藤を葬ることに執着していました。
では、いったい御前崎と衛藤の間にはどんな因縁があったのでしょうか?
◆
物語の途中、チラッとだけ話題に上がった『3年前の松戸母子殺人事件』
裁判では弁護士が要請した精神鑑定の結果、加害者である17歳の少年は犯行時には統合失調症だったと刑法39条の適用がなされ、無罪判決が下されました。
【刑法39条】
- 心神喪失者の行為は、罰しない。
- 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
衛藤はこの裁判の弁護士で、御前崎は被害者の遺族でした(殺された母親は御前崎の娘だった)
加害者の少年を精神鑑定した精神科医は衛藤の友人であったりと、衛藤が無罪判決を勝ち取った背景には『黒い噂』も……。
というわけで、御前崎は衛藤への復讐を計画したわけですね。
◆
以下、御前崎のセリフを一部抜粋。
「不思議だとは思いませんか。4人もの生命が奪われながら、実行犯が精神障碍者というだけの理由で誰も罪に問われない」
「人を殺めたものも寛解状態を認められれば社会に復帰する。それも良かろう。だが、それは人を食らった獣を再び野に放つことだ。野に放てと叫んだものは、その獣と隣り合わせに暮らす恐怖を味わう義務がある」
「殺された4人の遺族はさぞかし無念だろう。今回ばかりは世論も39条を永らえさせたことを後悔するだろう」
改めて『カエル男事件』を振り返ってみると、3年前の事件で精神障碍者に大事な娘と孫を奪われた遺族が、今度は精神障碍者に衛藤と何の罪もない人々の命を奪わせた、という構造になっていることに気がつきます。
つまり、御前崎の復讐対象は衛藤個人ではなく刑法39条そのものだったのです。
- 裁判を歪めた加害者側の関係者
- 加害者を無罪にした刑法39条
- それを良しとした世論
そのすべてに復讐するため、御前崎は『刑法39条で犯人が無罪になる連続殺人事件』をつくりだしたのでした。
◆
これまでの2人と違って、御前崎の犯行には何ひとつとして証拠が残っていません。
仮にさゆりが何か証言したとしても、それは心神喪失者の言葉ということで証拠能力を持ちえないのです。
『完全犯罪』
御前崎が黒幕だとわかっているのに捕まえられない悔しさに古手川は歯噛みします。
3年前の事件の加害者と、精神鑑定を行った精神科医。
御前崎はこれからその2人にも復讐するだろう、というなんだか後味の悪い終わり方で今度こそ物語は終わ……
ラスト1行の衝撃
さゆりが『カエル男事件』の犯人として逮捕されたことで、先に逮捕されていた勝雄には冤罪が認められました。
ただし、さゆりの刷り込みによって、勝雄はまだ『自分こそが本当のカエル男だ』と思い込んでいます。
すると、どうなるか。
ラスト1ページの衝撃をまるっとお届けします。
※以下、小説ラストより抜粋
◆
有働先生は少し狡いと思った。
自分が入院している間にカエル男の称号をちゃっかり奪ってしまった。
だが、勝雄にはわかっている。
有働先生は自分の代わりに捕まってくれたのだ。
自分にあの続きをさせるために。
自分はその期待に応えなくてはいけない。
元の生活に戻ったら、すぐ5人目の獲物を渉猟しなくてはいけない。
だが、その居場所はすでに明らかだ。
5人目は有働先生の指示ではなく自分で選んだ。
マツドシシラカワチョウ3-1-1
一度網膜に映ったカルテの情報は記憶に刻まれて消えることがない。
駅名表示は平仮名なので勝雄にも判読できる。
電車を乗り継げば勝雄の住所からもたどり着けるだろう。
5人目の名前ももちろん、覚えている。
――オマエザキムネタカ。
<完>
◆
- 御前崎も沢井歯科の患者だった(そこで衛藤を見つけた)
- 50音順では次の被害者の頭文字は『オ』
皮肉なことに御前崎はカエル男(勝雄)の次の標的に選ばれていた、という結末ですね。
因果応報という言葉を連想させる、ゾクッと鳥肌が立つようなラスト1行でした。
中山七里『連続殺人鬼カエル男』
タイトルから想像した100倍おもしろかった❗️
ラストのどんでん返しが好きな人に心からおすすめしたいミステリ小説🧐
今年読んだ小説の中でもトップクラスの満足度でした🙆♀️🙆♀️🙆♀️#工藤阿須加 さん主演でドラマ化の予定あり❗️https://t.co/UMqdFQKcLI
— わかたけ (@wakatake_panda) October 16, 2019
まとめ
今回は中山七里『連続殺人鬼カエル男』のネタバレをお届けしました!
では、最後にまとめです。
- 実行犯は有働さゆり。黒幕は御前崎宗孝。
- 御前崎は刑法39条への復讐として『カエル男事件』を引き起こした。
- ラスト1行に鳥肌!
ラストはどんでん返しの連続!
振り返ってみてはじめてあれもこれも伏線だったことに気づいて、
「あれ伏線だったのか!」
と感服しました。
読後は「すごい本を読んでしまった……!」という満足感がすごかったです。
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教授は逃げ延びるような気がする。
教授は自分も狙われる事わかってたとしたら・・
次々に第三、第四のカエル男と継承されていき、刑法を変えるまで続いていくのか。。
と妄想してしまった
以前読んだ覚えがあり続編のふたたびを借りてみたら、全くストーリーを覚えていなくて、完全なあらすじ助かりました。